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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
186/186

186話 デウス・エクス・マキ―ナvsタイムリーパー編 その十八

「――――ッ!??!!!」


 『ドゴンッ!!!!!!』と、派手な音と衝撃で目が覚めた。


 ――!?

 ――……

 あ~、状況から察するに、どうやら寝返りしてベットから落ちたらしい。


「っつ――クソッ……今何時だ……?」


 悪態を吐きながら身体を起こすと見慣れた部屋は真っ暗で、まだまだ朝は遠そうだった。


 枕元にまで伸ばした電源コードで充電中のスマホを手に取ると、画面に表示されたのは五月五日って日付と()()()()()()を指すデジタル時計。


「ったく、なんだってんだ一体……」


 最悪の寝覚めで苛立ちを抑えられず独り言が漏れる。

 なんだか夢見も悪かったような気がするし、かと言って思い出そうとすると夢らしく景色が霧散するだけで明確な像を結ばず更に苛立ちが募るだけ……

 ハァ、何やってんだか。


 ああもう、さっさと寝直そう。

 幸い、『二度寝で寝過ごす』なんてお約束を引き起こすような時間じゃないし、昼間の疲れを思えば今度こそぐっすり眠られるだろう。


 そう、今日の――いや、時刻的にはもう昨日の事か。

 とにかく、直近の昼間の事だ。

 先輩との待ち合わせで向かった先は、性の境界線がバグっているのか()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()が運営する超能力者の子供達が集められた()()孤児院だった。


 なんでも、超能力を持って生まれてしまった所為で里親に出されてしまった子や、研究所と呼ばれるような超能力者を悪用する非合法組織から助け出された身寄りの無い子が引き取られているのだとか。


 また、その子達を守る為に、院長含む万丈孤児院の職員はガードも兼任する凄腕超能力者達が集められているんだとも。

 現に、()()()()()()()()って中華系美女の保母さんは明らかに只者じゃない身のこなしが節々に表れてたし、泣く子がもっと泣きそうな笑顔を振りまくゴリマッチョ達とかも居たし。


 とまあ、聞くだけで気が滅入りそうなバックボーンとは裏腹に、元気一杯な悪ガキ共に付き合わされて日が暮れるまで散々遊び回された訳だが……

 いやはや、存外に悪い気はしないもんだ。

 特に、西洋人形そのままな見た目の()()()()()って子には、帰り際に『まだ帰らないで』って泣き付かれるくらいに懐かれたし。


「……ま、少しばかり喧しかったが」


 先輩と一緒に来たからか、『付き合ってるの!?』『恋人!? 恋人なの!?』とかって、まあ子供らしいハイテンションで集って来られて思わず面食らった。


 そのまま、なんて答えようか迷ってたら隣で先輩がめっちゃあたふたしてて可愛かったから、つい『そうだよ。二人はラブラブですよ』って言ったら、『そ~なの~!?』の大合唱に『えっ!??!!!』って大驚愕が続いて笑えた。


 …………いや、あれ驚いてたんだよな?

 『え? アンタと恋人とかありえないんだけど』ってニュアンスじゃないよな?

 怖くなってすぐ『ウケ狙いの冗談ですよ先輩。本気にしないで』なんて予防線耳打ちしちゃったし、その後は先輩も一緒にノッてくれてたから真相は闇の中なんですが……?


「……………………ハァ、まあ浮かれてた俺が悪いってことで……」


 幸い、明後日の登校日までまだ一日分の猶予はあるし、先輩だってそんな深刻に考えたりしないだろ。

 あんな子供相手のジョーク如きに。

 寧ろ、気にし過ぎてテンパる方が不味い。

 それを先輩に見透かされて、『え~、おこちゃま相手の戯言で自爆して意識しちゃってるの~? プ~クスクス♪』とかされたら――

 うん、死ねるな。

 いや、先輩そんなふざけた口調じゃねえけれども。


 ならば、来る金曜日に向けて冷静に自然体で振舞えるよう気分を入れ替えるべきか。

 ゲームに映画に漫画に読書にスポーツ、お出かけ、釣り、キャンプ、ショッピング――

 別に特定の分野に入れ込んでるってわけじゃないが、丸一日使えるならどうするか……


「――って、阿保か。さっさと寝ろよ……」


 セルフツッコミで思考を打ち切り、取り敢えずベッドの中に戻る。

 下手に考え込もうとした所為で意識が半覚醒して寝直すってコンディションから離れてるが、そこはまあ目を閉じて静かにしていれば、その内寝付ける筈だろう。

 別に寝付きが悪い方って訳じゃねえし。


 ベタベタに羊を数えるなんて手法も一瞬だけ脳裏を過ったが、無駄なアクションを挟むと逆効果になる事は経験則で知ってたので、さっさと目を閉じて規則正しい呼吸を心掛ける。

 スポーツと同じで、呼吸を整えると身体はスムーズに準備を整えてくれるからな。


 そうして、意識が遠退いてく刹那、不意に何かのビジョンが浮かんだような気がした。





――――黒く巨大な影に、金色に輝く縦に裂けた瞳孔が……





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