183話 |デウス・エクス・マキ―ナ《DEM》vsタイムリーパー編 その十五
ったく、ザックリ一月振りのナゾ状況だぜ全く。
そんな文句を言葉にはせず溜息にして吐き捨てながら辺りを見回す。
そこに居るのは――見ようによっては、揃いの装備でチーム分けしてサバゲ―やってるようにも思える謎連中……
オイ、弾倉替えんな。
つい数秒前までバラバラバラとシャワーみたいに鉛玉撒き散らしといて、まだ撃ち足りねえってのかガンジャンキー共。
まあ、ソレを特に防ぎもせず受けてたワケだけど、取り敢えずこの銃刀法万歳なジャパンでパンパンしてるアタマチンパンな方のチームはオシオキだ。
ハイ、干渉ドーン。
ベキバキボキベチャ!?!!!!
なんて、金属が圧し折れたり砕けたりする音に混ざったすっかり聞き慣れた湿った音をBGMにしてエレベーターの方に視線を向けると、そっちのチームの方もやる気満々なのか、油断無く銃を構えたまま沈黙中。
う~ん、コッチから声掛けた方が早そうか?
そもそも、魔界でバリバリに働いてくれてたCHOKKAN先生が久方ぶりに出勤なされたから来ただけなんだよな~。
ホラ、昼間に光咲がぶつかりそうになってたあのコーコーセー居たっしょ?
あん時になんとなーく不穏な気配がしから夜にでも様子見に行こうと思って来たんだけれども……
そのコーコーセーの元へ跳んだら大層驚かれて、その場で尻餅を着いて――そんで、なにコレ?
精々、どっかのビルの一室でアレなカンジにフィーバーしてるのかと思ってたのに。
まさか銃刀法万歳なこの国で、アサルトライフルで武装したマジでリアルな武装集団が見られるとは思わなかったよ。
「で? アンタらなんで銃向けあってんの? 秘密裏に開発してたヤバいウイルスでも取り合ってんの? それとも、富豪の親族でも攫って身代金でも要求するつもり? 或いは、違法な人体実験でもしてたのか?」
転移で来たからココの詳しい場所までは知らねえけど、パッと見がいつぞや運び込まれた特理共の研究所みたいな場所だから適当に言ってみた。
すると心当たりが有ったのか、最後の人体実験のトコでサイレンサー付き拳銃側の連中が反応した。
が、そこへツッコむ前に、床の上で悲鳴上げながら――干渉でミュート済み――転がりまくってる武装集団の奥から……なんだろう?
なんか妙な気配がしたと思ったら、全身に水圧みたいな締め付けが掛かってきた。
「…………? なんだ? オイ、お前がやってんのか?」
ん~? アサルトライフル集団の後ろに居た連中の内の二人、なんかフィクションに居がちな、リアルで居たら御近づきになりたくない高飛車御嬢様っぽい金髪チビのモノクロ双子がオレに向けて両手を突き出して睨んでた。
「つっ――、潰、せっ、ないっ!? 硬、過ぎっ!」
「嘘だろッ!? 強度4の念動力に人体が耐えられる訳がッ!?」
「なん、なのよっ!? 一体、何なのよっ、あれはっ!?」
「知るかッ! なんにせよ味方じゃないなら敵だッ! 早く殺せッ!」
「所長にすぐ知らせろっ! ここを抜かれたら終わりなんだぞっ!?」
他の四人も我に返ったのか好き勝手ほざきながら……なんだ?
魔力は感じられないのに火の玉が飛んできたり電撃が襲ってきたりしたかと思えば、頭痛がしそうな喧しい幻聴が頭の中に響いてきたり。
うん、ワケが分からん。
「ハァ……煩い、伏せ」
ハイ、干渉干渉。
幾ら効かないからって受け続けてやる謂れは無いし、そもそも殺意向けて来てる連中に容赦する気もねーのです。
「……貴方は、一体?」
なんて、真っ黒い炎で丸焼きになってるみたいなビジュアルで床ペロする五人を見下ろしていると、反対側の拳銃集団の奥から現れたのが――
いや、アンタの方が『一体?』だわ!
何故オッサンがメイド服!?
しかもロングスカート!?
百歩譲って趣味とかトランスジェンダーだとしても、こんな銃弾飛び交う現場にそのカッコってフツーに間違ってるだろ!?
マイノリティー関係無く!
「………………アンタの方こそそのカッコで銃撃戦すんのか? お仲間達から着替えろって言われなかったのか?」
空気読んでスルーでも良かったんだけど、まだ夜明けまで時間もあるし街中での狩りは収穫が大幅に減ったしで、つい聞いちまった。
別にこのオッサンの事情なんてどうでも良いんだが。
「あら、これは私の戦闘服よ。現にこうして無傷なのだし、心配は無用よ」
答えんのかい。
つーかゴリ押しじゃねーか。
周りの連中がなんとなく居心地悪そうにしてんだけど?
「……あっそ。まあいいや。それで? アンタら一体全体何やってんだ? そんな凶器なんぞ握り締めて」
アサルトライフルに比べると火力は低いだろうが、拳銃だって立派な凶器だ。
人間なんて引き金一つで簡単に殺せる代物だし。
「私達はこの施設に囚われた超能力者達を助け出しに来たのよ。ついでに此処を取り仕切ってるマッドサイエンティスト達を叩きのめすつもりでもいるけど」
なんとも泰然とした雰囲気でそう言い切ったクラシカルメイド(オッサン)に、それと敵対してそうなアサルトライフル共と超能力者(?)共とへと視線を戻す。
「らしいけど、異論はあるか?」
銃ごと両手を潰したった現代武装連中はそのままミュートとして、単に押さえ付けてやっただけな五人の私服連中の頭部に展開した黒炎を部分的に解除しつつ呼び掛けてみると、
「はぁ!? いきなり襲って来といて何ふざけたこと言ってんのよ!?」
「そうよ!! この裏切り者のオカマ野郎!!」
「何が『助け出す』だ! テメエの所為で俺達がどんな目に遭ったと思う!?」
「我が身可愛さに自分だけ逃げだしておいて今更なんて身勝手な!!」
「昔散々研究所の為に働いてたくせに正義面してんじゃないわよ!!」
うん、予想通りの大ブーイング。
まあ戦争は正義同士の争いだって言うし、戦ってる人間が自分に非があるだなんて認めるワケねえわな。
とは言え、ココで放置してグダグダと口論させるたら話が永遠に進まないし、もう一回干渉することに。
「うるさい。聞かれたコトにだけ答えろや、ったく……ところで、超能力者って何さ? 魔術師とか魔法使いとは違うみてえだが?」
取り敢えずコイツらの事情については一旦棚上げにし、気になってた単語にフォーカスすると、オッサンメイドは『その恰好で何言ってるの?』みたいな顔をしつつも、ザックリ概要を語ってくれた。
おまいう。