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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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181話 DEMvsタイムリーパー編 その十三

 フェーズなんて気取った言い方したが、そう大したことをするわけじゃない。

 マスターが集めた戦闘部隊の後を付いて行くだけ。その道すがら、万一の場合に備えること。

 そして、ある地点に到達すること。


 とは言え、敵側の配置や配備された超能力者達が持つ超能力の種類や強度(ストレング)数値、ブービートラップやら初見殺しやらは、これまでのループ知識である程度は把握している。


 だから、真に警戒すべきは午前一時。

 ()()()()()()()()()()()()転倒と、それを狙い澄ましたかのように発生する襲撃。

 そこを超えなければ、誰一人欠けることの無い完全勝利など夢のまた夢。


 だが、それが起こる原因が全く分からない。

 どのループでも全く違う場所に居たし、同行している人だって変わることもあった。

 なのに、何故か午前一時になると俺はスッ転び、その隙を見計らったかのように研究所側からの襲撃に見舞われる。


 最初は憑依ババアの攻略直後ってタイミングで午前一時を迎えたから、ついさっきまで潜入組の面々と居た憑依ババアの潜伏してた一室で襲撃された。

 ババアの無力化が完了し、陽動組への連絡も済んで、合流の為に潜入組の皆でエレベーター前へ移動しようと部屋を出た直後のことだ。

 殿に居た俺が上階の廃病院と似たような合成樹脂の床の上で躓き、それを受け止めてくれたチャン氏が通路奥に潜伏してたらしい猟犬(ハウンド)共の銃弾を受け、それを見て反射的に振り返った俺も運悪く首筋に銃弾を受けてループする羽目になった。


 そこから飛んだ先はババア無力化直後。

 その場ですぐ潜入組に襲撃を知らせて対処しようとしたんだが、これも一時時点で発生した俺の転倒が文字通り足を引っ張って失敗。

 それも三回続けて、だ。


 それで流石におかしいと気付けて、ループ先を五月四日のマスター達との合流時点へと移し、憑依ババア攻略再チャレンジ。

 一度クリアしてるからか、今回と同じく午前一時より十五分くらい前にはババアの無力化を完了し、件の第二フェーズ――つまりは本拠地である地下階でのローラー作戦が開始された。


 ……されたんだが、こっからが面倒臭さの極致だった。

 連中が造ってた超能力再現機器はマスターの『幻想楼閣ファントム・オブ・ミラージュ』だけじゃなかった、と言えば何が起きたかはある程度予測できるんじゃなかろーか。


 具体的には様々な超能力を発動させる設置型罠の存在。

 中でも、リンさんと同じ瞬間移動能力を起動させる装置。

 これの所為で折角終結した対研究所勢力はいとも容易く分断されることになった。


 幸い、と言えば幸いなのか、装置の効果対象は『一定範囲内に入り込んだ人間(複数人も可)』で転移先も対応する装置が設置されている場所に限られるらしい。

 おかげで転移先が空の上とか壁の中とかにはならなかったし、身体の一部だけを切り取られて重傷を負ったり即死したりはせずに済んだ。


 まあ、跳んだ先は当然のように狩猟部隊が準備万端待ち構えていて、そこで使()()()()()()|ありすちゃん含む高強度(ストレング)の超能力者達に囲まれて絶体絶命に陥ったりもしたが。


 ……その時の周回は最低だった。

 転移直後の混乱を突かれて俺と一緒に転移した潜入組の面々は、全員が手足や腹を撃ち抜かれて重傷を負わされ、抵抗する間も無く捕らわれた。

 そして、唯一無事且つ非戦闘員にしか見えない俺に命令を受けたありすちゃんが能力を使って――俺にまた託してくれた。

 ……スッ転んだ俺を庇った所為で頭を弾けさせながら。


 そこからはまあ、その転移装置を逆に利用する形でマスターの能力で連中を一網打尽にしようとしたり、リンさんが自身の能力をジャミング代わりに発動させることで装置を無力化させたり……

 そこまでやっても、最終的には俺がスッ転んで隙を晒し、猟犬(ハウンド)共の掃射を喰らってマスターかリンさんか、はたまた俺自身が撃たれてループって流れは変わらなかった。


 そうして迎えた前々回のループ。

 何らかの打開策が見つかればと思って戻った五月三日。

 これまでのループで得た情報を纏めつつ、どうにかこの運命の強制力的な『魔の午前一時』を乗り越えようと頭を捻った。


 捻って、それだけで答えが分かる筈も無いと、マスターへの連絡中に何か思い当たる超能力や研究所の研究成果について聞き出してみたりしたが、それでもなにも思い付かなくて……

 それで、ついうっかり魔が差してしまった。

 選りにも選って、先輩にまで連絡してしまった。


 言い訳をするのであれば、体感で一月分以上もの期間を先輩の声すら聞けずに過ごして我慢の限界だったんだ。

 ……その所為で、前々回のループには先輩まで作戦に参加してしまうことになっちまったんだから救いようが無いが。


 兎角、そうなってしまった以上は万全を期す以外に道は無かった。

 万全を期して、ループ知識を総動員して誰一人として欠けることも無く、憑依ババアも転移トラップも撥ね退けて、遂にはあの白ゲス眼鏡が潜んでいるであろう最下層にまで辿り着こうってとこにまで迫った。


 が、ダメだった。

 何処まで上手くいっていても、どれほど身構えていても、午前一時を超えられなかった。

 俺は転び、そこに奇襲が加わり、何もかもが台無しになった。


 だから、前回は――半ば以上に自棄になっていた。先輩を無用な危険に晒した負い目で自暴自棄になった。

 でも、だからこそ、なのか。

 前回のループで遂に白ゲス眼鏡の元にまで迫ることができた。


 転移装置を逆用した()()での特攻。

 逃げられない一方通行の罠に自ら踏み込むなんて言う、単なる自殺行為に過ぎなかった身勝手。

 こんなどうしようもない衝動的行動が何よりも上手く刺さる結果となった。


 俺が単独で発動させたことで、マスター達の戦力を分断する筈だったとっておきの罠はほぼ空打ちとなり、加えてあのゲスの手元には触れるだけで相手の頭の中を覗けるありすちゃんが控えている。


 この状況なら、まず俺を捕らえて情報源にするだろう。

 分断に失敗した敵勢力の把握の為に。

 或いは人質としての価値も見出すのかもしれない。

 だから、あのゲスはありすちゃんに俺の意識を覗かせた。

 それの所為で切り札が獅子身中の虫に化けるとも知らずに。


 結果だけを言えば、俺の転移後も変わらず制圧を続けたマスター達は、午後一時直前には俺の転移先でありゲスのガード兼待ち伏せ要因として集められたらしい狩猟部隊の居る最下層にまで到達。

 そのタイミングでマスターを抑える筈のありすちゃんが離反し形勢が逆転。

 あと一歩の所まで連中を追い詰めた――

 まあ、それでも午前一時は超えられなかったが。


 とは言え、ループ知識を共有できるありすちゃんを最高のタイミングで味方に引き込めるのだから、今回もこれを狙うのが妥当だろう。


 そして、午前一時の超え方についても、一つ試してみたいことがある。


 さて、そんじゃまあ、検証と洒落込もうか。

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