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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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180話 DEMvsタイムリーパー編 その十二

 五月四日午後十時丁度から始める研究所拠点への潜入に於ける作戦目標は、拠点内に居る研究所員の制圧、及び研究所戦力の無力化だ。

 より正確には、或いは本質的には、研究所に囚われた超能力者達の解放と研究所勢力の撃退が目的であり、作戦目標はあくまで『目的達成の為の具体案の一例』に過ぎないわけだが。


 まあ、そんなどうでも良い話は研究所員共をざまーして、ありすちゃん達を助け出してからの雑談にでもすれば良い。


 そんなわけで、研究所拠点である金見市郊外の山奥にある廃病院へとやってきたわけだが……

 うん、一言で言おう。

 クソ面倒い。


 マスターが調べてくれたところによると、この廃病院は元々触法精神障碍者病棟――つまりは罪を犯した精神病患者を隔離、治療する為の精神病院だったらしい。

 その所為で各部屋や各階層の行き来を制限する為の厳重な扉や鉄格子が設置されていて、内部構造そのものも中に居る人間を逃がさないようわざと入り組んだ造りになっている。


 それに加え、研究所が研究所時代のマスターの能力を解析して作り上げた撹乱装置が随所に設置され、拠点の本丸に当たる地下への直通エレベーターまでの道を遮っている。


 ああもう、ホント面倒臭い。

 どんだけ面倒臭いかと言うと、ループ知識を十全に活かして算出した最短ルートでもエレベーターに辿り着くだけで二時間半以上掛かる。

 ふざけんな。


 いや、本家本元の『幻想楼閣ファントム・オブ・ミラージュ』なら抜け道どころか一部の隙も無い無限牢獄になってたらしいから、それを思えばまだ幸いってとこかもしれねえが。


 あ~あ、マスターとリンさんが陽動組じゃなくて潜入組(こっち)に加われれば良かったのに。

 そしたら、撹乱装置なんて一瞬で無力化するか、そもそもエレベーターを使わずに地下まで一直線だったろうに……

 あの陰険憑依ババアめ。

 あいつさえ居なければ二人を陽動(待機)組に回さずに済んだんだが。


「……ったく、流石に周到だな、っと。『七階北東装置停止確認』」


『――――同じく、南西装置停止完了。流石はネルケさんの隠し玉だな』


『南東装置停止OK。ビリッケツは回避っと』


『ああクソ、ラストかよ。北西装置停止達成だ。言っとくがスコアは俺のが上だからな』


『――撹乱現象解除確認、総員エレベーター前に集合』


『『『『了解』』』』


 前半の呟きは置き去りにして、後半の報告をインカム越しに潜入組全員に伝達する。

 するとまあ、実にメリケンスタイルな応答が。

 一応、俺に併せて日本語使ってくれてるけど、実態は多国籍軍だからね。

 仕方無いね。


 とは言え、苦節二時間半。

 予定通りの時間通りと言えばそれまでだが、逆にミス無く進めてるとも言えるか。


「それじゃあ、お願いします」


「ああ、了解した。此処からが本番だな」


「ええ、地下には憑依能力者以外にも研究所側の超能力者が潜んでますから」


 潜入組は俺を含めて六人。

 ゴリゴリのゴリマッチョで上下ミリタリーな戦闘服に、オートマ麻酔拳銃やナイフに加えて俺にも渡された防弾防刃ジャケットで武装してる以外は目髪肌色全てが異なるレイシズムレスなスニーキング軍団だ。

 なんなら、日本人俺だけだし。


 で、その唯一の日本人で最年少な非戦闘員ながら超能力の性能を買われて同行を許された俺のガードには最低二人付けられることになったわけだが、今俺と行動を共にしてるのは潜入組のリーダーで最年長黒人であるオーガスト氏とクール眼鏡なゲルマン系のハンス氏だ。


「憑依能力者……そんな切り札が本当に地下一階に配置されているのか?」


「ええ、間違い無く。奴の能力は射程範囲があるタイプなので、最深部からチクチクって真似はできません。マスター――ネルケさんとリンさんが地上に居る以上、二人から視認されない地下から狙うしか選択肢がありませんから」


「その為の陽動と言う訳だ。まったく、君の()()()()は凄まじいな。それほど詳細な情報が得られるとなれば、罠も奇襲も全て無為にできる」


「いえいえ、便利なだけの能力じゃあないんで」


 マスターの配慮で俺の能力は未来予知ってことで紹介して貰ってるんだが……

 ホント、ただ使うだけで未来で何が起こるのかを知れてそれを回避することも可能、なんて能力だったらどれだけ良かったか。

 ここまでの攻略情報を得る為に俺自身は勿論、この人達だってどれだけ血を流す羽目になったことか……


 まあ、ループを繰り返した先で俺以外の人達が体験するのは完全なる無血勝利なわけだから、大目に見て欲しいところだが。


 そんなこんなで声量控えめな雑談も交えつつエレベーター前へ到着。

 南西担当の韓流系イケメンのチャン氏や南東担当のアジア系ムードメーカーのクオン氏、北西担当の金髪碧眼ステレオタイプなアメリカンのビリー氏も合流し、一行は地下へ。


 因みに、俺以外の潜入組も超能力者ではあるものの、強度(ストレング)1か2程度しかなく、専ら体力勝負専門なんだとか。

 とは言え、侮ることなかれ。

 五人全員が軍隊経験有りの元傭兵集団で、戦闘能力は折り紙付き。


 現に地下一階到着直後のエレベーター前の待ち伏せを一瞬で制圧。

 憑依ババアとそれをガードする強度(ストレング)3の超能力者四人が潜む一室をスタングレネード一発と麻酔銃で無力化。

 うん、強過ぎだわこの人達。


 その後は地下一階のクリアリングを済ませて安全確保。

 うん、手慣れ過ぎなんよ。


『憑依能力者無力化、及び地下一階制圧完了。陽動(Y)チーム合流されたし』


『――――了解。すぐそっちに向かうわ』


 オーガスト氏の通信により、地上で研究所の戦力を引き付け続けていたマスターの余裕たっぷりな返信が。

 ループの途中でマスターの暴れっぷりも見たけど、マスターが本気で能力使うと範囲内の敵が全員うわ言呟いてふらふら彷徨うゾンビみたいになるから、結構な地獄絵図になるんだよなあ。


 なんて、もう三十回は前の記憶を呼び起こしてブルリと背筋を震わせていると、強度(ストレング)2の発電能力者でもあるハンス氏が能力と機械端末を併用してハッキングしたエレベーターでマスターとリンさんが率いる陽動(Y)チームが合流。


 潜入作戦は第二フェーズ――拠点の制圧へと突入した。


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