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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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18話

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 ――さてさて、始まりました人間界珍道中! 本日はワタクシ黒宮辰巳が、雲一つ無い快晴なお空の上からカラスさん方の濁声が止まない血塗れの合戦跡地を御紹介しま~す。はい、拍手拍手! イエーイ☆


 ……ハァ、取り敢えず経緯みたいなものを説明すると、行動開始時に電撃的に閃いてしまった『どーせ、簡単に現代へは戻れないだろうから、いっそココからもっと遠いキューブに踏み込んじゃっても良くね?』という好奇心混じりのおバカな思い付きがそもそもの元凶だった。


 変身して翼を得た事で上方への移動が最もラクになっていた僕は、深く考えようともせずに羽搏き+魔力放出による急速上昇を敢行。

 背中のオバケ扇子を扇いで扇いでグングンと()()()進むたびに()()()色合いが移り変わっていく――なんて言うと、紅葉の綺麗な秋の深山の上でも飛んでるように思えるかもだけど、実際は虹以上に雑多な色達がグニャグニャとデタラメに配列されているから、端的に言って凄まじく無粋だ。


 始めは青の強い鈍めの緑が銀杏のように段々と黄色くなった――と思ったら、突然夕陽みたいに真っ赤に燃え上がり、それに驚いていると今度は黒と見違えそうな紺色に次いで毒々しいほど鮮やかなピンク、それからメタリックな輝きの所為で銀に見える白に変わって……それからそれから――っていい加減にしろ! 目が痛むわ!

でも、そうやって結構な速度で昇ってるわりに、この塔の頂上は未だ見えてこない。


 それでチョットだけムキになり掛けたのだけれども、追加で気持ち多めに練り上げた魔力と思いの外力を込めてしまった翼で虚空を殴り付けた辺りで、はたと我に返った。

 『今優先すべきはキューブの調査なんだから、これから見舞われるかもしれない不測の事態に備えて、なるべく消耗を避けるべきではないか?』と――『今更かよ』って思った人、怒らないから正直に言いなさい。


 そんなワケで、バサリと傘みたいな音を立てながら急停止。

 真正面のキューブ(赤紫)に触れて二度目の人間界侵入を果たしました(まる)


 ――と思ったら、何故か出現場所が高度云十メートルの上空でした。って、ファッ!?


 咄嗟に羽搏こうとして、なんかまた勝手に変身が解けてる事に気付き、速攻で魔力をコネコネからの魔法発動。

 結果、一メートルも落ちない辺りでホバリングに成功し、現在に至りま候。

 ……いやね、あんまりにも杜撰な経緯と酷い結果だと思うだろうし、それには僕も同意するけれど、これでも一応、現時点で分かった事が幾つかあるんですよ?


 例えば、出現地点について。

 前回は森の中で今回は空中だったワケだけど、コレってどうやら前に人間界を出た地点と同じっぽいんだよね。

 ほら、最初は崖から森に落ちた所を()()野郎に拉致られたんだし、縄文時代のキューブから出た時は空で魔力ソナーを試して移動しないまま空間魔法を使ったしね。

 時代が違う所為か周囲の環境がまるっきり違うけど、恐らく位置座標的には全く同じ場所に出てるんじゃないかな。


 それから、世界間を移動すると変身が強制的に解除されるらしいね。

 別に人間の姿のままでも死なないんだろうから大した問題じゃないんだけど、今回みたいに空中に放り出されたりしたら、ヒモ無しネット無しのデンジャラスバンジーを強制されるハメになるから、それだけは気を付けないと。


 あとは、ココが何時代かって事だけど……それは、まあ……下の人達の腰にあるジャパニーズソードKATANAとか、圧し折れたり人に刺さったまま打ち捨てられてるYARIとか、身に付けている本人達同様にドロドロ真っ赤っかなKACCHUとかNOBORIとかが教えてくれてるね、うん。



……え~っと、要するに、アレだ……戦国時代……なんじゃないかな?



 なんて言うかね……いや、別に期待してたワケじゃないんですよ?

 そんな、たかが二度目の挑戦如きで大当たりなんてムシが良過ぎるってもんですよ、HAHAHA!


 でもさあ、もうチョットこう、ねえ……他にもなんかあるでしょ?

 大体、ココ昔は人里だったじゃん。なんで民家消えてんの?

 そんで、何故に戦場なんぞになりにけりや?


 しかも、なんか戦い終わった直後みたいで、斃れてる人達みんな瑞々しい断面とか中身とかがまろび出てるし、それをカラスさん達が奪い合うような勢いで美味しそうに啄んでて余計に生々しいし。

 それに、変身した所為で更に五感が鋭敏になってるのか、激しい戦闘で流れたらしい汗の臭いとか、飛び出た中身から更に飛び出た汚物の臭いとか、流れ過ぎて平野一面を真っ赤にしてる血の()()とかが漂ってくる。

 魔物と人で血の匂いがそう変わらないってのは……まあ、どうでもいい発見か。


「――ハァ……………………………………………………………………取り敢えず、降りるか」


 気を取り直して――と言いつつ、下がったテンションは据え置きのまま、ホバリング用の魔力放出を切り、広げてた翼で空気を掴んで滑空しながら少しずつ降下を開始。

 で、当然、高度が下がるたび、臭いと()()は強くなるワケで……いい加減ウンザリしてきたので、突き出た上顎の先にある鼻を塞いだ。

 こう言うと、指で鼻を摘まんでる姿を想像するかもしれないけれど、変身中の僕は瞼と同じように鼻の孔を開閉できるから、パッと見何も変わってないように思うかもね。まあ、流石に耳の方は無理だけど。


 そんなこんなでグングン地上へ近付いていくと、なんかカラスさん達が『ガァ!?』『ガ、ガァ!!』『ガァア!!』とか言いながら慌てて飛び去っていった……君達といい、クマさんといい、チョイとばかし失礼じゃありやせんかね?

 とは言え、そんな事を言葉の通じない畜生さん達にぶつけた所でしょうもないと、出掛かった文句は呑み込んだけどね。

 そんで、その直後に僕の身体は漸く大地への帰還を果たした――大地って言うより海だけど(ボソッ)。

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