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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
163/186

163話

『――えー、本日集まって頂いたのは――』


 ってなワケで、全校朝礼である。

 ソレも一限目まで丸々使い潰す予定らしい。


 いや、全校って言うか昨日オレちゃんが集めたぴーちーえー共やら役員やらも含めてるから、全員集合ってカンジだけど……

 いや、別に上手くねーな。

 下手くそか。


『――――――――』


 なんか壇上でオッサンが囀ってる。

 無駄な装飾と『え~』とか『あ~』の所為で聞くに堪えないけど、要約すると『清く正しい学校生活を送りましょう』ってコトになる……のか?

 いや、何の話だよ、ワケワカメ。


 う~ん、恐らくは昨日の朝礼の返事を代表して言ってるつもりなんだろうけど、如何せん表現が抽象的だったり婉曲的で分かり難い。

 ……ハァ、しゃーない。


『――、――ッ!??!!!』


「あのさあ、なんか勘違いしてないか?」


 周囲が認識するよりも早くパッと変身体を纏い、そのまま一息に壇上へと跳び上がる。

 あんまり踏み締めると床が抜けかねないので、空中での魔力推進で飛距離を稼いでの着地だ。


 でもって、バサリと広げた翼を畳んで声を遮らないようにしてから、壇上のオッサンと演壇を挟んで向かい合う。

 丁度、表彰状でも受け取るような構図だね。


 まあ今回は、オレちゃん側が貰うんじゃなくてオッサン側がお言葉を頂戴するワケだけれども。


「昨日、オレは確かにアンタらへ話し合いやら意識の擦り合わせやらを勧めはしたが、別にその結果をオレに伝えろとは言ってないぞ。ソレにフツーにしてろとも言ったよな。なのになんだよコレ? ワザワザ授業一つ潰して呼び集めて、するコトが念仏聞かされながらの睡眠我慢大会ってか? そんなに臨死体験したいってんならさせてやるよ」


 言い終えた瞬間、翼と尻尾を一振り。

 硬質な鱗塗れの強引な一振りで千切れ飛んだ両脚が壇上から真っ赤っかを撒き散らしつつアリーナへと落ち、支えを失った身体が達磨落としみたく自由落下で演壇の裏に消える傍らで、翼爪に切断された両腕が着地の衝撃で壇上に落ちて血の海を作った。


 たちまち上がる悲鳴と騒音の煩わしさで湧く魔力を回して物理干渉を発動。

 コレでまた体育館の閉鎖が完了したワケだけど、どうやら二回目ってコトですぐさま逃走ってヤツは居ないみたいだ。

 うん、もしかしたら最初からこの場に居ないのかもしれないし?


 全く、健全に登校してるオレちゃんがこんなどーでもいいオッサンの語りを聞かされて辟易してるってのに、のうのうとズル休みしてる連中が居るとか言語道断だよね。


 ってコトで、演壇に飛び乗って腰掛けながら召喚魔法を準備。

 召喚対象は『昨日集めた連中の中でこの場に居ない者』。ハイ、発動。


 すると、一、二、三、四……ザッと十人か?

 壇上に浮かべた転移門からドサドサと落下音が連続した。


「――ふぎッ!? く、黒宮……」


「ああ――チクショウッ、これでもダメかよクソッ!!」


「ふざけんなよッ!! 俺らがなにしたってんだッ!?」


「クソクソクソッ!! 死んじまえバケモノォッ!!」


 ハハ♪

 魔力(ストレス)ありがとう。

 とは言え、反省が足りてないみたいだな。

 まあきっと恐らく、この態度から鑑みるにコイツら金せびりのABCDで間違い無さそうだし、一発いっとくか。


 ってなワケで、壇上に落ちて血塗れな十人の中から、なんか虎とか龍とか鬼とか骸骨とか桜とかが刺繍されたアレ過ぎるジャージ着て、デッカいバッグ背負って首に学校指定じゃないヘルメット引っ掛けてる四人に向けて翼と尻尾をフリフリ。


 飛び散る手足と鮮血へピーピーヒャーヒャーと情けない悲鳴が追い縋る。

 まあ、無駄話してくれやがったオッサンと、この面倒事を企んだジジババ共へのデモンストレーションとしては十分かな?


 なんて思いつつも、尻尾先端の固い棘状部位と翼爪でABCDと思しき四人組の臓物を掻き回して悲鳴と血糊を盛りながらアリーナへと目を向ける。


 四人組の傷はまだ治さない。

 どうせ生き返すのなんか魔法一発で済むんだから、即死ばっかじゃなくて出血死するまでの痛苦しい時間も味わって貰おうってね☆


「取り敢えず、この無駄な集会を企んだ連中にはオシオキだ。ま、『フツーにしてろ』って言ってやったのにソレを無視して煩わせてくれやがったんだから、当然だな」


 言い終わってから、血振りした翼と尻尾をワザとらしく広げて見せながら、壇上から流れ落ちる鉄錆臭い水溜りを避けて壁際に寄ってる大人共へと視線を向ける。


 まあ、女子さんの言葉を聞くまでも無く、朝礼の開催やら移動指示やらを下せる人間が生徒に居るワケ無いからね。

 今回は除外っと。


 それにまあ、壇上に召喚されて腰を抜かしたまま血溜まりを避けてる連中も、スウェットやらジャージやらのラフな格好してるって時点で昨日のオレちゃんの言葉を忘れて気楽で陰気なヒッキー生活でもしてたみたいだし、一緒に処すとしようか。


 魔法は使わない。

 別に、最終的に治すんだから、無駄に魔法使って消費魔力増やすより手ずから甚振ってやった方が安上がりってね。



 ――御仕置(ロード)中……御仕置(ロード)中……



「――さて、こんなもんかな?」


 一段落して溢した声への返事は、呻き声と啜り泣きと無言の視線だった。


 壇上に残した四人組が動かなくなって少し経った位に終わったオシオキの結果、アリーナは天井以外が床も壁も全部血塗れで、誰も彼もが垂れ流したモノで人間の悪臭全てが充満してる。


「ハハッ」


 その惨状を血に塗れたまま見渡して、不意に嗤いが込み上げてきた。この有様でドコのダレがバケモノ(オレ)を人間だなんて――


「――――あ……?」


 壁際の生徒達――その殆どが嘔吐きながら目を逸らすか、戦々恐々とオレの一挙手一投足を注視する中、眼前の光景に顔を蒼白にしながらもコチラの目を真っ直ぐ見据える女子生徒が一人……


「…………チッ」


 理由の分からない苛立ちを噛み殺しながら、主観干渉を発動。


 アリーナ全体で黒炎が燃え上がり、バラバラの肉片どころか血の一滴、服の切れ端すらも残さずに元に戻り――アリーナ中央に立つオレちゃんの足元に無傷の大人共が、壇上では四人組が、肉体ではなく精神的なダメージで立てずにいた。

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