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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
162/186

162話

 とまあ、こんなトコかな?

 アイハラさんが欲しそうな説明は。


「さて、んじゃ聞きたいコトも聞けたし、そろそろお開きにしようか。チョット用事もできたコトだし」


 取り敢えず一旦は話を締め括ったオレちゃんへの御言葉は、


「待って下さいっ。まだ話は終わってませんっ」


 慌てたような、或いは、何処か縋りつくような声と袖クイによって遮られた。

 え~、まだなんかあんの~?


「そー言われてもな……コレ以上何が聞きたいってんだ? もうコッチは要件ねーんだけど」


「だからっ、何もかも聞かせて下さいって言ってるじゃないですかっ。貴方があんな尋常じゃない手段に出た経緯を全部っ、一から十までっ、説明しなさいっ」


 なんか、顔真っ赤にしてメッチャ捲し立てて来るんだけど、そんな怒らなくても良くない?

 いやまあ、勝手に命脅かされてるような現状に文句言いたくなるのは分かるけどさあ。


 でも良いじゃん、自分の命くらいなら。

 こー言っちゃあ何だけど、自分のコトだけなら諦めるのなんか簡単でしょ?

 諦めたって誰かに責められるワケでもなく、自分一人が不利益を被るだけで済むんだから。


 だがソレが自分以外の――家族の命とか身の安全ってなれば話は別だ。

 そんなモノ、諦めるなんて選択肢が最初からあるワケ無いんだから、()()過敏に反応しちゃっても許されるし責められる謂れも無いと思うんだ。


 大体、説明して何か好転するんで?

 コッチはもう既に実害出てんだけど?

 今更話したトコで――ソレも金なり権力なりを持ってるワケでも無い単なる一学生に過ぎない()()()()相手に一定の理解なんぞ得られたトコで意味ねーんだけど?


「ヤダよ面倒臭い。大体、用事があるって言ってんだろ。ったく……『脅かすな』『フツーにしてろ』『機嫌を損ねんな』って言ってやったってのに、無駄に朝礼なんぞ開いて呼び出して上から目線で意見を聞かせてやろうとか、ヒトの神経逆撫ですんのがお上手過ぎるぜ。そんなにオシオキが欲しいってんなら存分にくれてやる」


 指先で握り締められた袖を振りほどきながら、()()()()から視線を切って適当に距離を取る。

 もう用は無いし、あんまり距離が近いとキンチョー(笑)しちゃうからね☆


 さてさて、ヒトの話を聞かずに未だ自分達に権利とか権威とかがあると勘違いしてる連中へ罰を下してやらないと。

 場所はまた体育館で良いかな。

 呼び出しは昨日集めた中の大人共ってコトで、召喚魔法の設定は完了。

 あとは一応変身してドスを利かせつつ適度に調()()してやれば――


「だっ、からっ、待って下さいってばっ」


 ぐへぇ。

 変身を開始する直前、背後から迫ってきた女子さんに制服の裾を掴まれて、そのまま思いっ切り引っ張られた。

 それはもう、頸が締まるってぐらいの勢いで。

 コレ、ズボンにやられてたら確実にパンツ御開帳になってたんじゃね?


 ま、この程度でどうこうなるほど軟じゃねーですが、不快なのは変わりない。

 サッサと離して貰うとしよう。


 バッと身を翻して女子さんの手を振り払うと、体勢を崩して踏鞴を踏んでる迫ってくる両肩を捕まえてやり、


「……いい加減にしろよ女子さん。あんまり障ってくるってんならコッチも容赦は――」


「いい加減にするのは黒宮君の方ですっ!! なんでそうやって勝手に悪者ぶって何でもかんでも自分一人で解決しようとするんですかっ!! あと相原千沙ですっ!! ちゃんと名前憶えて下さいっ!!」


 Oooh……

 ドスを利かせてやろうとしたら、またまた噛み付かれちゃったんだゼ。

 しかも、今度はコッチの手を振りほどきながら、ね。

 なんかもう、ココまで来ると関心通り越して呆れるぜい。

 アンタ、ホンマに命惜しくないんか?


「ハァ……アイハラさんや、アンタさっきから随分と強気だが、オレが冗談や悪ふざけであんな集会開いたワケじゃねえってのは分かってんだろ? だったらなんでそう噛み付いてくるんだよ? ワケが分からん」


「貴方が何も言わずに一人で全部抱え込もうとしてるからですっ!!  自分を責めないでとお願いしたのにすっかり忘れてっ、どうせ何もかも自分の所為だとでも思っているのでしょうっ!! そんな訳無いでしょうがっ!! 貴方の伯父様が攫われたのは貴方の所為じゃなく攫った連中()()が悪いに決まってますっ!! 貴方だって本当は分かっているんでしょうっ!?」


 ココまで言われっ放しでも何故か疑問と困惑ばっかりが頭の中を占めてるオレちゃんに対し、アイハラさんの方は燃え上がった勢いそのままに更に捲し立ててきやがった。

 なんかもう、ココまで来ると怒る気にもならんのは何故じゃろな?


「……連中はバケモノであるオレに用があったんだ。でも、オレに直接向かったトコで返り討ちに会うのも分かってたから伯父さんを人質に使おうとした。コレで、原因となったオレに責任は無いってのは甘過ぎるんじゃ――」


「嘘ですっ!! 本当にそう思ってるならっ、間抜けにもケダモノの策略に嵌って密室で二人きりになって案の定襲われてる女子を助けたりなんかしませんっ!! その間抜けに『大事な人達の為にも立ち上がれ』なんて諭して発破を掛けたりもしませんっ!! 貴方は『被害者にも責任がある』だなんて無責任な加害者弁護をするような人じゃないでしょうっ!!」


 ああ、ココで『まずヒトですらねーんですけど』とかって混ぜっ返したらさらに収拾がつかなくなるんだろーなー……

 なんて暢気に考えながら、アイハラさんが喰い気味に咆え始めた所為で中途半端に開きっぱなしのお口をチャック。


「貴方は人間ですっ!! バケモノなんかじゃありませんっ!! 助けを求める誰かに手を差し伸べられる人がっ、誰かを大事に想ってその誰かの幸せの為に行動できる人がっ、バケモノである筈無いでしょうがっ!! 大体――」


 取り敢えず、満足するまで吐き出させるか~……

 なんて暢気に構えてたら、いつの間にかチャイムが鳴り響いちゃいまして。

 『――昼休みもココに集合ですっ。いいですねっ!?』とほぼ強制的に予定が決められちゃったのでした~あ、っと。

 まあ、別に飯食ったりしねえから良いけどさ。


 あ、そー言えばオトナ共にペナルティと釘差しすんの忘れた。

 ま、朝礼の時で良いか。


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