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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
160/186

160話

 ってなワケで、我ながらご親切にも先導を買って出て到着したのは昨日の朝ぶりな四方緑フェンスの屋上ちゃんなワケですが……

 この女子さんって、確かゴミクズと人気御ない場所で一対一(サシ)ったら〇されてたんじゃなかったっけ?

 あ、〇され()()()()んだったっけ?

 まあ、そんな細かいコトなんてどっちでも良いけど、ココまで素直に付き従っちゃって警戒心とか無いのかね?

 知らんけど。


「――で、話って何?」


 内心を隠そうとも思わないし上手く隠せるとも思ってないので、開口一番にメンドクセー感も顕わなカンジで切り出したワケだけど、女子さんはソレに怯んだ様子も無く『実は――』と切り返してきた。


 ……なんつーか、この女子さん胆据わり過ぎでは?

 つい昨日全校生徒+αの前で血祭ワッショイ決めたバケモノと一対一(サシ)って以前に、そのほんの数日前には男に襲われてたってのに、この状況で大して心音に乱れが無い――どころか、一言ごとに最初の微妙な緊張感が解けてってる気がする。


 う~ん?

 なんだろう?

 なんか釈然としない。

 別に恐れられたいワケじゃないけど、ソレでも嘗められてる感は否めないし。

 あと、折角手間掛けてやったってのにこうも警戒心が薄いとか、手ぇ出した意味がねーみたいで徒労感が……


 ……まあいいや。

 取り敢えず女子さんが言うには、昨日の集会の後は中々にカオスだったらしい。


 いや、オレちゃんってばお口チャックな干渉を解除して呼吸音が戻った時点で『うっせえな。サッサと次行こ』ってなってたから知らんかったけど、ソレを思ったままに実行した次の瞬間には大パニックの阿鼻叫喚だったらしい。


 まあ、黒炎による物理的直接的な抑圧と変身したオレちゃんって言う精神的な抑圧から一気に放たれれば、そりゃーまー気も緩みはするだろうけど、にしてもソコでオレちゃんが意地悪にも引き返して来たら――なって考えなかったんだろうか?

 幾ら平静じゃなかったにしても、チューガクセー共ならいざ知らず、大人共はマヌケに過ぎるのでは?


 まあ、相応の時間と一応のリーダーシップを以ってナントカって言う理事長が場を収めに掛ったらしいけど、ソコから先の対応でまた問題が発生したらしい。


 順当に考えて『目の前で殺人があったんだから警察を呼ぶべきだ』ってなったらしいんだけど、110番しようとしたトコでナントカ理事長も気付いたらしい。

 この場には殺人の証拠以前に死体すら無いって事実に。

 ついでに言えば、見聞きしたコトや()()したコトを全てありのままに伝えたとて、ソレが信じられるもので無いコトも。


 まあ、本気で警察沙汰にしようとするなら幾らでも誤魔化せるだろうし、集団汚物塗れな惨状の体育館を見れば誰だって何かあったコトは理解できるだろうけどね。


 ただ、ソレをやった場合にオレちゃんの機嫌を損ねるんじゃないかって発想には思い至れたらしい。


 うん、止めて正解だよ。

 ヒト様の家族をクソ特理共に引き渡そうとする警察(役立たず)共が生活空間を土足で踏み躙るとか、想像するだけでイライラの魔力ガンガンになっちゃうからね。


 そんなワケで、取り敢えず着替えと掃除を終えてから、生徒を下校させて大人達だけでの話し合いがあったらしく、ソコで決まったコトが今日の全校朝礼で伝えられる。

 ……って、流れらしい。


「――なので、私も学校側がどういった対応を取るのつもりなのかは分かりません」


 そう締め括った女子さんを尻目に、フェンス越しに見える体育館を眺める。


 ……うん、まだ臭い。

 やっぱ五感の強化って、日常生活じゃ不便以外のなにモノでも無いね。

 常人なら気にせずに居られるモノも見えるし聞こえるし嗅げる所為で、イロイロとストレスがマッハだ。

 全校朝礼ってあそこでやるんだよね?


 ハァ……

 しょーがねえ。

 今朝だけじゃなく今後も使う施設なワケだし、流石に悪臭へのストレスで魔力稼ぎはどーかと思うし。

 ココは必要経費だと思って我慢するか。


 ってなワケで、召喚魔法――だと悪臭の元となる空気中の臭い物質やら()()()()がこの場に転移して来ちゃうから、適当に海へと送られるように設定しましてっと。

 んじゃ発動。


 瞬間、黒炎が体育館――だけじゃなく学校敷地内の該当箇所全てで燃え上がり、悪臭の原因を全部纏めて金見湾沖へと投下。


 うん、コレで大分マシになったね。

 漏らし連中がアッチコッチに移動してたり、そもそも便所掃除が雑だった所為か、結構な場所で燃えまくってたけど、それだけ綺麗になったってコトだし、コレで一安心。


「――わっ!? えっ!? 何っ!?」


 あ、ゴメン。

 そー言や居たね女子さん。

 聞きたいコトは聞けたからもう帰って良いよ。


 とは思っても、流石に口には出さなかったんだけど、何やら女子さんは不満そうなジト目である。

 いや、臭かったから掃除しただけですけど?

 んな目で見られる筋合いはねーですよ?


「驚かさないで下さいっ。何したんですか? いきなり」


「いや、臭かったから掃除しただけだけど? まあ、ホントなら出した連中が責任もって片付けるべきだとは思うが、文句言うより自分でやった方が早くて確実だし、なにより我慢できなかったから。ソレで? 何か文句でも?」


 迫力ゼロな呆れ半分苛立ち半分の表情へジロリと視線を向けると、女子さんは『もうっ』と一声上げてから、


「ありますよ文句なら。今の事も昨日の事も何もかもいきなりで驚いたんですからねっ。ちゃんと説明して下さいっ」


 そう、果敢にも噛み付いて来やがった。

 つい昨日、大勢の前で堂々とバケモノらしい姿を晒した上に人肉引き裂いて見せた()()に向かって。


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