154話
ただまあ、だからと言って他が全部危険度低いってワケじゃあなく――
『さっきから度々見掛けて妙だとは思ってたんだけど、何この魔力オンリーのガス状不定形共? ほっとくとすぐ消えて無くなるから魔物ってワケでもなさそうだけど……もしかしなくてもマジモノの幽霊? ゴーストなの? バスターする前に消えるのって何なん?』
なんて、単に魔界レベルに戦闘力が高い連中――戦闘経験とかセンスとかが全く足りてなかったけど――だってワケじゃあない。
ないケド、なんとなく不気味な連中がチラホラと。
……コレは勘だけど、多分コイツらって地球でフツーに遭遇してたら結構メンド臭かったんじゃなかろーか?
いや知らんけど。
つーか、仕組みからして良く分からん。
なんで魔粒子の無い人間界で魔力が単体で存在できるの?
そんなのがアリなら 魔物みたく、ワザワザ弱点付きの肉体なんて持たねえよ?
魔物が魔物としての形態で存在するのは一応合理的な理由が有るんだが?
う~ん、ん~……
……あ! そうか。
もしかしたら、人間界にも魔粒子が湧いてるスポットがあるのかも?
そんな場所が在れば確かに魔力だけでも存在できそうだけど、ソレって所謂心霊スポットとか地縛霊――はチョット違うか? まあそんなニュアンスのヤツだよね?
何?
もしかして帰ったらソコ全部見て回らないといけないワケ?
メンド臭。
でも、より安全性に考慮するのならチェックすべきだろう。
なんなら、見付けたら完膚なきまでに破壊する必要まであるかもしれない。
なにせ、そんな環境が放置されてたら定期的に発生しかねないからね、この幽霊共。
そもそも転移条件的に悪霊確定だし。
……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
転移の対象が人間サイズを一回り超え出した時のコト。
現れたるは……なんだコレ?
トイレぇ?
なんか、便器が床と壁のタイルに天井と仕切りと扉ごと落ちてきたんだけど?
ワ、ワケが分からねえ。
で、そんなのはまだ序の口だったらしく、ライオンからゾウくらいまでのスケール感の魔物共に紛れてバイクとか自動車とかボートとか小屋とかが降って来てる……
いや、人工物にこそ魔力が宿ってるよーな気がしてたから別に良いんだけどさ、なんか最後おかしいよね?
まあ、見た目のボロ不気味さ的には一番ソレっぽいけども。
うん、ソコと便器に残留してた魔粒子的に、幽霊共について立てた仮説は正しかったみたいだ。
まあ、だからってそのスポットと思しきものそのものが転移の対象に含まれてるのがイミフだけど。
考えられるとすれば、オバケ~が住み着いてる場所自体も悪性の魔力持ち的なカテゴライズがされちゃってるから、その場所自体も転移してきたってコトなのかね?
でもそーすると、下手したら校舎とか廃病院とかトンネルとか自殺の名所とか果ては村一つ丸々とかも転移の対象になるのでは……?
まあ、特理的な連中が拠点にしてそうな場所とかも含まれそうだから別に良いのか?
……いやまあ、まず目の前が既に喧しいから、取り敢えず考察は後回しにしようか。
明らかに水棲動物っぽいカンジの貨物トラック大の魔物共もピチピチウネウネしてたりする所為で、最早何か一つに対象を絞り込もうって意識が霧散するくらい視界が鬱陶しいし。
何より、ココまでやっておいて中途半端に切り上げるのは安保上不安過ぎる。
ってなワケで、物理で何とかできそうなのは骨君の出力で圧し潰し、存在干渉の方が効きそうなのを見かけたら――いや、干渉する前に掻き消えるんだけど。
一応干渉して念入りに後片付け。
なんか呪われそうだし。
そうやって、ビクビクモゾモゾピチピチウネウネしてるだけの無抵抗魔物を処してユーレイの残り香に存在干渉をブッ込み、乗り物類と建物類は――まあ、放置で――ってエレベーター振ってきた!?
……ま、まあこんなカンジを繰り返してると、漸く出現速度に追い付いてきた。
コレでまた一つ一つに対しての出待ちと集積処理での魔力温存ができる。
……のは良いんだけど、なんか月面がスゲくアレだ。
廃墟って言うか、ゴーストタウン感が……
いや、術師の死体は塵も残さず消し飛ばしてるし、ゴーストっぽい連中は勝手に雲散霧消してるし、そもそもタコ足とかウサ耳の原住民とかも居ない無人地帯だけれども。
でも、辺り一面に使い古されたり錆び付いてたりしてる乗り物類とか、おどろおどろしい雰囲気をしてるけど低重力のお陰で落下しても大した被害を受けずにいた建物とか個室の残骸とかが溢れてる様は、なんとも俗っぽい。
人類的にもオレ的にも数回しか踏み込んで無いハズの秘境中の秘境がメッチャ穢されてる感……
いや、オレの所為だけれども。
ともあれ、ラウンド3の開幕だ。
スケールは既に背景レベル。
オンボロのバスとか電車とかはまあ、ホラー出演経験ありそうだから良いとしても、トレーラーは何がどーして魔粒子蔓延るホラー空間になるんだろーか?
そして、ついに一軒家とか二階建てのオンボロアパートとかが降ってき始めちゃってるけど、どうしよう?
まあ、物理干渉と存在干渉でキレーキレーのナイナイにしちゃってあげればいいんだろうけど。
流石にこの規模になると、魔物とか術師とか魔具とかにしてるみたく圧縮破壊だと後が大変そうなので、ココは逆に砂状になるくらいのバラバラ解体物理干渉で行こうか。
そうして、民家類を幾つも黒炎で燃やして砂塵に還してると、更なる天変地異に突入。
なんと、抉られた山肌(急カーブ道路載せ)とか吊り橋、陸橋とかの如何にもアレっぽそうなスポットそのものが登場しだしてきた。
……コレ、マジで村一つとかってのもあり得るんじゃ……?
なんて不安を肯定するかのように、ジャンボジェットとかに続いて無人の団地とかタワマンが出現し――うん、ホントに来ちゃったよ。
山一つ丸々に湖一つ丸々とか。
いやまあ、村は流石に来なかったね。
よくよく考えれば当たり前か。
構成成分である魔力やら魔粒子を含む建築物やら地形やらが個別に転移してきてる以上、魔力の無い部分まで含めて丸ごと転移なんて起こるワケ無いし。
とまあ、流石に大規模に過ぎるので、漸く転移が終わったらしい直後であれだけれども、圧し潰して粉々の砂々になった建物やら地形を元の場所へと戻すとしようか。
流石にこの規模で月面放置はチョット……
ってなワケで、なんか最後の方は駆除って言うより解体作業ってカンジになったけど、脅威となる魔力持ちの排除を達成したオレちゃんは、立つ鳥跡を濁さずで細かく砕いて砂にした元建物と元地形をさっき使った干渉魔法併用の空間魔法――もう長いから召喚魔法とかで良いか――の逆バージョンで送還し、自分が通る用の空間魔法を発動。
いや~、最初はどうなるコトかと心配だったけど、真面な戦闘が一回だけだったのと前半中盤の魔物出現のストレスのお陰で魔力の総計は微増だったし、なにより考え得る脅威はコレで全て排除できたハズだから大いに満足だ。
帰ってまた伯父さんの看病に戻るとしようかね。
そんなワケで、後に大いに後悔するコトになるこの一大プロジェクトは、ただ一人の目撃者も無いまま終結したのでした~あ☆