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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
150/186

150話

 瞬間、周囲に展開されてる転移門を俯瞰してた意識が正面へと集中する。


 ソコに居た――いや、あったのは……

 ナニコレ?

 一言で言えば真っ黒い光沢のある球体だけど……


『うげッ!? 目玉デカッ、キモッ』


 パチリと見開かれたバランスボール大のデカい一つ目と目が合った。

 うへ~、キモ。いや、ホントキモいな。

 まあ、魔界(アッチ)でも競泳プールを一杯にできそうな量の動き回る粘液に幾つもの目玉が浮いててギョロギョロしてるってのも居たから、目玉のバケモノはそれなりに見慣れてるけども。


 にしても、こんな全身弱点みたいなヤツに骨っこが防がれるとか、チョット傷ついちゃうぜ――って、


『逃げんな!! ってか、透視とか邪視とかしそうなヤツがなに露骨に目ェ逸らしてんだ!!』


 なんだろう、『人の感情は口元よりも眉や目元にこそ現れる』とは聞いたコトがあるけれど、ソレにしたってあんなあからさまに『やっべ!? 見ないフリ見ないフリ』なんてマネされちゃあ癪に障るでしょ。

 いやまあ、()()なんて存在そのものが癪だけど。


 とまあ、瞬間的に湧いたイライラで追加生成された魔力を吹かす。

 タダでさえ空中、更には浮力も揚力も働かない真空の世界でも重力に逆らい、あまつさえピョコピョコとヒヨコが羽搏くような速度ではあるものの何らかの推進力を発生させて逃げる黒革目玉……

 ま、それだけノロければ簡単に追い付けるんで、そのまま流された刃を返して斬り上げ一閃。


 今度こそ弾かれないようしっかり魔力強化して振るった斬撃は、黒革張りの一つ目の正中線を正確に捉えて――



――パキンッ!!!!!!



 骨っこ越しに薄氷を踏み付けたかのように軽快な感触が伝わった一瞬後、柔らかな肉へ刃が食い込む感触を感じて両断しちゃう前に寸止め。

 フムフム?

 どうやら一撃目を受け流したのは、この今砕け散った結界的な非物質の防壁だったみたい。

 コレが外からの侵入を防ぐモノなのか中の目玉を閉じ込める為のモノかは知らんけど、御丁寧にこの黒革目玉に合わせて球形に展開されてたみたいで、その所為でルーチンワークで腑抜けた太刀筋を流されたっぽい。


 食い込んだ刃で捕らえた目玉をさっきまでと同じく月面の他のが転がってる地点へ向け骨君を振り抜くようにして投げ捨てる。

 ま、今回は斬り上げだから背負い投げみたいなカンジになったけど。


 さっきまでの自前のフヨフヨ浮遊とは比べ物にならない勢いで吹っ飛び、月面で雑に積まれた()()とか、酸欠の所為なのか月面到着時の衝撃の所為かは知らないけど白目向いて舌ベロだらっとしてるチビ()()を下敷きにした目玉を見送って、さあ次へ。


 ま、こっからは気を抜かず、『勝って兜の緒を締めよ』ってコトで……

 と、気持ちを引き締め直したトコ悪いけど、どうやらこのロスが響いたみたいだ。


『――――!!!!!!』


 なんとなく、『道行く人が怖くて咆えまくる人見知りのチワワ』ってカンジに半狂乱な表情(?)の獣ヅラが、何やら両手を前に掲げて円形の光を展開させてやがる。

 扇状に広げられたフサフサ尻尾の先にもスケールダウンした同じ光が五つ展開されてるのを見るに、どうやら猫又とか九尾とかの複尾の妖怪的なののようだ。

 何故か巫女服着てるし。


 まあ、どうもその反応は転移門から出てきた直後に真正面に居たオレちゃんにビビッての反射行動だったらしい。

 そのお子様サイズの狐獣人が自分の置かれた状況――真空環境下な上に空中に居る――を認識した頃には、展開させようとしてた魔法陣は霧散して、本人は無様に手足をジタバタさせながら落ち始めた。


 う~ん、見るからに真人間ならざる見た目な上に目玉よりも魔力量多そうだけど、その目玉と違って重力に逆らわず素直にパニクってる辺り、そう警戒する必要も無いかな?

 なんなら、このまま放っておいても良さそうなくらいだ。


 一応、落下中の獣頭に骨っこの唐竹割で脳ミソに切れ込みを入れて思考力を奪ってから、次へ向かうけど。()()なんて言う超常生物でも、地球上の生物を模してるヤツは体構造も似通るから、魔臓器を破壊せずとも脳を潰せば再生されるまでは時間が稼げるしね。

 油断なんかしてねえよ?

 ホントだよ?


 さて……

 で、まあ、段々と大きくなってきて、ついには()の素の身長と同じくらいのスケールの連中が出て来るようになりまして。

 こーなると流石に術師と思しき誰か達も現れてくるワケで――


『――――!?』


『――――?!』


『――――!!』


 うん、反応はする。

 驚いてもいる。

 でも、すぐにソレどころではなくなって、苦しみながら落ちていく。


 そう言えば、何かの本か漫画かで『無酸素空気を吸うと逆に血中の酸素が奪われるから、一呼吸で意識を失う』とかって書いてあったような気がするけど、月面には空気自体が殆ど無い。

 だからこそ、一瞬で気を失ったりせずにもがき苦しみながら落ちていく。


 その無力な人間達からは視線を切って、未だに続々と現れる()()()()へと飛び掛かる。


 人間大となると()()の方も大掛かりなモノが現れ始めてて、和洋の甲冑だとか槍に刀、珍しいトコでは大型のライフルとかも在ったりする。

 まあ、小物が出てきてた時に結構な数の弾薬とかハンドガンとかもあったから予想の範疇ではあるけど。


 ただ、『人が扱う』って前提がある所為か、()()の出現率自体は落ちてきてる。


 代わりに増えてきたのは()()共なワケだけど、まあコレも当然って言えば当然の流れかな。


 なにせ、魔臓器って言う明確な弱点を備えてる()()共はソレを守る為にも体格が大きくなる傾向にあるし、魔力には別々の魔力同士がかち合うと互いに打ち消し合うって性質があるから、()()にとって他者の魔力は毒にも等しい。

 その毒を希釈する為にも大きな身体ってのは都合が良い。


 だから――


『――――うわ』


 魔界(アッチ)でも散々見慣れたハズのグロ生命体(巨大昆虫)でありながら、アチラでは終ぞ見掛けずに済んだG――サイズが()と同程度――の出現に、思わず声が出た。


 ま、アッチはアッチで乗用車サイズの三大奇虫(大群)とか電車サイズのムカデとかが普通に居たから、ドッチもドッチだけど。


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