146話
「ハイハイ、静粛に静粛に~……なんて言っても聞かねえわな。命懸けの場面だってのにどーでもいい他人の言葉なんか右から左で当たり前っと。んじゃ、こうしようか」
腹から下が輪切りにされてるとは言え、未だ肺も心臓も残っていれば脳に血が通って意識も残る。
そんな状態の哀れなスウェットAの上半身をアリーナへ放り捨ててから、ワザとらしく掲げたお手々で指パッチン――と同時に干渉魔法発動。
オレに背を向けて我先にと濁流のように出口へ殺到する有象無象共へ向けて、魔力込めパッチンの余剰運動エネルギーで物理干渉を施し、アリーナ中央へと引き戻す。
うん、突然の流血&臓物ボタボタを目の当たりにしてその場でゲロゲロしてたり放心してたりするヤツも居るから、ソイツらとぶつからないようには配慮したけど、コース運の悪いヤツはミラクルシャワーに顔面ダイブしてモザイク塗れになってるよ。
地獄絵図かな?
オレの方は恐竜面だから鼻摘ままずに閉じられるから良いけど、絵面が酷過ぎるゼ……
ま、アリーナだけじゃなく演壇上も似たようなモンか。
輪切りにしたヤツ以外のスウェット共もジタバタしやがるんで、同時発動させた物理干渉で全員分の両足をペシャンコにしたからいろんな体液をブッシャーしてるし。
でも、一応コレでまたお喋りを再開できそうかな。
「今の念力と初手のテレポートで分かってると思うけど、オレちゃんが下す罰からは逃げられないぜい。壁を挟もうが遥か彼方まで逃げようが一発で目の前に引き摺り出せるし、肉やら骨やら臓物やらを潰すコトもできる。そして――」
言いながら、もう一度お手々高々のFinger Snap☆
今度狙うのは刻んだり潰したりしたスウェット共のどーでもいい外傷で、使う干渉は主観干渉でソレには再び魔力込めパッチンの余剰エネルギーを使用。
ついでにスウェット共を押さえ付けてた分の黒炎を解除したので(お口はチャックのまま)、元気溌剌ダネ☆
そのワリには顔面真っ青だけども。
「この通り、ソレを治してやってから、気が済むまで甚振り続けるコトもできる。ま~この辺を前提にしてアンタらには今後の身の振り方ってヤツを考えて欲しいんだ」
アリーナの面々へそう語り掛けながらも、伸ばした尻尾でアリーナに落としたスウェットAを演壇へと釣り上げてから壇上で漸く立ち上がり掛けてたスウェットBに叩き付けてやったり、残るCDにはバサバサ広げた翼でそれぞれを切り刻んでやったりして、また血の海を作る。
飛び散る血飛沫や肉片、骨片、演壇から垂れる血溜まりを避けるように、しかしてココまでの振る舞いで学んだのか決してアリーナから出て行こうとはせず、後退るように距離を置こうとするだけの有象無象共。
うんうん、調教が進んできたようでなによりなんだゼ。
「まず、オレちゃんがアンタらにやってるコトは現行法上では犯罪に成り得ない。当たり前だよな。念力だのテレポートだのなんて超常現象を、オレが意図的に起こしてるコトだって、誰がどうやって証明できる? コレじゃあ脅迫にも強要にもならねえ。で、こーして人肉を八つ裂きにしても一瞬で治せるんだから、例えこの状況を録画してあったとしても、所謂有形力の行使の証明にはならねえ。つまり、傷害や殺人どころか暴行でパクるコトもできねえってワケだ」
語りながら翼バサバサ尻尾ベシンベシンとゴリラドラムでマウンティングを掛けてやると、まードイツもコイツも顔真っ青ってね。
ハハ……あ~イライラする。
「まあ、ニンゲンを紙切れ見てえに千切れるオレを犯罪者認定したトコで、国家権力程度じゃあ抑えられるワケねえんだが、実際にソコまで敵対するつもりはねえよ? ソレはアンタらを生かしておいてるってトコからも分かるだろ? オレちゃんも今のトコロは人間社会から逸脱し切るつもりはねえってな。『脅かすな』ってのはつまり『今の環境を維持しろ』ってコトでもあるワケ。分かる?」
問いつつも返事なんか聞く気は無いので、サッサと間を切り上げていくスタイル。
まあ、息絶えたスウェット共と同じくアリーナのお口チャック黒炎もキープしてるから、返事どころか吐息すらも聞こえねえが。
「生徒はフツーに登校して、教師はフツーに授業して、理事はフツーに学校運営して、PTAは――まあ何でもいいが、要するにオレの日常ってヤツをキープしろってコトだ。別に難しくはねえだろ? アンタらが普段やってるコトをそのままやり続けるだけで良いんだからな。ま、ソレができなきゃこの血溜まりの仲間入りなワケだが。いや治すけど」
ベッチャベッチャと尻尾で血の海を叩いてやりながら、もう一回主観干渉で死と外傷を無かったコトにしてやる。
うん、やっぱゴミ相手の主観干渉は魔力消費が少なくて良いね。
対象が増えるほどに消費が増える物理干渉より、条件に合致すれば対象が一でも千でも一定の消費しかしない主観干渉の方が、場合によっては消費が少なく済むかも。
……まあ、基本的に物理干渉の方が発動時点での消費が少ないからスマートだけど。
「とは言え、コレも永遠にってワケじゃねえ。当然だよな。中学校の在学期間は三年。オレは今年で二年生だから、大体あと二年間はこの学校で生活するんだが、ソレが終わればもうアンタらとはオサラバ、二度と関わるコトも無いってな。ただ、その時にどうするか迷ってんだよね~。安全の為にアンタらをキッチリ殺しておくか、それとも見逃してやるか、な」
傷が無かったコトになって血汚れは消えたけど、アッチコッチから漏らした体液で汚臭いスウェット共を尾先のアンダースローでアリーナへと投げ戻してやり、お綺麗な演台から血溜まりは消えても汚物が残る演壇へと降りる。
勿論、汚物は避けてね。
「つまり、アンタらがやるべきコトは三つ。一つ目はオレの機嫌を損ねないコト。ソイツらみたく集りに来るなんてのは以ての外だが、イジメとか犯罪とか見掛けるだけでも処分してやりたくなるからそのつもりで。二つ目は二年後も息を吸って吐いて出来るようにオレからの信用を勝ち取るコト。コレについては個別に判断するつもりだから頑張れよ。現状全員処分判定だからな。で、三つ目は慌てず騒がずフツーの暮らしをするコト。転校やら転職、お引越しなんかは、個人情報の持ち出しと見做して即処分なんで忘れるなよ。まあ、卒業は見逃してやってもいいが、ソレで逃げられるとは思わねえコトだ」
拒否どころか発言も許さないままにお話を終える。ま、コレで伝えたいことは全部喋ったっしょ。
まあ、なんか忘れてたらまた集めて喋れば良い――いや、イヤだけども。
こんな集会なんて何度も開いてられるか、クソが。
とは言え、この後の準備もあるしそろそろ切り上げようか。
「そんじゃ、オレからは以上。あとはアンタらで擦り合わせておけよ。あ、折角だから不登校のヤツとかもちゃんと登校するようにしとけよ。折角全校生徒呼び出して、イジメ禁止令も出したんだから、イジメ不登校ゼロの保護者ニッコリな学校を実現させろよな。オレちゃんとのお約束だゾ☆」
終始一方的に喋るだけの、そう言うとフツーの全校朝礼とか全校集会と変わらないお喋りに終わりの言葉を残し、空間魔法の発動と干渉魔法の解除。
黒炎のお口チャックが解かれてざわざわし出した有象無象共を尻目に、サクッと作った『オレのみ通過可能』な通行制限を掛けた転移門を潜って学校を後にしたのでした~。