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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
145/186

145話

「あ~、そうだな。分かり易く順を追って話そうか。まず、見ての通りだが、オレはフツーじゃない。だが別に元からこうだったってワケでもない。ついでに言えば――いや、声聞けば分かるヤツは居るのかもしれねえが、その『元』になったのはこの学校の生徒の一人だ」


 言いながら、アリーナ中央で全体を見回す。


 さっきの大声が効いてるのか、それとも演壇の暗闇で真っ黒なオレちゃんを見付けるのに必死なのか、誰もが黙ったままコッチを見上げてる。

 うんうん、まあ聞く体勢としちゃあ合格か。

 ……うん、やっぱコッチ見んな?


「まあ、こんなザマになっちまった経緯は省くが、今朝方にオレへ興味津々の連中がオレの伯父を拉致りやがってな。勿論すぐに助け出したが随分と肝を冷やされたよ。で、その所為でオレちゃんは不安になっちまったワケだ。『身の回りの安全ってヤツは保たれてるのか?』ってさ」


 ワザとらしく肩を竦めて見せたトコで、アリーナの空気は冷め切ったまま。

 まあ、盛り上げたいワケじゃなく、あくまでコッチが話し易くする為のフリだからなんだって良いけど。


 ムムッ?

 何やら脱走者の気配……

 空間魔法使用後から軽~くソナーを放って明るいアリーナを薄黒く染め上げ、不穏な動きがあれば一早く探知できるようにしてたんだけど、スウェット姿が四人ほどソロソロと集団から抜け出して体育館から逃げ出そうとしてるっぽいのを発見。


 幸い、それ以外は引き続きただ黙ってボケーッとコッチを見上げるだけだけど、このまま四人を放置してたら折角のスピーチが台無しになるのは明白。

 うん、仕方が無い。


 では照準――からの発動、っと。物理干渉による出入口の封鎖で脱走を防止。

 窓まで塞ぐと黒炎で明かりが遮られちゃうので、窓からの脱出についてはまあ都度都度妨害する方針で。


 ――良し、成功。

 目配せし合うスウェット四人組がコソコソと駆け寄ってたアリーナの出入口で黒炎が炎上。

 見事逃亡阻止――


「――うわ!? なんだ!??!!」


「クッソ!! 塞がれた!!」


「コレ昨日の――チクショウ、やっぱりか!!」


「ざけんなよ()()()!!!!!!」


 あ~、うるせえな、ったく……ハイハイお口チャックっと。


 唐突に背後から上がった怒鳴り声にアリーナ中の視線が反対方向へと移る中で溜息を吐きつつ、喧しく囀る四人分の喉に空気振動を停止させる物理干渉を発動。


 ついでに発動させた空間魔法でその四人を演壇までご招待。


 雑な転移でドサドサッと演壇に転がった四人は、()()()突発的な転移に見舞われた連中特有の状況把握(隙晒し)時間を挟まずにコッチを見上げてきやがった。

 ……コイツらって、やっぱ――


「――――!!」


「――――!!」


「――――!!」


「――――!!」


 ……なんか言いながら指差してきたり、演壇から転がり落ちようとしてたりするけどまあどうでも良い、全員『伏せ』。


「「「「――――!!」」」」


 物理干渉で演壇上に額を擦らせさせつつアリーナへと視線を向け直す。


「――ハイ、このように人の話も聞かずに出て行こうとする失礼な輩には相応の処置を施しますのであしからず。ついでに、コイツらはオレが不安を覚えた元凶でもある……多分な。別にコイツらの顔は憶えてねえけど、どうもコイツらの方はオレに覚えがあるらしいし。オレの残念脳ミソだって他人の顔を覚えられなくても出来事くらいは憶えてるからな」


 うん、なんと言うか……ざわざわしてるね。

 別に何も起きねえよ?

 アンタらが大人しくしている限りは、な。


「つい昨日の話だ。放課後の教室で四人組の乞食に囲まれて金をせびられた。まあ当然断ったワケだが、ソイツらってば人の家族についてまで言及してくれちゃっててさ~、いやはやコレって中々に恐怖だとは思わないか?」


 呼びかけるように言いつつも、すぐに言葉を続ける。

 意識をコチラに向けさせる為だけに作った間だからね。

 そもそも、有象無象共の言葉だの主義主張だのなんて聞く気はねーのです。


「だってさ、その乞食も含めたこの場に集めた全員は、学校って言う生徒の名前も歳も住所も家族構成も何もかもを控えてる施設に、何の警戒もされずに入れるんだぜ? 個人情報抜き放題の悪用し放題だ! 鈍器でもナイフでも改造銃でも火炎瓶でも良い、家に突入して凶器を振り回して直接害するコトは勿論、情報ネットに垂れ流したり繋がりのある半グレ集団やら犯罪者やらに提供して勝手に悪用してくれるよう仕向けても良い。元々が数で囲って恫喝で金をせびる連中で、しかもヒト様の家族の不幸を嘲笑うような連中でもある。そんでアンタらはソレを放置してへーきなツラしてるイカレ共だ。向けてくる悪意に果ては無く、考えられる最悪の事態なんてのはほんの序の口に過ぎねえと想定しておくべきだろうよ。いや~、怖い怖い」


 長々と喋りながらワザとらしく笑い声を響かせてやると、漏れた感情(怒り)が伝わったのか更にアリーナ中のざわつきが大きくなる。

 うん、うるさい。ちょっと静かにしようか。


 アリーナに集めた全員の喉に物理干渉を施してやり、ざわつきを秒で鎮めてやる。


「ああ、アンタらの意見なんてどうでも良いし聞く気も無い。そんなコトで安全は保障されないし、アンタらが脅威であるコトにも変わりは無い。だからこーして安全を確保するべく動いてるワケだしな」


 凪いだ空気に朗々とお喋りを響かせてやると、さっきまでの『ナニコレ、どゆこと?』みたいなのから一転して不安げな視線を向けてくる。

 ……うん、だからコッチ見んなや。


「ってなワケで、オレから言うコトはシンプルだ。オレとオレの周囲を脅かすな。もし、オレやオレの周りの人達が不利益を被ったり被りそうになったら、テメエらの内の誰かの所為だと決め付けて全員に罰を与える。所謂、連帯責任てヤツだな。まあ、精々互いに監視し合っててくれ。で、気になる罰ってのは――」


 そう宣言し、演壇に押さえ付けたスウェットの内、手近に居た一人の物理干渉を解除し、黒炎から解放された頭に尻尾を巻き付けて持ち上げる。


 首が絞まらないように顎と旋毛に巻き付けた尻尾で、アリーナ中からよく見えるよう高々と掲げて見せて――一閃。


「こんなカンジなんでヨロシク」


 変身体の鉤爪を振り抜くと、ジャパニーズIAI演出宜しく一拍遅れでスウェットと中身に切れ目が入り――



 ――――!!!!!!



 六分割された生ゴミがボタボタと汚らしい音と飛沫を撒き散らすと、当然ながらアリーナは騒然となった。

 いや、物理干渉のおかげで声は一切上がってないから、ざわざわってよりガタガタバタバタってカンジだけど。

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