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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
141/186

141話

「さて、()()()()()()()()()()()()


 干渉魔法による行先の条件検索を交えた転移の発動により、見知らぬ隈オッサンの目の前にコンニチワ――いや、時間的にはオハヨウか。

 うん、我ながらなんともチート(ズル)だぜい。


「――は?」


「ついさっきその特理を全滅させたんだけど、報告ぐらい上がってるっしょ? もしかして聞いてない? まあ、ドッチでも良いけど」


 言いながらサラッと視線を巡らせると、どうも僕はどっかの建物の結構上な階層にある執務室的な部屋へと転移してきたらしい。

 フムフム、目下の隈とソファーの毛布から察するに、何やらこのオッサンってば泊まり込みで働き詰めだったっぽい。


 う~ん、この干渉魔法併用の行き先条件指定の空間魔法の欠点は、当着地点がどんな場所なのかが事前に分からない点だね。

 行き先が壁の中とか深海とかマグマの中とか宇宙とかだったら大変――でもないな。

 今更、悪環境程度で死ねるほど軟じゃないし。


「んじゃ、早速本題と行こうか。何せ今日も学校だ。早く済ませねえと遅刻しちまう」


 ニッコリと笑い掛けながらオッサンが掛けてるデスクに乗って胡坐を掻く。


 ココまでオッサンは呆けっぱなしで、どうやら理解が追い付いてないみたいだ。

 まったく、しょーがねーな~。


 では、尻尾の分だけ変身体を纏いまして、っと。


「――グッ、ベァ!??!!!」


「ん~、聞く態度じゃなかったからチョット強引に行かせてもらったケド、中々良いリアクションするじゃねーの」


 伸ばした尻尾で手早く首を括ってそのまま床に叩き付けてやると、寝不足オッサンの意識もやっと覚醒したのか、漸く怒鳴ったり暴れたりと抵抗し始めた。


 ま、無駄だけども。


「――なッ、何をする!? 放せッ!! キサマッ――ベガッ!??!!」


「おやおや、目は覚めても状況は読めねえってか? オレ、喋る。テメエ、聞く。OK?」


 幼児に言って聞かせるように、分からず屋なオッサンへ()()()()()説明を施す。


 するとまあ、あ~ら不思議。

 無駄口は消えてジタバタも止み、確認の為に首根っこ持ち上げてみると、『グエェ』なんて声と共にさっきまでの病人みてえなツラが鼻血と涙と涎でグシャグシャに……バッチィッ!!


 思わず尻尾を放してしまいながらも、床の上でカタカタと力なく震えながらコッチを見上げてくるオッサンはもうコッチのお喋りを邪魔する気力も無さそうだ。


 ったく、やっと本題だよまったく……


「よしよし、そんじゃ本題。テメエの下に就いてた特――そう言や正式名称なんだったっけ? 特、特……特別? 特殊? まあいいや。とにかく、その組織から一人、元居た部署に戻せって、それだけ伝えたくってさ、こーしてワザワザ来てやった次第なのです。ココまでOK? まあ、ダメならもう用無しだし、()()の上ってんなら責任取って同じ末路辿ってもらうんだけど、そのヘンどうよ?」


 一息に伝えてから返答を待ってると、話を呑み込めたのかコクコクと首を縦に振りまくるオッサン……いや、別に喋っても良いんだけど、今は。


 ま、スムーズに進むからワザワザ文句着ける気も無いけど。


「よろしい。んじゃ任せるが、一応言っとくぞ。異動させるのは『黒宮一』だからな、間違えるなよ。まあ、もう特理は伯父さん一人だけだから間違えようもねえだろうけど。伯父さんは元々特理に入る前はケーサツだったって聞いてるが、その辺の事情はテメエらの方が詳しいだろ? その辺上手くやれよ? 下手したら――ってのも聞きたいか?」


 コクコクブルブルと肯定と否定を見せるオッサンが潰れた鼻と涙目を向けてくるのは中々にグロい。

 反吐が出る。


 なので、その不快感の代償に、尻尾の一振りで左腕を千切り飛ばしてやりました、えっへん。


「――イッッッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!??!!!」


 因みに、オレの素顔とか尻尾とか晒してる時点で『もうコッチの素性は分かってるよね?』的な考えでの伯父さん呼びなのです。

 万一分かって無くても後で調べるだろうから、隠す必要は皆無ってね。


 にしても、尻尾を目で追うどころか取れて吹っ飛んだ腕が壁にブチ当たってビシャッたトコで気付いて断面見て絶叫とか鈍過ぎでは?

 実はワザと受けてたり――は無いか流石に。


 まあ、流石に痛みと叫びでコッチの声聞こえなさそうなので、パッと発動させた干渉魔法で元通りにしてやる。

 ある種の飴と鞭だね。

 効いてれば良いケド。


「ああ、期限は今日中な。今日中に伯父さんの元に連絡が来なかったら、今のを四回とラストに首へ一回で締め括るハメになるからそのつもりで」


 『なんで!?』とか『腕、腕が――』とかってブツクサほざいてたけど、上から降ってきたオレちゃんの言葉にぎこちなく姿勢を正したオッサンがまたもや必死の形相でコクコク首肯してくる。


 うんうん、素直に聞いてくれてなにより。

 そんじゃあ、長居は無用ってコトで帰りますか――いや、もうこのまま登校でも良いか。干渉魔法クリーニングで制服は着た切り雀ちゃんだし、スクバは転移で持って来れるし。


「そんじゃま、お互い二度と会わずに済むようにな」


 尻尾の変身を解除しつつ、空間魔法発動。


 いや~、帰りは干渉魔法無しで行けるのが良いね。


 それに、このオッサンの存在は『()()を消しても、第二第三の()()が~』ってクソムカつく予想が間違いじゃなかったってコトの証明でもあるからね。

 その分の苛立ちで魔力もガッポガッポ、収支はプラスですよ。

 あ~も~、ホント気分悪い……

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