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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
140/186

140話

 反応は劇的だった。

 もういい加減我慢の限界だった()()に任せて変身し()()()()と、()()()()()は『ザ・悲壮☆』ってカンジにガタガタ震えながら錫杖なんて構えるから、シャラシャラシャラシャラと鬱陶しいったらありゃしない。


 まあ、ソレが喧しいからってワザワザ『止めろ』なんて言うつもりも無い。


 だって……血塗れの右手を変身体の膂力×魔力強化で一振りしてやれば――ホレ、この通り。


 オレちゃんを包囲してた特理共は、その手の得物も防備も問わずみ~んなまとめて飛び散った血飛沫と肉片の散弾に貫かれてぶっ倒れちゃいました~っと。


「ハ、口より手を出した方が早いし、なにより確実ってね」


 我ながらなんとも野蛮極まる解決方法だけれども、聞く耳持たない敵対勢力にただ言葉を向けるだけだなんて、それこそスマートならざる無抵抗(敗北)主義ってモンだし、そもそも伯父さん以外の特理構成員には漏れなく死に絶えて貰う予定なんだから無問題(モーマンタイ)なのです。


「さて、そんじゃあ早速トドメと行こうか」


 時間が押してるって言うより、『僕の身内』ってだけで伯父さんを脅かすクソ共が、今この瞬間ものうのうと息をしてるって事実にいい加減我慢ならねえからな――ってなワケで、照準。


 狙うは、『伯父さんを除いた特理の構成員』と、『特理に所属する魔力持ちの家系』に該当する全てのニンゲン。


 使うのは当然主観干渉……

 まあ、特理って括りでしか標的を指定できない以上、物理干渉も存在干渉も使えないからね。


 出力は魔力温存の為に変身体込みの物理火力で。


 そんじゃあ――発動。


 今までの経験の()()か、魔力強化の後押しの無い拳では一振りじゃ足りないって感覚があったのでもう一振り追加。


 するとまあ――いつも通りの干渉成功の感触が。


「ハハ、やっぱチリが幾ら積もろうとゴミはゴミ。魔力強化も無い変身パンチ二発で消える程度の価値ってな。ともあれ、コレで()()()()安心だけど――」


 嗤いながら変身体を解く――そう、『一先ずは』だ。


 だって、どうせアレでしょ?

 『いずれ、第二、第三の〇〇が――』みたいなノリで、特理に代わる組織が出て来るんでしょ?


 別にソレもヤっちゃって良いけどさ~、そうやって国内を掃除したら、今度は外国からエクソシストやらヴァンパイアハンターやらが来日しちゃったりするんでしょ?


 うん、魔力が余ってるってんだったら世界中全部掃除しても良いし、なんだったらもう伯父さん家だけ残してニンゲン全部消し飛ばしてやれば、あらゆる人災の脅威から解放されるし、水と電気の供給は空間魔法と干渉魔法で幾らでも賄えるし、食料や衣類、日用品だって保存専用の異空間でも作れば一世帯分なんて余裕で天寿全うできるさ。


 ……まあ、ソコまで人間社会に絶望してるってワケじゃないから、勿論やらないけれども。


 要はココで特理を始末してもキリが無いんだろ~な~、ってハナシなワケで――あ、『人間社会で思い出したけど、特理のニンゲン全部消えたから伯父さんの職場無くなっちゃったよ。


 う~ん、流石に死ぬような目に在った挙句が無職とか泣きっ面に蜂が過ぎるし、ソレ全部が僕の所為とか申し訳無さ過ぎて死んで詫びるしかなくなっちゃうね。

 どうしよ……


「別に生き返らせてやっても良いけど、今回って前科がある以上は生かしちゃおけないし……なら――あ」


 おう思い付いたぜ解決手段――って言っても、今はまだ魔力に余裕も無いし、まずは伯父さんを異空間から出さないとか。


 ってなワケで、空間魔法を発動してこの地下から即転移(帰宅)

 いやはや、ホント空間魔法便利便利~☆


 ……便利だけれども、


「伯父さんッ!? あ、いや、気を失ってるだけ(大丈夫)か。そりゃあ、リンチされた挙句爆弾まで仕込まれてちゃあ疲れもするわな。多分、徹夜だろうし」


 異空間から父さん母さんのベッドへと移動させた伯父さんから聞こえてくる規則正しい寝息に胸を撫で下ろしながら、父さんと母さんの寝室を後にする。


 時刻は午前六時十分。

 うん、あの地下牢で魔力カラにしてきたってのにたったの十分も経ってなかったとか、ホントファンタジー(魔法)だよね。

 ありえね~。


「まあ、学校にも間に合うし、別に文句はね~けどもさ……」


 まあ、うん。

 幾ら大丈夫そうだとは言っても所詮は素人考えだから、一応看病的なカンジで付き添ってたいけどね。


 でも、自分の所為で僕が学校休んだなんて知れば伯父さんも気にしちゃうだろうし、|魔力回復にはもってこいの《ストレスフルな》場所な上に、なんなら空間魔法でモニタリングでもしてれば良いワケだから学校に行ってても別に問題は無いハズ。


 それに、今日中に伯父さん無職問題は解決しないとだから、魔力残量的に『行かない』なんて選択肢は無いんだけどさ……


「……………………行きたくね~」


 なんつ~か、もう疲れた。精神的に。


 事故に遭って父さんと母さんを失って、魔界に堕ちて兄さんを()()に殺されて、僕自身も殺され掛けて殺し返して、殺され掛けて殺し返して殺され掛けて殺し返して殺され掛けて殺し返して殺して殺して殺して殺し返して殺し返して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し返して殺し返して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して……


 とうとう()()に手が届いて、手に入れた空間魔法で()()()へ帰って来たんだよ、やっとの思いでさ。


 そしたら、キューブブロックで自分がもう後戻りできないモノに成り果ててるんだって、他でもない父さんと母さんと兄さんに教えられてさ。


 父さんと母さんと兄さんが命を懸けたってのにその結果がこんな間違いなのかって、受け入れられなくて、否定したくて――だから、今まで頑張ってきたってのにさ。


 結局できたことと言えばクズ同士の足の引っ張り合いで、その所為で伯父さんは死に掛けて――ああ、だから


「――心底ムカつくってんだクソ共がッ」


 一瞬浮かんできてた疲労感が、噴出した怒気に呑まれて消し飛ぶ。

 魔力が漲ってくる。


 ああ、本当に腹立たしい。

 下らん諦観(弱音)なんかでクズ共の存在を許しちまうトコだった。


 確かに、他人の人生にマイナスしか与えられないオレが連中を狩ったトコロで醜い足の引っ張り合いだろうさ。


 だが、それでクズにマイナス被せられるヤツが減るんだから、結果的にはプラスに働いてるとも言える。

 要はマイナス同士の掛け算だ。


 だから――今からするコトもきっとプラスになる。


 そう決め付けて、今の煩悶で自家精製した魔力を惜しみなく使い、干渉魔法複合の空間転移を発動した。

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