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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
139/186

139話

 ま、返答は銃弾だったけど。


 ダダダンッと、フルオートで吐き出された三発の鉛玉がまた同じ方の太腿を襲った。

 傷口を更に抉られるワケだけど、この程度の痛みなんて慣れ過ぎて今更欠伸すら出やしない。

 黙らせたいなら喉か口でも撃てばいいのに、コイツ頭の中空っぽなのかね?


「どうした? 返事は言葉じゃなくて暴力でってのがテメエらの流儀だってのか? それで同じ人類を名乗るとか、随分と烏滸がましいもんだな」


 ダダダンッッッ!!!!!!


「粋がるな。このまま千切れるまで打ち続けてやってもいいんだぞ」


「ならさっさとやれよ。高々手足が千切れる程度でオレを黙らせられると思ってんなら、テメエのそのおめでたい頭にも鉛玉ブチ込むと良い。でもって答えろクソ共。テメエら――」


 ダダダダダンッッッ!!!!!! ブッチンッ!!


「ああ、テメエじゃねえぞクソ野郎。ソッチの坊主共の方だ。テメエらってさ、家族ぐるみで特理に所属してんの?」


 千切れた脚は無視して指差すと、今度はその手に銃口が向けられた。ああ、ヤダヤダ。

 まったくもって邪魔くせえ。


「――――」


「なあオイ、答えろよ生臭坊――」


「黙れガキ」


 踏み付けられていた頭への圧力が増す。字面通り頭上に立ってる偉そうなオッサンが益々力を込めてきたらしい。


「いいか、よく聞けよクソガキ。貴様は既に人間ではない。故に貴様には人間であれば赤子でも持つ全ての権利が無い。貴様は我々特理の所有物になったのだ。我々の許しが無ければ、質問どころか口を動かす権利すら無いんだ。分かったら大人しく黙っていろよ、バケモ――」


「へえ~、そーかそーか。オレちゃんってば人間じゃねーのか~。うんうんなるほどなるほどな~……なら――」



「――他人の権利を尊重してやる義務もねえってワケだな」



 言いながら、サッサと身体を起こす。

 え、脚? んなモン、魔力が戻ったから一瞬で治せたよ。

 ついでに、魔力が足りて発動させれた干渉魔法で制服のズボンも修復済み、ってね。


 当然、オッサンのくっせえ足が邪魔なワケだけど、消耗してた体力はグツグツ湧き上がってくれていた魔力で補填済みだから、跳ね退けるのなんか造作も無い。

 それこそ、魔力強化無しの素の肉体性能だけでも余裕余裕。


 伊達に体力測定全種目で超級の成績を叩き出しちゃあいねえのです。元々の性能でもある程度上の方には食い込んでたし、それがバケモノになって強化されれば、当たり前の結果ではあるけど。


「――なッ!? グッ、キサマッ!?」


 まあ、勿論?

 同じ年齢の時の兄さんの記録には遠く及ばないし、なんなら部活でエース張ってる連中の得意種目には負けてたし……って、今は――いや、これからも良いか()()()()


 現状に於いて意味があるのは、単純な肉体性能だけでも目の前の連中程度じゃ阻めやしねえって()()だ。


 起き上がりながら、体勢を崩してるクソ野郎の首根っこを捕らえて他の連中の銃口を遮る。

 まあ、同じ職員なハズの伯父さんにあんな仕打ちをするような連中に効くとは思えないけど、少し喋る余裕ぐらいはできるでしょ。


 とは言え、クソ野郎だけに薄汚いオッサンだから、ホントは触りたくも無くて指先で摘まむ感じになっちゃってるから、連中の引き金より先にコッチのグリップの方がすぐに外れちゃうかもだけど。


「ハァ~……やっぱいいや、答えなくて。お前らみたいな連中から何聞き出したってどれがホントか嘘かなんて分からねえんだし、聞くだけ無駄だったわ。うんうん」


 なんか、コッチはペラペラしゃべってるだけなのに、思った以上に邪魔が入らないの笑える。

 今更仲間意識? 順法精神? 人道主義?

 ハッ、この無能な棒立ちも適当に言葉を飾れば多少は映えるってか?


 あと、クソ野郎の方もアリが噛み付く程度の足掻きしかできてないのもウケる。


「ただ、折角聞いたんだし、質問の意図くらいは教えとこうか。まず前提として、テメエら特理はついさっきのふざけた所業を以って全滅が決定したワケだが、いざ実行しようって思ったらふと『ドコからドコまでが特理の()()に該当するのか?』って疑問が頭過っちゃってね」


 持ち上げてプラプラとクソ野郎を振って見せると、何かを察してくれちゃったのか他の連中がジリジリと後退しやがった。


 うんうん、狭い部屋だってのにオッサン三分の二ダースとかむさ苦しいってね。


「オレはこれから伯父さんが望む通り伯父さんの元で生活する予定だから、なるべくなら無関係な人間にまで手を出して大事になる事態は避けたいけど、かと言って全滅が叶わなければテメエらに今後の生活を脅かされ続けるハメになる……そこでさっきの質問ってワケだ」


 あと今気付いたけど、なんか腕に縄の形をした光るタトゥーみたいなのが浮き出てる。

 しかもその輝きから何やら坊さん共から漂ってるのと同じ()()な魔力っぽい感触が。


 うん、気分が悪い。

 消え失せや~がれ☆


「特理に所属はしていても魔力を持たない人は本人以外特理のとの字も知らないってのは伯父さんを見れば分かる。だから、魔力を持たない構成員は本人にだけ消えて貰えば良い。問題はテメエら魔力持ちの連中だ」


 今までは回復までの時間稼ぎ兼油断を誘うべく、体外に溢れる分を完全なゼロにまで抑えてた魔力の堰を開放する。

 たったそれだけで、波に浚われる砂文字みたく縄模様が消えていく。


 うんうん、やっぱり()()()()が使う程度の魔法なら単純な魔力放出だけでどうとでもできるね。

 ま、逆に言えば、体表に纏う魔力をゼロにすると()()()()の魔法程度も防げないってコトでもあるから気を付けよ。


 いや~、元は魔力探知に長けた()()相手にやったスニーキングテクだけど、まさか()()()()()()()相手に使うコトになるとはね。

 精々、抜き放った『骨』を安全に仕舞う時くらいでしか使わないと思ってたけど。

 ……って、どったの坊さん共?

 そんなUMEZUチックな顔して。


「聞いたトコによると、魔力を使える人間てのは生まれ付き適性があるヤツらしいな。先天性ってコトは血の繋がった家族にも魔力持ちが居る可能性が高い。で、ソコに『魔力が特理によって秘匿されてる』って前提を加えると、一家庭どころか血族全員で特理に関係してるって可能性が出るワケだ……ココまで言えばオレがやろうとしてるコト、分かってくれるよな?」

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