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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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119話

「――ああ、うん。やっぱり変わらず、か……お姉さん方、もう一回聞くけどコイツらに絡まれたのっていつだっけ?」


 晴れた黒炎の中から相変わらずなゴミ共が確認できちゃったので、首だけで振り返りながらお姉さん達へ向けて最初の事件があった日付を確認する。


 いやまあ、必要なコトではあるんだけど、客観的に見ればついさっき聞いたばかりの質問を繰り返してるってワケで……

 うん、我ながらなかなかにアレだ。

 ボケたかな?


 な~んてつまんねえ自虐は置いといて……


「さ……、三月の……()()()、です……しゅ、修了式の、翌日に……」


 またもやいの一番に答えてくれたのは、例の気弱そうなお姉さんだった。

 と言うか、たまたま目が合ったのがこのお姉さんだったってだけなんだけれども。


 ってか、やっぱり日付変わってるし。

 こりゃまた予想的中か、鬱陶しい。

 いい加減、一発で成功してくれてもいいのよ?


「ああ、それ以上は続けなくていいよ、ありがとさん。んじゃ、本命いっとこうか」


 首を戻しながら礼を言って、改めてゴミ共を見下ろす。


 そのゴミ共は相変わらず妙に小綺麗で意識が有るんだか無いんだか分からない始末――そりゃ、過去が変わっても『オレがコイツらを壊して直した』って過程は変わってないんだろうから当たり前か――だけど、まあこれまでやってきたであろうコトを考えれば、コレでも罰としては水素原子並みに軽い扱いだろうけどね。

 なにせ、()()()()()無傷なワケだし。


 そもそも、今回は過去改変の実験の為にお姉さん達の事件を始点にするつもりだけど、ホントならコイツが最初に悪行に及んだ時点から()()したいくらいなんだけども。


 だって、ねえ。

 コイツらにとって今回のお姉さん達が初めての標的だとは思えないし、そも三月二五日――じゃなかった、三月二六日から今まで繰り返して来たんなら初めてもクソも無いしね。


 いやホント、コイツらに限らずゴミ共ってば魔力(コスト)パフォーマンスだけは最高だよな。

 なにせ、今この場でのクソ振る舞いだけじゃなく、それ以前のカスっぷりを想像させてくれるおかげで、もう見付けるだけでも魔力ドバドバよドバドバ。

 |父さんと母さんと兄さんの呼び戻し《悲願》達成に必要だと思われな魔力量としては微々たるだけど、ただ生きて思うさま()()共やらゴミ共やらを踏みにじり倒すだけなら一生――いや、魔力が続く限りいつまでも生きられそうだし半永久的にやってられるくらいの魔力収入だよ。

 アッハハ、ゴチで~す!

 ……クソ共が。


 とは言え、そろそろこの実験を終わらせて次に行きたいんで――照準。


 狙いは『三月二五日――じゃなくて二六日にあったって言う最初の事件』の開始時点のコイツらの肉体――より正確には『全身の関節――以下略』だね。


 でもって、干渉に使う出力は魔力のみで――ズドン。


 さて今回は――


「――お!? おお!!」


 思わず、声が出た。


 だけど、今回のはさっきみたく落胆と疑問の単音じゃなく、歓喜と自画自賛の感嘆だ。


 なにせ、黒炎が晴れた後にはゴミ共の姿は影も形も無く、さっきまでガンガン聞こえてきてたお姉さん達の息遣いや拍動、衣擦れやらが消失してたんで振り返ればソコもまた無人。

 ついでに、ゴミ共の身分証を持ってたハズの手は空っぽで床に直置きだった荷物も全部消滅。


 いやはや、コレは確実に成功でしょ!

 今の過去への干渉で結果が変わってないんだったら、今も変わらずお姉さん達がソコに居てゴミ共は積み上がってるハズだし。


 恐らくは、ゴミ共があの気弱お姉さんと接触した直後、全員揃って全身の関節が砕けた上に脊髄神経の寸断で半身不随。

 脳の言語野は『機能しない状態が正常』ってふーに改変されてる上に、声帯が削り取られてるからお喋りは不可能で眼球と鼓膜は破裂済み……

 うん、んな状態で逃げる気弱お姉さんを追えるワケがあるまいよ。

 ってコトで、最初の犠牲者である気弱お姉さんが無事に済んだおかげで、連座で襲われるハズだった他のお姉さんにも被害は出ず――今日この日この場所は無人なのでした~、ってカンジかな。


 まあ、オレの主観としては『さっきまで居たハズのお姉さん達もゴミ共も消えて、あとに残ったのは胸中に蟠るゴミ共へのイライラだけ』って状態だから、お姉さん達がホントに襲われずに済んでるのかは分からないけどね。


 もしかしたら、『三月二六日から続く事件』は起きなかったとしても、他のゴミに絡まれて~って展開は十分にあり得る。

 なにせ、この街にはまだまだゴミ共が溢れてるワケだし。


 でも、コレでちゃんとお姉さん達の無事が確認できれば僥倖だ。

 なにせ、ソレはイコール『過去を望む形に変えるコトができる』ってコトの証拠になるワケだからね。

 ……あ、そう言えばお姉さん達の連絡先どころか名前も学校も聞いてねーや。

 うっかりうっかり。


 ま、オレちゃんってば硬派だから、出会ったばかりな上にゴミ共から酷い目に遭わされて弱ってるれでぃーに付け入るような真似はしねーのですハイ。

 決して、助けたのに怯えられてたのが効いてるってワケじゃねーんだぜ☆


 ま、その内街でバッタリ遭遇する機会でも待つかね――とにもかくにも、()()がすべきは一つ――ゴミ掃除の継続だ。

 まだ見ぬ被害者さん達の為にも、理不尽なる大間違いによって深い眠りについてる父さんと母さんと兄さんの為にも、ね。


 ただ、今回の実験結果に関連した問題がある。


 ソレはズバリ、『今後見付けた標的を単純な()()だけして病院へポイするか、それとも過去改変でゴミ共を過去に行った悪事ごとポイするか』の二択についてだね。


 迷うポイントとしては、手間と魔力消費に加えて干渉魔法発動の難易度もあるかな。

 手間とか消費が掛からなくて難易度も低いのが前者で、逆が後者ね。


 まず、手間はについては掛かれば掛かるだけ時間が取られるワケだから、単純に一日に狩れるゴミ共の総数が減っちゃうのが問題だね。

 父さんと母さんと兄さんを呼び戻すにはより多くの魔力が必要なんだから、その分だけ獲物も必要なのです。


 同じ理由で魔力消費も極力減らしたいのが本音だね。

 フツーに処理で使ってる関節と声帯と脊髄神経と眼球に鼓膜への物理干渉と脳の言語野への主観干渉の両方を同時併用するだけでもそれなりの魔力消費なのに、ソレを過去に遡ってとなるとまた更に消費量が増えちゃうからね。


 で、その過去へと遡って干渉を及ぼすための主観干渉を含めた三回分の干渉魔法の同時発動は、今のオレには結構な難易度なのでありまして。

 ……正直、三回連続で成功してたのはワリと自画自賛モノだし、父さんと母さんと兄さんへ使う時までにはもっと習熟しておきたいのでせう。


 つまり、『手間と魔力が掛かるのは痛いけど、父さんと母さんと兄さんの為にはもっと練習しときたい』ってカンジで迷ってるワケ。


 まあ、そうは言っても迷ってんのは心情だけで、実際的にはどうするかは決まってるんだけどね。


 だってそうでしょ?

 過去改変をするのは良いけど、その成功を確かめるには被害者の存在が必要不可欠なワケで、となるとゴミ共と被害者さんがご一緒してる状態じゃないと意味が無い。

 ホラ、どうするかなんて決まり切ってるでしょ。

 つまりは、『基本は前者で、ゴミ共と被害者さんが同席してる時だけ後者』ってね。


「さ~てっと、そうと決まれば次探しますかっと」


 決定を声に出して意気揚々と転移を発動。

 現在地から上空三〇〇メートルほどの場所へと上階や屋上を無視して瞬間移動してから、蝙蝠や翼竜染みた皮膜の翼をバサリと開放。


 今宵も、魔力に飢えた悪魔シルエットなドラゴニュートが金見の夜を縦横無尽に飛び回るのでした~☆

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