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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
101/186

101話

 口だけでなく心の中でも溜め息を吐きつつ、その吐息でエコロを、抑えていた魔力を一気に放射してソナーを効かせ、さっきまで逆探を避ける為に避けてた探知能力を解放する。


 うん、この倉庫内に僕と眼前の二人を除く第四、第五の人物が隠れ潜んでるってセンは無さそうだし、壁越しにこの用具倉庫を見張ってるようなヤツも居なさそうだ……ん? アレ?


 いやホント、なにコレ?

 どーゆーコト?

 ()()や特理が手ぐすね引いて待ってるんじゃないの?

 コイツらが意識誘導の為に布石されたミスディレクションの囮だとしたら、周囲に全くさっぱりこれっぽっちも魔力の『ま』の字も感じないとか有り得なくね?



 ああ、頭が――



 と、ソコまで疑問が浮かんだところで、ふと気付いた。

 いや、気付いたって言うより、閃いたって言う方が正しいかな。


 もしかして、さっきっから頭に響いてくるこの()()()()()()()は、何処からか発信されているんじゃなく、()()一方的に受信してるだけなんじゃないのか、と。



 ああ、頭が痛い……そうか――



 つまりは、テレパシーではなく読心術、それも僕自身が自分でも気付かない内に発動させていた能力ないしは魔法なんじゃないのかと思う。


 ま、確証は無いけどね。

 なにせ、今回が初体験なワケだし。

 そもそも、なんで今このタイミングで発動したのかって時点から謎だ。


 もし、悲鳴とか苦痛とかが対象だったり引き金だったりするなら、今までボコッてきた()()や特理連中相手に発動しなかったのは不自然だし、魔力の無い人間相手にしか発動しないのだとしても、人間界(コッチ)に帰ってきてから数日経ってて、その間も何人とも接触してきて一切発動してないんじゃあ、結局は辻褄が合わない。


 う~ん、一体どーゆーコトなのでしょうかねえ?



 そうか、そうだったな。あの白い部屋で目覚めてすぐに気付いていたコトじゃないか――



 まあ、今はそんな新能力、新魔法発現理由の解明作業なんて脇に除けとこうか。


 重要なのは、今もキンキン鳴り止まないこの耳障りな悲鳴を黙らせる方法について、だ。


 僕の予想通り、この声がホントに『僕が無意識的に聞き取っちゃっている誰かの心の声』だとするなら、止める方法は二つ。


 即ち、魔法()()強制解除(塞ぐ)か、相手を黙らせるかのどちらか。


 とは言え、なんで発動したかも分からない魔法を止めるなんて、干渉魔法でも使って無理矢理――ってぐらいしか止めようが無いし、そんな対症療法で逐一干渉魔法を繰り返し使い続けるとか魔力が勿体無いので却下。


 となると、実質一択なワケだけど……まあ、楽勝だよね。


 なにせ、その悲鳴を上げてると思しき女子からは魔力なんて一切感じない上に、ソレに覆い被さってるケツマルダシがご丁寧に押さえ付けてくれてるから、ちょっと()()()()でもすればすぐに()()()()()()


 つまりは、女子(原因)の排除、けたたましく鳴り響く悲鳴(雑音)の強制停止。

 この魔法が『考えてるコトが丸聞こえになる魔法』ってんなら、考えられなくしてやれば声も聞こえなくなるってすんぽーだね☆


 ま、『確実だから~』なんて理由でお眠り頂くなんて、見ず知らずの女子さんには悪いけど……言っても所詮は見ず知らずの他人だからね。

 躊躇う理由なんて無いのです。


 ……なんて、イロイロと酷過ぎる言い草は勿論本気じゃあなくて、そうするのが一番手軽で手早くて手堅くこの声の正体を明らかにできるから、ってのがソレをする一番の理由だね。


 確かに『コレって僕の魔法じゃね?』って説が一番有力ではあるけれど、ソレはあくまでも『()()()()()そう考えるのが一番矛盾しない』ってだけで、確定したワケじゃあないからね。

 間違ってる可能性だって十分あり得る。


 となると、この声の原因が目の前の光景とは無関係だったりする可能性もあるワケで、だからこそ真偽を確かめるべく何かしらの行動をとるべきと思うのでせう、ハイ。


 幸い、この声の主だと思しき女子は赤の他人さんで、僕にとってどうでも良い存在だから、あの特理連中にしたように簡単に蘇生させられるだろうし、万一蘇生できなかったとしても周囲に人影は無しで目撃者に成り得るのは丸出しマンただ一人。

 消すにしても黙ってて貰うにしても都合の良い状況ってね。

 魔法も一、二発使うだけで済むし。


 んじゃ行こうか――と、こんなにツラツラ考えてたのに、目の前の光景は時間停止でもしてたかのように突入開始時点から微動だにしてない。


 うん、ココまで主観時間と客観時間のズレができてくると、なんだか寒気がしてくるね。

 今のトコ、何も問題は無いから良いけど。


 なんて、やっぱりプカプカ浮かんでくるどうでも良い思考を脇に押し退けながら、ズンズンと足を進めて半裸女子の頭蓋骨をフミフミパキリできちゃうような位置へと踏み込み、そうしてフリーキックにでも挑むように足を大きく振り被って――



 宿す悪意に、()()もヒトも違いは無い()()()()ッ!!



「お、おまっ、二年の――がベルぼプべェ!?!!!!」


 長い黒髪が一つに結ばれた頭部ではなく、()()()()()()()()()()()()()思いっ切り蹴り飛ばした!!

 た~まや~!!!!!!

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