心
書いた人はなにを考えているのだ、と思ってしまうような自己満足の完成形態です。
解釈は人それぞれです。
僕は外の世界を知らない。知りたくない。だから外に出ない。意図的だ。そんな僕には誰も近寄らない。だけど何故か一日一冊、僕の元に本が届く。
はじめは読まなかったんだ。字は読めるよ。でも外の世界を知らない僕は楽しさを知らない。即ち退屈を知らない。本の面白さも知らない。そんな奴が唐突に投げこまれた紙束に触れるだろうか?
ただ、あの日の僕には出来心っていうものが存在したのかな。無機質な紙束を拾ってみたよ。
それは僕の過ちだった。
初めて読んだ本は、とても薄くて、大きかった。色つきの絵が入っていて、字も大きかった。大きな大きなパンケーキを作るお話だった。
僕は「ともだち」という言葉を得た。
次に読んだ本は少し漢字が多くて、字も小さかった。男の子と女の子の何気ない日常のお話だった。
僕は「すき」という言葉を得た。
また別の日に読んだ本はとても難しかった。人が人を裏切って殺してしまうお話だった。
僕は「すれちがい」という言葉を得た。
ある日は未熟な文で書かれた本を読んだ。独りぼっちになっていくお話だった。
僕は何も得なかった。
こうして本を読んでいくうちに、たくさんの言葉を得た。得ただけで、何も理解できなかった。
気が付いたら僕の体は腐っていた。息をするのが難しかった。
僕は「苦しい」を理解した。
気が付いたら動けなくなっていた。もうすぐ自分が未知の世界へ行くことをなんとなく理解した。自然と涙がこぼれた。
僕は「悲しい」を理解した。
何故「苦しい」のか、何故「悲しい」のか、僕には理解できなかった。
この感情が何故わいてきたのか、その理由を知りたくなった。でも僕はもうすぐ未知の世界に進んでしまう。だからとりあえず床に言葉を刻んでおいた。誰にも届かないことを知りながら。
暗闇に落ちる寸前に、僕は僕が刻んだ字をなぞってみた。その言葉は僕にしては奇麗な言葉だと思う。
「生まれ変わったら僕になりたい。」
いつか、この物語を書いた時の細かい設定を載せようかなと思ったり、思わなかったり。
聞いてくれたら答えるかもしれません。