003.屈家家主――《屈 望》
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その声は今度こそ――新たな美少女が登場するなんてことはなく、家主である叔母さんのものだった。少女ではないと言えど、その叔母さんも四十を過ぎているとは思えないほどに若々しかった――生憎母さんの妹に何かを抱くほどの僕ではないが。
「久しぶりだねゲンちゃん。小学校の頃に会ったっきりかい? 全く啓の奴も面倒な奴を寄越したもんだい……なーんてね! あっはっは! この家を我が家だと思って生活してくれて構わないよ!」
――この家の人間は、皆こんな感じなのだろうか、とバンバンと背中を叩いてくる叔母さんを見て思う。因みに啓というのは、僕の母さんの名前だ。男っぽいから、と自らの名前をよく嘆いていた。
「ん? シン、フクとヒメはどうしたんだい?」
「あぁうん、フク兄は多分また誰かのところ、ヒメ姉は部屋にはいたんだけど……」
彼女の報告を聞いて、叔母さんは「かーっ」と呆れたような素振りを見せ、僕の頭をガシガシと掴んでくる。
「悪いね。フクもヒメも…まぁ恥ずかしがってるのさ、初対面だからね。それよりも座っておくれよ、飯が冷めちまったら勿体ない」
フクの奴は縄で縛り付けておいた方がよさそうだね、なんて物騒なことを呟きながら叔母さんは食卓に座るように促してくる。この家での《フク兄》の待遇が一々心配になる。いずれ会うこともあるだろうから、その時にはせめて僕だけでも失礼のないようにしよう。
席に着いて、今日の夕食の内容を確認する。
スパゲティにオムレツ、ハンバーグ――さっきの対応からして薄々感づいてはいたけれど、叔母さん、昔会った時から僕が成長していないとでも思っているんじゃなかろうか。
ハンバーグの真ん中には一本の旗が立てられていた。




