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思いつき短編集

絵のない議事録

作者: 泣言

突発。

いつかきっと、私たちはまた試される。

「さあこっちだよ。ドアをくぐったら君の発言が全てを左右する。

 それから、“みなさま”に失礼の無いようにね」

 暖かく毛でふわふわなものにより、私はそこへおっとっとと押し込まれた。

「やあやあ。待っていたよ」

 円卓からずらりと凝視されて、たじろぐ。

 どうぞ、と優しく席へ促してくれたのはその声だけだった。

「遅いんだけど!? さっさと決めなさいよ!」

「す、すみません……?」

 怒鳴る方を諌めて最初の方が言った。

「まあまあ。

 さっそくだけど決めてきてる? 君たちが何を使うか」

「はあ……えっと……」

「ちなみに一番多いのは窒素だよ」

 じゃあそれで、と言いかけた私に、怒っていた方が被せてきた。

「ちょっと! あんた動物でしょ!? 酸素使うって話だったでしょうが!」

「ええ……?」

 戸惑う私へ、円卓の向かいにいる別のお二方が首を傾げた。

「酸素なら海にも戻れるわよ!」

「もちろん〜陸でもいいよ〜」

「そうよね〜海なら作り直して〜もう一度会議(ここ)へ来てもらうけれど〜」

「君はほんとに流されやすいね〜」

 のんびりした口調の方は、流されやすい方の膝の上に抱えられていた。

「あの……じゃあ、陸で……」

「いい……わよ……」

「じゃあ酸素だね〜」

 そして初めの優しい方がこほん、と咳払いをした。

「さて、いよいよだけれど「あーー! ちょっと待って!」

 のんびりの方とはまた別の小柄な方が、円卓へ身を乗り出してきた。

「死んだらもらってもいい!?」

「は?」

「だから、君たちの身体、死んじゃったら僕らに頂戴! いいでしょ? こいつらにはうっかり逃げられたんだ。引っかかったのはそこのツンデレだけ」

 捲し立てる方は、怒鳴ってきた方を指差した。

「ね? いいでしょ? お願い! ね? お片づけもしておくから。ね? ね? お願いお願いお願いおねがいおねがいおねがいおねがい」

「わ、わかりましたってば! いいですよ!」

「本当!? やったー!! ふふふ。うふ。へへっ。ふはああああははは」

 そして満足したらしいその方は、円卓の下へ笑いながら潜っていった。

「すまない。驚いただろう?

 ……まあ、死んだ後なら大丈夫だと思うよ」

 初めの方は少し困ったような声だった。

「気をとり直して。君たちが「草食にするんだったらそれなりの態度をしなさい! 酸素まで供給してやってんだから、あんた達はあたし達に生かされているのよ!」

 その方はやはり遮られ、ツンデレの方がふんぞり返っていた。

「肉食に〜食われることも〜ちゃんと教えてあげなよ〜」

「はあ!? こんな貧弱な種族、餓死するに決まってんじゃない!」

(どっちも地獄じゃねえか)

 頭を抱える私に、誰かが心配そうな声をかけた。

「あの、大丈夫? 雑食でもいいんだよ?」

「えっ?」

 心配してくださった方は、私を押し込んだものとはまた異なる暖かさがあった。そしてなんとなく、美しすぎて直視できない。

 その方が、初めの方を見やる。

「うん。みんなが意地悪言いつつ説明してくれたけど、それでも構わないよ。君たちの前も同じようにしていたかな」

「そ、そうなんですか……じゃあ、雑食で」

 美しい方がツンデレの方に声をかけた。

「ふふ。よかったね。餓死しないかずっと心配してたものね」

「はあ!? 自立してるあたし達の前でこいつらバッタバタ死んでくのよ!? いい迷惑だわ!」

 ツンデレだ。

「あとは……ああ。夜行性と昼行性はどっちにする?」

 優しい方が取りまとめに入り、これが最後の質問だと知った。

 ずっと側で見守ってくれた優しい方。素直じゃないけれど心配してくれた方。私たちが最初に抱えられた流されやすい方。これからお世話になるのんびりした方。気長に待ってくれている捲し立てた方。暖かく美しい方。

 またお会いしたいと思った。

「……昼で」

 では、そうしよう。

 これからよろしくね。


 □■□


 荒い呼吸で飛び起きる。

 穴が開いて、もがき苦しむ方。至る部分を失った方。痣が広がりぐったりとした方。引付けのように痙攣する方。

 涙が止まらなかった。

「……また会いたい」

 何かをしなくてはいけない。どんな時代であろうと、ここで燻っているわけにはいかない。

 私は薄暗い部屋を飛び出した。

お目通し頂きありがとうございました。


突発的に思いついたものです。なんちゃって環境問題ですかね。

どの方が何なのか、活動報告にて語ってるのでよろしければどうぞ。


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