表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こんな夢を観た

こんな夢を観た「ギザ十を探す」

作者: 夢野彼方

 桑田孝夫の家に遊びに行く。

 玄関先から呼ぶと、奥の自分の部屋から返事がした。

「おう、上がってこいよ」

 部屋に入ると、桑田はベッド脇に座り込んで小銭を数えているところだった。

「細かいのばかり、ずいぶん貯め込んだね」わたしもその隣に腰を下ろす。

 ビニール袋に入っているもの、無造作に積み上げられているもの、ほとんどが十円玉ばかりだったが、数えるだけで丸1日はかかりそうな量だった。もしかしたら、何万円にもなるかもしれない。

「ああ、コンビニとか行くと、つい札で払っちまうからな。財布がパンパンになるもんだから、邪魔でほっぽらかしてるうちに、こんなになっちまった」


「銀行に持っていって預けたら? 向こうで数えてくれるし、貯金にもなるじゃん」わたしは言った。

「うん、そうしようかなとも思ったんだけどな」と桑田。「さっき、ネットで見たら、ギザ十ってオークションなんかだと、割りと高く取り引きされてるらしいんだな。昭和33年のやつなんて、百円になるらしいぞ」

「ギザ十って、『超凄い十円玉』ってこと?」

「ばか、そうじゃねえよ。ギザギザのついた十円玉のことだってば。ほら、こういうの」桑田はそのうちの1枚をわたしに手渡す。硬貨の周囲がギザギザになっている。

「あ、ほんとだ。滑り止めになってるんだ」

「滑り止めかどうかは知らんが、今の十円玉ってみんなつるつるなんだぜ。知ってたか?」


「うーん、あまり気にしてなかったかも。そういうお金って、価値があるの?」

 桑田はにやっとした。

「そうなんだ、価値があるんだ。普通に使えばただの十円だが、しかるべきところに売れば、何倍にもなる。どうだ、魅力的な話じゃねえか?」

「すごいね、それって。うちにもギザ十があるか、ちょっと調べてみるよ」

 わたしが立ち上がろうとすると、肩を押さえつけて言う。

「まずは、ここにある分を調べてからだ。高く売れたら、ファミレスでステーキを奢ってやるからよ」

 そういうわけで、わたしは桑田の手伝いをすることになった。


「これ昭和33年のギザギザだけど、どう?」わたしは見つけたお金を桑田に渡す。

「どれ……って、おまえ。こりゃ100円玉じゃねえか。どうせならつるんつるんの百円玉を見つけてこい。あるもんならなっ」

 そうだった、百円玉はみんなギザ付きなんだっけ。

「ほら、またあった。ギザ十。ああ、だが昭和33年のはねえなあ。やっぱ、そう簡単じゃないか」桑田がぶつぶつと言い始める。

「飽きっぽいなぁ、桑田は。まだビニール袋に入った分がこんなにたくさんあるじゃん。ようやく一山を数え切ったばかりでしょ」

 いっぽう、わたしは夢中だった。すぐにはまるのがわたしの性格らしい。


「考えたらよ、いくら十円が百円で取り引きされるっていったって、10枚でたかだか千円なんだぜ。2人して1日探したって、何枚あるかもわからねえ。ばからしくなってきたな」

「もうっ、初めに言い出したのは自分じゃん。いつものことだけど、ほんと面倒臭い奴だよ」わたしは呆れた。「聞いたことあるんだけど、お札にも、そういうレアなものがあるらしいよ。通し番号が振ってあるよね? あれがゾロ目だと価値がどーんと上がるらしい。千円札が何万円にもなったって、テレビでやってたよ」

 とたんに、桑田の目が輝き出す。

「おれの財布に、確か千円札が7枚入っていたぞ」そう言って、机の上の財布を取る。

「まあ、まずないと思うけどね、そんなまぐれ」桑田がまた落胆するといけないので、わたしはあらかじめ現実的なことを言っておく。


 財布から札を取り出して、1枚ずつ吟味する桑田。

 突然、興奮したように大声を出す。

「あった、あったぞっ!」

「えっ、ほんと?」まさか、と思いながら桑田の差し出す千円札を見て、あっと驚いた。

 ギザギザに縁取りをされた紙幣だった。

「なあ、これって、価値あると思うか? どうだろうなあ?」

 わたしはうーん、と唸って答えに困ってしまう。

「銀行で交換してもらったらいいんじゃない? 少なくとも、普通に使えるようにはなると思うけど」 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ギザ十、懐かしいですね。私も小学生の時にギザ十の存在を知って、見つける度にこっそり集めていたのに、気が付いたら妹が全てを駄菓子に使い込んでいて絶望したのを思い出しました泣
2014/10/03 08:44 退会済み
管理
[良い点] ギザ十探しだして途中で飽きるとか過去の私ですねww [一言] 最近は5000円がキテるらしいですよ? AAと書いていたらそれだけで値段が上がるとか。 ところで桑田って人は夢の中の友達です…
2014/10/03 03:35 退会済み
管理
[一言] 過小価値のある貨幣の中には、間違って流通した鋳造失敗したものがあります。それは失敗品でありながら、価値を保証されていて、かつ+αの価値を附帯される。なんだか、羨ましいように思えてきました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ