取材・安城謹吾
ラビ 安城のインタビュー
とりあえず、最終決戦から思い出してもいい?
オレ…、あ、安城謹吾って言うんだけど、皆の『ラビ』として檜山班の、ダンジョン最新部まで張っていた。
あれ、こんな言葉で言いの?え?なに、細かい所は補足するから大丈夫…ああ、そ、そうなの?
ごめん、なんかさ、新聞部のやり方分かんなくて。
え?馬鹿の電影部と一緒にするなって?
ごめん、でもヒーローインタビューっていいと思う。うん、俺はされなかったけど。そうそれ、そのインタビューでさ、やっぱ前衛は言うじゃん?俺が止めを刺したって…あ、そんなの要らない?さっさと、最終決戦を話せって?うん、意外と辛辣な言葉を吐くよね君。
じゃ、覚えてる限り話すよ。
最初に言ったけど、オレ、ラビ。
いやー、自分でもなんでこんなジョブが発現したかわかんない。パーティーのログとリボーンを司るって言えばカッコいいけどさ、結局移動式セーブポイントじゃん?お陰で、パーティが、全滅するのを何度見たことか…あ、言っとくけど、僕らラビはダブルジョブできないから戦えないのね。替わりに、どんな敵だろうが…僕らには攻撃出来ないし、僕らも攻撃出来ないんだけど。
余分だって?文字起こしの手間だから、余分な事は言わなくていい?
ごめんごめん、じゃ、本題に入る。
僕らのパーティーは6人だった。前衛二人、後衛三人、回復一人。知ってるからいい?いや言わせてよ、あいつらかなり、問題あったから…大体、今回の件でもリーダーが節操なければこうならなかった訳だし。そ、リーダー、檜山定家。ジョブはドラゴンライダー。
アイツが4股かけなきゃこうはならなかった。
え、女性メンバーは三人だろって?あれ、知らないの?荻窪鉄線…ほら、後衛のガンナー、あれ女。知らないって、えー、これ秘密だった?まあいいや、ネタに出来るでしょ?でもオレがばらしたってのはナシね。うん、面倒いし。
そ、それで四股だけど、檜山が全面的に悪いってわけにも行かない。知ってるでしょ、ダンジョン内とコッチの時間差?コッチの一時間が向うでは1~2年に相当する。それで、歳も食わない、ページアウトするまで戻れないとなったら、色々在るよ。
でもさ、不思議なもんで、精神年齢が上がらないんだよね…何故か。
お陰で、酷い関係だったよ。
最初、檜山と後衛の魔法使い、大寺がつき合っていた。あ、大寺藍利ね。でも、前衛だから檜山は死にまくると。お陰でぎくしゃくしだす。で、そこで後衛回復の栗栖紅花と檜山が仲良くなると。んで、これで二股。それから、階層が下って、即死と状態異常を食らってパーティーの檜山と荻窪以外が全滅した時に三股、それから…流石に後衛も死ぬようになって来て卜部黄蓮と四股の完成。
お陰で、則光が…そ、前衛で末海則光って奴ですけど、辛そうだったなー。なにせ、俺を除けばハーレムの中でただ一人。だから、ある意味、アレは仕方なかったんじゃないかな。
殺しをやってのけたのは。
…ま、僕らが閉じ込められて何日経過したか分かんない。
そもそも、こちらの時間にしたってゲーム内時間を使ってるだけだしね。
ん?そんなの知ってるって、おいおいおい、やめてくれよ。君ら学園滞在組と違って僕ら、ダンジョン組は死ぬきなんだぜ?死んでるし…え、お前は死なないじゃないかって?そだねー、だってラビだし。ぶっちゃけ全滅したって俺が呼び出せるし。
まあ、いいや。
脱線した話を戻そう、それで、最終決戦の話に戻そう。対象は、『腐肉の公王』。ダンジョンは、埋没神殿『コロッセオ』、クリア出来れば現実への帰還につながるかもって奴だ。で僕らは、『名もなき王府』から『コロッセオ』に潜ってた。敵は強いとも。マモノに、歴戦の猛者のアンデットが襲いかかる、深部に行けば行く程、『腐肉』に殺されたランカーが立ちはだかるって鬼畜仕様だ。
俺らの進捗は遅い物だった。倒しては離脱し、強敵を回避しと、他の攻略組と同じ動きをしてた。ゲーム内のパーティーにも在ったけど、みんな、腐肉の『簪』を狙っていた。ライフがゼロになっても活動出来る…つまり、ライフゲージの概念をぶっ壊すアイテム。それを狙ってた。
で俺らはなんとか、深部まで潜った。
宮殿最下層…闘技場の跡地に、腐肉はいた。
強かったよ、腐肉。タイプとしては、接近戦を好む敵。だけど固有のスキルがヤバかった。スリップダメージを与える、『瘴毒』のスキルに、『名状しがたき疼痛』なんてランダムで状態異常+スキル仕様に制限を加えるスキルを持ってたんだから。お陰で、最初に後衛がやられた。スリップダメージでまず、栗栖が死亡。だろね、ライフの上限値が小さいもん。ソレに加えてさ、攻撃も多彩。
魔法も連射しないけど、ダメージ計上されないNPCの召喚。
それと毒と麻痺を貸与した斬撃はヤバかった。
で、こちらの攻撃も不味い。
ドラゴンライダーの檜山が騎乗して攻撃するんだけどさ、乗ってた竜が死亡して攻撃力半減。お陰で、パラディンの末海がひたすらに攻撃を凌いでた。ガンナーの荻窪が、カウンターで右腕ふっとばされたりとか、大寺がスペルアウト状態だったのによくやってたよ。卜部のステータスアップで凌いでたけど、ねえ?
もう、死ぬしか無い状況。
だってさ、誰も回復アイテム使える余裕が無い。腐肉を末海が引き受けているとはいえ、NPCで檜山は手一杯。荻窪と栗栖は戦闘不能だし、卜部と大寺の武器攻撃なんか、檜山の足下にも届かない。で、離脱するにも出来そうも無い。
詰んだ、状態だったの、マジで。
俺もさ、別パーティーが来ないか、ラビのスキルのテスタメントでコールしてたけど、最下層に潜れる奴らなんていなかった。全滅濃厚だった。俺は、さっさと、パーティーの復活も考えてた訳。ラビは確かに、死なない職業だけど、逆に言えばパーティーに全滅されたら、戻れない訳。だから、攻略の糸口を考えた。
その時だったよ、末海と檜山がアンなことをしたのは。檜山がフィニッシュブローを放って、そのまま倒れた。で、もう駄目だとおもうだろ?ところが、末海のヤロウ…アイツ、チートしやがった。見てて分かった。小瓶を取り出して、首に一発打った。次の瞬間、アイツ、フィニッシュブローを連発してた。『狼殺し』、『女神の寵愛』、『否定剣』なんてね。で、互角に持ちかえした。…っても、一時的なもんだ。いくら、必殺のフィニッシューブローをもっても、通常ダメージが入るようになったくらい。
勝てないと、俺はふんでた。
所がだよ、アイツは、それでも腐肉を殺した。
俺が言えるのは、それくらい。
結局、さ、最後まで生きてたのは荻窪と卜部だけ。荻窪は最後、気絶してから卜部だけだよ。最後まで見てたのは…俺はどうしてたって?決まってんじゃん、死んだ奴らの復活の準備してたんだよ。
それで、なんだよ、僕が末海を殺したって?
冗談きつよ、どうして脳筋のアイツを俺が殺す?
ソレにこっちでも、復活するじゃん、残機あるし。それにさ、アイツが殺されたの理科実験室だろ。
なんでいくよ、あんなリア充のとこ…え、しらないの?以外とあそこでやってるぜ…水音で誤摩化せるし、机でかいし。
なんだ知らないのか。や、だからさ、あんなカッポルが来るとこで殺しなんて何考えてんだか…案外つき合ってた女にやられたかもね。っても、生き返るんだか。聞いてもしゃーないでしょ。
その時間、オレ、普通に談話室にいたよ。嘘じゃないって、ほんと。檜山が自販機でジュース買ってたから間違いないって。