07・真偽
07
「あー先輩、何読んでるんですか?!」
「何って、お前のノート」
部室に戻って来たかと思ったら、現場を見に行くと森久保は出て行った。しばらく戻ってこないとふんで俺は、彼女のノートを開いていたのだが、なんともタイミングが悪かった。やろう、置いてったんじゃなく、忘れただけらしい。
「人の推理を邪魔しないで下さいよ」
バッと、ノートを奪い取る。
勝手に見たのは悪いが随分と雑な推理だなと、俺は思った。
「んんで、答えは出たのか」
「だーかーらー、まだソレをまとめてるんですってば」
森久保はそう言うと、考え込む素振りを見せた。俺は、団扇で扇ぎながら言う。
「でもさ、今んとこ、お前の推理が合ってると思えないんだけどさ、俺は」
「先輩黙って下さい」
「いや、そもそも誰が犯人かなんて、よくよく考えたら部外者の俺たちが分かるのかね」
「だーから、だまって下さいよ。ちょっと本気で考えてるんですから」
森久保はそう言って、インタビューを纏めたものとまた、にらみ合う。
「おーい、森久保」
返事無し。
「哀れ胸」
「ちょ、誰に聞いたんですか、その渾名?!」
森久保はがばっと反応を見せる。効果は覿面だった。ありがとう、森久保の幼馴染みの伊井君。
「伊井くんから、いやー、彼、ウイットに効いてるね。哀れって単語の選択が秀逸だ」
「ちょっちょっちょ!ってか、先輩、セクハラ!」
「黙れ、AA」
「なんでカップまで知ってるんですか?!」
「いや、コレも伊井くんに」
伊井殺すと、後輩は言ったが、やっと話しを聞いてくれる状況になっただろう。
「でだ」
「なんですか?!」
「そう、警戒すんな。そもそも論を、お前に言ってやる」
警戒したまま、彼女は俺を見る。
「そのインタビュー、全員が本当の事を話してると思うか?」
「…そりゃ、本当のことを話してるとは思ってないですよ」
「だろ、だったらその上でさらに質問だが、真贋入り交じる中、何を持って真を取り出す?」
「矛盾を割り出してですよ」
「その定規は何処で求める?」
そこで、彼女は俺をじっと見る。
「今日、先輩、妙に、頭の冴えた事を言いますね」
「俺は馬鹿だと言いたいのか」
「少なくとも、あんまり成績が良くないのを知ってます」
頭を掻きつつ、言う。
「頭の良さは、物わかりの良さだよ。何故と疑問を出すのは、愚者と子供の特権だ」
「わー、先輩が、がらにも無い事を言ってます」
「ほっとけ、つまりだ、何がいいたいかというと、俺たちは部外者。それで、当事者にもなってないのに、その嘘から真なんて出せないってことがいいたい訳。さっきは、頭が回ってなかったから言わなかったけど」
俺が言うと、森久保はびっくりした顔を見せる。
「嘘でしょう、先輩」
「お前、はい貴方が犯人ですよねで?自白すると思うか?自分だったらどうだ?」
「しないですね」
「だろう?」
気付かない、俺らが阿呆だという話しなのだが、それでも森久保は納得いかないという様子だった。
「…んーでも解けそうな気がするんですけどね」
「はいはい」
俺はそう言うと、それ以上の言及はやめた。
言っても無駄であると、悟ったからだ。




