プロローグ ~到着~
ガラガラガラガラ……
バッグを引いて駅から出てきた青年の顔は少し固かった。
うるさい都会から離れた地方の比較的大きな町。配属先は意外にも前に住んでいた所からほど近い場所だった。本部の人が気を回してくれたのかもしれないが、これがなかなか大きなプレッシャーだったりする。
「すぅー、はぁー」
大きく深呼吸をして気持ちをリセットする。
今日からは自分がこの町を守ることになる。前任曰く、高い建物が少ないため仕事はやりやすいらしい。
「行くか」
そう言って青年は緊張している体を動かし歩き始めた。さっきまで青年が立っていた所には不自然な風が吹いていたが、誰もそのことには気付いていない。
「野田本部長、本当に良かったのですか?」
都内の高層ビルの一室。若い男は問うた。
「良いと思ったから、そうしたんだ。」
椅子にどっぷりと体重をかけて座る、50歳くらいで太りぎみの男はそう言った。
「それに彼はああ見えてしっかりしているし、友達づくりだって得意だ。」
そう答えると野田は座ったまま椅子を回し、窓から外を見下ろした。
「そういうことではなくてですね…」
「ん?」
「まだあの年齢では力が定着しているとは思えないのですが」
若い男は少々強めに言った。
「大丈夫だよ。開発部からの了承ももらっているし、なにより…」
立ち上がった野田は若い男の目を見て言った。
「彼は他の奴らとは違うからね。」