エピローグ
親父は言っていた。マウンドに立っている者たちだけが、戦っているのではないのだと。
ベンチの控え選手や、応援しているチームメイト、観客たちも、共に喜び、泣いてくれる。
親父はもう一つ言った。1つのことにこだわらないのも、いいかもしれないと。
あの頃理解できなかったこの言葉。でも、今なら理解できた。親父の思いと、同じかどうかは分からないが、自分の中で答えは出た。
ずっと自分は、野球とピッチャーというものに、こだわっていた。それ以外をするのは、嫌だった。でも、キャッチャーにも、ファーストにも、セカンド、サード、ショートにも、それぞれ良いところがあったのだ。ただ目立ちたかったあの頃。自分には、ピッチャーが一番輝いていて、とても格好良かった。しかし、自分に向いていないことも、心のどこかで感じていた。
トランペットの音を聞いて、それは確信に変わった。今の思いのまま、何となく野球をしていても、少年野球の頃のような喜びは得られない。
だからこそ、蒼はマウンドから降りることにした。惰性でやるものに、何の価値もない。出来ないことを諦めず、必死にもがいて足掻いて掴み取るものにこそ、きっと素晴らしい価値がある。
綺麗な音に魅せられた。理由はそれだけで充分だ。あの音を自分が出し、マウンドへ届けるのだ。
蒼の顔に、もう迷いはなかった。
彼の夢は『戦い続けること』。
1人ではなく、『誰か』と共に。
さぁ、行こう。この扉の向こうに待つ、未来へ…
…完結です。はい。一応!←
これは、主人公の蒼という人物の話でした。三部くらいに分けて、書いて行こうと思っております。
ここまで読んでくださったみなさん、本当に、ありがとうございました。