『ベルギーの白き大地を血に染めて――その3――』
大変お待たせしました。
約数ヶ月ぶりでの更新での今回は……
遂に彼ことエリーアス率いる部隊は、遂に目標であるノルウェー沖ブレスト港に停泊中の空母艦隊を捕らえるが……
そんな訳で…始まり始まりっ!
ノルェー沖ブレスト港。かつて漁業が盛んだった頃の名残を見せる民間用の施設には、人影が無く。代わりに白と黒を主張とした連合軍。アメリカ合衆国海軍軍人が行き来する。
ナチスに支配され、はたまた今は連合国と。そこに住む人々は。
その港街を取り囲んでは皆口を揃え。この戦争の早期終結を訴えながら反戦デモ集会を執り行なっては沈黙させられる。
そんな様子を遥か先に停泊する巨大船舶の窓から除く者が居た。
「ハルバート提督。奴等は、我々連合軍のお陰であのゲルマン種族の独裁から解放してやったと言うのに、直ちに鎮圧部隊を派遣しますか?」
「スコットか――。まぁその内この戦争も終わる。好きにさせとけばいいさ。何時に無く民衆は世論を欲しがる物だよ」
程よく揺れる停泊中船舶の艦橋の一室から大きな窓越しに佇みながら、今朝の湧かしたての紅茶を優雅に手に取る。
「君は…そうか、ご苦労。もう下がって良いぞ」
この艦の艦長らしき人物と副官に一通りに紅茶を差し出した後。軽く会釈する兵士。
スコットと呼ばれる副官は、彼の肌の色を気にしながらチラ見する。
その様子に自身は慣れきっているのか、ある物を渡されながら彼の所属するエセックス級空母。ハンコックの艦橋を後にする。
▽
1945年1月1日と書き記された日めくり用カレンダーを引っ掛けては、昨年でのカレンダーをクシャリと丸めながらしまう。
一人の黒人兵士は、カレンダーに描かれた一枚の写真を眺めては、えへんと両腕を組む。
白く綺麗なビル街をバックに一台のオープンカーに乗り込む男女の姿。聳えるビル街はニューヤークと呼ばれる都市のようだ。
背後に微かに映る自由の女神像が、彼が所属する自由な国の象徴でもある。
「何時かはオレも、肖りたい――かな?」
ふと、いつの間にかカレンダーに写る男女を自分自身と置き換え、思い描いた夢に一人苦笑する。 明らかに肌の色や容姿が違い過ぎるのだが――そんな差別的な矛盾を抱えながら、合衆国は、他国に対し、この国に住む人々は皆が平等であり、それぞれ一人一人が自由であると唄われる民主主義を主張しているとは片腹痛い物だ。
「さて、頼まれた任務は済ましたし…オレも本来の持ち場に?」
目の前に引っ掛けたカレンダーに描かれた写真を名残惜しむように、彼は艦橋上に設置してある会議室から離れようとする矢先。両足が縺れる。
「ととっ、船酔いする新兵じゃあるまいし」
未だに揺れが治まらないのか、目の前に設置してある長机に片手を添えながら身体を支えようとする彼。 しかし、彼が今現在乗り込む巨大船舶がこんな揺れ方をするのはあり得ないのだ。
「まさかっ!」
「救護班の者か? 左舷格納庫付近に早く向かってくれ」
「一体なにが?」
「潜水艦からの魚雷攻撃に決まってんだろっ!それに」
きな臭い嫌な煙の臭いが鼻に突き刺さる。同時に、もう既に遅い艦内放送と第一種戦闘体制での警報が流れる。
彼等の佇む会議室前の狭い通路脇を駆ける者達の姿を辞任。
この艦に配属されて以来初めての実戦に気が動転しているのも手伝うのか、デカイ揺れが再び襲う中、人一人通れるであろう狭い通路側に入る。
低い配管だらけの頭上からズシリと重い振動と地響きが断続的に襲う。
この艦最大の5.5インチ高角砲8門が一斉に火を噴いたのだろうか。
「ジーザス! マイガァァッ!」
彼の眼前を突き飛ばす勢いで駆け抜ける兵士達の後に続き、甲板下に設置されてあるデッキに躍り出る。
「あの並び――敵重爆撃機の編隊って…嘘だろ?」
1人…又1人と、船外での監視係の隊員が固定式のゴツイ双眼鏡を両手に押さえ、呟く様を横目に再び深緑色の海水を縫うように差し迫るナニかを辞任する。
多分、敵潜水艦から放たれた第二激での魚雷だろう。
「機関始動しろっ! 誰でもいい。早くあの雷跡を機銃で迎撃!?」
監視兵達を束ねる次官らしい者が悲痛な叫びの後に彼は、床から突き上げる凄まじい衝撃とぶちまける海水に呑まれて行った――
▽▲
「うしっ! 先行部隊は上手くあのドデカイ鯨のドテッ腹に肉薄したみたいっすね」
独特の訛りのある口調の飛空士の台詞を横目に、弾薬がギッチリと詰まる木製の箱を移動させる。
機内奥から吹き込む風に、帽子から飛び出す特徴のある淡い緑髪を揺らす少女は、左右に設置してある20ミリ機関砲近くに革製の頑丈なベルトで固定する。
「ふぅ…、ま。そう気を張って固くなるこたぁ〜ねーっすよ。無論目標になる艦隊の、護衛戦闘機は総てエリーアスの旦那やフラクシスの姉さんのメインディッシュやしねぇ」
バノンと呼ばれる青年は、個性のある右が黒――左が白といったオッドアイの両瞳を細めながら、ハインケル重爆撃機内。左右に設置してある機関座からキャノピーを除く。
戦争で片目を無くし、義眼なのかはたまた産まれついての物なのかは、この戦時下の混乱した世の中じゃ知りたがろうとする者は誰1人として無いのだが。
高度4000フィート付近から視界に映り込む、一際目立つ氷山が連なる先に軍港が眼下に広がる。
4〜5階建ての軍用施設から火柱が上がり小規模な炸裂を再度自認。
更に30度傾きながらどす黒い煙に包まれた大型船舶。その真横を通過しながら爆弾を投棄する先行部隊の様子が見て取れる。
「おおいガーデンブルクさんよぅ、ちと西北西に流れちまってるぞ、やっこさんは早々待ってはくれねぇぇんだ、ちゃんと爆撃コースを」
「大丈夫。ちゃんとトレースしてるって、お前…それよか」
左右に設置した機銃座からひょっこりと、特徴のある茶髪を揺らしながら。操縦士に位置的な指摘をする。
持ち前の戦場とは違う、特にこう行った緊張下での感を働かせての事なのだろう。
ナチス航空部隊に配属する以前。この漆黒の片翼の面子は、今現在は近衛師団でのエリート部隊なのだが、それぞれが異なる経歴の持ち主でもある。
ヨーロッパ全土を支配下に置く、元マフィア時代で名を残した頃に得た能力なのだろうか――
「あの――何か見えるんでしょうか?」
「おい、そのまま機銃席に着くっす……俺が合図をしたら容姿無く20ミリ砲弾食わしてやれ」
未だ気流の流れと、白く尾を引く雲の切れ間を集中して除く。
彼女は、言われた通りにガチャリと重厚な機関砲のロックを解除――次の指示をじっと待つ。
「あの――」
「まだだ…多分あの分厚い雲の切れ間が過ぎたら容姿なく」
ふと、彼と彼女の息使いがしっくりと強調する。その遥か先に何かしらの機影を捕らえたのかはたまた…
瞬間的に彼の目線の先を綺麗にトレースするように無言の指示を性格に把握し、安全装置を外した状態の20ミリ機関砲からオレンジ色の火花と勢い良くバラ罷れる無数の薬包が床に次々に落下する。
「おらおらおらぁ! オレの目の前にちらつくウゼェ〜蚊蜻蛉は纏めて蜂の巣にしてやんよぅ!」
「うわちゃぁ…まったく、この人格崩壊には流石の敵さんもたまったもんじゃぁないっす」
どす黒い煙と鼻にまとわり付く火薬臭が漂う。かつてマフィアの間じゃ暴走殺人マシーンと呼ばれた彼女の本質を良く知る彼は。
一度操縦桿や、このような機器を手にした彼女の変わりようの性格は、戦争が始まる以前の頃――
一度その凶暴性を経験済みのようで、
突如! 炎が尾を引き雲をかき分けるように、銀色のアルミ独自の破片を撒き散らせながら視界に現れては迎撃コースのまま通過。
片翼内の燃料タンクに引火したのか。キャノピー越しに除くバロンの視界から遥か下方で、花火が弾けるように分厚い雲内で四散する米軍のP38…パイロットは確実に即死だろう。
バノンは、敵兵に対し、無意識に空いている右手で十字を切り…敵パイロットの魂の安らぎと安息を願っていた。彼の性格上しょうがないのだろう。
続け様に機体の左翼斜め後方から更に三機のP38が双発サウンドを轟かせ次々にループしながら接近する様が見える。
味方艦隊にこのハインケル部隊の接近を必死に止めようとするのだろう。
その機影と今度は下方から交差する形で空中でいくつか小規模の炸裂と破片が散る前に、豪快に四散!
三機の内二機が炎とどす黒い煙を引きながら墜落する様をじっと見つめる。
多分、下方にて展開しているドックファイトから抜けて来たエリーアスの漆黒のbfー109Gだろうか…
更に混沌をもようしながら次回へつづくっ!
もうかれこれ、他連載作品共々かなり更新が滞り気味なのは時間に追われる私のミスですね。
連載作品をいくつもやるものじゃないと思いつつ、次回。尚も混戦が続く中…エリーアスを追って来たダグラスとぶつかります。
最終的には……
そんな訳でっ
お楽しみにっ!