『北海に潜む鯱達の追憶――』
さてさて。一昨日に引き続きまして今回は、ある極秘偵察任務を受けた数隻のU-Boatが突き進む北大西洋から始まります。
そんな訳でっ
『Bodenpiatte』
エリーアス「始まるぞ――」
ナチス空軍部隊が一大決戦を控えている頃。既に連合国側の占領地と化した北大西洋に面したノルウェー沖ブレスト港に艦首を向け、ゆっくりと転進する小さな――とても小さい艦影があった。
氷山に囲まれた北海をバックに荒波に呑まれながら数隻の艦隊が航行する。
機能美を醸し出すダークグレーのスマートな船体の略中央付近にポツリと突き出した艦橋。
そこの直上付近に身を乗り出す。
凍り付くような吹き荒れる風にバタバタとグレーの防寒コートが激しく暴れる。
じっと身を潜めながら露骨な双眼鏡を両手に持ち遥か先までを見渡しながら警戒をする人物の影が映る。
「(何もかも懐かしいな――ふっ…それだけ永く生き過ぎた。そう言う事か)」
薄らと東の空が菫色に染まる。一人の老兵は晴れ渡る空が広がる北海の元かつて祖国の為に散って言った英霊達への追憶をこの晴れ渡る空を仰ぎながら想いを巡らせる。
遥か彼方に早朝の光を受けながら霞む氷山をじっと見つめる。
かつてこの海を獲物を求め駆け巡っていた頃を思い出してはふっ――と口元を歪ませ苦笑した。
――そうさ。俺はあの時の地獄から再び生きてこの海に帰って来たんだと。
▽
今から遡る事数年前。1939年。そこを拠点としていた彼が乗艦する戦艦シャルンホルストと姉妹艦グナイゼナウを中心とした艦隊は、北大西洋上の通商破壊戦に活躍する。
11月23日。正午。アイスランド沖にて英国巡洋艦ラウンビンジ級と砲火を交え撃沈。
続けて1940年。2月20日。ノルウェー攻略作戦に参加。ナルヴィック占領部隊の支援に当たる。
その作戦の最中ウェストフィヨルド沖にて英国輸送船及びタンカーを含む三隻を見事撃沈する。
そして同日の午後。停泊中の駆逐艦アカスターとアーデント級。空母グローリアス級を発見し、直ちに砲撃を開始。三隻纏めて34センチ砲8門の餌食になり轟沈。
数々の輝かしい戦果を上げた彼が乗艦するシャルンホルストも1943年12月26日。ソ連に向け物資を運ぶ船団を撃滅する作戦に出港。
しかしこの頃になると国力の差を見せ付ける連合国側は次々と有り余る物資を武器にレーダーや無線傍受用技術を。そして戦力を導入する。
それは今ある国力のみで乗り切る我が国にとっては致命的な結果は明白である。
作戦を事前に傍受した最新鋭英国戦艦デュークオヴヨーク級を中心とした連合国大艦隊に待ち伏せを食らい、集中砲火を浴びせられてしまうのだ。
彼はシャルンホルスト艦橋上の防空警戒用のデッキから飛び交う火線に身を潜めながら親友を含む数名で敵急降下爆撃機の編隊を捕らえては対空指揮所に指示を出す。
しかし彼と親友の運命を引き裂く500ポンド爆弾が眼前に捕らえ、瞬間耳を引き裂く凄まじい炸裂音を後に30メートル上空に吹き飛ばされる。
遥か下方。眼下に広がる火の海と化すかつて仲間達と過ごした自身の艦影が荒れ狂う海に包まれる様を眺めながら彼の意識は闇へ落ちる――
そして彼が再び目覚めたのはあの出来事から数ヶ月後の病室の中なのだ。
そして後から知った事は絶望的な我が国の状況と、かつて共に過ごした家族達。乗員1900名の内生き残ったのは彼を含む僅か39名と言う事実を。
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――
――あの戦いで身寄りの無い俺の唯一の故郷や共に過ごした掛け替えのない家族達はみんな行っちまった。この戦いは、唯一生き残った俺にとってのやるべき事なのだよ。
ふと地肌に突き刺さる北海の凍てつく風がそうさせたのか。懐かしい思いを巡らす彼の足元付近。人一人が出入り可能なハッチが錆付いた音を響かせ開く。
そこから顔を出す通信員は。彼にある一言を告げる。
「失礼します! ウップ・ルードゥベック少佐っ。先程前にこの先の200海里地点に数箇所の障害物をソナーが探知しましたっ…もしかしたら」
「港に停泊する船舶だな。時刻的に丁度ルフトヴァッフェの大部隊の反抗作戦とどんぴしゃりだ…よし! 直ちに我が極秘作戦参加の第223航空部隊に打電! 続けて我がU-506も取舵の後急速潜行っ! この作戦を機に敵空母艦隊を撃滅する!」
熟練された兵士達がこの小さな艦内に縦横無尽に駆け回る。
艦橋に警戒中だったウップと名乗る一人の老兵は久しぶりの獲物を前に口元を歪ませながら笑が込み上げるのをぐっと堪える。
こじんまりとした艦の中心付近に設置された指揮所。天井付近から伸びる潜望鏡に片手を引っかけながら器用に使いふるしたキャップを深々と被る。
作戦開始まで後数十分を切った所で、この潜水艦から打電された『我が艦は敵機動艦隊を攻撃目標地点のブレスト港付近で発見』
と言う暗号電文を未だ連合国側では解読不可能なエニグマを用いて打電する。
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そして出撃前に差し掛かるここブルックリンにあるエリーアス率いる第223部隊に他の部隊の攻撃目標であるベルギー。アッシュの米軍飛行場では無く、そこから遥か北に数百キロ離れた北大西洋、ノルウェー沖ブレスト港。
そこの港を陣取る米機動艦隊撃滅の極秘任務に移行するのであった。
――更に無理矢理だが
次回へ続く。
〜後書きコーナー〜
カレン「ひそ……ねえねえっ――哲也に響っ。ちょっと面白い事思いついちゃった」
哲也「なんだカレン。かなりニヤケてるぞ?」
カレン「実はこの――ひそひそ…」
マリオン「なになに?」
▼
〜十分後〜
エリーアス「さて。前回では少々取り乱してしまったが…今回からはしっかりと後書きコーナーを?………」
┌(┌ ^o^)┐………。
エリーアス「むっ!! 何だこれは…まさか敵の新兵器か?」つんっ…
エリーアス「ひぃっ!?」ゾクゥッ!
ホモォ…┌(┌ ^o^)┐ホモォ…
「なっななっ! なんじゃこりゃぁぁぁ!!! 撃つぞっ!撃つぞ貴様ぁ! こここっち…くっくるなぁぁぁぁ!!!」パンッ! パンッ!
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ドンガラガッシャ!
▽
響「……」
マリオン「はわぁww」
カレン「キャハハハハ! ねえさっきの"あいつ"の顔っ」
光雄「つかアンタ等。唯一の貴重な真面目キャラに一体なんちゅ〜悪戯しとるんだかww」
カレン「にゃはっ! 次回も宜しくっ」