第1部:迷宮の扉 第2話:鉱石の誘惑とライバルの影
開店2日目。リュウの店「ラビリンス・トレジャー」は、昨日の初売上100ゴールドの勢いに乗っていた。街の冒険者ギルドから口コミが広がり、朝から数人の客が訪れた。スライムジェルを買う初心者冒険者や、鉄の剣を値切り交渉する中年剣士。ミリアがカウンターで鑑定をしながら応対し、リュウは在庫の管理に追われていた。
「リュウさん、昨日仕入れたハーブがもう半分売れちゃいました。次はもっと量を確保しないと!」ミリアが笑顔で言った。彼女の鑑定スキルは正確無比で、客からの信頼も厚い。リュウは頷き、仲間たちに声を掛けた。
「よし、今日の仕入れはルートB-2だ。あそこは鉱石が出やすいらしい。希少な『マナクリスタル』が出れば、一気に儲かるぞ。みんな、準備はいいか?」
ガレンが剣を研ぎながらニヤリ。「おうよ! ゴブリン以上の敵が出るかもな。楽しみだぜ。」エレナはローブの裾を払い、「私の魔法で道を切り開きますわ。ふふ、鉱石の輝きを見逃さないでね。」ソフィアは回復ポーションを袋に詰め、「危険が増すルートですけど、みんなの体調管理は任せてください。」
パーティーは街の北側へ向かった。ルートB-2の入り口は、廃墟のような古い塔の地下にあった。塔は苔だらけで、風が吹くたびに軋む音がする。ダンジョンは国全体の下に広がっているため、入り口は多岐にわたる。このルートは中級者向けで、深さは入り口ルートA-1の2倍。未知の深層部への入り口も近いという噂だ。
洞窟に入ると、空気が重く湿っぽくなった。エレナの光球が通路を照らす中、リュウは地図を広げた。「ここから分岐点まで直進。鉱石脈は右の支道だ。注意しろ、トラップがあるかも。」
進むと、すぐにゴブリンの群れが現れた。5体ほどで、棍棒を振り回して襲ってくる。ガレンが前衛に立ち、「来いよ!」と剣を振るう。一閃で2体を倒し、エレナの氷の矢が残りを凍らせる。ソフィアが軽い傷を癒し、リュウはドロップアイテムを解析。「ゴブリン棍棒…市場価格20ゴールド。売れ筋だな。」
さらに奥へ。壁に輝く鉱石脈が見えてきた。リュウがツルハシで掘り始め、仲間たちが警戒する。掘り出したのは青く光るクリスタル。「これはマナクリスタル! 魔法使いに人気の素材だ。一個50ゴールド以上するぞ!」喜ぶリュウだったが、突然地面が揺れた。トラップだ! 岩が落ちてくる中、エレナが風の魔法で押し返し、ガレンが盾代わりに剣を構える。ソフィアのバリア魔法で全員無事脱出。
「危なかった…でも、収穫は上々だ。マナクリスタル3個、鉄鉱石10個。帰って売ろう。」リュウが息を吐く。探索時間は2時間。ルートB-2の深みを感じたが、まだ全容はわからない。帰り道で、壁に奇妙な壁画を見つけた。古代の文字と、隕石のようなものが描かれている。「これは…超古代文明の遺跡? ミリアに調べてもらおう。」
店に戻ると、ミリアが興奮気味に待っていた。「おかえり! 早速鑑定しますね。マナクリスタルは上質品! 魔法ギルドに卸せば80ゴールドずついけますわ。鉄鉱石も鍛冶屋需要が高いですよ。」
午後、店は賑わった。魔法使いの客がマナクリスタルを買い求め、「こんな新鮮なのは珍しい! どこで仕入れた?」と聞く。リュウは笑って、「企業秘密だよ。でも、うちは直仕入れだから安いぜ。60ゴールドでどう?」交渉成立。売上は一気に300ゴールドを超えた。
しかし、喜びも束の間。店の前に派手な馬車が止まった。降りてきたのは、派手な服の男。ライバル店「ゴールド・ダンジョン」の店主、バルドだ。40代のずる賢い商人で、冒険者ギルドとコネがある。「ほう、噂の新店か。うちのシェアを食ってるらしいな。」
リュウは警戒しつつ応じる。「ようこそ。うちは小さい店ですが、品質で勝負してますよ。」バルドは鼻で笑い、「品質? ふん、うちは専属冒険者を雇ってるんだ。希少アイテムは独占だ。お前らみたいな素人が深層に近づくなよ。危ないぜ。」脅しめいた言葉を残し、去っていった。
夜の反省会。ガレンが拳を握る。「あの野郎、邪魔してくる気だぜ。次はもっと深く行って、奴らじゃ手に入れられないアイテムを仕入れよう。」エレナが頷き、「ええ、私の魔法で探知すれば、隠しルートが見つかるかも。」ソフィアは心配そうに、「でも、安全第一ですよ。ダンジョンは広大で、未知の危険がいっぱいです。」
ミリアが壁画のスケッチを見せた。「これ、古代語ですわ。解読したら、『天の石が落ち、地下に逃れよ』みたいな意味。隕石の話? 超古代文明の滅亡伝説に似てますね。」リュウの目が輝く。「面白い…これがヒントかも。商売のネタになるぞ。次はルートC-3を目指そう。あそこは遺跡風のエリアらしい。」
リュウは窓からダンジョンの闇を見た。地下の広大さは、ただの迷宮じゃない。失われた歴史が眠る場所。バルドの脅しは気になったが、仲間がいれば恐くない。冒険と商売の旅は、加速し始めた。




