【幕間】儚げな神子さま
護衛スバルナさん視点です。
神子さまは、今日もすっかり神気を消耗してしまったようで、力なく私に体を預けている。降り立たれた日よりも少し軽くなられたようだ。痛ましくて、恐れ多くも、思わず小さな頭をそっと撫でる。
ムラが次々と災厄に見舞われ、どうにもならなくなって、我々は神に祈った。
祈祷師から、間もなく神がその愛し子を遣わしてくださるという吉報がもたらされ、安堵したのも束の間。遣わされた神子さまは「儚げ」という言葉がぴったりの可憐なご様子で、まだ幼くもあり、危なっかしいことに、我らのムラに溜まった穢れを祓うための力の使い方もお分かりにならないようだった。
ご自分の意思に関係なく、持てる力を全て使って穢れを祓ってしまわれるようなのだ。神子さまが日に何度も眠ってしまわれること、日に日に線が細く儚く憂いの色を濃くされるのも、そのせいだろう。
外へ散策に出かけられる度に、しばらく経つとどこかで蹲ってしまわれる。私や世話係のユクリトは気が気ではなく、毎回そっと後ろからご様子を伺っている。以前はぴったりと後ろを護衛していたが、その度に神子さまが「すみません」と謝られ、ついには社からお出になろうとしなくなったので、神子さまがお気を遣われないよう、離れて護衛をすることにしたのだ。
お姿が見えなくとも、神子さまが放たれる神気なのだろう、神子さまのお通りになった道のりは、きらきらと光り輝き清らかなので、どこにいらっしゃるのかはすぐにわかった。お加減が優れないご様子を拝見したら、御身を抱き上げて寝所にお連れするのだが、その度にやはり「ごめんなさい」と長いまつ毛を伏せ、白く滑らかな頬に影を落とされるのが、不憫でならない。
神に遣わされたとはいえ、今までとは違う住みづらい環境でいらっしゃるだろうに、一言も不満を仰らず、健気に耐えていらっしゃる神子さまに何かして差し上げたいのは、私を始めとする側仕えを拝命した者だけではなく、ムラの者全ての思いだ。
神子さまのために、皆こぞって、口当たりの良い果物や甘味、滋養のある穀物などを捧げるが、まるで小鳥が啄むほどの量しか召し上がらない。
元から食が細くていらっしゃるのか、それともそれだけこちらに降り立たれたことがお体に負担となっているのか。ここ二、三日で軽くなってしまった体重を考えると後者だろう。
儚げなのに辛抱強い神子さまが、少しでも心安やかに、健やかにお過ごしいただけるよう、心を砕く毎日だ。
私はあくまでも護衛に過ぎないので、ユクリトのように御寝所の中まで入りお仕えすることはできないのが歯がゆい。できれば可憐で愛らしい神子さまを自分の腕に囲ってしまいたい。しかし、そう考えていることは、周りに悟られないようにしなければならない。神子さまをお側近くでお守りする役目を誰にも譲るつもりはない。
神子さまの御身を抱き上げ、社へお連れする瞬間が、私にはこの上もなく幸せだ。神子さまは苦しんでおられるというのに、私はなんと罪深いのだろうか。悔恨のため息を押し殺し、私は社へと向かった。
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