4. 穢れを祓うだけの簡単なお仕事です
読み返してみたら案の定、誤字がありましたので訂正しました。
「カナタさま、とお呼びしてもよろしいですかな」
「はい。・・・あ、いえ。『さま』はちょっと・・・」
うんと年上の人に敬語を使われることにも、敬称をつけて呼ばれることにも慣れていないし、来たばかりの場所で何が何だかわからない僕は、まごまごとしてしまった。
おじいさんはにっこりと笑って話を続ける。
「では、カナタさま。神に遣わされしお方よ。まずはこのムラの惨状をお聞きくだされ」
(ん? 僕、「さま」は嫌だって言ったつもりだったんだけど、聞こえなかったのかな。それに「神に遣わされし」って、どういうこと?)
ツッコミどころ満載なおじいさんの言葉に釈然とはしなかったけれど、生来の引っ込み思案が邪魔をして、あまり強く出ることもできず、僕は曖昧に頷いた。
「このムラは、我らが移り住んでから二十年ほどの比較的新しいムラでございます。数年前から疫病や野生動物の被害が増えてしまいましてな。我々だけではどうにも持ち堪えられなくなってまいりました」
おじいさんは少し痛ましそうな顔をしながら続けた。
「おそらく、この土地を切り開く時に薙ぎ払った木々や生き物たちの穢れがたまり、濃くなってしまったのではないかと思うのです」
そこまで言うと、おじいさんは温かくも強い眼差しで僕をひたと見据えた。
「そこで、勝手を承知で神に神子を遣わしてくださるようにお願いした次第なのです」
「み、みこって・・・まさか神の子っていう意味だったり・・・」
「さよう。我らのためにお越しいただきありがとうございます、神子さま」
「神子って・・・我らのためにって・・・。僕は一体何をしたらいいんですか?」
なんだかクラスで流行っているゲームの中の世界みたいだなとぼんやり思いながら僕はポツリと呟いた。
「端的に申しますと、神子さまの気をもって穢れを祓っていただきたいのです」
「『気をもって穢れを祓う』??」
せっかく呼んでもらったし、ムラが困っているのなら、僕も何とかしてあげたいけれど、申し訳ないことに、聞いてもよくわからない。
「こちらにいらしてくださっただけで、そしてここにおわしますだけでも少しずつ穢れが祓われてゆくのですが、濃い穢れを払う方法については、ゆくゆくお伝えいたします」
(え。僕、いるだけで穢れを払っているの? 何だか、空気清浄機みたいだなあ)
人間空気清浄機という言葉が浮かんで、なんだか微妙な気持ちになってしまった。
「とりあえずこちらの社で寝起きをしていただくことになります。お世話をいたしますのは、こちらのユクリトでございます」
紹介されたユクリトさんは、他の三人の男の人よりも小柄で、僕と同じくらいの背丈のようだった。
これからお世話になる人だから仲良くしてほしいなという思いを込めて、僕はユクリトさんにそっと笑いかけると頭を下げた。
「ユクリトさん、これから、どうぞよろしくお願いします」
「勿体無いことでございます、神子さま」
ユクリトさんは少しも表情を動かさずに頭を下げた。