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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、滑る。

※本日2話更新しております。ご注意ください※




「……生きてるか」


「なんとか」


「いい加減、ゴール見えねぇかなぁ……」


幾つあったのか数えていたら、酔狂な趣味をお持ちですね、と言いたくなる。

そのレベルで一歩進めば床が落ち、一歩進めば弓矢が飛び。

二歩進めば天井が落ちて来、三歩進めば大きな岩が襲ってくる。


そんなトラップまみれの地下二階は、魔物が出ないだけまだマシなのだろう。

だが、次から次へと襲ってくる古典的な罠のバーゲンセールに、いい加減ウンザリしてくる。


そんな押し売りはいらん。

そう怒鳴って熨斗付けて返したい。


空間把握ですら見抜けない、このタチの悪い仕掛けの数々は一体何なのだろうか。

他のダンジョンにもトラップの類は一応見られはするが、ここまで目白押しなのは初めてだ。

二人は口を揃えて言った。


当然落とし穴の底はトゲトゲがビッシリ敷き詰めてあったり、底すら見えなかったりと殺意がかなり高く設定されている。

その底が見えない落とし穴に関しては、ドコに繋がっているのか好奇心が芽生えた。

だが、試しに落としてみた空き瓶がいつまで経っても底に着いた音が聞こえなかったので、降りるのは辞めておいた。


十秒以上経ってもガラスが割れる音が聞こえないんだよ。

底まで何kmあるんだよって話じゃない。

途中で気絶して死ぬわ!



死者の思念を取り込みダンジョンは成長すると言うが、俺の思考が取り込まれてない?

ダンジョンと言えばトラップ!

トラップと言えばコレ!!

と連想される罠がことごとく登場するのだけど。


発動スイッチをいつ押してしまうのかも分からないため、ろくに進めず一時間は経過している。

途中、このままでは埒が明かないと、空飛ぶ石版を作って浮いて先に進もうとした。

だが、何故か術の発動がキャンセルされてしまい、石版を作り出せなかった。


不思議に思っていたら、ダンジョンの中で強力な精霊術をぶっぱなしても、崩れたことが確かにないな、とカノンが気付いた。

ダンジョンの中は傷が付かない、付けられない。

そう考えて良いのだろう。


試しに風の刃を放ってみたが、確かに弾かれたように一筋すら入ることは出来なかった。

そしてその直後、刃が当たった壁か、それが弾かれた床に仕掛けがあったのか、天井がパカッと開いて油が床に降り注いだ。

絶対火の精霊術は使うなよ、クギをさされた。


なんの油かは分からないが、危険な橋を渡るつもりはない。


一度罠を発動させてしまえば、避けて進むことも出来るのではないか。

そう考え風を起こし、床も天井も左右の壁も、満遍なく精霊術で触れた状態にした。


だが結局。

油断をさせておきながら、何歩か進んだ先で何も無い空間から突如斧が横凪に通り過ぎて行った。

アルベルトが首根っこ掴んでくれなかったら、今ごろ俺の脳髄は床のシミとなっていただろう。

怖っ!



ズルは出来ないと、ため息をつきながら落とし穴から這い出てひと休憩。

相変わらず、気配察知に引っかかる魔物はいない。

空間把握によると、その先、だいたい五〇〇mも進めば行き止まり。

つまりこの階の最深部になる。


ちなみに現時点で進めたのは三〇〇mほど。

先は長い……


そう打ちひしがられているだけでは解決しない。

地面に手を付き、再度空間把握をするために霊力を床に壁にと這わせて行く。


いつもより注ぎ込む霊力を多めにしてみる。

……変化なし。


そこに属性を付与してみる。

……変化なし。

全ての属性で試してみたが、特にコレといった効果は得られなかった。


ポンっ、とクマ公を通路の先へ投げてみる。

……変化、なし。


空を飛んでいる間も、床に着地した後も、特に変化は見られない。

この距離ならば、罠のひとつやふたつに留まらず、五つくらいは作動していても良い気がするが。


先端に輪っかを作ったロープを取り出し、風で操りながらローピングをしてぬいぐるみを手元に引き寄せる。

その間も、罠は作動しない。

どゆこと?


光や霊力に反応して作動するタイプでは無いようなので、それでは重さかな、と思ったんだけど。

ぬいぐるみ程度の重量だと作動しないのかな。


何か重いもの、ないかな。

思い至ったのが罠の底に隙間なくビッシリと敷き詰められていたトゲトゲだったが、アレは取って来れないだろう。

先程、ダンジョンのモノは傷付けられないと結論づけたばかりじゃないか。


ほか……

ん〜……


あ。

「スキル」で創り出した物質なら重さも指定できるよな。


精霊術の場合、元からある素材を使わずに物質を生成しようとすると霊力をバカみたいに使う。

だから、強度も大きさもある程度必要な石版を一から精霊術で作るのは、非効率過ぎて止められた。


霊力が枯渇しても、背負って運ぶことも、回復するまで待つことも、こんな仕掛けだらけの場所では難しいから。


大丈夫とは言ったんだけどね。

俺が計測器で叩き出した霊力の総量を機械の故障や表示ミスと思っているアルベルトに頑として止められてしまったのだよ。


家で手合わせをしたり、森の魔物討伐で俺がどれだけ際限なくかつ無遠慮に精霊術を使いまくっているか、目の当たりにしているカノンはそこまで強固に反対はしなかったけど。


地下何階まであるのかも分からない。

普段のダンジョンとは全然違う。

この先に何があるのか全く予測が付かない状態だ。

温存しておくに越したことはない。


この三人の中で最もダンジョンに潜り、戦闘の経験も多いカノンがそう言うのだ。

それに倣うべきだろう。


そう思って地道に進もうとして、コレですよ。

攻略に何日掛けるつもりだ。

商人のオジサン(トルエバさん)が待ちくたびれて干からびてしまうぞ。



赤外線センサーのように、目に見えない検知器が付いていて、遮光されたら標的が通過したと判断され罠が発動する。

そんなタイプでは確実にないことがクマ公のおかげで分かった。


なので、他のふたりに分かりにくい大きさの、重たい物質を作ってそこら辺の床に落としてみることにした。

闇雲に発動する度に対処するのは精神的にもキツいからね。

実験は大事。


想像しやすい方が、そして具体的にイメージされている方が「スキル」使用に際しての疲労度が変わる。


地球で最も重い金属がオスミニウム。

次点でイリジウムとされている。


二〇一〇年位までは逆とされていたんだよね。

X線回折って現象から割り出されるデータから求めた密度計算が、過去のものよりも信頼性の高いデータが得られた。

それにより〇.〇二五g/cm3オスミニウムの方が重いと分かったとか。


もう、誤差やん、そんなのと言いたくなる。

だが、科学者はその微妙な差異により事実を捻じ曲げられるのを嫌うからね。


計算機も測定器も、年代を重ねる毎に緻密で繊細な計測を出来るようになっていった時期があるのだから、常識が覆る歴史的瞬間というものが、このふたつの物質のように当然あったのだろう。

その瞬間に立ち会った科学者たちは、歓喜の悲鳴を上げたのか、悲哀の号哭を上げたのか。


Osで二二.五九g/cm3。

イメージしやすいのは、そのままの密度と質量で作り出すことだけど。

小さくしようとし過ぎると疲れるし。

「スキル」を使ったとアルベルトに分かりにくいように、小さい小石のような物を創って投げてみようかとも思うが、重さが足りずに反応しなかったら意味が無い。


靴の中身をオスミニウムで充たすイメージにしてみるか。

それなら、片方で俺の体重分位の重さにはなるだろう。


靴を脱ぎ中身を創る。

そして先程のロープを括りつけ、ぬいぐるみを放り投げた場所を目掛けて投げてみた。


遠隔操作だとイメーシしづらいからと、先に中身を充填したのだが、思いのほか重くて投げるのが結構大変だった。

そりゃそうか。

大きくはないからそうは見えないが、六〇kgを超える物を片手で投げたのだから。

肩が壊れなくて良かった。


飛距離が足りなさそうなので、風の精霊術で更に遠くまで運ぶ。

重いだけあり、着地の瞬間、ゴンッといい音がした。


目論見は、外れた。


靴そのものの重さではなく、音か振動に反応したのだろう。

靴が着地した場所を起点として、通路の奥へ、そしてコチラにも向かって次から次へとワナが作動し出した。


ぎゃー!

ちょっと!!

俺の靴!!!

ズタボロになっちゃう!!!!!


罠を抜け出した直後のセーフティゾーンだったため、俺たちの周りはかろうじて無事だった。


二歩進んだ先の壁から薔薇の棘のようなものが生えた鞭が伸び、反対の壁にぶち当たっていた。

本来ならば、人がそこに立っていて捕獲するための罠だったのだろう。

トゲトゲが絡みついてとても痛い目に遭いそうな罠である。


天井からワイヤーがすごい勢いで発射され床に突き刺さっていたり、黒いボールが落ちてきたと思ったら床に接触した瞬間爆発したり。

あ、なんかマキビシみたいなの飛び出した。


ホント、殺傷能力が異様に高い。

地雷にも釘やら針金やらを入れて、怪我人を増やして敵戦力を削ぐ工夫が凝らされていたとか言うもんな。


おかげで俺の靴の安否が不明。



今まで進んできた道と同様、時間経過により引っ込んでいったり、ダンジョンに吸収されていく罠の跡。

魔物みたいに元々有機物だったものが、水銀のようにドロリと崩れる様は、正直不気味に思ったが、無機物だとそのままの形を保ったまま吸収されるんだな。

その差は一体何なのだろう。


まぁ、俺の靴が生贄になったおかげで突破口が見い出せた。

尊い犠牲に合掌。


だが前方に目を向けると、繋いであったロープこそ見るも無惨な姿になっているが、靴はそのままキレイな形を残していた。


冒険者がダンジョン内で死ぬと、装備品も漏れなく吸収されると聞いていたので驚きだ。

重量があると、吸収されるのに時間が掛かるのだろうか。


「楽に進む方法が思いついたのか?」


「うん。

ちょっと待ってね」


ぬいぐるみの重さは一kgない程度。

その重量が床に着地した程度の音や振動では罠は発動しない。


音が振動のどちらかなら、振動だろうな。

会話には罠は反応しないのだから。

あぁ、でも音も振動の一種か。

そう考えると、床に響くような音を出したら、トラップが発動する可能性は捨てきれない。


だが、壁に仕掛け発動のセンサーはついていないことが分かった。

キャットウォークのように、壁に通路を新たに出現させることは出来ないだろうか。

壁に触れて精霊術を使おうとするが、やはり出来ない。


ダンジョン内部は床も壁も関係なく傷付けられないのね。

了解。


カノンはともかく、アルベルトはそこそこ良い体格をしているので、結構体重があるだろう。

防具も金属製だし。

総重量はかなりのものになる。


土で床を覆う方法を考えたが、振動の他にある一定以上の重量も罠発動の引き金だった場合、土そのものの重さが仇となる。


浮かせて、長い橋のように作るには所々支柱が必要だし。

頑丈にしないと、アルベルトが踏み抜いてしまうからね。


そうなると、支柱を創る場所は罠が無い所を選ばなければならない。

だが、ソレが分かれば最初から苦労なんてしていないのだ。

先程罠が発動した場所は確認した。

視認できた場所までならソコを避ければ良い。


だが、その支柱が途中でダンジョンに吸収されてしまったら。

バランスを崩してる転んでしまったら。


とても悲惨なことになる。

辞めておこう。


幅広の突っ張り棒を幾つも設置してみるとか。

……壁に拒否された。

意思でも持っているかのように、設置しようとした壁がグニャリと柔らかい素材に変質し、固定させてくれない。

イジワルだな。


油が落ちてきた罠があったよな。

油よりも軽い水なら、床一面張っても問題ないかな。


……うん、大丈夫そう。


氷よりも雪の方が、音や振動の伝導率は低くなる。

ただあの音を吸収してくれる結晶の形を保つにはある程度の高さから降らせることと、-五度以下の環境が必要だ。

ダンジョンの中は太陽光が当たらないので、この季節でも結構ひんやりとしている。


風邪をひいたら良くないし。

冬を到来させるのは辞めておこう。


どれくらいの厚みなら罠は発動せずに耐えてくれるかな。


足と違い点で重さが伝わらないし、振動の伝わり方も氷内部で起こる屈折によって変化する。

良い感じに出来ると良いな。



地面に手を置き、イメージする。

地面に霜が降りる情景を。

その霜が薄氷に変わり徐々に厚みを増していく様を。


冷気とともに五cm程の厚みの氷を床一面に張り巡らせた。

薄く水色に見える氷の床は、スケートリンクのようである。

靴底にエッジでもつけてスケート靴にして滑ってみるか。


そろりと注意深く登ってみる。

……問題無し。

何歩かそのまま歩いてみる。

……コレも問題無し。

あるとすれば、靴下のままの片足がそのまま張り付いてしまいそうな程に冷たいだけだ。


ケンケンして振動によって罠が発動してしまったら単なるバカなので、靴底を濡らしてスイ〜っと滑って、靴を投げた場所まで移動した。


……靴を回収する平和的な方法が、周囲の氷を溶かして氷漬けにされたまま引き上げる。

その後安全地帯まで移動した後に氷を溶かして乾かす、というものだったので、泣く泣くアルベルトに引きずって運んで貰う形となった。


とても絵面がダサい。


姫抱っこしようかと聞かれたが、氷がその重量に耐えられない可能性があるとして、遠慮をさせて貰った。




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