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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、ダンジョンに潜る。




瘴気が溜まりやすい森の中や戦地跡。

内乱が長期化しているような国でも見られるのが、ダンジョンである。


場所により中の様子は異なるが、どこのダンジョンでも共通しているのが、異様な雰囲気を持つ入口。

そして外とは比べ物にならないくらいに強い魔物だ。


その魔物たちを見事撃ち倒した報酬と言わんばかりに、何故か宝箱がランダムで設置されている。

そこに入っているのが、誰が打ったのか定かではない、だがしかし桁違いに強い武具であったり、誰が加工したのか眩く光り輝く宝石や貴金属の類であったりする。


そのため街に入ることも出来ない、金銭も食うものもない。

そんな後がない冒険者が、一攫千金を狙って挑み、結果帰ってこないことも数しれない。

むしろ、戻ってきたという武勇伝すら聞かない。


それでもどこかのダンジョンに、今日も人知れず挑む冒険者はいる。


ダンジョンとは、供養されず、聖水による浄化もされず、長年放置された死骸から溢れた瘴気により作られるのだろう。

死者の念により願望が形作られ、宝箱という形で、ダンジョンの奥には魅力的な財宝が眠ることになるのだろう。


そう考えられているが、真偽は確かではない。


そもそも、瘴気とは一体何なのかが分かっていない。


強い魔物ほど聖水による弱体化や浄化が見込めないことから、魔物の力の源だと言われている。

瘴気を可視化するほどに撒き散らす魔物の中には精霊術に似た力をふるう個体もいる。

霊力のようなものなのではと考える者もいる。

カルト的な考えになるが、屍から発せられるのだから怨霊のようなものではないかと妄想する人もいる。


実体を伴わない分、その正体は噂話のように真偽を問わず、人の間に広がっている。



“喰魔の森“の中。

位置としては王都(ディルクルム)とウヌモ町の中間位のあたりだろうか。

それよりは王都寄りだな。


森が突然消失したような、違和感バリバリの空間の先に突如として現れるダンジョンの入口。


瘴気の濃度が高いと草木が生えないそうなのだが、その状態を長い間放置しているとダンジョンが形成される。

草木が映えないということはつまり、地の精霊により霊力が補填されていない土地になっているということ。


そして瘴気は更なる瘴気を呼ぶ性質がある。

正気が溜まり空気は澱み、霊力の一切がなくなってしまった空間に、突如、ダンジョンは出現する。


瘴気が多く漂っている所や、その濃度が高い所にダンジョンが出来るという割には“水晶球の白滝“付近にダンジョンがあるって話を聞かないよね。

そう疑問を口にすると、付近の森は瘴気の濃度は確かに高いが、白滝から流れる聖水のお陰で常に浄化され続けている。

なのでダンジョンが形成されにくくなっているのだそうだ。


されない、と断言はしないのね。


だが霊力が僅かでもあれば、ダンジョンは形成されないとされている。

なので聖水の滝が流れ続ける限り、可能性はほぼほぼ、ゼロに近い。


その上で、カノンが定期的に瘴気を集めやすいとしている魔物を間引きし、直接聖水による浄化をしているからこそ、今のバランスが保たれている。

オレは一部しか知らないが、あそこの森はかなり広大で、聖水は下流に行けば行くほど浄化の効力は落ちていく。


上流の方の浄化に霊力使っちゃうからね。


なので過去、年単位で家を空けた時には、下流区域にしっかりダンジョンが出来上がってしまっていた。

聖木の一部は枯れ、崖は崩れ落ち遺跡の一部が破損した。


疲れて家に帰ろうとしたらそんな風景が広がっていたのだ。

カノンの絶望はかなりのものだったろう。

血の気が引いて、うちひしがる余裕すらなかったと遠い目をして自嘲したが。


三日三晩かけてキチンと責任もってダンジョンを破壊し、溢れた魔物も倒した。

だが全てはまだ元に戻っていない。

維持するのには時間も手間もかかるのに、破壊するのなんて一瞬だもんね。


おつ!


そのため、素材集めが大事だろうと、出来れば年に一回は家に戻らねばならない。


二年は最低開けても大丈夫な気はするが、カレンダーで日付の管理をしているわけではない。

世界中を旅しているので四季による気候や気候の移ろいの変化で、どれだけの月日が経ったのかが分かるわけでもない。


なのでなるべく年に一度は帰るようにしたいそうだ。

その年一で帰省したタイミングで、俺を拾ったんだね。


出来るならば通年通り、薬草作りが盛んな初夏か、外に出るのが億劫になるり研究が進む冬を目掛けて帰りたいと言われた。

今が夏真っ盛り。

今年の冬だと早すぎるし、来年の冬だとちょっと遅い。

まぁ、年に一度というのなら、初夏になるだろうな。



どんな魔物でも瘴気を少なからず内包している。

その瘴気を払えば、そして瘴気が内包できる量の少ない近縁種の魔物同士を掛け合わせれば、家畜化できる位には大人しくなることが、シュケイや鎧牛で分かっている。

あと、トルモ町で牧羊している魔羊(アルヴィス)なんかもそうらしい。


家畜化したい魔物に与える水は聖水オンリー。

飼料も霊力がたっぷり詰まったお手製ブレンド。

それを何代も根気強く繰り返して、瘴気がほぼ内包されない家畜として固有化する。


瘴気をどこからか取り込んでしまうのは、もう致し方のないことだとして、日々の飲み水はなるべく清浄なものを与えるべし、としているそうだ。

カノンが世界中を回っているのはそれが守られているのかの確認も兼ねているからだとか。


心配性なのは知っていたけど、それを守らなかったら痛い目見るのは自分たちなのだから、そんな気にする必要ないと思うのだけどを

まぁ、性分なら仕方ないのか。

そのうちぶっ倒れないか心配だな。


他の人に割り振れる仕事はドンドン回していかないと、自分の仕事ばかりが増えて、首を絞めることになるぞ。

俺みたいに他に投げられる作業は、全部人任せにしてしまえば良いのに。



「…っ、……ぜぃ、はっ……

 なん、おま…ら、そん……はゃ……」


不審者ばりにゼィゼィ、ハァハァ言い、汗水垂らしながらようやく追いついたアルベルト。

クーリングダウンもせずに突然しゃがみこんだら、身体に負担かかるぞ。

疲労も蓄積されやすくなるし、いいことないのに。

徐々にスピード落とすなり、しばらく歩くなりしなさいよ。

それをする余裕すらないなら、せめてちゃんとストレッチをしなさい。


飲み水兼用で持ち歩いている聖水の入れ物を掲げて渡して良いかカノンに確認したら、小さなため息をついてどうぞ、とジェスチャーで許可が出た。


フタを開けて差し出せば、まだ息が整わないようで、お礼も口では言わず、掌を立てて左手の甲の上をその手刀で一度叩いた。

コレで頭も同時に下げたら完全に手話だな。

頭はうつ伏せたままだから、これ以上下げようが無かっただけかもしれないが。


一息で飲み干し「うめ〜」と感想を述べたあと、改めてお礼を言いながら空き瓶を返却された。


そうでしょうとも。

軽く冷やしたからね。

激しい運動直後に冷たい飲み物を飲むのは、胃腸に負担が掛かるし本当は良くない。


だけど、運動後のキンキンに冷えたスポーツドリンクとか炭酸飲料とか超絶美味しいじゃん。

身体に吸収もされやすいし。

汗を結構かいているのだし、この程度の量なら問題あるまい。


「……まぁ、許容範囲内か」


どこからともなく取り出した懐中時計を確認し、カノンはアルベルトの返事を待つことなくダンジョンの説明を続けた。



ココのダンジョンは“喰魔の森“の他、崖上に広がる森や王都周辺の瘴気が集まっていると見られている。

集められている範囲が広いので、瘴気の濃度が他よりも濃く、その分中にいる魔物は当然強い。


ここ近年はこのダンジョンから魔物が溢れ出てきたような被害は報告されていない。

それが、誰かが中に入り魔物の数を減らしているからなのか、瘴気がさほど集まっていないからなのか。

はたまた全く別の理由なのかは、不明。

少なくともカノンは手を加えていないし、国も何もしていない。


瘴気は鬱鬱しい気持ちとか、不平不満のような負の感情の集まる所にも多く現れる。

……らしい。


だから戦争が起こるかもしれないと噂されている、しかも重税に苦しみ食べ物の確保にも苦労している人が多いのに、瘴気の集まる量が少なくなっているとは到底思えない。


誰か強い冒険者が入ったのなら、死んだにせよ生還したにせよ、その噂話の一つすら王都に流れてこないのはおかしい。

ウヌモ町にも、当然そんな話は聞こえてきていない。


考えられるのが、今この瞬間にでも魔物が溢れ出してくる可能性。


その言葉を聞いた途端、つい、真っ黒な深淵にでも続いていそうなダンジョンの入口に目をやってしまった。

アルベルトなんかは生唾を飲み込んでいる。

その音がイヤに響いた。



ダンジョン内の魔物の殲滅、及び弱体化はアリアと話していた時は緊急度は低いとされていた。

全てのダンジョンの位置を把握している訳ではないし、どんな様子なのかも王城から離れていない彼女には知る由もない。


致し方ないとはいえ、そんな危険な状態のダンジョンがこんな所にあるだなんて。

なんてこったい。


カノンとしては、聖水による瘴気の減少程度の応急処置だけでも良いかな、と当初は考えていた。

そのために俺に大量の聖水を運ばせたのだし。


だが、俺が“喰魔の森“のど真ん中に街道を通したいと言いだした。

しかもその案に王様(アリア)が許可を出した。


人の行き来が増えて活気づけば、負の感情が集まることが少なくなり、結果瘴気は減る。

冒険者が集まれば魔物も減るし、キチンと処理をすれば瘴気は発生しない。


ならば腹を括ってダンジョンそのものを破壊してしまおうと考えたそうだ。

破壊さえしてしまえば、アリアが住む王都周辺に新たにダンジョンが出来る可能性は低い。


さすがシスコン。

妹に危険が及ぶ可能性を、この際ついでだからと減らそうと考えたのだな。


崖上の森の分の瘴気は、どうするか。

ココの瘴気溜りが強力だったが故にコチラに吸収されていた、もともと他国の領地の瘴気だ。

別の所に瘴気溜りが出来て新たなダンジョンが発現するか、もしくは他の比較的近い現存するダンジョンに吸収されるかするだろう。


アルベルトの腕試しも出来る。

俺は武器の扱いに慣れることが出来る。

カノンも新しい精霊術を試せる。

口には出さないが、ダンジョンという異世界の醍醐味を満喫出来るのもおいしい。

一石二鳥どころではないお得感満載なプランだ。


アルベルトが回復したのを確認し、では。

いざ行かん!

初ダンジョン!!




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