神さま、謳われる。
ご覧くださりありがとうございます。
昨晩(2024/11/26)の地震、皆様大丈夫でしたか?
大事無いと良いのですが。
油断した頃に来るので、日頃から備えねばなりませんね。
「即行現金化できる物ってなぁんだ?」の問いに「食べ物と回復薬!」と返された。
そこら辺にいた冒険者たちに聞いても、検問所に立つ兵士さんに聞いても同じ答え。
即物的にも程がないだろうか。
生活に余裕がなければそんなものか。
かく言う俺も、即物的だからこそ現金欲しいってなってるわけだし。
彼らを責めることなんて出来るはずがない。
回復薬は俺の手持ち分は全て手放してしまったので、それじゃあ肉だなと即断。
サクッと魔物を探知して、俺は狩り。
カノンにトニさんや兄弟弟子の店までの運搬を繰り返してもらった。
目標金額は商人のオジサンと冒険者への依頼料、あと街にも幾らか現金は置いておいた方が良いと判断。
ということで金貨数枚分。
なるべく小銭で。
コレからオルトゥスの人口は、移民を迎え入れてどんどん増えていく予定なのだ。
多めの方が良いだろう。
俺は幾らでも狩れるし。
「価格交渉なんて要らないから、最低価格で売って。んで、目標金額まであと数体で良いよって状態になったら教えて」
そうカノンに言って数が多すぎて文句が来そうな勢いで狩りまくった。
なにせ門番や憲兵が入国審査ではなく、魔物を街の中に運ぶ仕事に駆り出されてしまった程だし。
文句ではなく感謝の言葉が降り注いだそうだけど。
「“賢者“様が大量の食料を恵んでくださった!」とかなんとか言って、大量にお肉が市場に出回った。
普段の半額以下の値段で放出されたお肉のおかげで、昼過ぎにも関わらず、市場が滅茶苦茶賑わい、活気に溢れた。
口コミにより集まった大量の人に、王都にこんなに人がいたんだ!? とつい笑いが込み上げてくる位に人が溢れた。
お祭りのようだとはしゃぐ子供も居たそうだ。
値崩れに対してお叱り言葉が一言も出ないあたり、切羽詰まっているんだなと思う。
普段解体の助手しかさせてもらえない立場の人や、トニさんの所にいたような、将来解体業に就きたい人も手伝いに駆り出されることになった。
経験が積めるとみんな目を輝かせて真剣に取り組んでいたが、途中から次から次へと運び込まれる魔物の山。
途中からは「とりあえず皮はいで内臓取ったら肉屋に持っていけ!」と怒号が各所で上がることになる。
背割りして枝肉に持っていく作業までしていたら、とてもじゃないが手が足りない。
洗浄まではするから勘弁してくれと思うが、どうせ重くて引きずられることになるのだ。
途中から洗浄すらされなくなった。
後日談となるが、擦れた脂が塗りたくられた地面は悪臭が出る前に、“賢者“と彼に度が過ぎると怒られた“件の子供“が責任もって洗浄したと言う。
普段は脱骨も小割もしてくれる、丁寧さが売りの解体屋であっめも、大分割すらされない状態で肉屋に卸す始末。
肉屋は枝肉から、普段販売している整形までの間に、とてつもない苦労があるのだと身をもって体験した。
コチラも商売なので取引額を融通することは難しいが、ケチをつけるようなマネはもうしないと、生臭くなりながら心に誓ったという。
スピード勝負となったせいで、内臓の一部が破れたり、不慣れなせいで脂を多く落としすぎたり、逆に皮を剥がし損ねて毛が残ってしまったりしたような、肉屋に卸せるような出来じゃないものは、解体屋と有志により無償で炊き出しが行われ、直接貧困層に届けられた。
そのため普段お腹を空かせている子供たちが、お腹いっぱいになるまで食べれたそうだ。
子供の笑顔は良いよね。
ついつられてコチラも笑顔になってしまう。
欲がない、と言うよりは我欲が低く、幸せになるなら皆で、と考える傾向にあるってことなのかな。
久方ぶりに政治のグチを聞かない、晴れやかな表情が満ちた王都になった。
俺は血の臭いに顔を顰めながらも狩り続けた。
肉屋の保管庫が閉まらなくなると途中で言われたのだが、ストップをかけなかったカノンが悪いと思う。
忙しすぎて、あと俺のスピードが早すぎて静止を掛けられなかったが故なのだが。
故意にやったわけじゃないのだ。
致し方ない。
そう、仕方がなかったのだ。
それじゃあソロソロ終わりにするか、と思って手を止めたのに、血の臭いに釣られて魔物が次から次へと襲来してきたのも、仕方がなかったのだ。
倒すのは造作もない。
王都周辺の魔物は、“水晶球の白滝“周辺の森に住む魔物と違って大きさもないし狡猾さもない。
連携を取ることも知らない、ただ愚直にコチラに向かってくるだけの知能の低いケモノだし。
俺が直接手をくだす必要もなく、勢いに乗った前方に分厚い土の壁を用意するだけで良い。
血抜きしなきゃと考えなくて良いんだし。
出現させた壁に制止する素振りも見せずに次々とぶつかっていく魔物の大軍。
ぶつかった魔物につまずき、つまずいた魔物の上に別の魔物が将棋倒しのように連鎖して倒れ込んでいく。
若干コチラに向かって、なだらかな下り坂にしたのが功を奏した。
勢いづいてしまって止まろうにも止まれず、下手にブレーキを掛けた魔物は他の魔物をなぎ倒しながら転がって行った。
そしてその魔物をまた後続の魔物が踏み潰す。
最後列の魔物がもがき足掻いている所にサクッとトドメを刺すだけで済んだのだから、倒した数の割には簡単なお仕事だったな。
この量が王都に雪崩込んでいたら結構な被害になっただろう。
何度か土壁補強したし。
まさに死屍累々の地獄絵図となった防波堤より向こう側。
下の方の魔物は見事に肉も内臓も関係なくミンチになって土と一体化しているだろうから良いとして。
上のマシなヤツはどうしようか。
自分たちで捌いて食べるにしても、さすがに量が多い。
温かい季節だし、街への土産にするにはちょっとねぇ。
迷っていたら今日王都の外壁付近で野宿予定の冒険者たちが図々しくも恵んで欲しいと声を掛けてきた。
何も手伝わなかったクセに! とは思うが、街中で肉を焼く良い匂いが漂ってくるのに、自分たちはありつけないんだもんな。
確かにこの状況は拷問だ。
冒険者ギルドの宣伝チャンスを逃してはならない。
これ幸いと、所属するかどうかは別としても、首輪を受け取ってくれた人一人につき一頭魔物をプレゼントした。
ほぼ無償で渡すことに驚かれたが、ギルドの詳細説明を聞くために、この人たちは一度は街に赴かなければならない。
首輪の正式登録をするために、もしくは合わないと判断し首輪を返却するために。
街に来る。
つまりは、金ヅル。
良い印象を与えておいて損は無いだろう。
だってどうせ要らないなら埋めるだけだし。
肉醬を作るにしても、干し肉や燻製を作るにしても、この季節では最低塩がいる。
出来れば殺菌作用や臭み消しの効果があるハーブも欲しい。
肉屋も解体屋も保冷庫が全て埋まってしまっている。
そんな状態なのだ。
王都の居見世である三河屋各店の調味料の在庫が無くなったら、それ以上の肉は搬入されても困ると、既に言われている。
そうなると、勿体ないとは思えども、棄てるしかないのだ。
商人のオジサン含め、行商人各位は「なぜもっと塩を仕入れてこなかったんだ」と血涙を流してた。
ドンマイ。
保存出来なかったら腐るだけだからね。
腐敗臭の被害や、疫病被害を出さないためにも、有効利用してくれる人がいてくれるのは、コチラとしても有難い。
久しぶりに腹いっぱい肉が食えると喜ぶのは、なにも子供だけではないのだとこの時知った。
身体が資本の冒険者業だろうに。
お腹が減って力が出なければ、死へ直結しかねない。
それでも、実力が不足すれば狩りは出来ない。
泣く泣くその辺の草しか食べれない日も多かったのだろう。
調味料は持ち歩いていると言うし、下手ながら解体も出来ると言うので、素材も含め好きなようにしてくれ。
ただ、魔物が寄ってこないように後始末だけは各自責任をもってやってくれ。
「もし軽く穴掘って埋めるだけ、なんて適当なことしやがったらブッ飛ばす」と言ったら、無言でコクコク素直に頷いてくれたし、大丈夫だろう。
土葬って何mくらい掘るのが良いんだろ。
施設では土とはほぼ無縁な生活だったから、微塵も想像がつかないや。
えーっと……「知識」にアクセスして出てくるのって大抵がペットの埋葬方法だな。
小型の動物なら一m程度で良さそうだけど、目の前の死骸は一個一個が大きいし量もある。
その上臭いによって掘り返すような害獣は、この世界では漏れなくカラスや野犬なんて比較にならない程、デカくて凶暴なクチバシや爪を持つ魔物である。
人間の大きさで二m程か。
どうせ精霊術で掘るし、土を被せるのだ。
深めに掘っておいて損は無い。
深さを十mに設定して、魔物の死骸が山積みになっている足元の土をそのまま消失させる。
ボゴン、と重量物が落ちるくぐもった音と震度一程度の揺れを観測した後、精霊術で生み出した水を全体にかける。
汲んできた聖水には限りがあるのだから、これだけの量を使うのは勿体ない。
精霊術なら惜しむことなく使えるし。
局所的な雨を振らせている間、キラキラと空間に霊力の残滓が見えた。
姿形は見えないが、アクアが手を貸してくれたのだろう。
ラッキー。
水に含まれる清浄な霊力が多くなるから瘴気の心配がコレでなくなるね。
対抗心なのか、埋土が小高い丘状態になってしまったのは想定外だったが。
山にならなかっただけマシと思おう。
どんちゃん騒ぎの王都の店は軒並み閉店。
肉屋の裏方は疲れ果てた人が転がっているし、解体屋の周辺は腱鞘炎になった職人たちが「もう当分お肉見たくない……」と魂を口から覗かせている。
飲食店だけは片っ端から肉を煮て焼いてと今も忙しそうにしている。
食中毒だけは勘弁して欲しいので、しっかり火を通してね。
主婦の方々が包丁片手に塊肉を適当な大きさに切り分けている姿は、少々猟奇的に見える。
だが、まぁ、人が足りないのだし仕方ない。
それを人に突き立てないようにだけ注意してね、と思う他ない。
返り血を浴びて胸元を真っ赤に染めた包丁を持っている、滅茶苦茶いい笑顔をしている人と何人かすれ違った。
サイコホラーな世界に迷い込んだ気分になって、とても落ち着かない。
背後から声をかけられた日には漏らしてしまいそうだ。
イヤ、今心構えしたから。
きっと大丈夫。
「ぴっ!」
ぽん、と不意に肩に手を置かれ、変な声が出た。
声を我慢する準備までは出来ていなかったから、上から漏れ出た。
下から漏れ出なかっただけ良しとしよう。
股間が濡れることはなかったのだ。
俺の人権は守られた。
「済まない。
驚かすつもりはなかったんだが……」
「イヤ、俺もお前の存在忘れてたし。
ゴメン」
ヒドイ! と半べそかいて非難の声を上げたのは、肉串を片手に抱えたアルベルトだ。
商人のオジサンと一緒に居なかったんだもん。
勢いに任せて行動することに定評のある俺ですし。
約束の時間にいない人間のことは基本忘れてしまう。
いいな〜。
焼肉を食べた後とはいえ、オヤツは別腹だ。
俺も食べたい。
冒険者への売り込みと、分けてくれたお肉にお礼を述べて、カノンと合流するための道を歩きながら、今後の予定を話した。
国王から依頼されたうんぬんは話さなくても良いだろうから、そこの部分は省いてになるが。
カノンの知り合いや、更にその知り合いなんかを合計二十名程街へと移送すること。
そう言えば街の名前がオルトゥスに決まったこと。
街に移送するのに、アルベルトが勧誘した冒険者に早速依頼を出したこと。
その後はトルモ町に向かうこと。
俺たちについてくるのか。
はたまたここで別れるのか。
アルベルトはどうしたいのかを尋ねた。
彼は腕を組み天をあおぎ、どうしようかと悩んだ。
器用に道行く人を避け歩きながら。
でも串を咥えたままは危ないから。
転んだら喉に突き刺さったり、ヘタすりゃ脳ミソが串刺しになるぞ。
「ん〜……別れなきゃいけないって言うなら別れるし、着いて行っていいなら着いてく」
「そんな適当でいいんだ」
「適当って言うか……お前が嫌じゃなければ着いて行きたいって意味なんだけど」
「俺がイヤって言わなくても、カノンがダメって言ったらダメだからな」
「保護者の許可がいるんか〜」
とりとめのない会話の合間、歌が流れ聞こえてる。
今日を良き日とし、精霊や“賢者“に感謝をささげる歌だ。
俺の耳にその内容が届くことはなかったが、どうやらいつも歌われる歌詞とは違う部分があったようだ。
輪唱する宗教歌。
神と精霊、そして御使いである賢者に捧げる感謝と信仰の歌。
いと高きところにおわす神に栄光あれ
地を這う善意の者たちに神の栄光あれ
祈り届くところに精霊の慈悲よあれ
手の届くところに精霊の恵みあれ
私たちは汝を称える
私たちは汝をあがめる
私たちは汝を拝む
私たちは汝を誉める
私たちは汝を望む
汝は賢者を遣わす
(汝は我らを憐れむ)
私たちは汝を望む
汝は一人子を遣わす
(何時は賢者を遣わす)
精霊とともに恵みを与える
精霊とともに恵みをもたらす
神よりの精霊を
光よりの輝きを
雨よりの甘雨を
(救いよりの恵みを)
地よりの歓天喜地を
(真よりの真実を)
然りしからばそうであれ――
その歌と共に“賢者“と行動を共にする一人の子供の存在は、その見目も手伝い加速度的に詩人が唄い世に広めていくことになる。
俺の与り知らぬ所での話とはいえ、うん、いい迷惑だ。




