神さま、馬車を改造する。
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解体したお肉を使って引越し祝いもかねた焼肉パーティをした。
さすが王都。
調味料が多い。
街に一旦帰るのなら、その前に買い込んで置かなきゃ。
サージにお土産だね。
街に帰った時に美味しいご飯でお出迎えしてもらえたら嬉しいじゃん。
料理研究を楽しみにしていたし、俺も彼の成長を楽しみにしているのだ。
ニンニク、生姜はあるけど、ゴマ油がないのは辛いな。
胡麻はあるのに。
ゴマ油の風味があるか否かで食欲のバロメーターの針の動き方変わらない!?
あのひと垂らしで全然変わるんだって。
味が決まらず迷ったら小さじ一のゴマ油。
これ必須。
豆板醤はないから味噌と唐辛子使わせてもらおう。
お砂糖も遠慮なくドバーっと入れたらひかれた。
え? 肉を甘くするの?? と訴えかけてくる困惑した視線が鬱陶しい。
甘辛いのが美味しいんじゃん。
漬け込んでよし、焼いた肉にかけてもよし。
肉丼の上からかけたら米も肉も秒で消える焼肉のタレの完成だ。
誇張がすぎた。
でも、それくらい美味しいんだって。
お祝いごとだから特別だと言って出されたお米は玄米とクズ米のブレンドだったが、それでも久しぶりのお米は美味しかった。
次は銀シャリが食べたい。
水田に適した場所ってないかな。
陸稲栽培方法もあるけど、どうせならコシヒカリが食べたいし。
粘り気のある粒の大きいお米が好みなのだ。
ご飯を食べながら、トニさんによる解体講座は口頭で続けられた。
双峰牛の皮はあまり強度がないので、なめして革製品にする。
コブは燃料になるからその他の脂と一緒に製油工房に売る。
もしくは自分で加工してロウソクにしたり、料理油にして使うも良し。
オスのもつ大きな角は、霊力の通りが良い。
杖の装飾に使うか、付与の触媒される。
陰茎鞘が一番高く売れる――が、何に使われるかはまた今度教える、と俺をチラリと見て咳払いして誤魔化された。
なんやねん。
胃袋からは水筒が作れる。
双峰牛は水属性のため、特に年老いた個体の場合、他の素材はあまり期待できないが、胃袋を上手く加工すると、微弱でも霊力を込めれば水が出てくる水袋にすることが出来る。
そう言って取り出された小ぶりの茶色い袋は、中身が空なのを皆で回して確認したにも関わらず、トニさんが霊力を流したら次から次へと瑞が溢れてきた。
魔物素材の加工品ってこんなのもあるんだ。
誘われるがままに、他の冒険や子供たちに混ざって講習を受けて良かった。
カノンは自分で水を作り出せるのもあり、こんな物が作れるなんて教えてくれないし。
骨は細工師が骨針にしたり、家具屋が膠を作ったりするので、何処に売るでも引き取って貰うでも良いと言う。
懇意にするところを一件は作っておけ、と子供たちに言っていた。
こういう商売は持ちつ持たれつな部分があるから、贔屓にする取引相手がいるかいないかで、自分が大変な時助けてもらえる。
その代わり、相手が大変な時は自分が助けろよ、と。
相補的関係の繋がりを持つのが大事である、と。
貰った恩は倍で返す心づもりでいろと再三似たような言葉を繰り返した。
先代から口を酸っぱくして教わったことなんだろうな。
思わず笑ってしまった。
この店も、不景気な時に買取価格を上げてもらって助けてもらったことがあったし、客に頼まれた商品を作る材料がないから急遽用意してくれと言う無茶ぶりに対応したこともあった。
お前たちもそうやって助け合って、大切なこの街を守り、もっと発展させてくれと、表情を一変させ、子供たちの頭を優しく撫でた。
ちなみに。
陰茎鞘とやらは何に加工するんだ? とカノンに尋ねたら避妊具だと回答を頂いた。
また無知のせいでセクハラしてしまったよ。
双峰牛は水属性の上、魔物のくせに治癒術も使う。
うまく加工する時自浄作用もついてくるので破れない限り繰り返し使えるので貴族男性にとても人気だそうだ。
コンドームは使い捨て、という常識しかないから勉強になったよ……
トニさんが言い淀んだ理由はよく分かった。
子供がいる中で下ネタは言えないよね。
安全かつ確実に街に戦力にならないような女子供を運ぶとしたら何人までか。
馬車と並走し続けるとしたら、冒険者諸君はそれが可能なのか。
後者はずっとはムリ、とアッサリ言われてしまったので、そうしたら冒険者一人につき何人までなら守れるかを聞く。
ザコでも集団で来られたら我が身を守ることも厳しいと答えられ、冒険者の質の低さに驚くばかりだ。
ガチで、三バカたちって世間一般では強い方なのかもしれない。
だって四人で村の人たち全員無事に送り届けたんだよ。
実は俺、結構な無茶振りしてしまっていたのだろうか。
そうなると護送中は俺とカノンが被害が出ないよう目を光らせるしかないな。
それじゃあ、商人のオジサンの馬車が何人までなら乗せられるのかによるんだな。
ということで、先の計画を立てるためにも、予定していた時間よりは速いが商人のオジサンと合流することにした。
俺とカノンはどうせ通行税が掛からないので門から堂々と、第一区画から第三区画まで移動。
冒険者の人たちは、第一、第二区画の門はコッソリコースからの出入りだそうなので、バレないようにね、と言って別れた。
皮や毛と交換した回復薬に、鑑定士に書類を発行してもらったおかげで良いお金になった、とホクホク顔の商人のオジサンと落ち合った。
使用期限があるものなのに、そんな高額取引がされるのか。
庭の畑で取れた葉っぱを混ぜただけなのに、と言ったらいけないだろう。
原価厨だと後ろ指をさされかねない。
期限を過ぎたら効果こそ弱まるが、今この瞬間重い怪我や病気で苦しんでいて、特級と名のつく回復役を入荷待ちしている人たちがいる。
なのですぐに売れるだろうと商人のオジサンは考えている。
だから強気交渉をして金貨を手に入れたとドヤっているわけだ。
それに脂と混ぜて軟膏にしたり、水分を飛ばして粉末にし丸薬にしたり、いくらでも加工が出来る。
売り付けた相手が損をすることはないと、自分の言葉にうなずきながら話してくれた。
カノンの薬って人気なんだね。
恥ずかしがり屋さんな彼が、回復薬に関しては自画自賛するほどだもんな。
街に先に向かいたい旨を伝えたら、それ自体は軽いノリで許可が出た。
新しい街とはいえ、“賢者“が造った街がどのようなものか見てみたいし、規模によっては何人革職人を派遣するかも変わる。
直接見られるのはむしろ有難いと乗り気だ。
是非に、と言われたが王都滞在日数が延びることには渋い顔をされた。
せっかく商品が長い間売れなかったマイナスをプラスに出来たのに、また支出の方が増えかねないと言う。
宿の宿泊費に滞在中の食事代。
なによりも馬車の預け賃がバカみたいに高いので厳しいそうだ。
コチラの都合で振り回すのだし代わりに払うことも考えたのだが、商人のオジサンの幌馬車はなかなかサイズが大きいそうで、一日預けるのに銀貨を複数枚要する。
馬に水や餌を与える世話は自分持ちなのに、場所の提供だけでそのお値段。
世の中金がモノを言うんだとヤサグレてしまいそうだ。
あ、でも。
馬車のサイズが大きいなら移住者をその分多く運べるよな。
野宿は平気か訪ねれば、そりゃモチロンと返される。
そうだよね。
トルモ町からの十日間、ずっと動きっぱなしにしていたら、お馬さん潰れちゃうものね。
今日のうちに厩か馬繋場かは知らないが、そこと宿を引き払い王都を出る。
城郭周辺は比較的魔物が出にくいそうだし、壁付近で一泊。
第一陣移民希望者の準備の進捗によっては二泊。
その後街に向かうって感じはどうだろう。
提案したら、特にそれで問題ないと言われた。
商人らしく、その際の食費は俺たち持ちで、と言われてしまったが。
まぁ、それは魔物を狩るでもなんでもすればいいし。
なんの問題もない。
商人のオジサンに馬車で何人くらいなら運べそうか参考までに聞いたら、運ぼうと思えば何十人と運べるけれど、と前置きをしてから、だけどそういう人たちは日々の生活に疲弊仕切っているだろうから、最低座っての移動。
夜は横にさせてあげるべきじゃないかと言われた。
そうだよね。
荷物じゃないんだもんね。
積み上げるなんて論外だし、ずっと立ちっぱなさせたらそりゃ体力がない人たちには辛いか。
飛行機の車輪格納庫や船舶の積荷の中。
様々な密航方法でどれだけの難民や亡命者が亡くなったのかを知らないわけではないのに。
人間を数値でしか見ていなかった。
ダメだな。
反省。
「じゃあ、凄く不躾なお願いしたいんだけど」
「なんでしょうか」
「馬車に棚、設置していい?」
DIY、興味あるんだよね。
「スキル」を使うんじゃなく、自分で釘とトンカチ使ってトンテンカンテンするの。
だが商人のオジサンは馬車に棚をつけるのが想像出来ないらしい。
自家用車を自分好みの内装に改造してドライブを楽しんだり、キャンプで車中泊する際の利便性を高くしたり、そういうのが流行っていた時期があるって話だし。
馬車も似たようなものなのかなって思ったんだけど。
ダメなのかな。
ざっとしたイメージ図を書き出してみる。
折りたたみ出来る椅子部分は、狭いがベッドにもなるようにすれば、想定の倍の人数を運ぶことが出来る。
女性や子供がメインになるなら、それ程重量はない。
馬が疲れやすくなるとソレはソレでロスになるから、良い塩梅にしなきゃだよね。
二頭引きなら負担が半分になるし、沢山乗せても長距離の移動に耐えられるかもしれないけど。
まぁ元は魔物だから、そこは普通の馬と比べちゃならんだろう。
なにせこの大きな幌馬車を一頭で引いてしまうのだから。
馬車自体も揺れが少なくなるよう懸架装置に担いバネを組み込んで改造した方が良いよね。
車輪も、スポークホイールの体は成しているが、木材を使っているのでソコソコの重量はある。
経年劣化なのか、鑑定眼で見る限り、強度も高くないようだし。
ワイヤータイプならば、金属自体の弾力性により揺れの軽減に繋がるが、重量への耐性が劣る。
車のホイールのような金属製スポークにすると、ステンレス鋼製は錆びにくいが脆いし。
いっそのこと戦車みたいな足元にしてしまうか!
……冗談です。
キャタピラは整地されていないデコボコ道には強いが、乗り心地は最悪だ。
泥化した悪路では進まないし。
その上、せっかく整地する予定の街道がズタボロにされてしまう。
ダメ、ゼッタイ。
キャタピラは戦車に使われていた推進装置だからな。
あとは農耕車も。
当然、馬車には適さない。
今まで木製でどうにかなっていたのだから、ホイールは木製のまま、合成ゴムと合成樹脂でタイヤを創る。
天然ゴムよりも耐久性に優れ、スリップにも強い。
空気を入れた方がクッション性が増して馬への負担も減るし、乗る人たちも疲れにくくなるが……
定期的にエアの調整ができないのに、それは無責任と言うものだろう。
少し重くなるが割れない、空気が漏れないシリコン樹脂チューブをタイヤの内部に入れよう。
書き出した幌馬車内部の改造計画に気を取られていた商人のオジサンは俺が手元で何をしていたのか見ていなかったらしい。
粗方の馬車改造計画の方向性が決まってふと、自分の馬車の車輪を見て「なんじゃこりゃあぁ!?」と叫んだ。
世界を超越してこのネタ分かる人が居てくれたら良かったのに。
商人のオジサン、頼むからこの後、未練を残しまくって死んだりしないでね。
「……トルエバさん、婚約者がトルモ町にいるとかないよね?」
「嫁と子供どころか孫もおりますぞ!?」
何を突然言い出すんだ、と混乱しながらも律儀にお返事してくれた。
あ〜、良かった。
そしてやはりこの世界の結婚年齢って低いんだな、と知った。
もう孫までおるんかい。
カノンの年齢なら、ひ孫も玄孫も通り越して、雲孫の雲孫くらいいてもおかしくないのにね。
思っていたことが伝わってしまったのか、おデコにチョップを喰らった。
あうち。




