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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、スカウトする。

今日は二話更新出来ました!

明日の更新分一文字も書いてないです!




魔物の大群を一瞬で屠る、その広い背中。

凶刃に倒れた家族の亡骸を弔う慈愛に充ちた眼差し。

自分の手を引っ張らないように握り先導してくれる、少し冷たさを感じる優しい手。


実力を考えるのなら、偉ぶり奢った考えに至ってもおかしくない。

けどその人は、常に他者を慮り他人に対して心を砕いていた。


「お兄ちゃん」なんて呼んでいた時期もあった、その命の恩人に大恩を返すため。

それもあるが、何よりも格好いいと、自分もこういう大人になりたいと憧れを抱いたから。


世のため人のため。

ただし自分を蔑ろにはしないように気を付けて。

身体の衰えを感じぬよう心身共に鍛え抜き、清く正しく生き早五十余年。


「そろそろお迎えが来てもおかしくない頃合だと思っていたら、まさかその恩人の先生が来てくれるなんてな!」


快活に笑ったその顔は、当分その心配は無いんじゃないかな、と思わせるには充分すぎるくらいに活力に満ち満ちていた。



王都に来るたび、毎回顔を出しているのではないにしても、十年も顔を出していないのに、ついこの間も顔を出したよな? みたいな表情でとぼけるのは辞めて頂きたい。

ボケ老人か。


トニと名乗るこのオジサンは、幼い頃カノンに救われたそうだ。

比較的安全だと言われていた街道。

その近くで起きた自然火災により森を追われた魔物の集団に襲われた。

荷物と共に踏み荒らされ、両親も兄姉も皆、あっという間に亡くなってしまった。


四十年程前は、まだ魔物が街道まで降りてくることが少なかった。

棲み分けが出来ていたのだろう。

姿を現しても、はぐれたのであろう個体が出るだけ。

しかも今よりも小さい魔物ばかりだった。

なので少し剣術をかじっただけでも、数で圧倒することができたため、魔物を脅威だと誰も思わなかった。


そのため、大きな都市間での交易も盛んであった。


商人だった両親に連れられて、楽しい家族旅行も兼ねたその旅路。

いつも通りの馬車で、通り慣れた道をノンビリと馬が引く。

そんな風景は、一瞬で地獄に変わった。


何か、燃える臭いがする。

そう思ったのも束の間。

魔物が脇の森から続々と溢れ出てきた。


今の体躯からは考えられないが、幼く身体が軽かったが故に、第一波の魔物の暴走により追突され、馬車から弾き飛ばされたトニさんだけは助かった。

安全のためにと、幌に取り付けてある縄をしっかり持っていた兄や、荷物にしがみついていた姉は、取り残されてしまった。

突進してきた魔物に踏み潰されたのか、喰われたのかは分からない。

御者台で馬を引いていた父や母は、自分が吹き飛ばされた際、興奮した魔物に襲いかかられたのを目撃したのが最期だ。


次第に小さくなっていく家族の悲鳴は、何年経っても未だに夢でたまに見ると眉を下げる。


そんな状況になっているとは知らない幼かったトニさんは、寂しさと恐怖から、家族を求めるように木々が薄くなっている方――街道を目指して傷だらけの身体に構うことなく半べそをかきながらも走った。

親を呼び、兄姉の名前を叫びながら。


その号哭を拾ったのが、魔物だけじゃなくて良かった。

風の精霊がその咽び泣く声を拾い、カノンに届け、魔物に喰われる寸前まで追い込まれたトニさんを、あと一歩の所で救った。


拍手をすれば、煩わしそうに手を振られた。

顔を隠しているあたり、照れているのだろう。

自分の武勇伝を語られるのは慣れていないらしい。


魔物を、誇張なくあっという間に倒してしまったカノン。

幼いトニさんは、親から聞かされた物語の三英雄よりも強く、頼りになる恩人に対し強い憧れを持った。


火に巻かれることなく無事だった荷物と、家族の遺髪や装飾品の一部を回収し、埋葬までしてくれた。

参る日がくるかもしれないからと、目印になるよう、簡素だが墓石も用意してくれた。


その日詰んだ花は枯れたが、カノンが苦手な地精霊術で作ってくれた墓石は、未だ街道沿いに残っている。


家族を失い絶望することも可能だったが、トニさんはへこたれなかった。

まさか自分の身に起こるとは思ってもみなかったが、今よりは大人しいとはいえ、なにせ魔物による一家全滅はさして珍しい話ではなかったからだ。

むしろ弱かったからこそ、ろくな自衛をせずに油断から全滅させられる商人や旅人の被害が、今よりも随分と多かったように思えると言った。

不幸な事故だと片付けられた話を、幼いトニさんの記憶に残すくらいには、ソコソコの頻度で被害が出ていた。


家族が死んだことや、突然どう生きていけば良いのか右も左も分からない中に放り込まれたが、むしろこの時、自分は幸運だと思った。

噂話に聞いていた‘’賢者‘’に助けられ、近くの街まで送り届けてくれると言うのだから。


寂しさを紛らわせる目的もあったが、意欲的に、カノンとしては若干の煩わしさを感じさせる勢いで、子供が一人でも生きていくための術を教えて欲しいと願い出た。


あんな強大な精霊術を教えてもらおうなんて厚かましい考えは持っていなかった。

憧れはしたが。


そこまでではないにしても、家族の墓に一人で行き来するくらいの力は手に入れたかった。


教えを請われること自体は珍しいことではなかったカノンは、子供の足で一週間程の道のりの中で、最低限にも満たないことしか教えなかったという。


だが、その意欲のせいなのか、とても飲み込みが良く上達が早かったので、王都に着き、元教え子に引き取って貰ったあとも、度々顔を出しては精霊術や、新種の魔物の解体のしかたを時間が許す限り教えた。


才能があったのだろう。

使える精霊術は水属性のみ。

身体に留めておける霊力の総量も決して多くない。

だが、少ない霊力を工夫して使う技術が高かった。


俺からしてみれば、想像力による賜物のように思える。

ふんわりとしたイメージではなく、具体性を持った想像が出来るほうが、事象として起こしやすい。

幼い頃から旅商をする家族と共に、色んな景色を見てきた結果だろう。



カノンの元教え子に引き取られたトニさんは、その人に魔物の狩り方や解体の仕方を教え込まれ、たまに訪れるカノンに精霊術の精度を上げられしばらく過ごした。

評判悪を聞いた教会から入信の打診が幾度か届いたが、生活の全てを教会内で過ごすことになると言われ、断った。


教会に入れば金が掛からなくなり負担は減るだろう。

だが、それでは恩返しが出来なくなってしまう。

そう思っての拒否だった。


恩返しを具体的な形にしたいと思ったトニさんは考えた。

恩人は皆「生きてさえくれていれば良い」と口を揃えて言う。

その意志を次へ繋ぎたい。


だがどうせならば、次に繋ぐのであれば習ったこと以上のことを繋ぎたい。

そうやって少しづつでも継いでいくものが大きくなっていけは、きっとそのうち、今では考えられない程に大きなことを、後世の人間がしでかしてくれるかもしれない。


ならば自分が教えて貰ったこと。

また自分が出来ることは何なのか。


魔物の素材のはぎ取り方と肉の加工の仕方は習ったが、せっかくはがした魔物素材も、皮しか使わない現状はもったいないとたびたび感じていた。

狼型の魔物の爪の脅威は、親の亡骸をもって知っている。


そこで鍛冶を学び他の魔物素材を加工する人たちの話を聞き、武器に加工する技術を確立している最中だとか。

なかなか前途多難だそうだが。


防具は、魔物の皮をそのまま使ったり、角や爪を薄く加工して貼り付けたりすれば良い。

霊力さえあれば、その素材が持つ性質を付与することも可能だ。


だが、武器はそうはいかない。

強度も必要だし、下手に加工しようとすれば威力が落ちる。

既存の武器に付与をするだけなら出来るが、それなら魔物の爪を木の棒に括りつけた方が余程、殺傷能力が高い。


どうせ人の手を加えるならば、通常の武器よりも、ただ魔物の爪を取り付けた棒切れよりも強くしたい。


そこにはひたすらロマンを追い求める目をキラキラ輝かせたオッサンの姿があった。

暑苦しいが、気持ちはわかる。


跡を継いで暫くしてから、恩を返しきれぬままに引き取ってくれた人が亡くなった。

その人が育てた自分以外の人たちは散り散りになり、王都にはトニさんだけが残った。


カノンも立ち寄る機会が少なくなり、魔物の動きが活性化してしまい、単独での狩りもままならなくなったので本腰入れて魔物素材を加工するようになったのが、ここ数年の話だそうだ。


コッソリ城郭に開けた隠し通路を使って冒険者を招き入れ、魔物の解体を請け負ったりやり方を教えたり。

恩人たちがしてくれたように近所の子供たちに教えたり、技術を教えたりする傍らで分かったのは、魔物素材を直接加工する時はとにかく霊力が必要だということ。

それが出来ないならバカみたいな火力がいる。


鉄や鋼を加工する程度の温度では全然足りない。

だがそれだけの温度を出せるような設備はココにはない。

土地が足りないから明け渡せと言われている現状では、炉の増設工事はできない。

下手に工事を入れようものならそのまま店を破壊されかねなないからだ。


そんなバカなと思ったが、実際に店舗部分を改装しようと業者に頼んだら壊されかけたそうだ。

あ、アレ、その跡なのか。


肉を安く卸してくれると大人気のトニさんは、協力してくれる人たちと結託して業者を締め上げはした。

だが自分たちは雇われただけだし破損箇所を直すだけの金も資材もないと言われ、そのまま放置しているのだとか。


バックにいたのが国なのかとも考えたが、なにせトニさんはカノン経由で国王の人となりを知っている。

そんなことをする人ではないと頭を振り、思い至ったのは散々勧誘を断った教会だが……どっちにしろケンカを売る相手としては部が悪すぎる。


なので表面上は業者のせいで廃業寸前の店を装っている。

その方が取り締まりが厳しくなくて楽だから。


受け継いだ店がみすぼらしい有様になっているのは申し訳ないと思う。

後続のためと育てた人たちは、自分たちが生きるのに必死だから、そんな状態の店を継いでもらうのは忍びない。


自分の技術は結構伝えられたと思うし、隠居しようかと思って開催したのが、先程の最後の解体授業だった。

だからいつもよりも多くの人が多い参加していたのだとか。


道具の手入れは行き届いているし、場所もコレだけ広い。

国に明け渡してしまうのはもったいない。


だが、今まで半分ボランティア状態で稼ぎをほぼ出さずに営業していたから、隠居生活をするための金がないため、売るしかないだろうなぁ、なんて考えているそうだ。

その問題さえなければ、使い続けたいと言ってくれる人はいるから、どうにかならないものか、とは思うそうだが、背に腹はかえられぬ。


……なんというか、滅茶苦茶有難い状況じゃないか?

コレは??


カノンと顔を見合わせ、街のことを話た。


カノン主導で街を造ったこと。

鍛冶工房含め、土地も家屋も空きが沢山あること。

魔物が多い土地だから、腕の立つ冒険者を呼び込んでいること。


時折カノンからツッコミが入るがそれらを全て無視して話を進めたら、その場にいた冒険者らしき格好をした人たちが何人か興味を持ってくれた。

腕試しが理由だったり、入国許可が出ずにコッソリ不法入国しなくても屋根のある場所で寝泊まり出来るのが理由だったり。

トニさんが移動するならついて行きたいと、彼を慕って申し出てくれた人もいる。


この街に長く住んでいる人は、さすがに移住には興味を持たないが、トニさんが居なくなるならこの店を守るくらいはしたいと言ってくれている。

その子供もヤル気満々のようで、若干視線が下の方でぴょんぴょん跳ねて自己主張する。


「出発はいつだ」


「え? ……今日??」


「さすがに早ぇよ。

 準備できねぇ」


あぁ、イヤ。

商人のオジサン(トルエバさん)の住む町に行くのが先か。

トルモ町に馬車で十日程かかるんだったっけ。

つまり、往復で二十日。

カノンの家から王都まで三日程度と考えると、随分遠いよな。


「来てくれるのか?」


「えぇ、えぇ。

 こんな年寄りでいいなら。

 貴方様が願ってくれるなら、どこへでも」


犬がシッポを振るようにカノンの言葉に相好を崩し肯定の言葉を口にした。

トニさんにとっては、カノンはいつまでも「恩人のお兄ちゃん」なんだろうな。




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