神さま、NINJAに思いを馳せる。
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歴史というのは強者が作っていくものである。
国同士の争いだとしたは、負けてしまっては国自体が残らない。
敗戦国は、そこで国の歴史が終わる。
死人に口なしとはよく言ったもので、死した国も同様に、語り継ぐ者はいなくなる。
そして勝者は、自分たちの都合の良いように事実をねじ曲げて後世に残す。
資源が豊かな小国にイチャモンをつけて戦争を吹っかけておきながら、勝って領地を没収した後「身の程を弁えない愚かな国が、我が領土を妬み争いを仕掛けてきた。だがしかし、勇敢なる我が国の兵士はそれを退けた」とか言ってね。
口伝は伝わっていく先で事実がねじ曲げられる。
噂話と一緒。
尾ひれ背びれがついていくものだ。
酷いと核となる部分すら残らない。
書物はその時の事実を残すことが出来るが、燃やされればそこで終わり。
もちろん、書き手によっては事実ばかりではない、主観によるものが入り乱れ、実際に起こった出来事を曇らせた状態で読み手に伝えてしまう場合もある。
じゃあ、後世に事実を伝える方法はあるのか。
応えは、ない。
一〇〇%の精度で、と言われたら、確実にない。
そもそも、事実とはその人によって違うのだから。
先程の戦争を例えにするのであれば「A国がB国を侵略し、A国が勝利した」が事実になる。
だが語る者がA国の市民、とりわけ徴兵され殉職した家族の者ならば「息子が戦争に駆り出され、帰ってこなかった」がその人たちにとっての真実だ。
国が負けていればその先の恨み節が更に苛烈なものになるだろう。
自国が戦争に勝利したからこそ、国には取るに足らないような損害の一部だったとしても「我が子はお国のために戦ったのだ」と、自分たちだけでも息子の武勇伝を心に留め、近しい人に覚えて置いてもらいたいと思うものだ。
語るのは国が勝った事実ではない。
ソレは他の人でも伝えられる大衆的な事実だから、敢えて渦中に投げ込まれた戦争遺族が語るべきものではない。
何年経っても、戦争のことを聞かれて答えることは「その戦争で私の息子は死にました」という‘’事実‘’のみだ。
同じA国でも戦地に赴いた者ならば「敵兵を何人も殺してやった」と武勇伝を語り継ごうとするだろう。
行政を担当しているものならば「戦争により我が国の領土はこれだけ拡張された」「軍事産業における利益上昇率は○%」「軍事戦費は何兆円、人的損害は何千人程度」と数字化することの方が多くなる。
先の民間人の大事な一人息子は、国からしてみれば損害総人数の中の一人でしかない。
ただの数字に、顔が生えてるわけでもあるまいし。
いちいち気に留まることもない‘’事実‘’を数えるのみだ。
一番悲惨なのは敗戦国であるB国だが。
なにせ、大抵は勝利した国に根こそぎ奪われるのだから。
富も、縁も、人権すらも。
何事もなく終わり、明日も続くと思うことすらない当たり前な日常。
ちょっと落ち込むことがあったから、自分を慰めるために買ったちょっとした贅沢。
あた会おうと約束をした友人。
プロポーズを受け入れてくれた恋人。
何もかも、奪われ、破壊し蹂躙し尽くされ、抗うための闘争心すら根絶やしにされる。
敗者の烙印を押された後は、強者にただ従わせられるのみ。
後世に残せるものは何一つない。
永遠に勝者であった国など存在しない。
敗者となった痛みを知っているはずなのに。
それなのにも関わらず、なぜか人は争いを辞めようとはしない。
敗者となった者の痛みが後世に伝えられることがないからだ。
強者すらも後世に伝えた敗戦国の痛み。
それが民間人居住区への原子爆弾投下だった。
その後しばらくの間は和平が平定されていた。
それでも、幾年月が過ぎ、主観で痛みを伝える者が減り、事実を思い出される機会が減っていくと、痛みは未来に伝わらなくなる。
結局、忘却された痛みは存在していた事実を置き去りにされる。
そして再び戦争は起きることとなる。
そしてまたその事実は忘れ去られる。
過去の‘’事実‘’を‘’嘘‘’と主張する者により。
過去の‘’真実‘’をなかったことにして。
約束を反故にしたり、事実をねじ曲げて伝えたり。
嘘こそが争いの火種になるのではないかと考えてしまう。
相手を慮ってついた嘘だとしても、相手がその言葉を事実ではないことを知った時、傷つくこともあるだろう。
ましてやその嘘が、自分本位なものでしかなかったり、相手を傷付けることを目的としていたならば、その傷は計り知れないものになるだろう。
王座に胡座をかき、民から集めた税で贅沢三昧を繰り返していると嘘を吹聴し、過去の栄光すらなかったことにしようとしている主教一派。
しかもそれが戦争を起こすためだとかいうのだから、脳にウジでも湧いてるんじゃないかと疑いたくなる。
その時その現場にいた俺からしてみれば、ふざけんじゃねぇ、と殴り飛ばしたくなる言葉だ。
語り継がれている三英雄の痛みを直接ぶつけられた、そしてその原因である当事者の俺は、文句を言って良いと思う。
アタオカのレッテルを貼られる可能性は大だが。
その三英雄のうち二人から直接話を聞いているカノン、アリア、モトミの三人も、当然良い気はしないだろう。
しかも今のこの国の中心人物だ。
何百年と携わってきた業務、しかもより良くするためにと考え行動してきたというのに、真逆の評価のイメージを国民に植え付けられた。
ポッと出の数十年しか生きていない若造に、自分たちが真摯に取り組んできたことに対し茶々を入れられたら、腸が煮えくり返るレベルで不快だろう。
それを冷静に、謀反の証拠を集めて社会的に抹殺しようとしている三人はとてもエラいね。
俺なら後先考えずに助走つけて殴ってしまうところだ。
みんな大人だな。
愚かなことと分かっていても、悲しみしばかりを産むと分かっていても。
別に好きでも大好きでもないし、誰が支持するでも賛同するでもないのだが、思わず「よろしい、ならば戦争だ」と言いたくなる。
起こしたら主教の目論見通りになってしまうし、起きないように止めることを前提に動くけどさ。
昼食に招かれたが、大勢の使用人が動く中の食事なんて落ち着かなくて嫌だとカノンが断り城下へと出た。
俺は少し気になったんだけどね。
宮廷料理とでも言えばいいのか?
この国のお貴族様が食べるごはん、気になる。
なにせ王様が住んでる場所が和モダンな雰囲気だったじゃん。
食事も和食だったら、まだ食べたことがないお魚さんが出たかもしれないじゃん。
カノンめ。
お前は食べなれているのかもしれないが、断るならせめて俺にも確認の一言くらい寄越せ。
城郭の上からならよく見えるという英雄たちの石像は、振り返って見てみたが、地上からでは見上げるばかりでよく分からなかった。
しかもその後は、振り返ろうとするとカノンが邪魔するから遠目で見ることも出来なかったし。
アレもコレも思い通りにならなくて、つ〜ま〜ん〜な〜い〜!
まだ昼の鐘も鳴らないし、さてどうしようかとうかがえば、王都にある工房では手狭そうにしている懇意の職人がいるから、街に移住しないか聞いてみたいと言われた。
そういう知り合いがいるなら是非に紹介してくれ。
すぐ行こう、やれ行こう。
カノンが王都に来る途中で狩った魔物素材を買い取ってくれたり、解体も手伝ってくれる人なんだとか。
水の精霊に適性があると知られているため、他の冒険者たちの持ち込みもあるから結構忙しくしているそうだ。
そんな人をスカウトして良いものなのか。
一応弟子は取っているが、訪れた時の顔ぶれは毎回違うなと言うあたり、後続は育っていないようだが。
主教のせいであまり良い印象を持てていない教会には、精霊術を使える人がソコソコいる。
解体さえ学べば、教会から精霊術で生み出した水を使って瘴気を中和できる。
なのでカノンはどうにでもなるのではないかと思っているそうだ。
……教会というものは、お布施を払わねばその聖水は譲ってくれないのではないのかね。
それとも、無償提供してるの?
国庫から横領しちゃうような人達が??
大丈夫だとは到底思えないが、職人さんは是非とも街に欲しい。
案内された場所は、一番王城に近い城郭の門に近い店だった。
昔はココが最も王都の外側に近い場所だったんだよな。
相応の年月を重ねた外観は、現在最も王都の外側に近い居住区と違い、雑多な印象は見受けられない。
古ぼけてるけど。
景観法とかないんだろうな。
茅葺き屋根では流石にないが、古風な日本の木造平屋をかろうじて思わせてくれるその店は、屋根は瓦が一部割れ落ち、建物の一角は朽ちて落ちている。
廃墟と言われた方が納得できる気がするくらいにみすぼらしいのだが。
この店、営業してるの?
店主、生きてる??
その非常に寂しい見た目をした建物の、恐らく玄関であろう場所に掛けてあるノレンを、カノンは臆することなく潜っていく。
デカイのでお辞儀をするように屈んで入っていったのだが、もう、完全に地元の人しか行かないような小さなラーメン屋さんに入るようなノリである。
だって「まいど〜」って言って入って行った!
アイツ、関西人でもないのにまいどさんって!!
ここで入るタイミングを逃してしまっては一生この先に入ろうと思えなくなるかもしれない。
えいや、と気合いを込めて後に続いた。
一歩踏みしめるごとにギッギッと鳴る床はまぁ、致し方ないにしても、天井に蜘蛛の巣は張ってるし、棚に陳列されている商品であろう何か分からないものも、かろうじて何日かに一回はホコリを払っているのかな? 程度の掃除しかされていない。
コレが他の冒険者も御用達なお店なの??
チンダル現象により天井に空いた穴から射し込む光に映し出された舞っているホコリがキラキラ輝く。
マスクをした方が良いかもしれない。
だがそんなもの、当然ある訳がない。
せめてと思い袖で口許を覆った。
行き止まりと思われる正面の壁。
そこに貼られているポスターをめくると、な、なんと……!
……なんもない。
なんだよ、期待させやがって。
隠し部屋のスイッチでもあるのかと期待したのに。
心の中でブチブチ文句を垂れていたら、カノンがめくった壁に霊力を流した。
一瞬、光が走ったと思ったらポスターごと壁が消えていた。
ホントに隠し部屋だった!
拍手を送りたい!!
想像していたクルリと壁が回転するどんでん返しとか、掛け軸の向こうが通路になっているとかではなかったが、隠し部屋とかロマンが詰まりまくってるものを作るなんて粋だねぇ!!
軽い足取りでついて行った先は、外観や先程までの店舗とはガラリと雰囲気が変わった、石造りの無機質な感じの部屋だった。
ゴツイ鎖で天井から吊るされてる魔物と、その前には子供から大人迄、総勢十数人の男性が集まっていた。
人口密度が高く、非常にムサ苦しい空間である。
魔物の横に立っている、ガタイの良い職人っぽい男性が周囲の人達に手ほどきをしているようだ。
三バカ冒険者と違い力任せに捌くのではなく、四足獣タイプの魔物の骨や筋をキチンと把握した上で、切れ味の良いナイフとハサミを使ってスパスパと軽やかな手つきで、時折手を止めコツや注意事項を説明しながら、あっという間に皮を剥いでしまった。
鮮やかな手つきだね。
カノンは教えるのは下手ではない。
精霊術と同様、なまじ自分が出来てしまうから出来ない人の気持ちが分からないため、解体は上手なのだけど教えるのは上手くない。
このオジサンは解体自体も教えるのも上手い。
周りにいる人たちに逐一確認をとりつつ進行していく言葉も動作も、慣れているのだろうと思わせる。
邪魔をしてはいけないと、遠くで眺めて待つこと暫し。
コチラに気付いたオジサンが、パッと表情を明るくして駆けて来た。
身体は大きいのに小型犬を思わせる人だ。
シッポが幻覚で見えるようだよ。
「先生! 来てたなら声掛けてくれよ」
え、あ、カノンの方が先生なんだ。
見た目に騙されてしまうな。




