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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、慕う。




ひとつ 友を裏切れば

ふたつ 裁きは下される

みっつ 彷徨い続けても

よっつ 元には戻らない

いつつ 謝り続けても

むっつ 誰も見遣らない

ななつ 暗闇囚われる


ひとつ 左手つらぬかれ

ふたつ 心を杭打たれ

みっつ くびられ息たえる

よっつ 世界は闇のまれ

いつつ 世界に光さし

むっつ 彼方へみちびけば

ななつ 神は降臨す


ひとつ 想うその心

ふたつ 清いその願い

みっつ 希望のその種を

よっつ ここに芽吹かせて

いつつ 慈愛の雨降らせ

むっつ 大きく育めば

ななつ 神は降臨す


やっつ 天へ続くみち

ここのつ 門が開かれば

とお で きみは救われる



わらべうたの割には、難しい言葉も出てくる、古くから伝わるこの数え歌。


欧州なんかでは死を連想させるどころかダイレクトに死ぬ! 殺す!! と明言している子守唄の類もあったのだから、コレはまだ表現がマイルドであると思えば良いのだろう。


一番が戒めのうた。

かつて友人関係にあった英雄を裏切った魔王に対するものだ。

大切な人を裏切る行為をすれば、必ず天罰が下る。

決して許されることはないし、救われることはない。

だからお友達を大事にしましょうね、と言う意味で謳われている。


耳が痛いね。


二番がその魔王を打ち倒した時の様子が歌われている。

悪いことをした人をさばく時は、左手と心臓を杭で打ち抜き、首を切り落として残酷に殺しましょうねと言わんばかりに殺意が強い。


実際は左手は拳銃で撃ち抜かれただけだし、首だって致命傷にはならない程度に斬られただけだい!

と声を大にして言いたい。

別に磔になんてされてないもん。

イジけるぞ。


諸説あるそうだが、よっつまでが魔王視点で、死んだら暗いところに連れていかれるよ、みたいな意味の歌詞ではないかとされている。

その悪者が退治された世界は光り輝き、英雄が導いた先には神様が降臨して世界を平和にしてくれるよ。


だから、三番目の歌詞にあるように、他人を想い清らかな心で願い、世界が良くなるようにと望み、その希望を育んでね。

きっと善行を見てくれている神様が天国へ続く道への門を開いて迎え入れてくれる。

そしてきっと救われるよ。


そんな歌。


その救いと言うものが、苦しみが訪れないようにとこじつけた結果、人類の殲滅だとしたらどうするつもりなのか。

この世界の神様は至極真っ当なヒトだったようなので、そこは安心だが。


ちなみに、時代と共に歌詞が増えていって、今では十三番目まである。



魔王と英雄の話は、わらべうたや寝物語のような子供向けのものから、歴史の研究所としてまとめられたものまで多岐にわたる。

アリアとカノンが用意してくれた本も、その一部だ。


建国記として伝わっているものもあるが、一部界隈では、国王が人民を掌握しやすくするためのデタラメだと噂されている。

国を興し民を作ったのは神であり精霊様なのだから、英雄が世界に光をもたらす存在であるとする伝承は、人を導く存在が、神様ではなく英雄のように解釈できる。

宗教的には到底許せるものではないようだ。


だから、その元凶である英雄の末裔と言うか、子孫というか。

実子が治めている国家の転覆を虎視眈々と狙っているのだろうね。


そう。

カノンもアリアも、物語に出てくる英雄の子供である。

俺も当然知ってる。

俺を殺した人達ですし。

トドメを刺したのは二人じゃないけど。


こうして生きているのだから、どっちみち殺し損ねた、の方が正しいのか。



地球からの移民組はエルフと呼ばれる特殊技能、特異体質を持つ存在で、かなりの長寿とされている。

アイツらは、何百歳の時点で子供(カノンとアリア)をこさえたんだろうね。

下世話な疑問か。


イヤ、でも、だって。

俺を含めた周りがどんだけくっつけようとしても、互いに遠慮をしていたから、コリャ世界が滅びるくらいに追い詰められなきゃ素直にならねぇわって皆思って諦めていたんだよ。


実際に世界が滅びてようやくか。

感慨深いね。



ただそうなると疑問なのが、カノンとアリア、二人の叔父さんとやらの存在だ。


なにせ母親の方は一人っ子。

父親のほうは三人兄弟。

だがしかし兄も弟も、ほれ。

死んでおりますし。


カノンはテルモとイグニスを見た時、それはそれは驚いたと思うんだよね。

あそこの三兄弟、芋版ハンコに例えられるくらい、ソックリだって有名だったから。

三人の両親がこの世界に転移した後なのか、その直前なのかは知らないが、年の離れた四人目がいたってことになるよな。


施設の平均生存年齢を考えれば、もう結構歳を重ねてた二人。

世界最高齢出産の年令には遠く及ばないし、可能は可能だが……

頑張ったんだね、オジサンとオバサン。


そうなると、その叔父さんとやらに会うのがとても楽しみだ。

遺伝子の神秘と言うべきことが、四人目にも起きていとしてもおかしくない。

外見年齢がいくつ頃で止まっているのか分からないが、テルモとイグニスを呼んで、横に並べてみたい。



謁見の間(こちら)にもおりませんわね」


防護壁の装置の説明を、宰相にもした方が良いと探しているのだが、一向に見つからない。

執務室も食堂も、居そうなところのアリアが思い浮かぶ心当たりは一通り回った。


カノンと先に合流しようということで、歩き疲れたと言う彼女を励ましながら中庭に出れば、カノンの傍らにキッチリとしたお堅い印象のある服を身にまとった人がいた。

休めのポーズで真っ直ぐに伸ばされた背筋から受ける印象は、堅物。

真面目が服着て立っている。

そんな感想を抱く程の直立不動。


コチラに気付いたカノンが口を開くより先に「陛下」とアリアの姿を確認するや否や、四角四面の言葉通りのお小言を、マシンガントークで息継ぎする暇もなく次から次へと告げてくるその姿は、宰相よりも叔父さんよりも、オカンという名称が最もしっくりとくる。


カノンの血縁者だと頷ける頭の回り具合だ。

単に言い慣れているだけかもしれないが。


公私混同はしないタチのようで、姪っ子だろうに一貫して「陛下」「大宰相殿」としか言わないその人物の顔を、不躾にならない程度にチラリと見てみる。


イヤ、盗み見をしようとかそういうのではないのだよ。

ただ、直視してしまったら、心臓がまた止まってしまうのではないかと思ってしまって出来ないのだ。

後ろめたいのではなく、それ程に、かつての友人と重なる、その目鼻立ち。


幼さの残っていた少年特有の、ちょっと下膨れた丸顔ではなく、シュッと尖った顎をした青年の姿は、アイツが成人したらこんな感じだろうと容易に思わせた。

この人の身長は俺よりも少し高い。

つまりアイツよりも高いけれど。


……別人なのだから比べるのは失礼だと、頭では分かっている。

だが、つい、面影を追ってしまう。


何百年も経っている事実こそあるが、俺からしてみれば、ついほんの数ヶ月前の出来事なのだし。

仕方ないだろう。


……イヤ、逆に数ヶ月程度でこんなに劇的に成長していたら怖いか。

うんうん、OK。

この人はアイツとは別人。

瓜二つレベルで似ているけれども、全くの他人だ。


あ、違う。

他人じゃねぇや。

弟か。


……叔父と聞いた時に、その可能性を思い浮かべたのに、覚悟を付けておかなかったツケが回ってきたな。

想像していた以上に似ていて頭がパーンと弾け飛んだ感覚だ。

ショートしそう。


なのに、なんで()()()は居ないんだって文句を言いたくなる。

誰にだよって感じだが。

俺にも分からん。


()()()の痕跡がココにないことが、酷く不思議に思う。

二人の気配は、姿かたちが変わっても、俺の目の前にあると言うのに。


そう言えば()()()も英雄と言われているのに、なんで後世に‘’その後‘’が語られていないのだろう。



「紹介致しましょう、レイム様。

こちら、この国の宰相を務めております、モトミです」


「初めまして、モトミと申します」


すごく重要なことを考えていたはずなのに、霧散した。

アリアと、軽く頭を下げる宰相閣下殿が告げた言葉に瞠目する。

え、イヤ、だって……


「……ソレ、英雄の名前じゃないの?」


俺が発した言葉に、今度は三人が驚く番だった。


「よくご存知ですね」


「……俺が渡した歴史書の中にでも書いてあったか?」


俺の正体に気付いていそうなアリアは、首を傾げ無言を貫いた。

カノンは……どうなんだろうな。

アリアにアレコレ報告しているのはコイツだし、俺の正体を悟っていてもおかしくないと思うんだけど。

コレって決め手になるような発言がないから判断がつかない。



「破壊」「再生」「創造」のスキルはそれぞれの特性に併せて、また神に足る能力である意味も含めてヒンドゥー教の神々にあやかり‘’トリムルティ‘’と呼ばれていた。

シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーの三柱の神。


そのうち、ヴィシュヌ神は本来「維持の神」とされている。

だが「再生」のスキルの時間の巻き戻しや生物の欠損部分の復元、原状回復等の能力が「維持・再生」と半ばこじつけて三神一体の神格機能と同じ名称をつけたのだ。


神様と同じ名前をつけてゲンを担ぎたかったのだろう。

日本人、そういう所ある。


そして伝承が後世に渡る時に、言葉の掛け違いが起こったのだろう。

三英雄だからね。

三人で一人の悪者を倒したんだもの。

その三人が三神の名前を冠されたと勘違いするのは当然だよね。


残念でした。

ブラフマーの権能を持つのは俺だった。


まぁ、それもあり出生名ではなくヴィシュヌとブラフマーと呼ばれるようになってしまった二人の本名を知るものは旧知の人物のみとなったそうだ。


宰相閣下は「それじゃあ英雄の名前にあやかって」と両親が同じ響きの名前を付けたそうだ。

おかげで名前を呼ぶと二人とも振り替えると言う悲劇が度々起きたとか、起きなかったとか。


宛てがわれた漢字こそ違うそうだが。

それまで同じだったら流石に周りが止めただろう。


ほのぼのとした雰囲気をまとった似た者夫婦を思い浮かべ、つい遠い目になってしまった。




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