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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、営業される。




悪政を強いる、貴族第一主義、しかも自分の派閥を最も優先させると囁かれる、宰相の傀儡と言われる幼い愚王。

各地を回り自分の耳で直接意見を聞く、民こそが国の宝であると行動で示す大宰相。


その二人が早朝、同時刻に姿を消した。


それは水面下で繰り広げられる、非公式な会合の場が設けられたのであろうことは想像に易い。

国の行く末を決めるための熾烈な争いが繰り広げられることだろう。


その話し合いは密談に留めるべきだと、国のツートップが判断したのだ。

下手に探さない方が良い。


見た目も中身も正反対と言える二人が兄妹であることは、王宮内ではまことしやかに囁かれている。

その二人が他の追随を許さぬ程の精霊術の使い手であることも。


口でのやり取りだけでは済まされない結果になる可能性もある。

探す時間があるなら、最悪を想定して動かなければならない。


度重なる重税に喘いでいる市井に、物理的な被害が及んでは、反乱も起きかねない。

そう判断した国王直属の軍事組織司令部師団長は緊急事態に備える。


本来ならば諸外国からの攻撃に備える時に展開する、大規模な精霊術式による防護結界を、いつでも発動出来るように王立術兵隊に申渡した。

内側からの攻撃にも同じように堅牢な防護結界を生み出せるのか、彼には分からない。

だが‘’賢者‘’が見出した、精霊術師のみで構成されるその特別軍隊ならば、きっと‘’賢者‘’の意に反するような結果はもたらさないだろう。

そう信じて。


王宮内はまだ日も登らぬ早朝から騒然としていた。


普段ならば庭園を流れる小川のせせらぎや、添水(そうず)が鳴らす音の響く、なんとも言えない落ち着きの広がる雅な空間なのだが。

竹林にかかる薄霧も、登ってくる太陽の光を受けてキラキラと輝き美しいと思う所なのに、今日はその霧の向こうから何か良からぬものが這い出てくるのではないかと肝を冷やす存在となっている。


そんな中、宰相閣下の落ち着きぶりは異様に見える。

王と賢者との付き合いの長さ故か、英雄の血脈を継ぐ故の豪胆さなのか……


執務室に慌ただしく出入りする部下たちは気付く由もない。

彼が‘’賢者‘’に作ってもらった、竜と熊の胆嚢から作られた特性の胃薬をそっと飲み下したことを。



アリア(国王)カノン(大宰相)の話し合いという名の単なる世間話と愚痴の応酬はなかなかネチこい。

何故かその場に留まるように言われた俺は、その会話を流し聞きしながら黙々と用意された本を読み進める。


アリアが用意してくれた本の中にはカノンが読ませたくない物があったようで、問答無用で何冊か取り上げられ書棚に戻された。

アリア曰く、彼自身の著書も混ざっていたから照れているのだろうということだ。


妹からも照れ屋認定されてんぞ。

さすが人の上に立っているだけあり、なかなかに観察力に優れているようだ。

単に身内だからってだけかもしれないけど。


近年新しく任命された国王手許金会計廷臣(お財布係)が、寄付金や教会・聖歌隊への助成金の帳簿を誤魔化し、懐に入れた上に横流しをしている疑惑が上がっているそうだ。

半期に一度の頻度だったが、バレないとたかを括ったのか、最近では毎月やらかしてくれているそうだ。

精霊の力を借りれば現場を押さえることは簡単だし、いくらでも証拠なんて捏造できる。


とは言え、その廷臣の単独行動なのか、はたまた家やその他組織のどこまで後ろに続いているのかが分からない。

見た目幼女のお飾り女王に油断して、シッポを出してはくれまいか。


画策して早一年。

ようやく物的証拠から背後組織まで全てあらいざらい白日の下に晒せるようになった。


結論から述べるのであれば、その国王手許金会計廷臣(お財布係)は他国と通じていて、金銭から情報から自分の手元に集めたものを、何でもソチラに流しているそうだ。

表に流している情報なんぞ、いくらでもくれてやれば良いと思うが、金銭の類は自分たちの物ではない。

ソレは国をより良くすると約束した上で一旦国民から預かっているだけの血税だ。

それを横取りした上に、この国を貶めようと画策しているような他国に流すなんぞ、到底許容出来るわけがない。


さて、どのような鉄槌を下すべきか……


カノンと非公式の会合の場を設けたかったのはソレを相談したかったのが理由らしい。

俺、マジでここにいて良いのだろうか。


そもそも、十年に一度のペースで王座と大宰相の立場を交換する約束だったのに、その約束を反故にして、王都には寄るくせに王城には姿を表さないダメ兄貴のせいで見た目の幼い自分が舐められて、愚かなことをしでかすバカが出てくるのだと、再び愚痴モードへと突入した。


そのダメ兄貴は視界の隅で気まずそうに視線を明後日の方に外しながら茶をすすった。



愚痴を一通り吐き出して落ち着いたのだろう。

面倒臭い話は後回しにして、コチラの要望を聞いてくれるターンが回ってきた。


何年も登城しなかったカノンが緊急と言って謁見を申し入れて来たのだから、重要な話だと判断してくれたそうだ。

兄との格の違いを見せるためにも筋は通すべきとして、聞かずにバイバイするつもりはないと、棘をふんだんに含んだ言葉でチクチク口撃をしていた。


ばふんっとお行儀悪くソファにもたれ掛かるアリアに、あらかじめ用意していた資料を手渡す。


受け取った途端、羊皮紙ではないことに気付いたようだ。

「不思議な手触りね」とだけ口にしたが、しきりに指で撫でたり弾いたりしている。

気になるようだ。


和紙の製法は街に置いてきたが、この紙は水に濡れる危険性もあるからと「スキル」で作ったプラスチック紙である。

コレの作り方を教えてと言われても、この世界の技術では難しい。

そんな興味を持たれたら困るのだが。

持つならその紙に書いてある内容に興味を示してくれ。


「……いいわよ」


パラパラと流し読みをして、一言。

アッサリ肯定の言葉を口にした。


よく考えられているが、細い決まりごとに関しては自分の専門ではないので、宰相の方と話し合って欲しいとだけ言われたが。

どうせカノンが許可を出したのなら漏れは無いだろうし、あってもどうにかするだろうし、問題は無いと。


新しい街の設立。

そこに住む人達のうち、今まで国民として生活をしていなかった村人達の認知と合わせて市民権の授与。

また過去の人頭税と税の遅延損害金の免除。

交易の際の関税撤廃案。

冒険者ギルドの説明と設立案。

また国主体の広報依頼。

街道の整備の計画書。


諸々全て、一言で許可が降りた。


カノン様のチートばんざい。

いやぁ、持つべきは国王から信頼されている保護者だね。



今回は急務ということと、商売の交換条件としての街道整備は俺の方で好き勝手にして良いとされたが、その仕様書と魔物対策の立案をまとめた書類は提出して欲しいとお願いされた。

悪さをしている国王手許金会計廷臣と、その背後で手引きしている国に対して、横領に対する国民への信頼を貶めた損害に対する補償金も請求するつもりだから、それを元手に国内全土に同様の仕様で道を通したいと考えているそうだ。

どうせ泡銭だし、それならば国民のために使うのが有益だと。


魔物対策の方法がある程度確立され、それが確固たるものだと証明できれば、万が一が不安だからと王都内に半ば無理矢理留まっている国民も、安心して他の町に移住できる。

その町を作るため原生林を切り開き、開拓し社会基盤を築くことも、開墾し農作地を広げることも、国をあげて取り組むべき急務だ。

だがそのための馬や牛の確保すら現状、土地がないため難しい。


新しく造った街には土地はあるが馬と牛を連れてくるツテがない。

精霊術を万人に伝授しても、その力を振るう機会がない。


そこで合致する互いの要望。

カノンがすんなり通ると言っていた理由が分かった。


開拓地の候補は幾らか上がっている。

そこの先住民と話し合いは必要ではあるが、ソレは何十年も前から積み重ねられてきた保護と補助、そしてその日が来るべき時には協力するように再三伝えてきたことにより、どうにかなる土地は少なくないだろうから、協力してくれる場所から手をつければ良いとアッサリ言われた。


治世をするのが長年同一人物だと、こういう時スムーズで良いね。


兄であるカノンが三〇〇歳を超えている。

それで見た目が二〇代。

アリアは見た目こそ一桁の幼女だが、十年単位で立場を交代云々言っていたのだから、実際は生まれてからかなりの年月を重ねているだろう。

実年齢が気にはなるが、流石に女性の歳を勝手に見るのは気が引ける。

鑑定眼ならば、本人にもバレることなく一発で分かるんだけどね。



可能ならば手ほどきもしてもらいたい、といわれたが……

まずは精霊の皆の肉体作りを優先してあげたい。


ただでさえ、街を作るのに、ほんの一、二日とは言え予定が押してしまっているのだ。

本来ならば、約束をした順にタスクをこなしていくのが筋だろうに。

どうせ皆なら俺に甘いから許してくれるだろうと、自分のワガママを優先させてしまった。


なので丁重にお断りさせてもらう。

「スキル」ではなく限りのある霊力で、しかも使い慣れていない精霊術で作っていくとなると、相当な時間が掛かると思われる。

精霊術を使わない、完全人力ならば尚更だ。

国土をどれ程有しているのかは知らないが、一日二日で終わる工事ではないことくらいは分かる。


一度断ると、冒険者ギルドに実績を持たせるために依頼でも出そうか? と問われたが、俺一人にしか出来ないことをギルドに依頼されたらそれこそ困る。

その実績を見て依頼する人が出てきたら、対処出来る人間がいないからだ。

指名制はあっても良いと思うが、そんな突飛な依頼を出されても、長年誰も消化してくれなかったら問題だろう。

過去には受理され遂行されたのに、と文句を言われてしまう恐れがある。

評判を落とさないためにもトラブルの元は作らない方が良い。


王様という立場だから、お願いを断られることが早々ないのだろう。

大きい目を更に見開き口元を押さえた。


それとも、王様からのお願いごとって断っちゃいけない系?

命令だったりするの??


「一国の王よりも、精霊王の願いを優先させるのは当然のことだ。

甘やかさなくていい」


「あら、そうおっしゃるのであれば、お兄様よりも私の方がお役に立てましてよ。

旅に出る時は、王位はお兄様にお譲り致しますので、私を連れて行ってくださいませ」


ニッコリ微笑み、さも名案のように提示されるが、世間で精霊術師の権威と名高い‘’賢者‘’よりも役に立てる、と豪語する実力者には到底見えないが。


見くびらないで頂きたい、とない胸を張る姿は、単に強がっているだけではなく、キチンと根拠があるようで自信に満ち溢れている。

だが、その理由を説明するより先に開いた口はカノンの手によって塞がれた。


その手のひらを舐めたのか噛まれたのか。

素っ頓狂な声とともに即座にその手は離された。

俺は一体何を見せられているのだろうか。


下手に止めようとすると精神が削られると分かったのか、カノンは大人しく着席した。

それを許可と取ったようでアリアは破顔一笑。


流暢に息継ぎどこでしてる? ってレベルのマシンガントークでセールスポイントをアピールされた。




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