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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、交渉される。




交渉ごとなんてしたことのない、大抵のことは「スキル」と「知識」でなんとかなってしまう、人生経験皆無の俺。


露店で半額以下で売っていた皮と羊毛は、宿屋に置いてある在庫も含め、全て少し高めの定価の半値で買い取る。

そして従来なら王都から馬車で五日以上かかる街までの道のりを、一日に短縮させられる街道を敷く。

街にはコレから売り出す予定の、まだ誰も取り扱っていない商品が、魅力満載で出迎えてくれる(予定)。

その代わりに、整備された街道の先にあるその街で、皮を革に加工する技術講師をして貰いたい。


報酬は適正価格での定期的な皮、もしくは革の輸入の契約と、王都からトルモ町への街道整備。

商人のオジサン(トルエバさん)は頷いてくれるだろうか。



街では商売をする人が集まりやすいような政策を取るように申し渡してある。

王都のように交通料の徴収はしない。

人が集まらなければどうにもならないからね。


その代わり、ではないが、通関はしっかりさせて貰う。

持ち込む商品の品名、種類、種類、価格等必要事項の雛形を用意してあるので、そこにどこから来たのか、初めて来る人には紹介者が誰かも含め必要事項を書き込んで貰う。

たびたび名が挙げられる紹介者には、お礼をしなければならないからね。


街の経営上、場所代を貰う必要はあるが、せっかく田舎まで足を運んでくれた商人たちに、赤字にはなって欲しくない。

なので売上が一定以上にならない限りは、売上の何パーセントかを徴収するつもりだ。


ガワだけは立派な街役場へ街を出る前に寄ってもらい、売上の申告と定額の場所代を支払うか、歩合制をして売り上げの一〇%を納めるかを選択してもらう。

ホントは定額+歩合制にするとか、歩合制だけなら二〇%にするとか、お高めの値段設定にする話もあったんだけどね。


どうせ田舎すぎる街は、街道を整備したとしても、朝一番に出発して夕方七の鐘が鳴るギリギリの時間に王都に着ける位の移動時間になると考えている。

それを考えれば商売をする人は最低二泊はすることになる訳だ。


夜通し移動して徹夜で商売するような人は、魔物に襲われるリスクを考えて居ないだろう。

ならば街に落ちるお金は自然と増える。

場所代を高くして街の施設に使うお金を渋られるよりも、場所代が浮いた分、勢いに任せて街の店で散財してもらった方が都合が良い。


料理のレシピもお酒の仕込み方も、したためて置いてきた。

服の型紙も、実は一応は置いてきてある。

ソレらを活かすかどうかは街の住民次第だが、上手くいけばかなりの都市に今後発展するポテンシャルを秘めていると思うんだよね。


街の設備は立派だが、そこに住んでいる人たちがみすぼらしいのが現状である。

良い街に住んでいるのならば、やはり住民の見目も大事である。


なので是が非でも商人のオジサン(トルエバさん)には街に来て欲しい。

そして街の人たちの見た目改善に助力して欲しい。


なにせ人は第一印象で、相手の評価を下す。

そしてそれは九九%見た目に依存していると言っても過言ではない。

快・不快を判断する感情の伝達は言語・聴覚・視覚の三つの要素から成り立つと言われているのだが、その反応は特に視覚に依存される。


華やかな化粧や引き締まった肉体美の類だけではないよ。

ちょっとした仕草や表情筋の使い方なんかも、その評価の判断材料にされる。


だが、やはり築年数の浅い綺麗な家屋から出てくるのが、着古されたサイズも合っていない、みすぼらしい服なのは、俺が嫌だ。

そんなギャップは流石に萌えない。



俺としては街道整備なんて「スキル」でやれば瞬時に終わる。

変な目で見られないように地属性の精霊術でやったとしても、あっという間に終わるのだから、大した苦労も手間も掛からない。

確実に街へ来てもらうための条件を提示しなければと思い提示した報酬だったのだが……


設定を破格にしすぎた。

他にも上乗せしなければならないと思っていたのに、逆勘違いをしていた。


何かの詐欺と疑われたのか、出来もしない夢物語を力説する痛い人に見えたのか。

かなり困惑している。


チラリ、と俺の後ろに座っているカノンとアルベルトを一瞥した商人のオジサン(トルエバさん)


「貴方たちはこの子の保護者なのでは?

こんな法外なことを、口約束とは言え商人に向かって言うものではない、と止めなくて良いのですか?」


商売人って、隙あらば自分の利益のために他者を蹴落としたり利用しようとしたりするもんだと思ってた。

滅茶苦茶心配されてしまったよ。


街道の整備となれば年単位で時間が掛かるし、国庫の中身が目に見えて減るレベルのお金が飛んでく大事業。

ソレを子供が提案して、訝しむでも、戯言をほざくなと怒るでもなく、心から心配をするとか。

どんだけお人好しなんだ、この人。


基本善人しかいないのか、この世界は。

俺が世紀の大悪党のように思えてくる。


「あの街一晩で造れるんだから、それくらいしちゃうでしょ」


「実際、王が許可を下せばできるからな」


まさかの保護者二人からの太鼓判。

商人のオジサン(トルエバさん)は頭を抱えた。


俺の周り、頭痛持ちが多いね。



心配ごとは大人二人の言葉もあり消えただろうが、それが晴れると今度は懐疑心が頭をもたげたらしい。

まだ納得し切れていない顔をされた。


言葉だけなら幾らでも重ねられるが、詐欺師やペテン師の類ではない俺には、そこに説得力を持たせることができない。

なので確実に提示したものを提供できると思わせることさえできれば良いだろう。


大規模な精霊術はこんな建付けの悪い狭い部屋でやったら、周りも含め無事では済まない。

だからといって見た目が地味な精霊術を使っても説得力はないだろうし。


なにか良い方法はないかと、懐を探って手持ちのお金を出したり、売れると思って持ってきた魔物の素材や回復薬など出したら、三方向からストップがかけられた。


向けられた視線は三者三様。


カノンには貴重な素材を床に放るなと怒られた。

アルベルトにはお金をぞんざいに扱ったらダメだろうと窘められた。

商人のオジサン(トルエバさん)にはこの回復薬をどこで手に入れたのか詰め寄られた。


俺、聖徳太子じゃないから、そんな一度に言われても、さばききれない。



硬貨の入った袋は、どうせ出してしまったついでだし。

目算こんなもんだろと銀貨を取り出し重ねて置いた。


魔物素材や霊玉は、しまおうとしたら「アッアッ」とアルベルトと商人のオジサン(トルエバさん)が物欲しそうな目で見つめるので、サッサッと左右に視線を誘導していたら、遊ぶなとカノンからチョップされた。

どうやら、“水晶球の白滝“付近の森で狩れる魔物の素材は貴重なようだ。

商人のオジサン(トルエバさん)なんかは、ヨダレを垂らしそうな勢いで目をギラギラ輝かせていた。


回復薬の出どころ……話して良いのかカノンに目配せしたらNOと無言で返された。

コレ自体はカノンに教わって俺が作ったものだが、そのカノンに太鼓判を貰っている、品質が保証されているものだ。

よく効くと自慢するくらいだし。

製法は本来、他人に教えるようなものではないのかも。


「ツテがあるから、ソコから手に入れました」


その返答も微妙だったようで、カノンには眉間にシワを寄せられてしまった。

チョップは飛んでこなかったし、文句も出なかったのでアウトではない、ギリギリセーフラインを抜けたようだ。


「その伝手とやらを紹介してはいただけませんか!?」


手をぐわしっと掴まれ、ずずいと距離を詰められる。

商人の気迫、ちょっとこわい。


回復薬って、そんな貴重なものなのだろうか。

村ではタダでタカられていたし、ウヌモ町でもほぼタダ同然で卸していたって言っていたけれど。


カノンにふるふると首を横に振られたので、同じようにユルユルと振った。

デスよね、とガックリ肩を落としたが、床にその手を着く前に即座に復活した。


「ならばここの在庫とこの回復薬、交換しませんか!?」


「……ここの在庫、全部?」


「はいっ!」


目をパチクリ。

見渡す銀貨十枚相当の皮の山と、回復薬たったの一本をイコールで結びつけることができない。


正気か?

このオッサン??


しばし考えた後、カノンが「まぁ、良いだろう」と頷いたので渡そうとして、ハタと気付く。

売買契約はコレで成立するかもしれないが、街への定期的な卸しと人材派遣をどうするのかはまだ決まっていない。


全部含めての交渉だ。

気を抜いてはいけない。



ソコからは商人のオジサン(トルエバさん)のターンという名の質問攻めが始まった。


“喰魔の森“が広がる東の地は、命知らずの冒険者が挑んではその命を散らしていく。

そこを避けて通ったとしても、“エルフの墓所“や“世界樹の迷宮“から溢れる上位の魔物に狩られて儚く終わる。

辺境の彼の地に足を踏み入れ帰ってきた者はいない。


それが一般に知られる王都より東の土地の評価だそうだ。

実際はウヌモという小さいながらも町があるので、言伝えの類って全然アテになんねぇな、という話だ。


街周辺に強い魔物が多い、という言葉に俺は首を傾げる訳だが、アルベルト曰く、事実、王都以東は魔物が強くなる傾向にあるそうだ。

川を超えた先はその比ではない。


アルベルトと三バカが弱い訳ではなく?

真面目に聞いたら、この歳まで生きてこられた、しかも“喰魔の森“を抜けられた冒険者が弱いわけがない、と商人のオジサン(トルエバさん)も弁明に加わった。


四人とも、俺に負けたのに?

首を更に傾げれば「お前が異常なのだ」と口を尖らせた。

そんなことを言われてしまったら、カノンなんてどうするのだ。


リーチ差があるので長期戦に持ち込まないとなかなか勝ちを取るのは難しいが、体術はほぼ互角。

精霊術ありだと実戦経験の差で、悔しながらカノンに軍杯が上がることは多いものの、一応俺も善戦はする。

単純な霊力のぶつけ合いなら俺が勝つ。


俺が異常と言うのなら、カノンなんて更にその上を行くじゃないか。

今度は俺が口を尖らせる番だ。


だが、簡単に「それはそうだろ」と肯定される。

なんでだよ。


ブ〜ブ〜文句を垂れれば「この御方、伝説の精霊術師様だから」と言われてハッとした。

そういえば、コイツ、銅像建ってるレベルの有名人だった!

王都を観光するつもりは無かったが、銅像探しはしなくちゃだ!


「銅像って探せばすぐ見つかるかな!?」


「探すな」


「“賢者“様の石像のことを言ってるなら、中央の……」


「探させるな」


“伝説の精霊術師“で“賢者“と繋がるくらいに有名なのか。

へ〜。

コレは是が非でも銅像――じゃなかった。

石像を拝見せねばだね!



石像とは随分雰囲気が違うから分からなかったと、照れながらカノンに握手を求める商人のオジサン(トルエバさん)さん。

“生きる伝説“が保証人だと言うのなら、街への視察や街道の仕上がり具合を見るまでもなく、二つ返事で協力したいと、いい笑顔で快諾してくれた。


ホント、カノンってこういう時チートを発揮するよね。


握手を返すものの、嫌そうにしている姿を見るに、石像は本人の意思で実物と差をつけたな。

見栄を張る方でイケメソに改変されてたら指さして笑ってやろう。


取引ついでに俺の持っている魔物素材の買取をお願いできないか商人のオジサン(トルエバさん)に尋ねたが、残念ながらそこまでの手持ちが無いと断られた。

触るのもはばかられるような魔物素材ばかりだし、もし売るとなると相応の店に行かなければ無理だろうと言われてしまった。


このレベルの魔物の素材を買い取ってくれるようなお店は、商人のオジサン(トルエバさん)の立ち入れる区画には存在しないと断言された。

区画って、なに?



幾度か拡張工事がされている王都は、王城を中心として拡張された回数分だけ壁がある。

中央の大通りを真っ直ぐ行けば、街中にすら関所があるという王都名物を見ることが出来るそうだ。

街中に関所って。

王様は金の亡者か。


貧民が貴族街に立ち入らないようにするための措置ではあるが、その門関を通るためにも、外部の人間はまた、いくつかの質問を受けたりお金を渡したりしなきゃいけないんだとか。

うわ〜、面倒くせぇ。


その徴税は王様含めた貴族の人達の保安と、古い街並みの景観保全のためと説明しているようだが……そんな人の出入りを規制して、何がしたいんだか。

まぁ、カノンがいればそれもスルー出来るのだろうし、俺には直接関係のない話だが。


貴族街の立ち入りまではしなくてもいいけど、外から見るだけはしたい人のために、元外壁に登って観光する人は結構いるそうだ。

こちら側と中央の街並みは全然違うから、是非一度は見て欲しいと言われた。


王城に行くのだから、そりゃ見るけれど。

上から見ると雰囲気がまた違って面白いのかな。


手でちょいちょい呼ばれたので耳を近づけコッソリ伺えば、歴代の英雄の像が壁の向こうに建てられているんだとか。

“三英雄“や“賢者・賢王“の巨像が日の出を背負い後光のように光る、その全体像を拝むために、皆早起きしてお金を払い外壁に登るそうだ。


それは、確かに見てみたい。

全力で止められる気配が後ろからヒシヒシとするから、叶うかどうか分からないが。




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