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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、暴力に訴える。




霊力が俺の霊力値を分母に設定した時、九九八/一〇〇〇〇〇という事実にカノンが拗ねた。

おじいちゃん、年甲斐もなくイジけてるけど、その更に低い連中が地面にめり込まんばかりの勢いで落ち込んでしまっていて、事態が収拾出来そうにないから、せめてアナタだけでも復活して欲しいんだけどな。


それじゃあ、カノンの値を基準にするか、と言ったらガバッと起き上がり、ソレはイヤだと駄々をこねられた。

どないせいっちゅうねん。

とりあえずイジけモードは終了したようなので良かった。



霊力の総量って、一応鍛えれば上がっていくものだから、俺の値を基準にセットしたままにして、時折測りたいんだってさ。

最近は研究と回復薬の改良ばかりで鍛えていなかったから、こんな腑抜けた結果になったのだ! と握り拳でメラメラと燃えている。


努力するのはいいことだけど、自分を追い込みすぎるなよと言いたい。

俺のこの総量、多分だけど、霊力の他にも「スキル」を使う時の対価エネルギーも入ってると思うし。


地球の創りなおしをしようとした時に、殆どの対価エネルギーは消費してしまった。

だが、最近は大したことはしていないし、そのエネルギーも徐々に少しずつではあるが回復してきている。


その回復した分を霊力に置き換えた時の、現在の総量が表示されたんじゃないのかな、と思う。

純粋に霊力の総量だけなら、あってもカノンの倍程度だと思うし。


それとも、それ自体見誤ってしまったのかな。

俺やカノンと同等、もしくはそれ以上の霊力を持っている人間に協力してもらわないと流石に判断がつかない。


復活したものの、霊力を底上げする特訓プログラムを書き出しているカノンは、残念ながら当てにならなくなった。

「俺たちチョー強ぇ!」とイキってオラついてたのに、実は大したことがないと数値で示されてしまい、死屍累々と床に転がってる冒険者たちをどうすれば良いかね。


アルベルトなんかは、冒険者の中でもまだ多かった方だけど、それでもカノンの十分の一にも届かなかった。

世の中の人達が弱すぎるのか、俺とカノンが、文字通り桁外れ過ぎるのか。



ちなみに、自分の適性属性を調べさせたら復活した。

各自、自分たちが望んでいた結果に浮ついてくれたのだ。

良かった、良かった。


アルベルトが教えた方法では、精霊術の発動に大して差は出なかったようだが、やはり適した属性の精霊術の才能を伸ばした方が良い。

魔物との戦闘においても、日常生活においても。


ガルバは見た目の暑苦しさ通り、火属性が適性だった。

冒険者ギルドの職員として働く分には、役立つ場面が少ないように思える。

だが、冒険者稼業を完全に辞めるつもりは無いというし、火なら霊力が少なくても戦闘で役に立つ。

大抵の生き物は火に弱いからね。

餞別に、火属性を纏わせることが出来る斧でもプレゼントするかな。


サージは風属性。

料理にメッチャ役立つよ、と教えたら喜んだ。

ハンバーグが気に入ったらしく、包丁で叩く以外にミンチ肉を作る方法をゲットしたとガッツポーズをしていた。

精霊術の扱い、そんなんでえぇんか。


イヤ、率先してそういう扱いをしている俺が言えたことではないのだが。

それなら武器の代わりに、コイツにはミンサーも含めた調理器具を与えた方が良いかもしれない。


ジャビルは適性が水の精霊術だったので、趣味の解体をする時に、いちいちホースで水をかけなくても、自分が欲しい時に欲しい所に好きなように、水をかけながら作業することが慣れれば出来るようになるだろう。

冒険者の中で一番精霊術を使う機会が多くなるだろうし、伸び代が最も大きいかもしれない。


アルベルトは、俺との戦闘で使っていたのが地属性の精霊術だった通り、最も適しているのは地属性だった。

長年冒険者をしているし、精霊術も多く使ってきたのだ。

自分の適性を肌で感じていたのだろう。

俺を攻撃したことで、地の精霊たちに嫌われていないことを祈る。


一番得意な属性が封印されてしまったら、生存率が著しく低くなってしまうじゃないか。

後で試させて、もし使えなくなっていたらテルモに直訴しなければ。

彼には冒険者ギルドの布教活動という大役があるのだから。


丸投げするつもり満々である。



……――誰か来たな。

人が近付いてくる気配を察知してしばらく後、ドアノッカーを叩く音が響く。

コテコテな定番のライオンの顔にしようと思ったが、この世界にライオンは居るのか問題が勃発したので、大人しく幾何学模様にした青銅製だ。


出迎えると、ウヌモ町の町長さん御一行と、ヌリアさん母娘が立っていた。

一気に家の人口密度が高くなるな。


村の人たちと、ウヌモ町民を迎え入れるにあたっての決まりごとや、村民が国民として登録されるにあたり注意しなければならないことの話し合いが終わったので、その報告に来てくれたそうだ。


この街は大きいし、物資は溢れるほど豊富にあるが、現金がない。

しばらくの間は街中での労働力に対する報酬は、現金ではなく現物支給になること。

また現金を得るため、また街への移住者を募るためにも、宣伝も兼ねて収穫物を王都に手売りに赴くこと。

その際の出店料は、ウヌモ町が代表で出す代わりに、その分金銭の分配は多めに貰うことなどの商売のことまで決めてくれたそうだ。


さすが、欲が薄い人達なだけあって分配率や、街の予算として確保する金銭等、どこか不当に偏っているということがない。

言うなれば、こんな程度の分配率で良いのかと心配になる程に自分たちの取り分が少ない。

街の予算を多く取ってくれるのは有難い話だが、それでいいのか。


それに、確実に売れる保証なんてないのに、収穫した野菜とその加工品が、全て売れること前提の記載しかしてないのだけれど。

甘すぎない?

大丈夫そ??


それに関しては、ウヌモ町に限らず、農作物の収穫率が全国的に低水準であること。

そもそも魔物が闊歩しているせいでそれぞれの町が保有している農地が狭いこと。


その他にも細々とした理由はあるが、常に食糧難状態のようなものだし、この街の野菜はとにかく味が良い。

万が一その日売れ残ってしまうようなことがあったとしても、口コミやリピーターによって二回目以降は強気の値段でも確実に売れると断言された。


儲けよりも移民増やしたいからそんな値段高くしなくていいんだけどね。

……イヤ、王都では高く売って、現地ならば安く美味しいものが食べられるから、おいでよ! って宣伝する方が良いのか?


小さな町から行商に出向く場合、侮られることもあるし、買い叩かれることだって、大きな街相手ではある。

近しい形は知っているものの、見たことのない野菜に買い控えは起きないか、それは懸念材料としてあるが、実食した村の人全員が自信を持って万人に受け入れられると評価した。


なんなら加工品を試食販売すれば良いしね。

提案したら、もったいないと声を荒らげられたが、商売の手法としてデモンストレーションは売上向上に一役買ってくれるのは統計として出ているわけだし。


初めて見る食材に忌避感を持つのは誰だって同じだ。

下処理が簡単。

栄養豊富。

そんな説明よりも何よりもそれを凌駕するのが、美味しいと魅力を実体験することである。


試食販売をキッカケに食品を購入したことがあると答えた人は、かなり高い割合だったとされている。

販売員の口のうまさや、食べてしまったからには買わなければと後ろめたさも手伝った数値ではあるが、効果があるのは間違いない。


調理したものを提供するのは時間も手間もかかってしまう。

漬物程度なら仕込む手間はそう掛からないし、日持ちもするし良いのではなかろうか。

キュウリもナスも、ミョウガもセロリも、塩漬けするでもピクルスにするでも、もしくは両方作って食べ比べしてもらうでも良い。


美味しければ、ネットのないこの世界でも、奥様方の口コミというネットワークで瞬く間に拡散されることだろう。


俺が用意し、樹の妖精(ドリュアス)たちが育てたお野菜たちだ。

初回の販売価格は場所代と王都までの旅費と人件費を差し引いた金額が、ほぼそのまま儲けになる。

原価はゼロに近いのだから、売値だってアホほど高くする必要はない。


美味しい上にそこそこ安いとなれば、余計に評判は右肩上がりとなる。

その評判により興味を持ってくれた、人の往来が増えるチャンスを逃してはいけない。


だが、王様の許可なく街道を敷くのは、さすがにダメだと言われてしまった。

チッ、名ばかりの“権能”め。


まぁ加工品の仕込みにも時間はかかる。

なにより畑が広い上、使い慣れない機具を使うことになるため、農作業に慣れるのにも時間はかかる。


村の人たちが難なく生活できるようになるのが第一。

町の人たちが移り住んで来て、街での生活に慣れてもらうのが次点。

供給量が安定するまでは、王都へ出稼ぎには行かない。

その間に俺はカノンを通じて王様に街道をひく許可を貰う、と。


焦ってことを仕損じてしまったら元も子もない。

一歩一歩着実に進めるべきだろう。


……俺みたいにせっかち、かつワガママなヤツには絶対無理。

今すぐ空飛ぶ石版使って町民全員引越しさせて「スキル」使って道路整備したくなる。



ここまでの話し合いにおいて、進行役こそ町長さんがしてくれていたが、指示を出していたのは大抵俺だった。

しかし、こんな短期な俺に組織の代表なんて務まるハズがない。


この中のメンツを見ても、責任感やカリスマ性なんかを考えると、街のトップを務める適任者はカノンになりそうなのだが……


「……というわけで、この街の責任者は町長さんだね」


「どういう訳でありますか!?」


イヤ、だって。

適任者はカノンなのだろうが、この人、やること沢山ありすぎるし。

俺のお守りもしてもらわなきゃ困るし。

責任者に抜擢して田舎の街に拘束させてしまって良いような人材じゃないじゃん。


次点で元お貴族様なアルベルト。

彼は人の上に立つ者の心得を、生まれた環境から自然に身に付けて来た。

しかし最初から跡取りとして育てられてはいないので、偉ぶったりせず、下に就く者への配慮もしっかりできる。

教育が今更必要ないのも大きい。

だが、何度も言うが彼には大役が(以下略)


町長さんなら、どの程度の規模かは知らないけど、今まで責任者をしてきたのだから、その延長と考えれば丁度良いのではないかと思って。

村民とも顔見知りだし、争いごととは無縁そうだし人当たりも良い。


バッチリ話し合いもまとめて来たんだし、イケる、イケる。


「この街の責任者、町長さんが良いと思う人、挙手〜」


問答無用で多数決を取ったら、若干一名を除いて全員上げたので、無事採決されました。

数の暴力って有無を言わさず面倒事を決められるから素晴らしい。


そんなわけで町長さんこと、ゴルカ・ヒメノさんがこの街の代表に決まりました。

拍手〜。


……ん?

ヒメノ??

姫野???

もしくは姫乃?????


ルーツに地球人、しかも日本人がいたりするのだろうか。


精霊術を使えるイコール、地球からの移民組の遺伝子を持つ者なのでは、の仮説に説得力を持たせられるかもしれない。

正直、朝食を皆でとった時に、もしかしたらその仮説は間違っているのではないかとも思ったのだが……


まぁ、とりあえずそれは置いておこう。

サンプルは多いに越したことはないし。


せっかくなので、教会学校の建設やそこでの取り組みを説明しながら、霊力測定器を試してもらった。


分母を一億に設定しての、二六。

冒険者組と比べたらかなり低いが、やはり、あるな。


だが、話を聞けばウヌモ町のルーツは、世界樹の迷宮から溢れ出す魔物に恐れをなして、ヌリアさんたちが暮らしていた、あの名も無き村から一目散に逃げ出した人達が新たに興した村だそうだ。

外部の血も多少混ざりながら発展し町の規模になったものの、英雄と同じ血脈を持っているだなんて口が裂けても言えないと、首がポロリとモゲないか心配になるくらい横に振られた。


最初に立てた仮説は違ってたか。

んじゃ、次の仮説。


ヌリアさんとフリアンくんにも数値を測ってもらう。

町長――ゴルカさんと同様、生まれてこの方精霊術を使ったこともなければ、精霊の気配を感じたこともないと豪語するが、問答無用。

それぞれ……八と、一二。


その数値を見て、三バカは自分よりも下の値であることに安堵しているが、カノンなんかは驚きのあまり言葉が出てこないようだ。


例え一でも数値が出れば、それはつまり精霊術を使えると言うことなのだから当然だ。

今までの「血統により精霊術を使える者は限られている」という説が完全に覆ってしまうのだから、当然だろう。


「……どういう事だ? これは」


「多分、料理のせい」


「あ”ん?」


そんな凄むなよぉ。

怖いじゃんか。

泣いちゃうぞ。



ヌリアさんとフリアンくんは、俺が作った食事を二回、そして今朝、俺やゴルカさん達が作った朝食を食べている。

そしてゴルカさん達は、朝食の他に樹の妖精(ドリュアス)の実や、畑の採れたて野菜を調理せずに食べている。


自然のあちこちに、霊力は溢れている。

それこそ、この街全体に設置してある街灯全てに明かりを灯すのに充分な量の霊力が大気に溶け込んでいる。


なのになぜ、精霊術を使うのに素養が必要だと言われるのか。

精霊術を使うのに遺伝が必要だと言うのに、祖先に地球人が居なくても使えるのか。


ちなみに、逆に地球人以外が使えるのだと仮定してしまったら、俺やカノンが使えるのはおかしいとなるので、そのセンは真っ先に却下している。


村の人たちが振舞ってくれた食事や、ゴルカさんが躊躇した野菜の生食、また珍しい調理法だと言っていた下茹無しのシチュー作り。


冒険者である期間が長ければ長い程、強くなる霊力。


それらを総合して考えた時、住居を構えている人達は、日常生活において霊力を体内に取り込む機会を自ら失わせているのではないかと考えたのだ。


空気中に含まれている程度の霊力では、精霊術を扱うに至るまでの霊力保有が体内には出来ない。

ならば、外部から霊力を補給する他の方法は何か。


地の精霊がいて、その眷属が地中で生活をしているのだ。

地面にだって霊力は満ちている。

その霊力満点の土で育った野菜に霊力が篭っていない訳がない。


時間が経つと空気に溶けてしまったり、茹でると水に流れ出てしまったりしやすいらしく、この世界の一般的な調理法で作られた料理は、食卓に並ぶ頃にはほぼ霊力含有率がゼロになってしまうようだ。

霊力も栄養のひとつと身体が感じてしまうからか、味付け云々もそうだったのだが、村の人たちが寄越した料理が美味しく感じられなかったのはそういう理由も含まれているのだろう。


冒険者は、貴重な水をいちいち下茹なんかには使わず、そこら辺で収穫した野草も魔物も、最低限洗い流したらそのまま鍋にぶち込んで汁ごと頂く。

霊力が無駄なく体内に入っていく訳だ。


この仮説が事実なら、料理方法を見直すだけで、国民全員が精霊術師になれることになる。

それをカノンは、国王は、どう判断するだろうか。


……また、カノンの頭頂部が心配になるような事実が発覚してしまったね。

大変だ。




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