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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、疑われる。




濡れ衣を着せられお怒りモードな俺である。

だが、カノン自身は至極真面目に見据えてくる。


識字率と国家転覆に因果関係は無い。

欧州の革命のタイミングが、たまたま識字率が向上した時期と重なっただけ。

そう結論付けられていたはずだ。


むしろ、文字を介して争いをおさめることもあった。

ポツダム宣言とか、文書として残っていたでしょ。

戦争を終わらせるための降伏文書に受託詔書。


和平の申し入れや休戦宣言を、言った言わないの水掛け論にさせないため、証拠として文書を残した。

どの国家の要人も、文字を読み、書き、そこに書かれた言葉の意味を理解していたからこそ成しえたことだ。


実用性の他にも、文字の偉大さはある。


文字は物語を産み空想に浸らせ、心の豊かさを生む。

「富貴にして善をなし易く、貧賤にして功をなし難し」とも言うように、豊かさは幸せの、貧しさは不幸の連鎖に繋がると言えるだろう。


書物は万人の心を豊かにすることで幸福に出来るポテンシャルがある。

その幸福を自らの手で作り出したいと思えば、新しい物語が生み出され、幸せに浸れる時間が、人が増えていく。


言葉は、文字は、偉大なのである。


文字を覚えて、書き残された過去の出来事から学びを得れば、同じ過ちを繰り返さずに済むし、良いことづくめなのだ。


人類が生み出した文明の中でもトップをはれる発明品だと思う。


事実、識字率の低い国は貧しい国が多かった。

学がなければ知識を得ることができず、知識がなければ自分が不当な扱いを受けていることも、もっと豊かな世界があることにも気付けない。

そこに留まり続けることになる。


少なくとも、地球ではそうだった。



欲の少ないと言われたこの世界の住民と、革命や国家転覆という言葉は、考えてみればあまりに不似合いである。


何でそんな言葉が残っているのだろう。

考えられる理由は一つ。

過去、実際にあったのだろう。


文字を読める人が増えたことによって、争いが起きたのだ。

この世界の歴史は微塵も知らないが、カノンたちの様子を見るに、そうだと断言出来る。



国家の転覆を目論む場合に必要なのは、金もカリスマ性も勿論大切ではあるが、何よりも必須とされるのは、よく回る頭である。


知恵を持ち、同時に自己を主張する手段が歪んでしまっている者は支配者となりやすい。

知恵を持たず、何も考えず、唯唯諾諾と従う者は被支配者側になりやすい。


教養がないと、一人のその知恵ある先導者により、善悪の判断がつかないよう洗脳されてしまい、犯罪に手を染める者は多いとされる。

あぁ、革命を起こすような達もそうだと言いたいのかな。


文字を読めるようになった、知識を得る喜びに目覚めた段階で、真っ先に読む文章がプロパガンダによる思想汚染を促す内容ならば、そちらに誘導されやすい。

俺が教育を施す課程で、反逆思考を植え付けようとしているとでも考えられたのかな。


知恵も知識もあれば、プロパガンダ技術を駆使された風刺文書に対抗することは出来る。

だが、子供のように様々な面で未熟だと洗脳されやすい。

社会から断絶されている、村の人たちのような立場の人もそうだね。


情報弱者は洗脳されやすい。

それをカノンは知っているのだろう。

だから警戒した。



訴求力の強いキャッチコピーは総じて簡単な言葉で表現されており、読みやすい。

なのに受け手に与えるインパクトが強い。

つまり、脳に刻まれやすい、心の中反復しやすい言葉である。


人間って言うのは不思議なもので、繰り返し同じ内容を認識すると、ソレが良いものだと錯覚してしまうのだ。

単なる情報が気になる情報になり、次第に、これだけ何度も繰り返し脳に入ってくる情報なのだから、コレは良いものに違いない。

そう捉えてしまう。

不思議だよね。


洗脳ソングとかあるじゃない。

全てがそうだとは言わないが、結構マーケティング的に故意に作られる流行はあるのだよ。

キャッチーさとか、言葉選びとか、最低限必要なものが備わっていることが前提だけど。

それを巨額の費用をかけて、ラジオやテレビ、色んな媒介を通して宣伝をする。

時間もメディアも問わず流れてきたら、「コレだけあちこちで耳にするのだから、コレは世間的に良いものだと判断されているのだろう」そういう評価から「ならばコレは自分にとっても良いものである」という思考に持っていかれる。

刷り込まれる。

つまり、洗脳される。


一種の、同調圧力に近いのかな。

世間の「良い」が「自分の良い」とは限らないのにね。

沢山音楽を聴いて、自分の感性に合ってる「良い」を見つけている人には、通用しにくい。



精神や思想も同じ。

たくさんの知識を持っていれば、その情報の数々が緩衝材になる。


前に見たことあるな。

どこかで聞いたことがあるな。


そんな自分が蓄えた英智の盾のおかげで、思想のナイフに胸を抉られずに済む。


だが、言葉を覚えたばかりのヒトは、その盾を持たない。



正しい導きにより得られた思想ならば問題ない。

対話により人間同士の関係性の中から作り上げられていく、争いの生まれない、尊重し合える、道徳的な正しい思想。

ベースはソレが望ましい。


「自分がされて嫌なことはしない」

それでは自分がされても嫌じゃないことは他の人にしても良いになってしまう。

なので教えるべきは「人がされて嫌がることはしない」の方がベターである。

人と関わる時は自分がどう思っているかではなく、相手がどう思っているかをまず考えようって話だね。


そうじゃないと俺みたいにワガママになってしまうからね!

自己都合により世界を滅ぼしてしまった位だからな。

ダメな人間の見本と思ってくれ。



家と同じで基礎がしっかりしていれば、積み上げられていく知識の中に、腐った素材が混ざっていようと、それさえ取り除けば揺るぐことはない。

取り除いている工事の間は他の部分が支えてくれる。


だが、誰かの目論見により土台から歪められてしまったら。

歪んでいることを自覚する機会さえなかったら。

ギリギリで保たれていたバランスは崩れ、意識は、自我は崩壊する。

まっさらだから、とっても洗脳がしやすくなるね。


大抵そういう汚染された思想というのは世界的に見て少数派だ。

侵略するために兵を築き戦争をしたとしても、まぁ、行き先は決まっている。

かつて地球に存在した国家のような末路を辿るのだろう。



カノンは、俺が同様のことをしようとしているのではないか、と勘ぐっているようだ。

こんな、ワガママではあるが人畜無害な平和主義者に向かって、なんて無礼な。


……と言っても、ひと月程一緒に過ごしただけで、カノンからしてみれば俺は『身元不明のなぜな神様と親しげな、見た目が物語に出てくる魔王と外見が同じ記憶喪失者』である。

自分で言っててなんだが、怪しいという他ない。


正直関わりを持ちたくない類の人間だ。

だって関わったって、ろくなことにならなさそう。


実際、カノンのため息をつく回数は日に日に増えている。

そのうち白髪でも生えそうな勢いで気苦労が増しているからね。

ろくなことに、既になっていない。


大変だ。

主犯の俺が言えることではないが。



俺がこの世界の人達に洗脳を施すのなら、皆ハッピーになるように箍を外すくらいかな。

自制心が強すぎると、人間幸せになることを躊躇ってしまうから。


ただそれって正直、麻薬を使ったりアルコール入れたりした時と同じ状態じゃん。

自分さえ良ければそれでいいって考えに陥っちゃうんだよ。

それでは幸福感を得るための神経伝達物質はあまり分泌されない。

脳汁は人との関わりによってドバドバ垂れ流れる勢いで出るんだから。


理性や自制心ってやっぱある程度必要なんだよ。

集団社会で、生きていくんだもの。


だから、理性を持って、知性でもってみんな幸せになれるための丁度いい落とし所を、皆で話し合って決めて欲しい訳よ。

その手助けをする程度だよ、俺がしたいのは。


だから、洗脳云々には興味無いかな。


洗脳ってだって、機械的じゃん。

右向けって言われたら何も考えず、何も疑問に思わず右向いて、死ねって言われたら命令を受けた喜びを感じながら自死するんだよ。

そんな世界、クソ喰らえだね。



せっかく生き返って自分の好きなように生きることを神様(精霊の皆)からも許可貰ったって言うのに、そんな面白味のない、つまらない世界になんてしたくない。

命懸けで地球を拾い上げてくれた、この世界の神様にも申し訳が立たないし。


カノンもまだまだだね。


俺が与えるのは知識だけだ。

生き方のコツを教えるだけ。


ソレを記憶に残し、身につけて、実際に行動に移せるか。

それはその人次第だし。


人類総幸福計画とか言うと胡散臭く感じるかもしれない。

だけど自分が幸せか否かも認識できないよりは、今は不幸だけど幸せになりたいと望める方が良い。


その手段を増やすための知識だ。

俺はキッカケを与えるに過ぎない。



不幸だと自覚することを残酷だと言う人も、いるかもしれないけどね。


それに関しては、ソクラテスの「無知の知」という言葉が有名だ。

自分には知識が無いことを自覚し、真摯に自分自身と向き合い、沢山の人と対話し、そこで得た知識でもって正しいと思える、他者からも正しいと評価される行いをしなさい。


そんな意味で捉えている。

彼は聖人だからね。

正しい生き方を説いたのだろう。

そして後世に残っているということは、この考え方が正しいと思い伝える人が多かったからなのだろう。


最高の悔いのない人生を生きるためには、沢山学んで知識を得て、より良い生きる道を探し続けることか大切なのだと。



だが「満足は富にまさる」って言葉もあるか。

その着眼点から見ると、現状で満足している人に知識を与えることは正しいのか。

確かに悩むな。


無知を自覚するタイミングは、自分で選ばせれば良いか。

叩かないと扉が開かれないように、望まれた時に知識を与えれば良いのだ。


まぁ、昼ごはん(エサ)は撒くけど。

人っ子一人来なかったら悲しいじゃん?

だって俺は、ワガママだね。



「俺はこの世界の住民として、世界中の人が俺みたいに楽しく生きてくれなきゃ平等じゃなくてヤダなって思うから、そのワガママを叶える場所を提供したいだけだよ」


「王を討ち、この街を新しい王都にするのが目的なのではなく?」


ぱちくり。

思わず言葉を失ってしまった。


え、ガチでコイツ俺が国家転覆目論んでると思ってたの!?

や〜だ〜。


「そんなメンドクサイことするわけないじゃん!」


つい本音が漏れたら、どの口からも「面倒臭い……?」と疑問の声が上がった。

面倒にも程があるじゃん。


それって革命でしょ?

戦争でしょ??


争う前準備で人をこれでもかってくらい大勢集めて、軍資金集めて、正規軍に見つからないようにコソコソして。

いざ実行に移し始めたら、バッタバタと死んでく自営軍の人員を補充しながら、内部分裂起きないように窘めて、備品やお金が勝鬨を上げるまでに足りるのか気にして、神経すり減らさなくちゃいけなくて。

無事成功したとしても、元正規軍に寝首かかれないようにヒヤヒヤしながら、国民になった人たちに革命返しされないような良政をとりつつ、革命軍として参加してくれた人たちに報奨金出して、やっぱりお金に悩んで、国として機能を損なわないよう、自分たちが主張した政治を過不足なく執り行わなければいけないんだよ!?


スーパーマンかよ。

俺はそんな万能じゃないぞ。


「スキル」こそ神様が扱うレベルのチートかもしれないが、それを使う俺は単なる人間だ。

しかもまだ一五歳だぞ。

人生経験が圧倒的に少ない。


俺より優れている人なんてごまんといる。

人を導き統治するのはそう言う優秀な人がするべきだ。


そして俺は欲深い。

国王は自分の国の人たちを幸せにするのがお仕事かもしれないが、俺は国や領土関係なく、この世界に生きる人全てを幸せにしたいのだ。

国王なんて狭い地域に限定して幸福撒き散らすような、みみっちいことはしたくない。



どうすれば良いのか試行錯誤は必要だから、実験場としてこの街を作りはしたが。

あくまでここは失敗しても、まぁ、俺に楯突いて人を馬鹿にした、その上で一度は死んでもおかしくなかった連中の集合体だし。

幸せを通り越して堕落してしてしまった時に、心置きなくデリートかませるな、と思った人しか今の所いないし。


良い塩梅を探すための試験をしてるだけなんだよ。

王都を見たことがないから王都よりも何故豪勢な作りにしたんだとか、攻められても鉄壁過ぎて崩しようがない外壁は何のためにあるんだとか言われてもさ。


ノリで、つい。

としか言いようがない。

メンゴ。


そっか、俺ってばそんな危険人物に思われていたのか。

バカみたいなアホ丸出しのことしてるのも、フリだと思われていたのかな。

コッチが素です。

思慮深さなんてないよ。


一回死んだも同然で、この先は全部余生なのだから好き勝手に生きると決めているのだ。

良い子ちゃんのフリをするのも、もう辞めた。

自分の行動の尻拭いはするけど、あとは自由気ままに過ごすのだ。


「お前に感じては、疑うだけ損な気がしてきた」


「今更すぎる」


過去最高に、力の入っていないチョップがデコを刺激してきた。

疲れていらっしゃるね。

視察ついでに銭湯でも入ってくれば?


お疲れさん、とカノンの頭を撫でたら、項垂れてデコを強かに打ち付けていた。

俺に喰らわせた手刀よりも、余程痛そうである。




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