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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、吸い取られる。

この話で書き始めてからふた月経過しました。

いつもご覧下さる方々ありがとうございます!




街を囲む壁の外まで放り投げる。

頭に乗ってる葉の先まで地中に埋める。

内臓の類いも木製なのか確認する。


様々な処理の仕方を、何度頭の中で致したかは分からない。

理性と自制心を総動員し、衝動を何とか抑え樹の妖精(ドリュアス)の話を根気強く聞いた。


あまりにも悠長に話すせいか、拷問に近い苦痛のせいかは不明だが、体感、既に一時間は経過している。

俺と樹の妖精(ドリュアス)のやり取りを見て、ヤツらが安全だと受け入れた町長さんたちが途中経過から参戦してくれたお陰で助かった。


よく相手に出来ると言ったら、子供の世話をするのと同じだと笑われてしまったが。

癇癪を起こして会話が出来なくなるような子供も多いから、ゆるゆるとマイペースに喋る程度はなんてことないそうだ。


ノンビリした話し方に嫌な顔ひとつせず、和気あいあいと話しているのを見ると、俺には子供の世話は出来ないなと思う。



樹の妖精(ドリュアス)がどこから湧いて出てきたのかと言えば、一昨日俺が植えた種に紛れ込んでいたようだ。

作物ごとに種を入れた袋を分けていたのだが、やけに数が少なかった種が、この樹の妖精(ドリュアス)の種だったらしい。


テルモからは何も言われてなかったんだけど。

まさか彼も別れて数日の間に、まさか俺が畑を耕すとも街を造るとも予想なんて出来ないわな。

俺も考えてなかった。


いつ何をどこに使うかは分からないからと、嵩張るものでもないしと言うだけの理由で、種を旅の荷物に詰め込んだ俺の行動は読めなかっただろうし。


樹の妖精(ドリュアス)の種を植えたのが一昨日。

んじゃ、いつ芽吹いたの? と言えば一昨日の夜のうちには身体が出来上がって精霊の意識が宿っていたとか。

霊力が多く吹き込まれた外側が形成されても、地属性の低級精霊が宿らなければ樹の妖精(ドリュアス)として誕生することはできない。


しかしこの土地はエルフの墓所にも近いし世界樹の迷宮にも近い。

なぜそのふたつが近いと精霊が多いのかはイマイチ樹の妖精(ドリュアス)の説明が要領を得なくて理解出来なかった。

ただ、そのおかげでサッサと誕生したのは間違いない。

むしろ誰が宿るか精霊同士の熾烈な争奪戦が行われたせいで少し遅れたくらいだとか。


そんな争うようなもんなの?

樹の妖精(コレ)になるのに??


精霊自身が漏れなくこんな伸びてベロベロになったカセットテープみたいな喋り方をするとは思えないし思いたくない。

樹の妖精(ドリュアス)の身体に宿った時の副作用のようなものなのだろうか。


夢ならば覚めてくれと思わずには居られないほどの悪夢だな。

得られるものに対して有害事象がデカすぎる。



七柱の属性神が肉体を欲しがったのは、てっきり人間だった時の感覚が恋しいとか、生前できなかったことをがしたいとか。

そう言う理由だと思っていたのだが、そうではなく。

精神体である精霊たちが肉体を得ると、単純に強くなるそうだ。

霊力(不思議エネルギー)による作用なのだろう。

理解の範疇を超えるので深く考えずに流す。


樹の妖精(ドリュアス)に宿った精霊たちも漏れなく、低級精霊から中級、上級に格上げされたそうだ。


真っ先に目を覚ましたのが上級。

他の個体は頭の上に葉っぱが着いてるとか、せいぜいツボミが着いてる程度なのだが、コイツは花が咲いている。

ラナンキュラスと言うよりは葉牡丹のような、中心から外側に向かってグラデーションがかった大きな株が乗っかっている。

大きい分、重いだろうし首に負担がかかっていそうだが、本人は特に気にする様子もなく、のほほんとしている。


霊力を蓄えれば蓄えるほど、頭の花が成長して実をつける。

実を収穫したら長い眠りにつき、活動できるだけの霊力を取り込んだらまた土から出てきて、ふらふら活動をしだすのだそうだ。


俺が見た時には既に花が咲いていた気がするのだが?

なのにコイツら全員漏れなく寝ていたような気がするのだが??

気のせいだろうか。


たずねたら「夜は寝る〜」だそうだ。

植物には就眠運動と呼ばれる現象こそあるが、実際に動物のような睡眠は行わないはず。

……動物とか植物の区分ではない不思議生物なのだから、か。

俺の常識と知識にこの世界特有の生態を当てはめちゃダメだよな。

混乱して頭がシャットダウンを起こしてしまうもんな。

深く考えたら負けだ。


二日で花が咲くのはなかなかないと樹の妖精(ドリュアス)五体全員で万歳しながら喜んだ。

もう、実も成りそうだと一体が言うと葉っぱっぽくなってる両手をペシペシ叩いて拍手をした。


どうやら霊力が沢山詰まっている実は非常に珍しく、貴重な薬品の素材になるそうだ。

そしてとても美味しいとか。

それは食べてみたいな。


でも、確信を持って言える。

薬の材料になるならカノンに盗られる。



そんな言うほどの霊力を土に込めたかと思ったが、確認すれば、確かに。

この広い農業区全体に込めた霊力が、半分以上減っている。

どんだけ食いしん坊さんだよ。


ここまで減っているってことは、アンプルに込めた霊力はうまく地中に馴染まなかったのだろうか。

液体ではないし、家庭菜園の栄養剤みたいに土には馴染まないか。

残念だ。


そう思ってアンプルを挿した方を見てみれば、込められた霊力により淡く光っているはずの霊玉が沈黙している。

ガラス玉みたいに無色透明。


つまり、空っぽ。

何ヶ月戻ってこなくても問題ない程度の霊力を込めたはずだったんだけれど。

どういうことだよ。


問題ないって言うのも、この土地の霊力が空っぽになる直前の状態なら保っていられる、ではない。

作物を植えてから収穫するまでの期間が単純に1/3程に短縮できる霊力が込もった状態を維持し続ける。

その上で実が沢山なり、味も好くなる、万全な状態で十ヶ月はもつようにした。

従来よりも幾分か好いな、程度の霊力量で良いなら年単位で保つはずだったのだ。

それくらいの霊力を込めに込めた。


コイツら、どんだけ食い散らかしたんだよ。


ドン引きしていたら、のてのてとペンギンのように身体を左右に揺らしながら、根っこのように枝分かれしている脚でコチラに歩いてくる。

かごめかごめのように取り囲まれた。

眼球の入らない感情が読みにくい双眸でジーッと見上げられる。


「かんおんたいとく〜」

「おんしゅ〜ぶんめ〜」

「せきこ〜りゅ〜こ〜」

「こ〜こ〜おんあい〜」

「ほ〜おんしゃとく〜」


「「「「「りんうそ〜せ〜」」」」」


ぺそぺそ四方から触られたと思ったら、急にカッと五体の樹の妖精(ドリュアス)が眩く光った。

同時にゴッソリ霊力を持っていかれて、虚脱感により膝をつく。


心配そうに慌ててコチラに駆け寄ってくる町長さんに問題ないと返事をすることさえ出来ない。


……コレは、なかなかにシンドいぞ。

それならいっそ気絶するまで全部持って行ってくれと思わずにはいられない位に呼吸も苦しく、手足が痺れ出した。

頭痛もするし、目も霞む。


近くの休憩所として建ててあった東屋に、両側から担がれなんとか移動してドカリと無遠慮に横にならせてもらった。

顔色が悪いらしく、アワアワとしている町長さんたちには悪いが、構う余裕すらない。


グロッキーにしていると、この状態に至らしめた犯人――犯妖精どもが悪びれる様子もなく「これ〜」と丸い拳大の果実を寄越す。

見たことのない、知らないも同然の他人から貰ったものなんて食べる趣味ないぞ。


そもそも、こんな状態じゃ食欲も湧かない。


受け取らずに無視をしてると、変なところで知恵が回るようだ。

一人では届かなかったが三体が肩車をして、無理矢理俺の口の中に先程差し出してきた果実を突っ込んできた。


モノを許可なく押し込むな!

年寄りにやったら窒息死するぞ!


しかも洗ってもいないのに。

不衛生だろうが。


無視し続けてもろくなことになりそうにない。

諦めて起き上がり、続きを食べ……ん?

あ、起き上がれるようになってる。


押し込まれた実を鑑定眼で見てみれば『樹の妖精(ドリュアス)の実』の表示。

その目をそのまま樹の妖精(ドリュアス)に向けると、先程まで葉やツボミだった個体まで全て一足飛びに頭から果実を生やしている。

名前も『樹の妖精(ドリュアス)』から『樹の妖精の成体(ドリュアス)』となっている。

大きさが変わらないのに成体とか言われても困るんですけど。


それに、ツボミや花を咲かせた状態は可愛らしさもある、キレイな妖精っぽさを残していたのに。

成体へと変化した今、ジャンケンの強い、海産物家長女のような頭になっている。

とてもシュールな絵面だ。


ゴッソリ持っていかれた霊力は、樹の妖精(ドリュアス)の実を一口食べただけでほぼ回復した。

俺の霊力が無くなった原因も、田畑の霊力が著しく損なわれたのも、全てコイツらが原因だったとみて間違いない。


だが、この実ひとつでお釣りがくるレベルの回復力だ。

非常に疲れるが、俺が霊力を注ぎ続ければ樹の妖精(ドリュアス)の実を収穫し放題なのではないだろうか。


そうは思うが、コイツらにだって何かしら反動はあるだろう。

一度収穫したら霊力が回復するまで寝ると言っていたし。

霊力が一気に回復したとしても、他の何か――例えば気力体力とか、そういうものを回復するための休眠も必要だろう。

植物の性質も併せ持つなら、急激な栄養過多は作物が枯れる原因にもなり得るわけだし。

いくら不思議生物だとしても、無理はさせない方が良い。


何より疲れるし。

本っ当に疲れるし。

霊力切れ起こすのはマジで勘弁して欲しい。


「ありがとうな」


果実を軽く上げてお礼を言うと、ニパ〜と笑って小躍りし出した。

うん、まぁ、見ようによってはかわいい、のか?



因みにいじめっ子判定とはどうするのかと聞けば、無視をしたり石を投げてきたり、正しくいじめっ子がしそうな行為全般が該当すると言う。


だがそれ以上に注意しなければならないことを聞いてしまった。

休眠期間にある時に、水や肥料を与えるといった世話をしてくれなかった場合は、霊力が効率良く取り込めず瘴気を吸収してしまう。

結果、世に恐れられている人攫いの樹の妖精(ドリュアス)へと変貌してしまうそうだ。


へぇ、精霊でも瘴気を取り込むと魔物になるんだ。


いじめられた時の仕返しはのイタズラは……本人たちにはイタズラのつもり、なのだろう。

お揃いの見た目にするために頭に種を植え付けたり、手足と植物を合体させたりするらしい。

人の肉体を栄養に育つ種子と植物だそうなので、育つ頃には干からびたミイラになるそうだ。

……ミイラのシワが自分たちの身体にある木目に見えるとでも言いたいのだろうか。

とてもキレイな花を咲かせるのだと喜ぶ姿は純新無垢そのもの。

いとけない顔をして恐ろしいことを言いやがる。


生死に関わらない、比較的穏便なイタズラは肥溜めに落として全身真っ茶色にすることだそうだが、ソレは精神的に死ねる。

絶対に辞めて欲しい。


先程樹の妖精(ドリュアス)の実を貰った時しっかりお礼を言って良かった。

そう心の底から思った。



頭についた実は俺の霊力を使って実らせたものだから、全部くれると言われた。

だが全部もいだら即行で休眠期間に入ってしまうそうだ。


作物を育てるのが得意で、それが趣味だと言うのだ。

せっかくだから樹の妖精(ドリュアス)たちにも農業区の説明をしておいた方が良いだろう。


そう思い東屋に隣接して設置してあるポンプの使い方や、麻で作られたホースの接続方法などを教える。

高水圧に耐えられないとか、どうしても途中で水漏れをするとか、コレを創る元案となった消防ホースの改良点は、むしろココで使うには適していると思いそのままの仕様にさせて貰った。

いざとなればこの街に住む人達でも補修したり、量産したり出来るしね。


二人一組になって、一人がホースを遠くまで伸ばして端を押さえる。

もう一人がポンプで水を汲み上げる。

そうすれば水漏れする箇所から畑にまんべんなく水やりができる。

ジョウロでこの広さやってたらキリがないし。

かと言って自動給水栽培装置まで付けたらさすがにやり過ぎだろうし、半自動にした。


案内しながらアンプルに再度霊力を補填する。

その先から霊力を喰らおうと大口を開けた樹の妖精(ドリュアス)にはその空洞に霊玉を放り込んでやった。

パァっと晴れやかな表情になり、飴玉みたいに口の中で転がしご機嫌でスキップしだしたのだが、美味しいのだろうか。


ボクもワタシもと言わんばかりに他の四体にまとわりつかれた。

お前らもう実をつけたし、これ以上の霊力は要らないだろうが。

そうは思うが精神的にも子供のようだしお揃いが良いとか、仲間はずれが嫌だとかそんな理由なのだろう。

同じサイズの霊玉に程々の霊力を込めて口の中に入れてやった。


ここで霊玉を砂にしなくなっただけ、成長したよな、俺。


収穫作業車の使い方や、カゴ付きの台車やリヤカーの荷重積載量の上限の説明。

使う時の注意事項。

ヌリアさんに説明をお願いしようとしていたことも、ついでなのでしておいた。


だっていつまで経っても来ないし。

さすがにそろそろ心配になってきたぞ。



案内の最後に、肥溜めと言うか、浄化槽と言うか。

沈殿物分離層がコッチになってるから、来年以降はココから下肥取り出して使ってね、と説明をした。

充分に発酵させないと下肥として使えないことや、病気の原因になること。


一応発酵させなくても充分に乾燥させれば汚泥肥料として使えなくはないが、効率が悪いこと。

また排泄物の臭気が酷いのでオススメしないことも言っておいた。


だが、単語がいちいち通じにくく、質疑応答を重ねながらの説明になったので、えらい時間が掛かってしまった。

ヌリアさんの時はこんな感じじゃなかったのだが……もしや彼女、微塵も理解しないまま、ただ頷いていただけだったりするのだろうか。


そうだとしたら、俺の時間を返せと言いたくなる。


よく考えて作られてると褒められ、この広大な土地でも、これだけ作業が楽になる道具が揃っていれば、とても効率良く仕事が出来ると喜ばれた。


既に実っている野菜を食べれば、あまりの甘さに果物だと勘違いされ、瑞々しくも濃い素材の味に舌鼓を打った。


コレだけ褒められて持ち上げられると気分がいいな!

普段カノンには怒られるか呆れられるかが多いから、すごく新鮮な気持ちだ。


でも、ココで調子に乗ってアレコレし出すとドン引きされるのは学習しているので、これ以上の設備は整えないぞ。

今の所は。

またこの街に戻ってきたタイミングでどうなるかは分からない。


王都に行って自重を更に放り捨てて来るかもしれないし、拾ってシュンと落ち込む可能性もあるし。

先のことは分からん。


とりあえずは、浄化槽を開けた時に「こえだめ〜」「だめ〜」と口々に叫びながらダイブしていった樹の妖精(ドリュアス)を放置するべきか、悪臭を我慢して蓋を開けたまま登ってくるのを待つべきかを考えなきゃだな。

お陰でモザイクをかけたくなる固形物が見えていた中身の微生物による分解と発酵が進んで、成分こそ薄いがすぐにでも使える状態になったのは良いことなんだけれども。


気分的に嫌だ。

触りたくない。

近付きたくない。


この場にいる皆んな同じ気持ちのようで、東屋でひたすら五体の樹の妖精(ドリュアス)が戻ってくるのをタライに水を汲んで待ち続けた。

放置していじめたと思われたら大変だからね。

戻ってきてそのままあのテンションで抱きつかれたら泣いちゃうからね。


下肥まみれのあの実、どうしよう……




感恩戴徳

恩讎分明

積厚流光

積厚流光

報恩謝徳

全て意訳すると「ありがとう、恩返しをするよ」という意味を持つ四字熟語。

霖雨蒼生

「たくさんの人たちに恵を与えること」

恩返しに元神さまが望むように、この街に住む人たちが幸せになるよう手助けするよと宣言をしています。

なので多少、元神さまが木の妖精に傍若無人なことをしても「しゃ〜ないか〜」と流してくれるようになりました。

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