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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、小難しいことを考える。




ある程度成長しなければ子どもに仕事をさせないこと。

商人でもないのに文字や計算を学ぶこと。


俺が当たり前のように享受してきた制約や機会。

それらをこの世界の子供たちにさせようとする理由が、何をどう言っても納得してもらえない。

投資だと言ってもその意味すら分からないようだ。


コレはなかなかに手強いぞ。

そう思いながら、なんとか理解してもらおうと言葉を重ねる。

時間のルーズさはあるのに、なぜ労働力や生産性においてはこんなにも凝り固まった思想で柔軟性がないのか。


それは「余裕が無いから」のひと言に尽きるだろう。

特にウヌモ町の人たちは、村人と違い税をしっかり国に課せられた義務通りに納めているのだ。


最低コレくらいの作物は、徴税されるから絶対に作らなければならない。

一年の収穫物の生産目標が定められている。

その上で自分たちが食べる分の食品も確保しないと、飢えや、最悪、死が待っている。


そうならないために手を尽くすのが町長という立場にいる者の責任だろう。

そりゃ、貴重な労働力を遊ばせるとか何言ってんだ?

ってなるわな。

そちらの事情は分かっているんだよ。



児童労働の原因とされるのは主に、貧困・差別・慣習・武力紛争・自然災害・教育機会の欠如とされている。

子供たちの将来のために、健全・健康な発達を促進するためにも、学ぶ機会と遊ぶ自由はこの街に住む以上保証したい。


特に貧困や差別は連鎖していく。

最低限の教育と健康習慣を身に付けなければ、その負の連鎖から抜け出すことは出来ない。


四則計算が出来なければ、冒険者たちのように釣り銭や報酬を誤魔化され、ダイレクトに収入が搾取される。

言葉を知らなければ口八丁に丸め込まれ、詐欺に遭う危険度が増す。


手洗いうがいのウイルスや病原菌に対する効果は絶大なのに、それを知らず汚染された手で食べ物を口に運べば当然身体を壊す。

そうすればろくに動くことができず、働くことも叶わない。

最悪、命を落としかねない。


あとは、この世界に避妊具があるのかは不明だが、正しい使い方を知らないばかりに望まない妊娠をすれば、人生設計が崩れて経済破綻を起こしかねない。

産まれてくる子供も苦労することだろう。


人員不足に喘いでいた施設の時代からは考えられないことだが、地球では、赤子が無事に産まれたとしても、生きることを望まれない場合なんかもあったそうだし。

そうなれば、母子共に心身の健康を害する。

あってはならないことだ。


昔の堕胎方法なんて完全に拷問の域だもんな。

腹を石で殴ったり、極寒の行水をしたり。


避妊具を使わずに性行為を無計画にしたら、子供がドンドン増えて支出が増えていくことになる。

そうすれば貧困も加速する。


性病なんかも蔓延したら悲惨だしな。


やはり教育は大事だ。

先達の経験は後世に語り継ぎ、同じ失敗は繰り返さないようにするべきである。



なにも、連立方程式や微分積分を学べと言っているのではない。

日本の小学校で教えていた内容を一部抜粋し、生きるための手段を増やすための、ホント最低限度の教育を施したい。

そう言っているだけだ。


それに、肥料の三要素とか知っていたら農業にも役立つじゃん。

亜硝酸イオンの還元酵素や化学式を覚えろなんて言ってないのよ。

窒素が不足すると葉緑体の色素合成障害が起きて作物が育たなくなったり色が悪くなっちゃうよ、とか。

逆に多くしすぎると虫が湧いて食害を受けたり、実がつきにくくなるから、良い塩梅って言うのが作物の種類によって違うんだよ、とか。

そう言う日常や仕事にプラスになる学びをプログラムに入れれば良いじゃない。


子供がそれを大人に教えても良いし、実践したり実験したら、更なる学びに繋がる。

人に分かりやすく伝えるのにも技術がいる。

実際に自分でやってみるのだって、想像とは勝手が違って楽しかったり辛かったりする。

その経験も成長に繋がるからとても大事なのだ。


知識があるのと、経験をしてみるのとでは全然違う、と言う事実は俺も最近身をもって体験したのでよく分かるのだ。

いやぁ、アスレチックがあんなに心躍るものだとは思わなかった。

それもあるけど、料理とか野宿とかね。

魔物との戦闘もそうだし。



ヘタに「スキル」で何でも作れて「知識」で何でも知ることが出来てしまうのも困りものなのだ。

実際に自分で手を動かした訳でも頭を悩ませた訳でもない。

それなのに、体験したような気分に浸れて、出来た気になってしまう。

んで、いざ実際にやろうとなった時、余裕ぶっこいて派手に失敗をする。


当然だ。


料理の話で言うなら、その日の気温や湿度によって、また火力調整の微妙な差異でフライパンの温まり方は変わる。

油を小さじ一杯ひこうとしても、その小さじに表面張力がある以上、ほんの少しだが量に差が出る。

声を掛けられたらそちらに気を取られ、レシピよりも加熱時間が長くなってしまったり、焦げたらパニックに陥って怪我をする危険性だって出てくる。

盛り付ける時に頭に描いた見本のように美しく盛り付けることだって簡単には出来ない。

フライパンに料理がくっついて形が崩れるかもしれない。

センスも必要になってくる。


思い通りになんて、経験を山ほど積んだってなかなかいかないものだ。

……と言うのはテルモ談。

俺はそこまで沢山作ってきたわけじゃないから、断言までは出来ない。


だが事実、その小さな差異に気付いてどう対処するのかは、経験を積んで失敗を繰り返し、知識を脳に蓄積し、身体に覚えさせるしかないのだ。


思ったよりも大変よりも楽しいとか、自分が作ったものを「美味しい」と食べて貰えるのが嬉しいとか、そういうことだって実際にしてみないと分からないことだった。


知り、学び、実践する。

失敗し成功するまで繰り返す。

コレが教育には大事なのだ。


そして学びには、成功したとしても身につけるためには反復学習が重要になる。

出来れば毎日学習の場を設けたい。

そうなると、やはり大人の了承を得なければならない。



農作業だけなら、分かりやすく直ぐに学びが反映されやすいから説得のしようがあるけど、他業種はなぁ。

どうアプローチすべきだろうか。


紡績・染色・左官・鍛治・解体・料理……結構な分野で徒弟制度は優位に働く。

地球でも、中世までは全国的にも幼少期に親方へ弟子入りをしてそのままその業種に就職する方法が取られている。

泊まり込みか通いで技能訓練を何年も重ね、雑用から肉体労働もしながら各分野の仕事も手伝い、学び、独立していく。


労働基準法や公教育思想によって幼い子供が労働に従事する国は少なくなった。

一九世紀以降でも、義務教育を修了した後に、選択肢のひとつとしてベルーフスシューレ――職業訓練学校に通うものもいたそうだが。


それでも、戦争で国そのものが無くなるまでは、発展途上国を主として、ではあるが、当たり前のように五歳の子供でも当たり前に仕事をしていたし、銃火器類を渡され戦地の最前線に送り出されることもあったと言う。



……俺の思想や考えが甘すぎるのだろうか。


いやいや。

始める前から気弱になってどうする。


教育を受ける権利は生存権と同等レベルと定められていた。

発展途上国でだって、支援を受けられた地域では学校は重宝されていたとされている。

学ぶこと、知識を増やすことは本来、最低限の権利と主張されるべき当たり前のことなのだ。


前例がないから、忌避感を抱かれるのだろう。

ならば、この街が前例になればいい。

たったそれだけの話だ。


カノンの許可を得られたら、の話にはなるが、精霊学や薬学の類も学習要項に入れれば、興味を持つ大人も現れるだろう。

大人が快く学校に送り出してくれれば良いのだ。

大人の興味関心を引くことを前面に押し出そう。


体育の時間代わりに剣術や護身術を教えるのも良い。

自然の恵みを享受するために防壁の外に出られるようになるには単純な武力が必要になる。

魔物に対処出来るようになれば、生活圏を広げることもできる。


自分の得になると思わせられれば、どうとでもなる。


そう決意を新たにして、どうお得感を出そうかと、とりあえず一番わかりやすい学校利用者のお得である「昼ごはんの支給」を言ったらアッサリ全肯定された。


あまりに見事な掌返しに、思わず椅子からズリ落ちた。

俺のさっきまでの長〜い思考はなんだったの??


たかだか昼飯程度で……

……あ〜……、そうだよな。

今年不作だって言っていたし、メシ程度って言えないのか。

一食だけでも負担しなくて良いなら助かる家庭は多いのか。

もしくは、その一食で明日を食いつなぐようなパターンもあるやもしれない。


んじゃ、アスレチック広場は堪能してもらったし、次は農業区を見てもらおう。

カノンの家でテルモと実験をした成果が、あの土地以外にも適用されるのか試してみたかったんだ。


もしうまくいっていたら、この人たちをあっと驚かせることができる。

人をコケさせた報いを受けるが良いさ!




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