神さま、頭を悩ます。
評価してくださった方ありがとうございます!
もっと精進します。
冒険者のほとんどは市民権を持たない。
それを得る前に捨てられることが大半だからだ。
税も入国税のような、街や国を行き来する時に支払われる関税以外は、当然収めていない。
下手をすれば、それすら不法入国をして支払わない。
当然、人頭税だって払ってない。
そこに着目すれば、認知度や宣伝活動のような手間も時間も掛かりそうな問題は全てマルっと解決するかもしれない。
冒険者ギルド、国営に出来ないかな。
「税収増加だけでは弱い」
報告・連絡・相談をしないと賢者様のお怒りを買うことを骨身に染みて理解したので、思いつきを口にしたら即行却下された。
イヤ、完全否定では無いので棄却まではされていないのだけれども。
俺が想像しているよりも冒険者の素行不良は酷いようだ。
野盗や強奪者と表現した方がピッタリな輩もいる。
ここにいる三バカはマシな方だし、アルベルトに関しては規格外だと言う。
冒険者と言われても「なんのご冗談?」と返したくなるレベルの品行方正さだそうだ。
さすが元お貴族様。
そんな冒険者に簡単気軽に依頼を出す奇特な人はそうそういないと言うのがカノンの見立てである。
そんなことを言われたら、冒険者ギルドそのものの設立すら危ういじゃないか。
俺が突っ走って止める間もなくサッサと建物から依頼書の雛形から作ってしまったので、コケても仕方ない。
ある程度ならフォローしよう、と見守るつもりでいたから放置していたそうだ。
失敗は成功の母とも言うし、俺の無駄に自信のある暴走も意味を持つかもしれないとか思っていたんだって。
失敗するのがカノンの中で確定事項になっていやがる。
なんてこった。
コレは意地でも成功させなければ。
日々の困り事が掲示板に張り出されるのは、農閑期によりヒマを持て余している人や、家の手伝いが不要になって急に時間が空いた人に向けてのものが多い。
つまり、同じ街の中に住んでいる顔見知りや、友達の知り合い程度のごくごく小さなコミュニティ内でのやり取りが主になる。
その方がトラブルは起きにくいし、次回同じように困った時に頼みやすくなる。
持ちつ持たれつな小規模社会らしい慎ましやかさだ。
冒険者の大半は街にすら入れて貰えないのだから、考えてみれば当然のことである。
そして、成功しても小遣い程度の金額や物品での、心ばかりの御礼が殆ど。
国が後ろ盾になるような税収を見込むことはまず出来ない。
失敗すれば憲兵に通報されて処罰されたり、街から追い出されたりする。
余程の物好きや、自分に都合の良い依頼じゃなければ、街に定住している人達の頼みごとを聞く冒険者はいない。
街の方も、冒険者を街中に入れるリスクが余りにも大きすぎる。
血気盛んで理性も乏しい連中が街中を闊歩するだけで、住民は内心穏やかではいられない。
日常が脅かされれば心に余裕がなくなり諍いが増える。
誰も得をしないのだ。
それを押さえつけられるだけの実績か、献上品の類がなければ、拝謁の手続きをすることすら無理な願いだと突っぱねられる。
袖の下やらワイロやら、やっぱりこの世界でもあるのか〜。
印象を良くしようとか、話の通りが良くなるように、と思うのは誰でもそうだろうしね。
そういう文化はどこからでも生えてくるか。
未だに冒険者たちから外していない、首枷をギルドに所属する人には全員着用を義務付けて脅しをかけるのはどうだろう。
悪ささえしなければ単なるオシャレアイテムにしか見えないようにも出来るのだし。
登録料は不要で、むしろ冒険者として登録した時に活動軍資金として少量でもコチラからお金を援助しますよって言えば食いつくヤツもいるのではなかろうか。
まぁ、そのお金はどこから出るの? って問題が今度は出てくるが。
俺は富豪でもないし、それどころか、金銭に関して今はカノンにおんぶに抱っこをしてもらっている分際だし。
一攫千金を狙えるようなことってないだろうか。
……思考がクズのソレになりそうなので辞めておこう。
俺が金も手間も惜しまずに冒険者ギルドを作るに値すると思っているのは、地球の歴史上で傭い兵が長年戦闘が起こる場面で必要とされてきたこと。
職業斡旋所が重宝されたこと。
このふたつがメインの理由になる。
まぁ、あとは創作物の多くに冒険者専用の補助組織があったから、必要なのかなと思ったのもある。
この世界は人類の脅威として魔物がいる。
野生動物よりも余程危険な生き物だ。
現状、街に危害が及びそうな時や、街から街へ移動する際に奇襲された時に排除するのが通常で、後手に回っているせいで人間の勢力圏をイマイチ広げきれていない。
いつの間にか滅ぼされる村や町があるレベルで対処が出来ておらず、国の戦力・人材不足がよく分かる。
ここで冒険者ギルドがあれば、地方の町周辺に魔物が増える前に排除したり、巡回したりと出来るわけだ。
顧客が国で、依頼内容が面倒なことなら達成時の報酬額も大きくなるし、請け負う人も居るだろう。
支部が沢山出来れば派遣に必要な費用だって少なくなる。
だから一気に全国単位で普及させたい。
利便性が格段に上がるから。
街単位でかなりの戦力になり得る常設軍を配備することは、国にとって新たな驚異の誕生に思える。
だがしかし、そこはバックに国が就くことで問題がなくなる。
有事の際に国軍と共に戦力として数えて貰えば良いのだから。
あとは国に反旗を翻す意思はないと証明する方法があれば、国は税も増えて戦力も増えて良いことばかりだと思うんだけどな。
あ〜。
国名さえ、もっと言えば地方名さえ知らないからウッカリしていたが、他国があるんだよな。
そして戦争もしているんだっけか。
国をまたいで活動している冒険者たちが、自国に多くいれば安心材料になるけど、他国に流れて行った場合が困るか。
人材流出を防ぐため、むしろ待遇を良くして迎え入れる土壌を確保していれば全く問題はないのだろうけど。
そうなると入ってくる金よりも出ていく分が増えるからいい顔をされない。
……福祉の一環として国が腰を上げてくれたら良いのに。
どの国に属さない、冒険者たち同士の相互扶助組織にしてしまう方式にすべきかなぁ。
取りまとめが面倒臭いけど。
カノンを説得出来るだけの材料がないと、アレコレ自分の考えやこのギルドの存在意義、あとどんなことをしたいのか、ツラツラと垂れ流してはみた。
だが、ニヤニヤと嫌味ったらしい笑みを浮かべるだけでカノンは何も言わない。
「相互扶助ってなんだい?」
アルベルトの質問が思考を中断させる。
簡単に言うとみんなで助け合いましょうってことだよね。
この際は冒険者のみんなでお金を出しあって、労力を提供しあって、冒険者ギルドに恩を売っておいて、その対価として困った時にはギルドに助けて貰おうぜ、というものだ。
今説明すると、心がやさぐれているので不穏な言葉になるな。
長い人生の中で、その困った時というのがいつ訪れるかは分からないが、ある種保険のようなものだよね。
所属している人でお金を稼ぐのが得意な人、道具を作るのが得意な人、武器を作るのが得意な人。
色んな特技を持っている希望者を軒並み登録させて、登録者同士の中で仕事を斡旋し合う感じかな。
あらゆるジャンルの希望者が集まらなければ機能しない、建物だけ立派な見掛け倒しな組織になってしまうけど。
俺にコネと人脈があれば良かったんだけど、ミジンもないから。
この世界の知り合い、カノンと冒険者四人、あと村の人たちだけだよ。
カノン以外はホント、顔を知っているだけで親しいわけでも頼みごとが出来る仲な訳でもないからね。
そしてカノンだって、成り行きで俺の面倒を見てくれているだけであって、オトモダチとかカゾクとか、そういう近しい間柄じゃない。
清々しいまでにボッチである。
親しいと言うのなら、精霊の皆だけど……
……この世界って教会があるんだっけ?
宗教戦争に借り出される可能性を孕んでしまうが、教会がバックについてくれれば、国よりも大きな組織が後ろにつくことになるのではなかろうか??
ほら、神の代弁者だったかのふたつ名持ってる人がいるわけですし。
ちょっと脅――ニッコリ笑顔でゼロの幾つが多い献金でもすれば喜んで受け入れてくれると思うんだよね!
「信仰心をそんなことに使うな」
思考を垂れ流しにしていたので自分の通り名を呼ばれたカノンにチョップを喰らう。
名案浮かんだ! と心が浮上し顔を突っ伏していたテーブルから上げた直後だったので、思いのほか賑やかな音がした。
痛いでござる。
巡礼で各地を巡る旅をするのなら、その参詣の護衛は後援価格で何割引! とかすれば費用がお得になる。
お互いwin-winだしいい案だと思ったのに。
精霊の皆は、自分を信仰してくれている場所や、その力を奮うべき場所に行くと言っていた。
つまり聖域やメッカとなる場所が各地にあると言うことでしょ。
信仰心により、人間にどんな恩恵があるのかは知らない。
だが、精霊は神様に近い存在である。
そんな存在が現存する世界ならば、きっと信徒も多いと思うんだよね。
信徒が多いと言うことは、それつまり金が集まるということ。
スポンサーになってくれたら心強いのに。
「教会っつぅのは、おれらみたいな連中を保護してくれる場所だぞ」
「そのまま教会に世話になるやつもいる」
「精霊術使えるの多いよな」
そんなことをボヤいたら、何を言っているんだ? と言わんばかりに三バカが話に加わってきた。
「そう、つまりある程度武力を持っている機関だね。
だから、わざわざ信徒も献金も減るような冒険者ギルドと言う制度の後ろ盾になってくれることは有り得ないよ」
アルベルトが補足してくれる。
既得権益の問題まで出てくるのか。
うわぁ、面倒臭いこと、この上ない。
だが、駆け込み寺――駆け込み教会? にするのは、冒険者の中でも、実力が乏しい若年層が多いそうだ。
誰かの手を借りなければ生きていけないがその術を身に付けられなかった上に、魔物相手に怖気付いてしまい戦えなくなった、外壁の外では暮らせなくなった人。
素行は悪いが改心し矯正させることが可能な人。
あとは霊力を扱う術を教わらず力を暴走させてしまったり、口減らしのために捨てられた子供が協会の保護対象になる。
と言っても、入会するのにも献金が必要だったりするので、お金が用意出来なければ問答無用で魔物のお腹の中行きになるそうだ。
世知辛いにも程がある。
我が強くて手が付けられない、その上実力もあるような少し年嵩のいった連中を含め、教会の手に負えないような冒険者の受け皿はない。
そこを狙えば組織は成り立つ可能性があるもあるとアドバイスを貰った。
つまり、狙い目は街に入れて貰えず外壁近くで野宿している連中か。
そういう人たちに怯えて、暮らしがままならない人も中には居るかもしれないし、引き取るよってなったら喜ばれるかも?
名目上、俺が“冒険者ギルド“と言っていたがため、現時点では商工業分野は関わらないし、何かしら独占権を持っているわけでもないが、ギルドの名を冠したまま、ここにいるメンツで共同事業として会社を興すことになった。
メインの出資者がカノン。
一番金持ってるし。
必要なものを作るのが俺。
だってインスタントに何でも作れるし。
広報活動はアルベルト。
国内に限るが冒険者とも、街の憲兵や商人とも横の繋がりが広い。
超適任。
三バカはこの街に住み、街周辺の魔物狩りに加え、計算と文字の基礎が出来ていたガルバは、筋骨隆々なその見た目と全く合わないが事務。
大雑把な所はあるが意外と料理のセンスがあるサージは厨房担当。
解体が趣味なジャビルは狩ってきた魔物解体の総括。
最初、軌道に乗るまでは給料は全く出せないと言ったが、三バカは安全な拠点があるなら全く問題ないと言って、むしろ給料ってナニ? って感じ。
一定の働きに対する報酬として支払われる現金だと言ったら、そもそもこの街の中に金を使う施設がないのだから金を貰っても意味が無いと言われた。
ごもっとも。
何か後で必要なもの現物支給するわ。
アルベルトも、三人と一緒に旅をする前の状態に戻っただけだから、なんの問題も無いそうだ。
ただ、一人でこの辺の魔物を相手にするのは少し心許ないと言うので、安全のために王都へ向かう俺たちと途中まで一緒に行くことになった。
その間に、アルベルトにも前払いで欲しがるものをあげられたら良いのだけれど。
カノンへのお礼は……どうしようかね。
コイツの欲しがるものなんて想像もつかないや。




