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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、お説教される。




すれ違いが起きてしまう前に、隠していたことを洗いざらい話してしまおう。

意図的に隠しはしたが、悪意があった訳ではないのだと。

ちょっと説明するのとか許可取られなかった時とか面倒臭いな〜とモノグサがっただけなのだと。


……タイミング悪いよね。


「話があるんだけど……」と意を決して口を開いた途端、冒険者共が戻ってきて「なに、あの雨が出てくる紐!?」と興奮気味に大声で言ったせいで決意も用意した言葉も、全て水の泡となった。

シャワーだけにってか。

うるせぇ、シャンプーなんてこの世界にそんな文化ねぇよ。


カノンが支えていたクマ脂を入れたガラス瓶にヒビが入ってしまったので、念の為もう一回濾過しなきゃだね。

あぁ〜、もう。



お鍋は良い感じに煮えてるし、ハンバーグも少し焦げ目が付いて食欲をそそる芳しい匂いが香ってきている。

なのにも関わらず、俺はその横で冷たい地べたに正座をさせられている。


EDOスタイルで石抱きの刑に処されなかっただけ良かったかもしれない。

そうは思えど、石造りの地べたと、仕置き用に膝の上に置かれた伊豆石代わりの岩で出来た重りは冷たく、夏だが足先が冷えて少し辛い。


お腹が空いているのに、すぐ近くにご馳走があるのに。

それなのに食べられないのはもっと辛い。


「……で、どういうことだ?」


「ゴメンナサイ」


タイミング悪かっただけで言うつもりだったもん!

そんな言葉は言い訳にすらならない。


「謝れとは言ってない」と乗せた石の上に足を置き体重を掛けてくる。

下にソロバン板なくても痛いから!

脛がゴリっと床に当たって痛いから!!


ちくしょう!

重くなるの嫌だしとか思わずにキチンと脛当てを作るべきだった!!


上に乗っかってるのがプルンプルンのこんにゃくだったら良かったのに。

そうすれば冷たいだろうが痛くも痒くもないのに。


……見た目似たようなもんだし、足退かされたら「創造」で変化させるか。

でも、食べ物足蹴にするのは良くないもんな。

甘んじてこの痛みと冷たさを受け入れよう。


そう決意した所で、ひとつため息をついてヒョイッと石を退かすと「説明しろ」と言いながら、カノンは近くの席に着いた。

冒険者組と同じテーブルに座ったはずなのに、目にも止まらぬ早さで椅子ごと隣のテーブルに移った四人は、実は滅茶苦茶実力者足り得るアドバンテージがあるのではないかと錯覚しそうになる。

火事場の馬鹿力に近いものだろうけど。


俺も怒ってるカノンと同じ席には心底着きたくない。

自業自得なので座るけど。



紋様具を使った設備をこの街に幾つか作ったこと。

それを無断で遂行したことの謝罪。

何故作ったのかの理由説明。

そしてそれでも問題無しと勝手に判断しカノンへの報告を後回しにした謝罪。


一に謝罪、二にも謝罪。

ここで開き直るのは逆効果だ。

強気になった方が良い相手もなかにはいるだろうが、カノン相手に下手な小細工は無用である。

とにかく謝り倒した。


自分たちの発言がなぜ逆鱗に触れたのかは分からないけれど、とりあえず黙っておこう、とハラハラした眼差しをチラッチラッと鬱陶しく送ってくる冒険者たちのためにもこの空気を早く何とかしたい。

アルベルトだけではなく、三バカまで「賢者が怖いからやっぱこの街住むのナシ! 」って言いだしたら困るし。


カノンは、俺の説明と謝罪を一通り聞いたあと、あの家にいた頃既にテルモ達から紋様具に刻む言葉やその意味を教わっていたことをゲロった。

その上で彼自身も、もう大量生産が出来ることを教えてくれた。

仕組みは分からないままだから、しっかり研究をしてから生産しようと思っていたので、自分では作らないそうだが。


俺にだけ教えてたとなったらカノンが拗ねるであろうことを見越して、先手を打ってケアをしてくれていたんだね。

さすが精霊様たち!

今度から崇めてるフリくらいはして差し上げよう!!


その時に俺が調子に乗って見境なしにアレコレ作り出して技術を安売りしたり、一気に文化や生活水準が爆上がりして、その変化についていけない人達から弾糾される恐れがあるから、暴走しそうになったら止めて欲しいとお願いされていたことも話してくれた。


やっぱヤメ。

フリでもアイツら崇めるとか絶対にしてやんねぇ。


行動パターンが見透かされていることにいじけたくなるが、そこはやはり付き合いの長さがあるので仕方がない。

俺との付き合いの長さより、この世界との付き合いの方が何十倍もあると言うのに。

変化を受け入れられない人達への調整役ではなく、俺への風避けを願い出るとか。


俺、どんだけ信用ないの。

イヤ、今のは単なるテレカクシ。

愛されちゃってるね、俺。



俺がこの街に取り付けた紋様具は各家のカビ防止用シーリングファン。

冒険者ギルド寮の温熱切替機能付のシャワー。

蛇口は普通に水道を引っ張ってきているので単なる技術の問題。

近くの川はどこからともなく降り注ぐ聖水を水源としているだけあって、枯渇を気にせず使いたい放題なのが有難い。


俺は冒険者を優遇したいので、冒険者ギルドには技術を大盤振る舞いしている。

大気中に溢れている霊力を使用した床暖房や、冷風装置なんかを壁に埋め込んだ。

シーリングファンも天井に設置してある。

トイレの便座は温熱が入ってるしウォッシュレットもついている。

ギルド職員が過ごす受付カウンター側にはいつでも冷水と白湯が飲めるようにサーバーも置いてある。

さすがにやり過ぎたかもしれない。


魔物素材を管理する倉庫に備え付けておいた冷蔵庫はさすがに大きいので定期的な霊力供給が必要だし、最初からカノンの許可を貰わないと稼働出来ないようにしてある。

許可が降りたら、ギルド横のこの食堂にも冷蔵庫を取り付けるつもりでいた。

仕事帰りに冷たいビール? エール? をあおるのがお決まりのパターンだからね。


あとは一番最初に作った、俺たちのセーフティハウスと言うか、なんと言うか。

アソコは俺たちが滞在するために一時的に作ったのもなので、照明器具からコンロから、カノンの家にあった紋様具は全て取り付けさせてもらった。

もちろん、冷蔵庫もある。

コッソリ冷凍機能も付けた。

だってアイス食べたい。


街の外れに作ったし、俺たちがこの街を訪れた時に使うから基本的には鍵を掛けておけば良いかな、と思ったので、自動お掃除ロボを作動させて旅の続きに出ようと思ってるくらいかな。

空き巣の心配があるなら、「破壊」するのなんて一瞬だし、街を出発する前に更地に戻すけど。



お叱りモードが終わったので、料理の温め直しをしながら話したら、そのまま放置するので問題ないと言われた。

貴重品を置いていくつもりもないし、セキュリティは特に要らないそうだ。

ただ、家への行き帰りに立ち寄っていた、村も町も今後は無くなるので、この街で滞在できる自分たちの家はこのまま残して置いた方が良いという判断だ。


そっか。

村人は全員この街に引越してきたし、家も全て潰してきた。

ウヌモ町の住民も、希望者は今後この街に移ってくると言う話だったっけ。

その希望者は、町長がどのように宣伝するかにもよるが、カノンの見立てでは、多分、全員が移り住むことになるそうだ。


ウヌモ町のある川向こうは、川一つ隔てただけの立地なのに、随分と今年は不作で土の状態も悪く、来年の収穫も厳しいとされている。

だからこそ、村の人たちが売りに行く鮮度が落ちた作物でも買い取ったり物々交換をしてくれたりしていた。

魔物の脅威はコチラ側の方が高いが、立派な防壁もあるし、食うに困らない環境が整えられているのだから、移り住まない選択をするヤツはまず居ないだろうということだ。


衣食住の何が一番大事って、やっぱり食だもんね。

食べるものに困るのは死に直結するし、何よりも辛いもんね。


今は全然人がいないから、どんな人でもウェルカムですよ。

あまり恐怖政治はしたくないが、繰り返し騒ぎを起こせば、塔の上からレーザービームが降ってくるだけだ。


町の人たちが移住してきたら、この街も少しは賑わうかな。

人の笑顔が溢れる街になるのが楽しみだ。



「クマ、うまっ!」


温め直したために少しお肉が固くなってしまったが、その分旨味がダシに溶け出て、それを吸ったお野菜が滅茶苦茶美味しい。

赤身部分と脂身の白い部分が三対七くらいの割合で脂身が多いのだが、脂の旨味が強く咀嚼することで歯ごたえのある赤身の食感と混ざり合い、この割合がちょうど良く思える。

なんなら、脂身もっと多くても良いかも。

いくら旨味が強かろうと脂は脂なので、口の中がくどくなったら野菜を食べればリセットできる。

大きさが不揃いな分、色んな食感が楽しめてこれもまた良い。


男所帯の料理だし期待していなかったけど、これは存外美味しいぞ。


ハンバーグもキチンと冷やしながらタネを作ったので、フォークを入れてもぼろぼろ崩れることなく肉汁がしっかり閉じ込められていてこれまた美味しい。

やっぱりハンバーグはこの溢れる肉汁あってこそだよな。

シカみたいにもっと野味溢れた味わいと食感だと思ったのだけど、全然そんなことない。


「今更だが、君は食事中もフードをとらないのか?」


心も身体も温まってきた所で、そう言えば、とアルベルトが切り出してきた。

確かに今更だな。

ずっと気になって居たけれど、聞くタイミングを逃してたのだろう。


俺からは紋様のお陰で見えているけど、それを知らないヤツからしてみれば、よく前が見えない不便な状態でいられるな? って感じだもんね。

気になって当然だ。


イヤ、不便は不便なんだよ。

鍋のスープを飲もうと器を傾けたら布地が汁につきそうになるし。

頭が蒸れるからコッソリ定期的に風を送り込まなきゃいけないし。


でも、ねぇ……

チラッとカノンを見るが、ゆっくり首を左右に振られた。

やはり外したらダメらしい。


不便だし「スキル」で頭染めようかな。

眼はどうにもならないけど、見え方を変えるくらいは出来るし。


「独占欲って奴っすか?」

「お小姓として連れてるんじゃないって言ってなかったか?」

「よっぽど醜いとか?」


えぇい、毎度毎度三人いっぺんに口を開くな。

傾国の美男とは言わんが、別に醜くないですー。

自分でもイヤになるくらいには整ってますー。



美味いものを食わせてくれたから、と後片付けは三バカがしてくれるそうなので任せた。

シャワーヘッドがついてる流し台にテンションを上げている、賑やかな声が聞こえてくる。

食事のお礼は食器洗いで返す文化でもあるのだろうか。


アルベルトはやはりこの街に留まることはしないらしい。

シャワーとか水洗トイレとか、水周りの設備がとても魅力的だし、この街や三バカと一緒に居るのがイヤとかではなく。

旅の目的を捨て去るだけの理由がこの街に無かったと言うだけだ。


しっかり考えた上での結論なら仕方ないよね。

無理強いをするのは良くない。


ただ、冒険者ギルドの運営に協力はしたいから、何か出来ることはないか。

クマ油をとった肉の残りカスをぱりぱり言わせながら申し出てくれた。

やはり鶏油を取ったあとの鶏皮みたいにカリッとしてて、コレも肉に引けを取らないくらいに美味しい。

炭酸飲みたくなる。

カノンとアルベルトの大人組は酒が欲しくなるそうだ。

やはりこの食堂には酒を用意しなきゃな。


認知度を上げたり、普及させるのにカノンのネームバリューだけで大丈夫なのか心配だったので、ここは是非アルベルトにも協力して貰おう。

伝説めいた生きる化石状態のカノンでは、もしかしたら言うほどの効力がないかもしれないと思っていたからね。


失礼な発言かな? また怒られるかな??

とチラリと伺ったら、カノンも「違いない」と肯定した。

自分にどこまで影響力があるのか、本人にも判断できないそうだ。


街中に入れない冒険者も多くいる中、アルベルトならその心配は要らない。

彼の冒険者らしからぬ隠しきれない品の良さは武器になる。

今まで以上に冒険者の悪評を拭うため、並行してギルドという制度の市井への認知度を上げるためにギルド所属のスカウトに奮闘して欲しい。


あとは冒険者の街中での行動を大人しくする方法さえあれば、なんとかなりそうなんだけど。

アルベルト含め、町のなんでも屋さんをして渡り歩いている冒険者が今まで通り行動し、依頼をこなすことによって着実に利用者は増えていくだろうし。


イヤ、甘く考えてはいけないな。

町の掲示板に困りごとを張り出していれば勝手に解決していた問題を、ひとつの機関を通さねばならないとなると、手間を惜しむ人は必ずいる。

依頼料金の設定も、目安が書かれれば有難いと思う人もいるだろうが「こんなに払わなきゃいけないの?」と疑問に思う人だっているだろう。


依頼を終えた後、依頼者を脅して金銭を多く巻き上げていたような素行不良の冒険者からは、ギルドを挟むことによってそれがままならなくなり反発を呼ぶ可能性もある。

三バカみたいに計算が危うい人たちは、誤魔化される心配がなくなるし喜ぶかもしれないが。


従来のやり方がある所にいきなり殴り込みをかけるのだ。

浸透するまでは、ある程度不平不満が出るのは致し方なし、と思うしかないのだろうか。





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