表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/265

神さま、灯火を知る。




南向きで日当り良好。

商業区も近いし人が増えて賑わえば非常に便利。

収納スペースが多く取られているから装備品や素材も管理しやすい。

冒険者ギルドへは徒歩十分程度掛かってしまうが、一番のオススメ物件。


なのに「「「こんな広い家はいやだ!」」」と泣きつかれた。

なんでや。


今なら初居住者記念でどんな物件も選びたい放題なのに、勧める物件をことごとく却下される。

三人一緒に住むつもりがないならと、ちゃんと単身者向けのアパートメントも紹介していると言うのに。


ゆくゆくは嫁をもらって広い庭で坊やと仔犬が遊ぶんだろ。

暖炉はついているから、バラとパンジーは自分で植えてくれ。

それを見越すなら、一軒家でも良いと思うんだけどな。



ギルドに勤務してくれるなら三階の寮に住ませるという手もあるが、アソコにはかまどが無い。


申し訳ないことに今の商業区はガワこそあるが、一店舗も機能をしていない。

食事処が出来れば、その時には三食全て外食で済ませようが勝手だが、今現状はどうにもならない。


台所がある物件に住ませなければ食事をどうするのだという問題にブチ当たる。


野宿をしていた時と違うのだ。

街の真ん中で焚き火をされても困る。


確かに街全体を延焼しにくい造りにはした。

だが、人が増えてきた時に道路の至る所に焼け焦げた跡があったら物騒に思われるだろうが。

絶対ヤメロ。



どうにも決まらないまま辺りが暗くなり始めたので、致し方なくとりあえず先ずは腹を満たそうと、ギルド横に併設してある食堂に移動した。

備え付けたキッチンでクマ料理を作ろうと思う。

栄養をとったら頭が回るかもしれないしね。


俺のリクエストで避けてもらったバラ肉は、あらかじめ醤油ベースの漬けダレに放り込んで置いたので、網の上に置き遠火でじっくり焼くだけだ。

他にはどんな料理を作ろうか。


クマはクセがあると言う。

放血が不充分なように思えたし、肉食だし、多分臭みが結構あるだろう。

そんなると余計にどんな食べ方をするか分からないので、皆で仲良くお料理タイムだ。

厨房広く作っておいて良かった。


何でも焼くか鍋にするかの二択でしか料理をしたことない冒険者組はひたすら材料を切っていく。

生焼け、生煮えで、皆漏れなく死にかけたことがあるから、そこの所は徹底しているそうだ。

均一に切らなくても良いような野菜やキノコはガルバとサージが。

薄切りにしなければならず、包丁さばきにコツが必要な肉類は、アルベルトとジャビルがそれぞれ担当して切っていく。


役割分担がしっかりしている良いパーティーなんだよな。

冒険者稼業を引退させるのは、今更ながら気が引ける。



まぁ、引退できるならしたいと言う三バカの気持ちはわかる。

数日野宿をして思ったが、やはり外で寝るのは気が休まらない。

俺みたいに、魔物が襲ってくる可能性が低いという安心材料があってもそうなのだ。

他の人たちからしてみれば、何日もその状態が続くのは、かなり辛かろう。


しかも、最近は物腰が柔らかく、第一印象が冒険者には到底思えないアルベルトが加入し、検問で問題視されることがなく、街に入りやすくなった。

そのおかげで宿屋にも泊まれるようにもなったが、それまでは街に辿り着けても外壁沿いで野宿が当たり前。

中に入れるのは日が高いうち、つまり住民が直ぐに憲兵を頼れる時間帯だけ。


問題を起こすつもりがなくても、冒険者と言うだけで懐疑的で胡乱な視線を送られたら、やはり良い気はしない。

怒りの沸点が低くなるのは、仕方がない部分もあるだろう。


この、冒険者への先入観をどうにかしなければならないよな。


このまま読み書き計算が出来るようになれば、ギルドで働かなくても、なんならこの街に居住しなくても、問題さえ起こさなければ充分仕事にありつける。

それに気付かれる前に外堀を埋めていかなければ。



肉を叩いてミンチにしながら、他の町でどうやってギルドの制度を浸透させるのか考えていたら、思いの外細かくしすぎた。

肉団子にしたかったんだけどな。

赤身肉だし食感が残る程度のひき肉にする予定だったのに。

ミスった。


仕方がないので予定を変更してハンバーグにでもしよう。

タマネギみたいな野菜もあるし。

テルモ特製万能スパイスを使えば肉の臭みも消えるだろう。


一緒に入れる予定だった麦団子だけアルベルトに渡し、ソレだけ鍋に放り込んで貰った。

あとは煮えるのを待つだけの状態になったので、ギルド上の雑魚寝広間や、職員用の寮の見学を出来上がるまでしてくるように申し付ける。


魅力を感じてアルベルトが永住を申し出てくれないかと、ちょっとした思惑もある。

まぁ、色んな家やアパートメントを見ても心動かされなかったようなので、無駄な足掻きでしかないが。


元お貴族様だもんね。

ここに作ったものより立派で豪華な家を見慣れているだろう。

魅力的に感じるものなんて……トイレと風呂くらいなものか?


流石に三階まで井戸や噴水から汲んだ水を持って上がるのは大変だろうと、ギルド職員用のトイレは自動水洗式にしたんだよね。

あとは、ユニットバスにシャワーを付けた。


ここならカノンが見回りをしないだろうと思ったので福利厚生の一貫で、他の家よりもちょっと贅沢仕様にしたんだよ。

二十四時間体制にしたとしても、コレなら公衆浴場が閉まる時間に終業しても文句は出るまい。


カノンの家にもあったんだし、シャワーや浴槽を付けるくらい許されるだろ。


紋様具が一般的ではなかったとしても、どのような仕組みで動いているのか、どんな紋様に見えるように言葉を刻めば良いのか、精霊の皆から広める許可は貰っている。

遅かれ早かれ、世に普及させるつもりだったのだし、良いだろう。


そうは思っても勝手につけてしまったから、まだバレたくないのが本心である。


だって、紋様具の大量生産ってカノンがなかなか時間がなくて研究が進められなかった分野だって言ってたし。

それを横からポッと出の俺に横取りされたら、やはり良い気はしないでしょ。



材料を混ぜて塩を入れて更に混ぜて、粘り気が出てきたら形成、空気抜き。

クマ脂の塊を熱したフライパンに押し付けて、充分に脂を敷いたら、焼く。


この他にもある大量にとった脂の塊は、焦がさないよう熱して油分だけ取り出すそうだ。

旨味が詰まっているから料理に使うとコクと風味が一気に増して美味しくなるらしい。


鶏油みたいに処理をする感じかな。

脂を取り出してカリッと仕上がるお肉の残りは美味しいに違いない。

唐揚げとか作れるのかな。

何種類かの脂を混合させた方が、揚物って美味しいんだよね。



カロリーを手っ取り早く摂取するのに脂は非常に適している。

畑を耕したり狩りをしたりして日々の生活をしているこの世界の大半の人は、脂は貴重な食糧だ。


だが、脂は燃料としての需要も高い。

日の出と共に起き夕暮れと共に寝る生活なら問題は無いかもしれないが、夜間や天候が悪く日差しが届かない時のロウソクや、薪を切らしてしまった時の暖房器具の代わり。

使い所は沢山ある。


カノンの家は日常的に使う照明器具は全て紋様具だったので、一般的に使われる照明の説明を受けたことがなかった。

カンテラやランタンを使うのか、ロウソクのみを使用しているのか。

今更ながら教えてもらうことになった。


使うものによっては、それぞれの家に備え付けなければならない物が増えるかもしれないからね。



油脂ランプが一般的に使われているが、植物性の油は絞り出すのに手間暇がかかる。

魚油は臭いと煤がとにかく酷いから資源の少ない漁村以外では滅多に使われない。

蜜蝋ロウソクは一部の特権階級か、製作している工房で消費される。

なので一般的に使われるのは動物油を使ったロウソクがメインになる。


海獣種の脂から作られるロウソクが、一番臭いが少なく明るいし良いのだけれど、海の大型魔物は沖の方に行かないと滅多に捕れないし、なかなか市場に出回らない。

なので市民は今回のクマみたいに陸の魔物の脂を活用する。


話を聞くに、海獣種って多分、クジラっぽい魔物なのだと思う。

五〇mを越す巨体で悠々と自在に大海原を泳ぎ、神秘的な鳴き声を放つ。

そして頭から飛沫を上げると言うし、クジラでしょ。

手がついてるとか聞くと自信なくすけど。

クジラも遡ると水陸両生のワニみたいな見た目だったのだ。

手がついたまま進化したのだろう。


蜜蝋ロウソクは、四枚の翅を持つのが特徴の膜翅種メリアピと言う虫型の魔物の巣からとれる蜜蝋を使う。

メリアピは、質のバラツキが酷いのが難点だそうだ。

匂いが甘く色も白に近い上質なものは王家や貴族、次いで教会が独占している。


養蜂家が居ないのだから、天然物の蜂の巣――メリアピの巣か。

森に入って採集して処理をするまでに時間がかかれば掛かるほど、いくら蜂蜜が腐らないと言っても、中に入ったままの幼虫が死んで腐臭を放つようになる。

カビだって生えるし。

そうすれば当然、巣にその臭いや色が移って品質は劣化する。

冷蔵庫も冷凍庫もないのだ。

ある程度の品質の低さは致し方あるまい。


むしろ上質な蜜蝋を採取し、色も臭いも問題のないロウソクを作ることができる職人が居ることに驚きだ。

メリアピも魔物なら、巣を採集する時の危険度は高いだろうに。

よほど精製技術が優れているのだろうか。

品質が劣るものもあると言うことなら、それだけじゃないのだろうけど。


そう考えていたら、カノンの続く言葉で合点がいった。

当然運が良ければ工房の人じゃなくても、メリアピの巣を森の中で獲得することが出来る。

だが、その際は自分たちで作って使うよりも工房に売る人の方が圧倒的に多い。

その方がお金になるし、獣脂ロウソクに慣れているから、わざわざロウソク如きに贅沢をしたくないと言うのが本音のようだ。

つまり、品質が劣った蜜蝋が出る場合は素人が採ってきたものの可能性が高い。

持ちつ持たれつと思い買い取ってあげているのだろうが……

ロウソク工房の人も大変だね。


獣からとれる脂で作られるロウソクは、塩析もされないから臭いが酷いし、不純物が混ざっているから煤も出る。

ロウソクに代用される照明器具の開発は、夜間にも研究がしやすくなるように早く取り掛かりたいとかなんとか。

グチも含めてたんまり話を聞いた。



せっかくかまどに火を入れたので、せっかくだからロウソク作りを体験することになった。

脂の処理をまずしてしまおうと、時折ハンバーグや鍋の仕上がり具合を見ながら延々脂の取り出し作業をした。

扉が設置されていなくても、厨房は奥まったところにある。

臭いも湿度も篭ってしまうので、途中、カノンに言って風取り窓と煙突を増設した。


残念ながら、換気扇は却下されてしまったのだ。

やはり、紋様具をアチコチに作りまくるのは反対なのか。


聞いてみるとそうではなく、分かりやすく増改築を瞬時にしてしまうと、俺の周りからの評価がいよいよバケモノ扱いになるから辞めておけ、ということらしい。

俺ってそんな奇っ怪に思われてんの!?


カノンが人と一線を引いているのは、良くも悪くも‘’一般‘’と違う自覚を持っているからだ。

強大な力を持っているが故に、理解されないことが多いし、同時に相手を理解出来ないこともある。


どれだけ他人が努力しても成しえない事柄を、アッサリなんの苦労もせずに出来てしまったら、反発が生まれるのは嫉妬という感情があれば仕方がない。

そうスッパリ割り切れてしまえば良いが、ノドに刺さる魚の骨のごとく、嫉妬と言う感情は心のどこかに引っかかって地味に気になってしまうものなのだ。


それもまた、致し方のないことである。


俺が紋様具の設置に関してカノンからそう思われたら嫌だな、と思う感情の起因もそこだからね。

割り切ろうと思って簡単にスイッチの切り替えが出来るほど、人間、器用じゃないんだよ。


俺の十倍以上長生きしてる人間に言われると、仕方ないんだ! しょうがない!! と開き直ることくらいは出来るけれど。

逆に自分の十分の一すら生きていないガキに先を越されてしまったら、気にせずにいろと言われても、まず無理だろう。

大人になっても、どれだけ歳を重ねても、そういうことってあるんだね。



七つの大罪だっけ?

人間が抱く、罪源になりうる思想。

八つになったり統合されたりまた増えたり。

聖書と全く関係ない、魔導書と関連付けられたり‘’七つの大罪‘’って言葉だけがひとり歩きした結果、悪いことは七つ一組として数えられたり千年単位で中身をこねくり回されたりしている言葉だ。


傲慢・憤怒・嫉妬・怠惰・強欲・暴食・色欲がよく言われる七つかな。

淫蕩だったり虚栄だったり、倦怠だったり悲嘆だったり。

歴史とともに入れ替わりがあるものの、全て人間が持ってて当たり前のもので、それら全て人間が繁栄するのに必要だった感情だ。

理性があるならば、ソレは内に秘め向上心の糧とするべきとして、もしくは打ち勝ち無我の境地へと至るべしと、どの宗教においても悪と定められている。


仏教なんかは煩悩が一〇八もあるとか言うしね。

そんなに悪いことって思い浮かばないよ、と思うけど、宗派に寄っては三毒のみっつって言うところもあるし、八四,〇〇〇もの煩悩があるとしているところもある。

指折り数えて列挙していっても、絶対途中で被るの出てくるよね。


いつの時代も、どの土地でも、人間と欲は切り離すことが出来ず、それが故に社会を築き上げ、文化が発展し、ヒトは繁栄してきた。

欲を切り離せばこの世界がそうだったように、ゆっくりと滅亡の道を辿ることになる。


だが、それは欲に満ち溢れていた地球だってそうだ。

だから俺が造られたワケだし。


……どちらが正解なんて断言は出来ないのだろう。

誰の目線で語るかにもよるし。


だが、いつの時代でも「亡くすのは惜しい」と思われれば、救いあげてくれる神は存在するのだと、身をもって知っている。

生まれ変わったこの世界でも、そう思って貰えるようにしなきゃだよな。

一番良いのは、そもそも滅びの道を行かないことなのだろうけれど。


惑星にも寿命があるのだから、無理な話だよね。

あれ?

肉体を持たない、精霊ってどうなるんだろ?



ここまで良くしてくれているカノンに不快な思いをさせるのは嫌だな。

紋様具を広めたいこととか、精霊の皆から許可を貰っていることとか、一度しっかり時間を取ってもらって正直に話すのが一番だよな。

皆が許可を出してくれたのだから、紋様具は俺の意に反する、世界の寿命を縮ませる類のものではないだろう。


日常生活の不便さが減り、ストレスが緩和されれば、幸せが増えなかったとしても不幸は減らせる。

急に万人を幸せにする力なんて持っていないのだから、一歩一歩着実な方法を取りたい。

アルベルトが話したように、良かれと思ってした急な変化により争いが起きるのは避けたい。


精霊と違い人と関わりを持ちながら長生きしてきた彼だ。

普及させるための良いアドバイスが貰えるかもしれない。


俺の行動理由を聞かれたら、なんて答えるのが良いのか。

それはまだ決めかねているが、嘘にはならないように気をつけよう。


嘘っていうのは、どんな罪よりも重いものだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ