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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、算数を教える。

ブックマーク登録してくれた方々、ありがとうございます。


アルベルトの暗い過去話マルっと削ったら短くなりました。

ご了承ください。




目の前に積まれているのが金貨だったら、さぞかし成金めいた光景だったのだろうな。


残念ながら希少金属の類は電子回路の構築基板やICチップに使われているものが殆どだったのでお目にかかれたことはない。

ボンディングワイヤなんて数百マイクロメートル程度の細さしかないし、肉眼で捉えられたとしてもコレが黄金! と感動するようなものではなかっただろう。

そもそも、露出してるものではないし。


金の延べ棒の山とか一度見てみたいものだ。



今机の上に山積みになっているのは、半銅貨の山だ。

銅貨の半分の価値だから、半銅貨。

分かりやすいね。


コレだけの量の小銭を用意するのは、流石に大変だったろう。

ウヌモ町のお店の人達をさぞかし困らせたに違いない。

実際は両替の手数料として多めの銀貨と引き換えにしてきたので喜ばれたそうだが。


「ガルバ、サージ、ジャビルは、この街の住民になることを希望する?」


市民権の話が出たと言うことは、絶対NOではない。

むしろ乗り気であると判断出来ると思うのだが、キチンとした言葉として「この街の住民になりたい」と言ってもらいたい。


後で「そんなつもりじゃなかったのに〜」と言われても困るし。


先程のノリで威勢よく口を開いたが、アルベルトの方を見て、閉ざされた。

確かに、アルベルトはどうしたいか、明言していないな。


視線が自然と集まった彼は、居心地悪そうに左右の指を絡ませたあと、口を開いた。


「……俺は、ここには残らない」


「なんで……っ!?」


「……理由を聞いても?」


声を上げたが、すぐにジャビルはシュンと萎んでしまった。

代わりに俺が尋ねる。


正直、一番冒険者ギルド設立に乗り気だった彼が残らないとキッパリ言うとは思わなかった。

三バカの手綱を引いてくれる存在が居ないのは心許ない。


ギルドというシステムの理解者であり賛同者である彼が居たら、俺がこの街を離れても対処してくれる人員の確保が出来ると思っていたのに。

王都に行ったら、素材集めの前に一旦この街に戻ってこないといけなくなるのは手間だな。



アルベルトが旅をしている理由は他の大多数の冒険者とは違い、町を追い出されたからでも、社会に溶け込めないからでもない。


過去自分のせいで起きた事件の精算をするため。

それと、同じ過ちを繰り返さないために自分が出来ることが何なのかを模索するための旅なのだそうだ。


冒険者ギルドが起こす革命の波に乗れば、事件の贖罪に繋がるとは思う。

だけど、初期メンバーとしての責任を取る勇気と覚悟が出来ない。


自嘲気味に、哀しそうな顔をしてアルベルトが、長い、長〜い話を終えてため息をひとつ吐き、ようやく、口を閉ざした。


……重い。

メッチャ重いやん。

人死にの話とか突然すんの辞めてよ。


ここは木星か? って言いたくなるレベルで空気が重い。

この世界の重力加速度は9.8[m/s2]じゃないのか!?


ウッキウキで銅貨を山積みにしてるこの絵面が超絶シュールじゃん。

銅貨の鈍く光る色がより一層くすんで見えるよ。


三バカなんて床のシミにでもなりそうな勢いで凹んでるし。

どうすんのさ、この空気!


だが今の話を聞いて、サージとジャビルが、基礎をすっ飛ばした詠唱による精霊術の行使をしていた理由は分かった。

生存率を上げられるけれど、人間兵器にはならない程度の強さを与えるためだったのね。

霊力さえあれば、詠唱は丸暗記すれば術が使えるから。


なるほど、納得。



冒険者ギルドに所属することや活動することが嫌なわけではないのか。

責任感が全くないよりは良いのだろうが、重く受け止めすぎるのも考えものだな。


「四人旅が終わるのは良いんだ?」


「楽しいは楽しかったが」

「生きるためにやってるだけだからな」

「安全な寝床がもらえるならその方が」

「元々、一時的に組んだものだしね」


寝食を共にした仲間だろうに、そういう所の割り切りはスパッといくのね。


寝込みを襲ってきた襲撃者だったり、行き倒れている所を保護したり。

そんな成り行き任せの行き当たりばったりな長旅が終わりを告げるからか、饒舌になって思い出話に花を咲かせる三バカ。


こう言う武勇伝を語られると、話を盛っていたとしても、聴きごたえがなかなかあるな。

酒場がオープンしたら吟遊詩人を雇うのも良いかもしれない。

なかなか良い娯楽になりそうだ。



三バカのお陰で空気の重みが元に戻ったので、町に残るかどうかの話は後回しにして、改めて報酬の話だ。

普段は四人で等分して、割り切れず余ったお金はリーダーであるアルベルトか、一番活躍した人物が貰っていたそうだ。


大抵はアルベルトが管理し、旅に必要な買出しに使っていたのだと言ったら、三バカが目を丸くしていた。

旅の必需品の買い物を自分たちでしていなかった時点で気付けよ。

アルベルトもちゃっかり者で、コイツらが計算を出来ないことをいいことに、多めに懐に入れていたと笑いながらアッケラカンと言うし、損はしていなかったようだが。


あぁ、文字が読めないしどうかな? と思っていたが、やっぱり数の計算、出来ないんだ。

全く出来ないわけではないし、数の概念として一から十までどの数字が多いかの順序は分かるし、合計十一までの計算なら出来ると、ガルバにドヤられた。

イヤ、威張れないって。


そう思ってたら、サージとジャビルに至っては五までときた。

お前ら、よく今まで無事に生きてこられたな。

イヤ、騙されたことがあるなら無事とは言えないか。


でも、数字が分かるだけ昨日のヌリア母子よりはマシだ。

基礎があるだけ話が通じやすい。



隣にあったテーブルを引っ張ってきて、どこから取り出したんだ? と言われたのを無視して数字の早見表を創り出す。

幼児向けの一〇〇までの数字が書いてあるものはまだ早い。

〇~十までの数字しか書かれていないものだ。


ソコに半銅貨を数字通りに並べていく。

視覚化した方が分かりやすいからね。


「俺は数字と文字の識字率を上げて、簡単な数の計算と時計を読めるようになって欲しいと思ってるんだ。

この街に住む人全員に」


「「全員!?」」


この世界の学力がどれだけ低いか知っているカノンとアルベルトが驚くが、日本ではひらがなと一〜十までの数の数え方は小学校入学前の子供で九〇%を超える割合でマスターしていたとされる。

決してハードルが高いわけではない。

機会さえ与えられ、ある程度のやる気さえあれば出来るはずだ。


アルベルトが合流するまでの三バカは報酬を誤魔化されたり、買い物する時お釣りをピンハネされても気付けずにいた。

お釣りを誤魔化されたことに後から気付いてトラブルを起こして追い出され、町の滞在予定日数が短くなったことも数え切れない程にあると言っていた。


計算が出来ないことで損をすることが多かったのだから、算数の重要性を身をもって知っているはずだ。

そしてそれはどの冒険者にも言えることだし、行承認相手に買い物をする町民だって同じことだ。


苦手意識は、教え方次第でどうとでもなる。

それをまずはこの三人で証明したい。


「書かれた数字の下に並べた半銅貨の枚数、コレがそれぞれの数字に対応しているのは分かるか?」


五までしか分からんと言う二人のために、六以降の数は二列に並べた。

指折り数えることにより判断していると言うから、両手を使い六から十までの数を教える。


ガルバが茶々を入れるが「今ここに並べた数パッと計算出来ないならお前も同レベルだからな」と言って黙らせた。

五十五だよ、ヴァーカ。


そこに存在している数そのものと数字がイコールで繋げることが出来たら一桁の数の計算。

手を使っても良いし、半銅貨を使っても良い。

暗算が出来るのなら尚良い。


日常的に使う機会が多かったからか、正解率一〇〇%になるのに時間は掛からなかった。

やればできるじゃん。


褒めたら喜んだので、やる気を更に出せようとカノンを机の下で小突いて彼にも褒めさせる。

アルベルトなんかは褒めると言うよりも呆れてしまっているようだ。

どれだけ言ってもケツがむず痒くなると言って勉強なんてしようとしなかったのに、と嘆いてる。

苦労したようだ。


一桁の計算が出来るようになったら二桁+一桁の計算。

次に二桁+二桁の計算と数字を増やしていく。

書きながら数字を読み上げるのも忘れない。

流石に急ぎ足すぎたのか指を折り曲げ混乱する場面が多くなったのでアドバイスをする。


算数初心者は五をひとつの単位として教える方が良い。

二十八+十六みたいな、位の上がる計算をするにしても、五が五つと三に五が三つと一を足す、みたいに考える方が混乱が少なくて済む。


五の塊が全部で八つある。

五は二つあると十になる。

二つのペアが四つあるから四十。

三と一を足したら四。

四十と四を足したら四十四だ!


……と非常に回りくどい考え方だが、最初なんてそんなもんで良いのだ。


正の字が幾つあるか、みたいな数え方は大人になってからでもよく使う方法だし。

恥じるようなことでもあるまい。


そのうち五が二つあれば十になる、という考え方から、慣れれば十をひとつの単位として捉えられるようになっていく。

日本人がよく使う‘’にしろはと‘’の偶数の数え方も自然と出来るようになるだろう。

何事も慣れなのだから、少しずつ出来るようになっていけば良い。



半銅貨一〇〇枚あることを確認し終えた三バカに、今度はお金の計算の仕方を教える。

半銅貨は、銅貨の半値なので、二枚で銅貨一枚になる。

じゃあ、この半銅貨は銅貨何枚になる?

銅貨十枚で銀貨になるが、ここにある銅貨は銀貨何枚になる?


そんな感じだ。


銅貨・銀貨・金貨とそれぞれに半貨があり、それ以上のお金は紙幣になる。

紙幣と言っても小切手のようなもので、金額を書き込み発行者の血判を押し、国が運営する金融機関の印鑑が押されて、ようやくお金として扱って貰えるようになる。

と言っても桁が違いすぎて使う機会なんて早々無いが。

その金融機関に持ち込むと硬貨に両替してくれるそうだが、大抵は国同士のやり取りやかなり規模の大きい商会でしか使われないそうなので、紙幣に関しては普段使わない。

覚える必要もないだろう。



追加報酬で銀貨五枚。

正直渡しすぎな気もするが、そこに成功報酬の銀貨一枚を足す。

即答で「「「銀貨六枚!!!」」」と言えたので拍手しておいた。

この一時間程度で加法をマスターするとは、やりおるな。


この銀貨を等分する計算は流石に出来なかったようで、一枚ずつ四人の前に置き、余った銀貨二枚と脂汗流しながら睨めっこしてた。

クソわろえる。


アルベルトに言ったら半銀貨四枚と交換したいと答えを言われたので笑いながら渡した。

半銀貨だと使いにくいようなら、銅貨にするけど何枚と交換して欲しいか尋ねたら、ちゃんと三人とも「五枚」と、正解を言ったのでまた褒めた。


楽しいと思えたようで、ニマニマ笑いながら報酬を懐に入れたあとも、計算問題を互いに出し合って遊んでいた。

冒険者が地球からの移民の子孫じゃないのかという仮説は合っているかもしれない。

向上心って、欲からくるものだし。

無欲だとここまで負けず嫌いを発揮しながらみるみる上達しないでしょ。


フリアンくんにも渡した五十音表と数字のポスターを作り、皆が選ぶ家に貼ることにした。

反復練習は大事だしね。


このポスターを貼るべきコイツらの家をどれにするのか選ばないとだ。





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