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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、報酬を渡す。




二つ名を持っている時点でカノンが一般の枠にはおさまらず、何かしらの分野で桁外れに秀でているのは想像出来た。


“王の権能“の名の通り、王様の名代として動けるのだから王に並ぶような地位にあるか。

“賢者“の称号を与えられ、余程勉学において功績を残しているのか。

“オラクル“と呼称されるように、神々、もしくはそれに準ずる存在の声を民に届ける立場にいるのか。


質の良い回復薬を作ることに長けているとドヤっていたのに、ソッチ方面での二つ名はないのかよ、と思った程度で深くは考えなかったんだよね。


一度有名になると尾びれ背びれのついでに、胸びれや腹びれ、ついでに尻びれまでついてしまうのが噂というものだ。

そのせいでご大層な二つ名が沢山あるのだと思ってしまっていた。


まさか、誇張した絵空事でも、大袈裟に嘯いた戯言でもなく、カノンは本当に凄い人だとは夢にも思わなかった。


史上最高、空前絶後の大賢者様。

それが世間に敬われ、同時に恐れられているカノンと言う存在なのだそうだよ。


びっくりだね。


んで、その彼が“非常識“だと言った通り、一晩で街ひとつ造り上げてしまうのは、流石に人類史上最至高と呼ばれる精霊術師ですら不可能な所業だそうだ。



アルベルトに説明された後に「だからコイツ偉そうなんだ!」と納得していたらまたカノンに後頭部をチョップされた。

俺の頭、そのうち凹版印刷の型みたいに箔押し出来るようになってしまわないだろうか。

カノンの手の形がジャストフィットするように変形しちゃいそう。


え〜、でも、そんなおエラい人なのに、村の人たちってばあんな、ぞんざいな扱いしていたの?

厚顔無恥にも程がなくない??


こんなド田舎の小規模な、村とも言えないお粗末な集落の人間に「ワタシらのバックにはあの“賢者“がおるんやで!」なんてイキって言われても、信じて貰えなくても当然なレベルの有名人なのにね。

ウソつくならもっとマシなウソをつけと言われても仕方ない。


でもそういう有名人ってさ、オーラが違うとか、一目見るだけで他とは違うんだって分かるもんじゃないの?

俺からしてみれば、カノンは単なる食いしん坊な外見と実年齢の合わない世話焼きオカン兄ちゃんでしかない。


肖像画が描かれ石像が乱立するレベルの世界規模で有名な人だから、俺がカノンに対してなんの感慨も見せなかったし、記憶喪失だと言われてスグに信用したのか。


……旅の途中で彫刻見つけたら、こっそりイタズラしてやろう。



村の人たちの自宅への案内はヌリアさん母子に任せた。

クマ肉は今回の引越し祝い的なものだから無償であげるけど、今後は自分たちが動かない限りは食料にはありつけないからな、と注意だけした。

アレだけ、生き神の如く偉大なる存在であるカノン様に対して無礼を働ける人たちだもん。

クギを刺しておかなきゃ調子に乗るでしょ。


時間的に余裕があれば農場の見学にも連れていくようヌリアさんに言っておいた。

畑で作物を育てるでも、農場で畜産するでも良いし。

街中に建てた工房を貰い受けて工芸品や日用品を作り出しても良い。


もちろん、冒険者になって狩りをしても良いよ!

冒険者みたいな派遣業の何でも屋は、人員が居ればいるほど出来ることが増える。

本格的に始動させるには、冒険四人適度では全然人手が足りないからね。


コイツらがギルドに加入してくれるか、この街に留まってくれるかは俺の力量次第だよ。

せいぜいガンバる。



村人を見送った後、冒険者ギルドの建物に入る。

並ぶ机と椅子の多さにカノンなんかは呆れ果ててしまっているが、三バカなんかははしゃいで色々見て回っている。

うむ、この反応が見たかったのだよ。


アルベルトはこんな時でもシッカリしているので、椅子を引き俺とカノンを適当な位置に座らせ、自分は出入口側に座った。

上座とか下座の概念があるのか、たまたまなのか。


「色々あったけど、まずは二日、お疲れ様でした」


手招きしたら思い思いの場所に座ろうとした三バカを同じテーブルにつかせ、とりあえず労いの言葉をかける。

胡散臭そうな目で見られたけど。


なんだよ、その目は。

俺だってキチンとするべき場面ではしっかり出来るんだよ。



報酬として用意させて貰ったお金が入った袋を用意し、手を伸ばしても届きそうで微妙に届かない位置に置く。

そして、俺がしたいと思っている冒険者の立場確立のために浸透させたい“冒険者ギルド“という存在と、その概念の説明をしたら、アルベルトは前のめりで聞いてくれた。


途中サージが素早く報酬入の袋に手を伸ばそうとする。

その度に払い除け叩き落とし、最終的にはクマ解体の時に使ったナイフを取り出し、手の甲に血が滲む程度の、ごくごく小さい穴を開けてやったら、ようやく大人しくなった。

手癖が悪いとは聞いていたが、一回で懲りろ。

念の為絶妙な場所に置いて正解だった。


用意してあった、ギルドの依頼第一号となる依頼書を見せた。

アルベルトは元貴族なのだから分かるが、意外と学のあるガルバもある程度は書かれている内容を理解出来たようだ。

主に報酬の部分のようだが。


依頼主文が護衛で、その護衛の詳細内容。

冒険者拘束の予測期間。

依頼の報酬を前金と成功報酬のそれぞれ書き、備考欄に貸出品や譲渡した必需品も記載してある。


今回は依頼書を見せるのが、依頼達成時の今になってしまったが、実際は掲示板に張り出される依頼書の内容を見て、依頼を受けるか否か判断すること。

失敗する可能性がある依頼を前金目的で意図的に受け、ワザと失敗したらペナルティを設けようと思っていることも説明した。


ジャビルは地頭があまり宜しくないらしく、頭から湯気が上がりそうになっている。

ようは、他の町の広場に貼ってあるような困り事を解決するのに公的、もしくは私的機関として新たにギルドを設立すること。

冒険者の社会的地位を確立したいのだと熱弁させて貰った。


冒険者は単なる荒くれ者や社会弱者を指す俗称ではなく、金さえ払えば何でもしてくれる便利屋さんに生まれ変わるのだ。


「ちなみに、冒険者諸君はこの街に定住するつもりはある?」


「は?

おれら住んでいいのか!?」

「市民権ぼったくるとか言わない?」

「なに企んでんの」


矢継ぎ早に全く別の質問を次から次へと言うてくれるな。

俺の口はひとつしかないんだから。



生まれた国で国籍が自動的に与えられ、他国で永住権を獲得しようとしても、手数料は除き、基本的にお金が掛からなかった地球とは違い、この世界では希望する土地に移住する際は、その土地に暮らすための権利である“市民権“を、わざわざ大枚をはたいて買わなければならないそうだ。

人種差別による迫害を受けた側が主張した公民権の類ではないらしい。


両親共にその国の市民権を保有していれば、その子は十歳になると同時に国から市民権が与えられる。

十歳を迎えるまでの乳幼児死亡率が高いからこその年齢設定だが、力が有り余って暴れて手がつけられずに外の世界に放り出される子供の年齢は、それ未満であることが圧倒的に多い。


人頭税が課せられるようになるのもこの年齢なので、その前に追い出した方が家にとって損にならないのだろうが……ちょっとソレどうなのよ? と言いたくなる。


そのせいで三バカは市民権を持っていない。

サージとジャビルは九歳の時に捨てられてる。

分かりやすく、人頭税を払いたくない親の策略によるものだ。


ガルバなんて山奥に捨てられたのは五歳の時だそうだ。

よく生き残れたものである。


強い者しか生き残れないだけあって、三十歳近くまでこうして生きて来られたのは、コイツらにとって誇りだそうだ。

その身一つでサバイバル生活を長年送ってきたのだから、それは確かに自慢にもなるだろう。


威張って言うことでもないけど。

だって装備品の殆どは略奪したものだと言うし。

犯罪を犯して悪びれない、この価値観をどうにかしなきゃだよな。



親からの愛情をほとんど知らず、人に必要とされてこなかったコイツらは、他人を頼ることも頼られることも知らない。

他人から奪うことで生活をしてきたから、奪われる立場に立たされることがなかったし、そうなった時にどれだけ困るのか、想像が出来ない。


町で安全に守られてきた生活が突然奪われた時の感覚、なんて言ったって、そんな幼い頃のこと、覚えていないんだろうしな。

だってバカだし。

だから平気で、平和に日々の糧に感謝しながら慎ましく生活している、そんな村をその時の気分で壊そうとする。


安穏とした生活を経験したことがないわけではないだろう。

だが、その後の殺伐とした生活の方が印象に残るし、その生活の方が圧倒的に長く過ごしている。


記憶に残っていない、でもぼんやりと朧気に澱として確かに存在している、母の腕に抱かれて眠る居心地の良さ。

そんな温もりが、求めても手に入らないから、暴れて壊そうとする。


こういうヤツらがいたら、世界中の人を幸せにするなんて出来るわけがない。

幸せな所から率先して奪おうとするのだから。


だから、奪おうと言う気持ちが起こる暇なんてないくらい、コイツらも幸せになれば良いのだ。



俺の言葉ではなく、信頼出来る仲間に確認して貰った方が良いだろうと、アルベルトに依頼書を確認してもらう。



―――――



依頼内容

世界樹の迷宮近くに居住する村人全員の護送


依頼ランク



場所

世界樹の迷宮近くの村からリクオル大河近くの新興町まで(ウヌモ町とは異なる)


拘束目安期間

二〜三日


報酬

前金:銅貨五枚

成功報酬:銀貨一枚(銅貨十枚払い可)


注意事項

道中の食事補助(兵糧丸、干し肉)

村民死亡一人につき半銅貨報酬減額

護送対象の評価により報酬加減あり


以上。



―――― 



この街の名前も決めてないし、村人が住んでた場所の名前も無いと言うので、ちょっと長い依頼内容にはなったが、なるべくバカでも分かりやすい単純な作りにした。

依頼ランクは空欄にしてある。


俺はこの世界の常識に疎いし、魔物討伐の成功率や、護衛任務の厳しさなんかも全然分からないからな。

今回の依頼をどれだけの難易度に設定すれば良いのか判断出来なかった。


それに、冒険者ギルドに所属してくれる人が少なかったり、依頼を出してくれる人が少なかったりすれば、ランク付けなんて意味がないし。

だって所属人数が少なければ出来る人がやらなきゃいけないし、依頼数が少なければどんな困難な内容でも報酬のために奪い合いになるわけだし。


今回、依頼内容としての報酬は決して高くはない。

商人が町から街へ積荷を乗せた馬車の護衛を依頼する時の日当よりも少し少ないくらいだ。


短距離の移動とは言え護衛対象が多いし、ソコソコ強いとされる魔物が出没する可能性がある土地だから、少ないと感じる可能性もある。

実際、道中襲われたそうだし。

まぁ、下位奴隷の護送と思えば高いだろうが。



安全に村人を街まで運ぼうと思えば、幾らでも俺なら出来た。

パッと移動を使わなくても、四人でココまで乗ってきた空飛ぶ石版。

アレを超絶巨大に作って一気に運ぶなり、何往復かするなりすれば良いだけだから。


ただ、もしこの冒険者たちが街に住みたいと思ってくれるなら、必ず一緒に住むことになる村人たちとの間に確執を残したままではいけない。

だから敢えて冒険者たちに護衛を頼んだ。


半分以上は彼ら自身の命を盾にした脅しではあったが。


脅した恐怖だけでは動きが鈍くなる。

自らやりたいと思えなければ、仕事を継続するのは難しい。

だから前金を払うことで信頼を示し、やる気を起こさせた。


出来た時に「流石だね」と褒めることで、期待していることを暗に示す。

成功報酬に色を付けることで次のやる気を引き出す。


頼られることを面倒臭く感じる人は多いが、悪くないと思う人も同様に多い。

自分の存在理由や価値を他人に求めるのは、人間の本能として当然のことだから。

自尊心は自分で育てていかなければいけないが、育てるための成功体験を与えてくれるのは、他人である場合の方がよく育つ。


お礼の言葉だったり、嬉しそうな表情だったり。

もちろん、生活するのに必要なお金もソコに付ける。

自分を大切にするためには、生活を整え、美味しく栄養をシッカリとる必要があるからな。

全てにおいてお金が必要だ。


金がこの世の全てとは思わないが、お金はあればある程出来ることが増える。

そのツールだからな。

お金大事。



村の人から聞いた、冒険者の武勇伝や、こんな所が良かったと言っていた内容をひとつ述べる度に、机の上に半銅貨を増やしていく。

基本賃金は少ないが、臨時ボーナスを多くするつもりでいたので、口の周りについた食べ物を拭ってくれたとか、転びそうになった時に支えてくれたとか、そんな些細なことでも半貨をドンドン載せていく。


人のために何かすることは、こうやって自分の利益に繋がるのだと、分かって欲しいから。

時折暴言を何回吐かれたと言って減額するのも忘れない。


実際は、その場ですぐ自分の益になるようなことは早々起こらない。

金銭になって返ってくるとも限らない。

因果応報と言うものだから。

巡り巡って、良いことも悪いことも、時間経過により関係なく自分の元に返ってくる。


コイツらが行ってきた悪いことが、善い行いが積み重なった結果、帳消しになることは有り得ない。

殺した人は生き返らないし、恨み辛みが消えることはない。


だが、改心して世のため人のために働いた結果、赦しを得ることだってある。

善行を見守ってきた人達が助けてくれることもある。


そうやって償い生きていくのが人間と言うものだ。

俺がこうして世のため人のために動くのも、償いによるところが大きい。

趣味ももちろんあるけどね!



机の上に積まれた半銅貨の山。

銀貨に換算したら五枚程度のものでしかないが、一〇〇枚は山積みになっている、この視覚効果が大事なのだよ。


「コレが、四人が今回働いた報酬だ。

受け取ってくれ」




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