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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、肩慣らしをする。




魔物が勝手に入ってくる危険性はほぼなくても、時により人間という生き物は畜生以下の行動をする。

なので現在、跳ね橋は半ば程まで上げられ街中に入れないようになっている。


高い壁を見ただけでワイワイガヤガヤ煩かったのだが、その橋の大きさを見ただけで村人からは歓声が上がった。

テンション高いね。


ふふん、と得意気になっている所に、「さすが賢者だ」「王の権能の実力は凄いな」なんてカノンへの褒め言葉が別の所で飛び交っていると、ちょっぴりイラッとしてしまう俺は心が狭いのだろうか。



恐怖による支配だけで、村人たちをまとめていたのかと思ったが、道中、一行を襲ってきた魔物を手早く仕留め、必要な素材をあっという間に剥ぎ取り、食事の段取りまでしてくれた冒険たちに、村の人たちはしっかり懐いたらしい。

どの口からも感謝の言葉が出てきた。


カノンへの態度を鑑みると、楽できるからって理由だけかもしれないけど。


強者の傘下についた方が長い生き出来るのは確かに自然の摂理ではあるが、自分たちを殺そうとした人たちと、よくそんな打ち解けられるな。

後腐れがないのは良いことではあるのだけれども。


理解が出来ない。

オレが考えすぎなのか?


だがふと目を向けると、ジャビルから一角兎の解体を教えて貰ったとはしゃぐ子供を横目に、青い顔をして身震いする女性がいた。

さすがに自分を襲ってきた冒険者個人には心を許せて居ないようだ。


わだかまりが多少あろうがまとまっているのは、アルベルトの人当たりのYOSAがあるのかもしれない。

彼だけに対しては、みんな漏れなく慕っているように見える。


言葉遣いこそ冒険者っぽいが、生まれてから当たり前のように身に染み込んだ作法は抜こうと思って抜けるものでも誤魔化せるものでもない。

お貴族様っぽさが抜けないんだよね。

特に女性の扱い方が。


俺もしゃべり方だけでキャーキャー言われたし、コレだけ丁寧な動きをしていたらメロメロになってしまうだろう。

村の男たちって冒険者程じゃないけど荒っぽいし、亭主関白のようだから。

アイドル的な立ち位置になってる気がする。



「この可動橋はこんなに大きくなくては駄目なのか?」


大きい分、ゆっくり降ろさなければ橋部分が壊れてしまうので、かなりノンビリした速度で徐々に降りてくる橋を見上げ、アルベルトが尋ねてきた。


大きいは正義かな、と思ったのだけど。

実際体験してみると、やはりこの待ち時間は煩わしいよな。

スウィングロッド方式にしたから、ウィンチで開閉するよりも操作が比較的楽だし、引き上げは手早く出来るのだが、いかんせん、降ろす時が大変なんだよね。


木の板が使えないから、橋板部分は石の板を作って嵌めたんだよ。

中身をハニカム構造にしたし、見た目よりは重くないんだけどね。

紙で作ったハニカムコアが飛行機の機体に使われていたことがあるくらいだし。

橋の中材としては適しているかなと思ったんだ。

それでも、表面板は立派に石なのでそれだけでもかなり重たくなってしまったのだ。


「イヤ、街中に拘ってたら橋の構造考えるのが面ど――後回しになったから突貫工事しただけ」


「今面倒臭いって言おうとしなかったか?」


「気ノセイデスヨ」


面倒でも軽量化図っただけマシじゃん!

ただの石の板渡しただけだったら今頃自重のせいで途中でベッキリ折れてるよ!!


バスキュール橋のように真ん中からアッチとコッチに跳ね上がるタイプのものにすれば、その心配もないし、橋板も軽くなるからその分操作も多少の力で済む。

運河にかかる橋は大抵バスキュール構造だ。

だが、ここは堀に掛ける橋だし。

船が橋の下、もしくは間を通ることは有り得ない。

街側からのみの操作に限定するならバスキュール構造はナシだな、と却下した。


旋回橋は土台ごとグルリと九0度回すので、今みたいに降ろす待ち時間がいらない。

ただ、俺がこの街から離れた時、この操作を誰がするの? って疑問がある出たので却下した。

防衛面から考えても劣るし。


昇開橋なら操作面と防衛面双方から見ても問題は無さそうだ。

だが、俺の好みじゃない。

だって橋がズゴゴゴゴッ! ってそのままの形で上に持ち上がってる様子ってなんかマヌケに見えない?

橋の裏側が見えちゃうんだよ?

苔とか意図せず生えてたらダサいじゃん。


折りたたみ式や巻き上げ式だとメンテナンスが大変だし。

その整備を誰がやるんだ? ってなったら、俺しかいないし。

それこそ面倒臭いじゃないか。


なら、典型的ではあるが見た目的にもソレっぽいし、防御の面でも優れている一葉跳開橋が適しているだろうってなった訳なのだよ。


俺だって、街造りに注力し過ぎて橋なんてそうそう注目されるわけでもない所に労力を割きたくなかったとは言え、微塵も考えなかったわけではないのだ。

ただ見た目を重視しただけで。



これだけ大きい街だし、橋も長いのなら、橋を二分割にすれば良いのではないかと言われた。

分割した所に関所を用意して、街中に入る人を検問した方が良いのではないかと提案されたのだ。


と言うか。

なんで無いの? って戸惑いの方が大きかった気がする。


関所。

なるほど。


交通料徴収を行うと、ヒトとモノの流れが悪くなるから置かなくても良いだろと思っていたのだが。

俺的には町のつもりでいたし、門番でも一人二人出入口に立たせておけば良いだろと思っていたんだけど。

この規模になると、防衛の面でも関所は必要か。


荒くれ者で手が付けられない冒険者や悪党なんかは、冒険者ギルドの品位を落としかねない。

人相書きを用意して指名手配しようと思っていたのだが、広場に貼り出すより関所の横に看板を設置した方が、そういう輩が街に入って悪さをしにくくなるか。

出入りの管理する人にも指名手配者の顔を覚えておいて貰えば取り締まりもしやすくなるしね。



いやぁ、文章や写真で知識としては知っていても、実際に体験してみないと規模や不足しているものって分からないものだね。

カノンにはさんざんツッコミ喰らって怒られもしたけど、さすが教えるのが下手なだけある。


何が、は教えてくれるんだよ。

どうダメなのか、までは教えてくれないの。


アルベルトは先生に向いてるね。


「リーダー、そんなチンチクリン相手にすることないッスよ」

「なぁ、おい、まだ時間かかんのかよ」

「……ひまだし遊んでていい?」


自分たちのリーダーと親しげに話しているのが気に食わないのか、いい加減待ち飽きたのか。

はたまた首枷が窮屈なのか、その全てか。


外側から威厳溢れる見た目にすれば、下手な輩はビビって喧嘩を売ってこなくなるよとアドバイスを貰ったので、どうすれば貫禄たっぷりな外観に出来るか話し合ってたのに。

冒険者三人が待ての状態に痺れを切らしたらしく、口を挟んできた。


強者には付き従うのがモットーな割には堪え性がないな。

俺に対して舐めた態度を取るということは、実力差が分かって居ないのか?

バカなのか??

うん、バカなのか。


ジャビルの視線の先が村人の方を向いているので、何で遊ぶつもりなのか聞くのが怖いな。

今後のためにも上下関係を叩き込んでおいた方が良いのだろうか。


「そんな暇なら俺と遊ぶ?」


「お、話分かんじゃん」

「実戦式ね」

「死んでも恨むなよ」


「おいおい、お前ら、辞めないか!」


実戦方式って言ったって、俺、防具着けてないんだけど。

杖はまとえるようになったけど、防具はまだなんだよね。

まぁ、攻撃を喰らわなきゃ問題ないか。


武器もクマを解体する時に使うかなって思ったナイフだけしか持参していない。

殴ると手痛いからヤなんだけどな。


まぁ、実戦とか言うくらいなら何でもありの精霊術も使用可なんでしょ。

なら、どうとでもなる。


「大丈夫だよ、躾けるだけだし」


「ほざけっ!」


まるっきり悪役な言葉を吐いて詠唱をしだすサージとジャビル。

ガルバは担いでいた重そうな斧を手に取り向かってくる。

背負子の下にそれ担いでたの?

ある意味凄いな。


ガルバは重量溢れる見た目よりも随分走るのが早い。

足回りの装備品に軽量化か速度上昇の付与でも付けてるのかな。

だけど、俺と比べたらカメとウサギだ。


キィンッ


ジャビルが槍で、獲物を手にしたと同時に俺が投げたナイフを弾き落とす。

この速度には付いてこられるのか。

結構速度が乗るように投げたんだけど。

動体視力が良いね。


だが、詠唱を中断させたらいけないよ。

集中力が足りないね。

そんなんだから、懐に入られても気付けない。


ガルバを無視して突っ込んで来ると思わなかったのだろう。

ナイフを弾いて油断した所に掌底で顎を殴りあげる。


ホイ、まずは一人。


ジャビルは脳震盪を起こしたのか、槍を手離してくれたので、それを掴んですぐ近くにいたサージの首に一撃お見舞する。


それだけで昏倒するとは根性ないな。

ハイ、二人目終わり〜。


邪魔な槍はポイッと捨ててクルリと方向転換し、ガルバに真正面から突っ込む。

こういう奴らは圧倒的な力で叩きのめしてねじ伏せないとね。

後で、卑怯だとか本気出してなかっただけだしとかうるさいことになるから、下手な小細工はしない方が良い。


でも、流石にあの斧の攻撃は受けたら腕が無くなっちゃいそうだな。

重量があるから大振りなので難なく避けられはするが、さて、どうしようかな。


それにしても、あんな大きな……バトルアックスとでも言えばいいのかな。

巨大な戦斧を片手で軽々と振り回せるのは凄いな。

スタミナも切れる気配がないし。


なにかカラクリでもあるのだろうか。


鑑定眼で見てみると、全身を霊力が覆っている。

杖や防具をまとうのと同じような状態だが、それとも微妙に違うような。

右腕に霊力が特に集中しているし。


どんな状態なんだ?


「ねぇ、ソレってどうやんの?」


「それって! なにが! だよ!

あ”ぁ! なんで当たらないんだ!?」


見た目に反して思ったよりも疲れているらしい。

もしくは、当たらなくてイライラしているのか。


焦りも憤りも戦闘において最もコントロールすべき感情だと言うのに。

これで冒険者生活が長いのか。

程度が知れてるなぁ。

百戦錬磨の頼れるイケボな渋い頬に傷があるオッチャン冒険者とか居ないのか。


教えて貰えそうにないので見よう見まねで足に霊力を集中させてみる。

すると思ったよりも高く飛ぶことが出来た。

身体も軽くなるし筋肉疲労も軽減されてるな。


血行促進に、筋肉――だけじゃないな。

骨もそれに耐えうるだけの強化がされている。

面白い。

ドーピング的、イヤ、それ以上の作用がある。


ってことは長い時間こうしていたら反動が来そうだな。


筋繊維が傷付くだけなら筋肉痛で済むしまだマシだが、血管や骨が傷付いてしまったら最悪だ。

血管の老化が早まれば動脈硬化や心筋梗塞みたいな血管関係の疾病リスクが上がるし、骨粗鬆症になれば旅をしている暇があればカルシウムを取って療養しなければ、躓いただけで折れてしまうようなスカスカ状態になってしまう。


そんな面白味もない疾病まみれの異世界生活なんて送りたくない。

霊力そのものを一点集中でまとう実験は今日コレっきりにしよう。


なのでせっかくなのだから思いっきり試そうと思い、防御力がどれだけ上がったのかの実験を斧を前腕で受けてみる。

どうせ治癒術でくっつけられるし。


そう思ったのだが、薄皮一枚斬ることなく止めることができた。

おぅ、コレ、超便利。


皮膚が硬くなっているのか、集中させた霊力によるものなのか、どちらだろう。

霊力自体をまとうことはカノンから教わっていたし、霊力コントロールのためにも常に行っているが、別段防御力が上がることもなかったのに。


密度の問題だろうか。

練度の差なのだろうか。

さすが不思議エネルギーだ。

面白い。


指先に集中力させたらどうなるかな。

爪のモース硬度は二.五とそう高くない数値だが、皮膚なら簡単に抉ることが出来る。

密集させた霊力で強化された爪の威力ってどれ程のものなのかな〜っと。


自慢の斧を腕でアッサリと受け止められた事実を受け止めきれなかったのか、目を見開いたまま固まってるガルバ目掛けて、勢いよく腕を振りかぶる。


喉元にそのまま吸い込まれるかと思った指先は――残念ながら、寸でのところでアルベルトが俺とガルバの間に割り込ませた大剣により止められた。


「勝負あり。

俺の仲間、殺さんといて」


おっと。

気付かなかった。


随分早いな。

びっくりした。


「ヤだなぁ、殺さないよ」


「……今の、刺す前に止まれたか?」


「止められてなかったらヤバかった?」


その言葉にため息をつかれ、剣の表面を見て更に深いため息を吐いた。

気になったので見せてもらうと、俺の爪先が当たったところが欠けていた。


この剣の素材が鋼だと仮定するなら、モース硬度は最大八.五。

三倍以上の硬さになったと考えれば良いのだろうか。


でも、霊力ってそんな単純なエネルギーじゃないもんね。

貫くイメージをしちゃったから、そのせいで阿呆みたいに硬くなってしまった可能性がある。


ガクブルして立てなくなってるガルバを見てもう一つため息をついたアルベルトは「こう言うのガラじゃないんだけどなぁ」とボヤきながらも、剣を構えた。


「俺にも、冒険者としての矜恃と言うものがあるからね」


「そんな犬のエサにもならないようなモン、捨ててしまえば良いのに」


「時と場合によっちゃあ、命よりも大事なものなんだよ」


そういうもんかね。

お望みのようだし、三人相手して程よく身体も温まったし、霊力の実験、其ノ二でもおっ始めますか。




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