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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、案内をする。




供物として捧げると言うことは、宗教によって羊や豚が食べられないように、豆もこの土地の人って食べなかったりするのだろうか。

お供え物とは知らずに食べさせてしまったのだが……

知らぬが仏とも言うし、黙っておこう。


申し訳ないので、とりあえずヌリアさんに向かって合掌しておいた。



街に戻る途中、初めて見るクマっぽい魔物が出た。

なんでポイと付けたかと言えば、クマのクセに羽根が生えているからだ。

体毛の一部が鳥のようなのである。

なんでこんな進化をしたのかが予測出来ない不思議生物だ。


鑑定眼を使い慣れようと起動させていたら、そりゃあもう、この世の終わりみたいな悲鳴をヌリアさんがあげてしまい大変だった。

まだ集中しないとうまく作動させられないのにそんな、つんざくような声を上げられたら集中なんて出来るわけがない。


お陰で通常仕様の目に映るもの全ての情報が映し出される鑑定眼を発動させてしまった。

ひとつの物に対する知識も多すぎて情報過多で気絶するかと思った。

よく耐えた、俺。


もう、弱点とか探る暇あったらさっさと倒してしまってこの場を鎮めた方が良いな。

そう判断し、まとっていた杖を出して、バビュンと一発。

眉間に霊力を撃ち込んで倒させてもらった。


戦闘訓練もしたかったのに。

倒れたクマを見ても尚、悲鳴を上げ続けるヌリアさんの眉間にも霊力ビームを発射せずに我慢した俺、超エライ。


俺の周り、こんなタイプの女性が居なかったんだよ。

どう宥めりゃ良いの?

放置しておいて良い??

……うん、良しとしよう。



耳栓を「スキル」で作ってはめて、改めてクマのデータを見る。

名前はカトル種のペンナウルス。

体長五m、体重三t。

嗅覚が鋭く脚が早い。

地属性、肉食。

獲物への執着心が強く貯食行動が見られる。


色々書いてあるけど、ようはとんでもなくデカいクマだな。

地球で一番大きなクマはシロクマ――正しくはホッキョクグマか。

アレの上位種と考えれば良いのかな。


だとしたら頭蓋骨がかなり分厚いはずなんだけど。

だらしなく舌が出ているクマの顔を覗いてみるが、キレイに後ろまで貫通している。

頭部なんて分かりやすい急所だけ進化しないなんてことはないよな。


精霊術や霊力の強さは、カノンがベースになっている。

人体破壊の知識や経験も含めると、俺の方が強いと断言出来るが、この世界特有の技術はカノンに劣っている。

だから霊力の総量は多くても滅茶苦茶強いとは言いきれないと思っていたんだけどな。


俺、強いかもしれない。

だからと言って、調子に乗って足元をすくわれたらいけないから気をつけなきゃだな。

だって俺だし。

すぐ調子に乗るしウッカリだという自覚はあるので。



帰りが遅くなると目を覚ました二人に心配を掛けてしまう。

だけどどうせなら美味しいクマ肉を食べたいので血抜きもしたい。


仕方がないので帰りはパッと移動をした。

村に移動した時と同じ、明確に思い浮かべることが出来る場所なら一瞬で行ける、アレである。


人妻に触れるのは、いささか申し訳ない気もしたが、ヌリアさんだってフリアンくんが起きる前に帰れた方が良いだろう。

瞬間移動マジで便利。

一応、なんとか落ち着きを取り戻したヌリアさんに許可は貰ったよ。

手を触るだけで充分だと分かっているから、腰に手を回したりそんな不必要なお触りはしていないから。



クマの足にツタを巻き付けロープ代わりにして、おいしくなーれ、と念じながら外堀に放り込んだ。

頸動脈にナイフを入れるのが屠殺直後じゃないのが気になるんだよ。

臭みとか血の塊とか、大丈夫だといいな。


堀の水が一気に真っ赤になったし、ある程度の放血は見込めると思うのだけど。

衛生面を考えると、本当は木から吊るした方が良いんだよね。

この三tもの巨体を吊るすのに耐えうる樹木があれば良かったんだけどさ。

ないから、そんなもん。


樹齢数百年とか経たないと無理でしょ。

そんな木があったら御神木として崇め奉られてるよ。


それこそ、水晶球の白滝にある聖木なら良い感じかも。

聖木に死体がぶら下げたら罰当たりにも程があるので今後もするつもりはない。


実は堀の水がどこから湧いて出てくるのかと言うと、地下に下水管をコッソリ通して川の水が流れ込んでくるようにしてあるのだ。

なので血に染まったグロい水も徐々に川へと流れていくはずだ。


雨水と細い川から引いた水路だけでは、常に水が張った状態にならないと思ったからさ。

水がない堀ってちょっと残念な見た目になるじゃん。

防衛面でも頼りなくなるし。

なので下水管を通したのだが、思いもよらない方向で利便性が向上したな。


そのうち見た目はキレイになるし、冒険者たちが来る頃にはクマもみ冷えるだろう。

俺一人じゃこの巨体を捌くのは骨が折れる。

解体を手伝って貰おうっと。


夏のクマって美味しいのかな。

なんか、秋とか冬の冬眠前の脂肪がついた個体を食べるイメージだけど。



今朝は町で買ってきたパンとスープで食事を手早く済ませ、三人に街の案内をした。


その度にカノンに怒られ、ヌリアさんに引き攣った笑みを浮かべられ、フリアンくんからはテンションだだ上がりで拍手を貰った。

子供のこの無邪気さを大人連中にも見習って欲しいものだ。


長屋の中身で足りないものを尋ねたら、水瓶が欲しいと言うので各家に備品として最初から備え付けにすることにした。

村からあんな重いもの背負って持ってくる人いなかったもんね。

近くに噴水と言う水場があっても、家の中に貯水する場所は確かに必要だ。


水道を通すことも考えたが、貯水池を何処に設置するべきかが判断出来なかったし、毎日使うものに紋様具を取り付けるのはカノンの許可がいるだろうし辞めたんだよね。

そもそも、村人たちには霊力がないから扱えないし。



街の景観を損なわないためにも、噴水で洗濯はしないことを徹底するようにお願いをする。

あそこは憩いの場であり汚れ物を洗うための場所ではない。


噴水から伸びる、長屋前に流れている用水路は好きに使って良いが、排泄物を流すのは厳禁であることとか、思いつく限りのルールをアレコレ教え込む。

最初が大事だから口うるさくなるのは勘弁して欲しい。


村のトイレもボットンだったし、高性能なものは要らないだろうと、家の中の便器も洋便の形はとってあるが、汲み取り式便所と同じ構造になっている。

汲み取り式と言うか、溜め込み式と言うか。


途中で詰まらないかが少々心配だが、下水管が街外れの農場近くに設置した肥溜めに繋がっている。

しっかり発酵するように熱が逃げない構造にしたし、空気の吹き込み口も攪拌装置も設置した。

この構造なら、微生物の動きが活発になり、寄生虫や細菌は発酵熱で死滅する、はず。


浄化槽と肥溜めの間の子みたいなもんかな。

浄化槽と違ってトイレットペーパーが無いから不純物を沈殿させるためのスペースが要らないからね。


きちんと発酵さえさせれば、酸素を利用して有機物を分解する好気性微生物と、汚泥処理に特化した酸素を必要としない嫌気性微生物、その両方が汚水を上手に処理し浄化してくれる。

気分的に飲料水にはしたくないが、有機物が分解されて土に還すのに充分な状態になってくれる。

最終的にはメタンガスや炭酸ガスと水になるんだっけ。


その前の状態の、窒素・リン酸・カリウムの肥料三元素タップリのものを下肥として利用させて貰うわけだ。


何ヶ月とかけるなら、こんな設備を整えなくても、放置しておけば発酵により下肥は作られる。

自然って偉大だ。


最初はこの農地の広さでどれだけの肥料がいるかが判断出来ないので、発酵を促進するために手を加えさせて貰ったが、村のトイレも汲み取り式だったなら下肥の使い方も注意点も、村の人たちなら充分に分かっているだろう。

問題がなければ霊力も要らない、土に自然に還りやすい形に肥溜めを変化させよう。



家の中の設備を一通り説明したら、用を足した後に流すための水を貯めておく水瓶と柄杓も欲しいと言われたので用意した。

水を流さなかったら詰まるリスク高くなるもんな。

危ない、危ない。


そう言えば、俺に霊力が無かったら自宅に用意しなきゃってカノンが言ってたんだよな。

忘れてた。


用意された家が広いし綺麗すぎると、戦々恐々と母子は言うが、二階建てで内装が白いからそう見えるだけではなかろうか。

ギルド職員用の寮に比べたら確かに広いが、アッチは単信者向けだし。

家具が入れば気にならなくなると思う。


釜戸の数はふたつで良いと言うし、備え付けの収納の位置や大きさも充分過ぎると言われた。

キレイすぎて落ち着かない以外は問題なさそう。


それはじき慣れるから問題のうちに入りません。



小さな門で区画を区切った、長屋の先にある農場は、一応連作障害を防いだり、ゆくゆくは乳牛や山羊を育てたり出来るように、かなり広めに取らせてもらった。


鶏もどき――もといシュケイは密飼いしても問題ないだろうが、牛はある程度のストレス発散のための運動場が必要になる。

そうなると、コレくらいの広さは確保した方が良いと思ったんだけど……うん、広いな!


牛糞も鶏糞も勿論畑の肥料になるし、臭いも出るからまとめてしまえ〜って勢いで作ったのだが、別にした方が良かっただろうか。

壁が遠い。


それはつまり、毎日畑の世話に通うのが大変になると言うこと。

移動距離が長いと、そこに労力が割かれて仕事のやる気が減少してしまう恐れがある。


まぁ、別に最初から全部のスペースを使わなきゃいけないわけじゃないんだし。

畝は既に用意してあるが、準備万端だからと言って全てに作付けしなきゃいけないなんてことはない。


アブラナ科は連作障害が起きるし夏に植える野菜である白菜とキャベツは同じスペースの方が良いよね、とか思って既に種まきしちゃったとか、害虫被害防止のためにもう寒冷紗引いちゃったとか、そう言う些細なことは置いておけば良いさ!


……だって、冬にコタツでお鍋とか憧れてたんだもん。

鍋には白菜が欠かせないじゃん。

勇み足になっちゃっても致し方ないのだ。

そういうことにしておこう。


俺の心中なんぞお構いなしに、ヌリアさんが「コレは耕しがいがありますね!」と新居よりも何よりもテンションを上げて喜んでいた。

脳筋――イヤ、農筋タイプか。


喜んで頂けたのなら幸いだ。

喜びついでに俺の代わりに白菜を育てておくれ。



商店街の案内途中、カーサ・トッレのひとつから、チュインッと軽い音が飛んで行った。

レーザービームの砲台なんて作った覚えはないのだが。

はて。


なんの音か分からないので音がした方向を皆で見上げたら、作った覚え自体は、確かにないのだが妄想をした覚えはある場所から微かに煙が出ていた。

カノンの家方向に向かう人が居たら排除するようにしようか、なんて半分冗談で考えただけだったんだけどな。


色々造ってる途中だったから、妄想を具現化してしまったのに気づかなかったのか。

マズった。


あちゃー、と額を押さえていたら、ゾワリと悪寒が走った。

冒険者に渡したヘルプ用の霊玉が割られたようだ。

冒険者諸君の意思で割られたのか、割れてしまったのか。

俺のウッカリで死人が出てたらイヤだなぁ。


カノンに冒険者たちが着いたようだから迎えに行ってくると言い、霊玉が割られた所へとパッと移動をした。





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